IS~疾走する思春期の転生者~   作:大2病ガノタ

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61話目。
ヒロインズの暴走と白式のセカンドシフト。そして新華の信頼の話。


主人公らしい主人公と、血だらけの主人公

 

 

 

 

花月荘最奥大座敷、IS学園臨時司令室。

現在数人の教師と山田先生、千冬が居り、千冬は目の前の画面の向こう側に居る楯無と会話をしていた。

 

 

 

 

 

『作戦は失敗。織斑君は重症、篠ノ之さんも心神喪失ですか…かなりキツイですね』

「ああ。最終的には青木に出てもらうしかないだろう。この状況で福音を落とせるのは青木くらいだ」

『ですね…。ほかの専用機持ちは?』

「全員落ち込んでいたが何やら作業をしていた。恐らく自分達だけで福音の下へ向かうつもりだろうな」

『………簪ちゃんも、ですか?』

「いや、あいつは作業はしていても他のやつらとは違い大人しくしている」

『そうですか…』

 

 

 

 

 

そこにハロを2機連れた新華が入って来る。

 

 

 

 

 

「青木 新華、入ります」

『お帰りなさい。織斑君と 篠ノ之さんの様子は?』

『その事なんですが、千冬さん。箒は駄目っぽいです。一夏の傍から離れようとしないうえに何も食べません。そして一夏も起きる気配は無いです」

「そうか、仕方なかろう」

『重症ね…』

「それから、簪さん以外の専用機チームが出撃準備してます。無断で出る気ですよアレ」

「だろうな。で、どうする気だ? 臨時指揮官(・・・・・)?」

 

 

 

 

 

新華は肩を竦めて苦笑い。政府から新華は1時的にIS学園による福音撃墜の指揮権を与えられていた。もう新華にしか落とせないのならいっそ指揮権を与えて確実性を出そうという判断なのだろう。

しかし新華がタダで受ける筈も無く、見返りを求め認めさせたという事もあったが。

 

 

 

 

 

「色々と考えてますが、今、取り敢えず色々と情報を集めてきました。どうもきな臭い感じですよ。コレ、見てください」

「これは…?」

「現在の福音の位置と、福音の開発現場にある福音のスペアパーツ保管庫の写真です」

 

 

 

 

 

新華がその場の全員に見えるように画面を表示した。無論楯無にも見えるように。

 

 

 

 

 

「現在福音は近くの無人島に居ます。恐らくエネルギーを抑える為と操縦者の肉体の保護を行なっているんでしょう。動く気配はありません」

『確かに理由はそれでいいでしょうけど…もう1つの保管庫の画像の意味は?」

「この保管庫、見てください。福音の特徴的な翼のパーツがゴッソリありません。発注した時にはそれ以外のパーツと同じ数だけあったらしいのですが」

「『!』」

「おそらく…福音の暴走のゴタゴタの中盗まれたみたいですね。本命はこっちでしょうか」

『なんてこと…!』

「かなりの手際です。それもこれだけの物を持ち出せるのは…」

「…アメリカかイスラエル側に、敵が居ると?」

「でしょう。スパイか裏取引かは知りませんが、ただのテロ組織にしては鮮やか過ぎかつ大胆です。そしてこれだけの事が出来るのは…」

「『亡国機業』…か?」

「でしょうね。何らかの方法で福音を暴走させパーツを入手。この感じだと実験や開発データも盗まれてるかもしれませんね」

『やられたわ…!』

「…会長、気を付けてください。この隙に無人機を強奪しないとも限りません。俺や千冬さん、専用機達が居ない今が危ないです」

『そうね。残ったISを稼働させて警備にあたるわ』

「そうしてください」

 

 

 

 

 

先程より重い空気が流れる。新華の情報収集能力にツッコム人物は居ない。そもそもアメリカ・イスラエルが協力しているので情報は手に入りやすいが、千冬や楯無のサポート無しで個人がこれまでのデータを入手するのは容易ではない。

 

 

 

 

 

「さて、目の前の問題ですが。まず、密漁船の乗組員から事情聴取は出来ましたか?」

「ああ。なんでも、漁業組合からの通達を聞いたは良いが、ISによる封鎖には引っ掛からなかったらしい」

「………はい?」

「監視に出ていたISは5機。それであの空域を封鎖していたんだ。いくらハイパーセンサーがあるとはいえ最新型3機が戦闘するだけの範囲を完璧にカバーする事は量産型には出来ん。量産型では福音にも紅椿にも追い付けないからな。封鎖エリアを広げるしかなかろう。それに聞けば封鎖が完了した時にはすでにエリアに入ってしまっていたらしい」

「成程。だから一夏も戦闘中に気付いたと」

「そういう事だ」

 

 

 

 

 

新華は納得の顔を見せ次の話題に移る。

 

 

 

 

 

『それで、出撃は何時に?』

「今が4時15分なんで、4時20分には。ただ………」

『ただ?』

「なんでしょうかね。けしかけたとはいえ予定を決定した直後に、その予定を乱されると流石にイラッ✩ ってきますよね」

『? 何を「織斑先生!」…何があったんですか?』

「どうした」

「た、たった今、織斑君と更識さんを覗いた専用機持ち全員が、福音の方向へ飛び出して行きました!」

「あ、青木君…!」

『簪ちゃん?』

「あ、あれ…? お、お姉ちゃん?」

「簪さん。バカ共が福音に敵討ちに行ったんだろ?」

「え、あ、うん…」

 

 

 

 

 

報告を聞いても簪が慌てて入ってきたのを見ても、新華は慌てなかった。ただ、肩を竦めて

 

 

 

 

 

「はぁ…ヤレヤレ。尻拭いするこっちの身にもなれよあのガキども」

 

 

 

 

 

首を振るだけだった。だがその顔には少なからず喜びの感情があった。

 

 

 

 

 

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---side ヒロインズ

 

 

 

 

 

時は20分ほど少し遡る。新華が何度目かの様子見で箒と一夏を見ていた。

 

 

 

 

 

「………起きないか」

「………」

「…1つ、言わせて貰うとだ。あの時一夏は箒が言う通り福音を落とすべきだった」

「…!」

「人としてでの視点なら一夏の行動の方が正しい。それは認めるし、本来なら褒められるべき事である」

「………」

「だが、お前らがしていたのは実戦、命のやり取りだ。たとえ犯罪者だろうが一般人だろうが、目の前の敵を倒さねば守る行動が全て無駄に終わる。今回の場合は俺が間に合わなければ密漁船は撃沈され乗組員は全滅。下手をすると箒も死んでいたかもしれんな」

「…っ!」キッ

 

 

 

 

 

新華の言葉で箒は下からそんなことは無いと新華を睨み上げるが、新華の無表情な顔を見てその勢いも無くなる。

 

 

 

 

 

「現場は常に冷静な判断を求められる。それに加え個人の感情を優先することは御法度だ。何故かわかるか?」

「………ぅ」

「個人の感情1つで全てが台無しになるからだ。今回、一夏は個人の感情、『相手が誰であろうとその命を守りたい』という物だ。先程も言ったがこの感情自体は忌避されない。むしろ褒められる物。だが実際にソレを優先した結果はどうだ? 俺が居なければ、作戦失敗ってだけじゃ無いのが分かるか?」

「………」

 

 

 

 

 

箒は俯き反応しない。新華の顔は今度は悲しみに染まる。

 

 

 

 

 

「…俺が行くべきだったな。俺とは違い平和な日常に居られたお前らを、こっち側に来させない為に。手が血で染まり傷つくのは俺くらいでよかったのに」

「!」

「…あと20分もすれば情報が集まり作戦が決定され俺が行く事になるだろう。俺は1時間程前に政府から臨時の指揮権を与えられた」

「!?」

「そして作戦は、俺の単独による福音の撃墜。更に言うと、福音の搭乗者の生死は問われていない」

「………」

「…今までの経験から言わせてもらう。俺は手加減が出来ずに搭乗者を殺す事になるだろう。…分かるか? 一夏の独断行動は犯罪者を生かし罪無き1人の軍人を殺す結果になったんだ」

「………っ!」

「………もし一夏の行動を支持し俺の言う事ばかりじゃないと言うのなら、もう1度立って、今度こそ福音を、搭乗者含めて丸ごと救って(・・・)こい」

「………」

「…20分だ。20分で決めろ。一夏の行動が善であり正しいと証明するか、俺の言う事が正しいと見送るか」

「………私は」

 

 

 

 

 

新華は部屋から出ていった。箒の頭はグチャグチャになっていた。

 

 

 

 

 

「(新華のいう事も理解出来る…だが一夏の行動は間違っていないと思う…。だが、それが何だと言うのだ。私が姉さんから紅椿を貰い浮かれなければ一夏は…刀を持つ意味を忘れ、新華の言葉を聞かず、一夏と飛ぶ事に浮かれた報いだというのか…)」

 

 

 

 

 

本来剣道と言うものは己の体と剣の技術を鍛えるのと同時に、健全な心を育むものだ。しかし箒は自覚している通り浮かれ、一夏が撃墜される原因をつくった。新華の言うとおり、あの時は箒の言う事の方が正しかっただろう。だが箒が浮かれず一夏と意思の疎通をしっかりしていればここまで酷くならなかったのも事実。

 

 

 

 

 

「(私はもう…ISに乗る資格は…)」

「あーあー、わっかりやすいわねぇ」

 

 

 

 

 

しばらくの間、箒が俯いていた所に鈴が来て言葉を発した。

 

 

 

 

 

「あのさぁ、一夏がこうなったのって、アンタのせいなんでしょ?」

「………」

「で、落ち込んでますってポーズ? …っざっけんじゃないわよ!」ガシッ

「………っ」

「やるべきことがあるでしょうが! 今! 戦わなくて! どうすんのよ!」

「わ、私は…もう、ISは………使わない…」

「っ!」バシッ

 

 

 

 

 

箒の胸ぐらを掴み、箒の発言を聞いた鈴は我慢が出来ずに箒を叩いた。その顔には怒りがありありと浮かんでいる。

 

 

 

 

 

「甘ったれてんじゃないわよ…! 専用機持ちってのはね、そんなわがままが許されるもんじゃないのよ。それともアンタは………戦うべき時に戦えない臆病者(・・・)か」

「っ!  ど、どうしろと言うのだ! もう敵の居場所も分からない! あと10分もすれば新華が出撃してしまうんだ! だが私だって戦えるなら戦う!」

「………やっとやる気になったわね。あーあ、めんどくさかった」

「んなっ!?」

「場所なら分かるわ。今ラウラが…」

「出たぞ。ここから30km程離れた無人島に目標を確認した。ステルスモードに入ってはいたが光学迷彩までは搭載されていないようだ。衛星による目視で確認出来た」

「ボーデヴィッヒ…」

 

 

 

 

 

ふすまの向こうからラウラが入って来た。端末を持ち確信を持った表情をしたラウラを見て鈴はニヤリと笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

「さすがドイツ軍特殊部隊。やるわね」

「ふん…お前の方はどうなんだ。準備は出来ているのか」

「とうぜん。甲龍の攻撃特化パッケージはインストール済よ。セシリアとシャルロットは…」

「たった今完了しましたわ」

「準備オッケーだよ。いつでも行ける」

「お、お前たち…」

 

 

 

 

 

セシリアとシャルルもやって来て簪と新華以外の専用機持ちが全員集まる。彼女らに共通している事は、慕う一夏を倒した福音に対する敵意。

 

 

 

 

 

「更識は行かないって言ってたけど、アンタはどうするの?」

「わ、私は………、戦う。戦って、今度こそ、勝ってみせる! 一夏の思いを、守ってみせる!」

「決まりね。じゃあ作戦会議よ。もう新華が出るまで時間も無いんでしょ?」

「ああ!」

 

 

 

 

 

箒は鈴たちと共に歩き出す。その背中は先程までの弱さは無く強さがあった。

 

 

 

 

 

「(新華、これでいいんだな? お前が私に言った言葉には少なからず私に対する期待があった。なら、その期待に答えるさ。そして)」

 

 

 

 

 

箒は部屋の外に出る前に振り返る。未だに目を覚まさない一夏に向けて

 

 

 

 

 

「行ってくる、一夏」

 

 

 

 

 

---side out

 

 

 

 

 

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「んで、流石に紅椿とブルーティアーズの最高速度に他の機体は追い付けないんで速度は落ちますね。ま、様子見ですかね」

「な、何を言ってるんですか!? すぐにでも止めないと!」

「山田先生、アイツ等が聞くと思いますか? それに、通信、入りますか?」

「え!? ………あ! は、入りません!」

「ほら。まぁ幾つか思う所もありますし、取り敢えず行きますか」

「現場にか?」

「いえ。白い騎士の所へ。もうそろそろ起きる気がしましてね」

「何?」

 

 

 

 

 

新華は画面から目を離し部屋の外に体を向ける。

 

 

 

 

 

「簪さんも来る? 多分間に合うよ」

「…何に…?」

「主人公の覚醒シーンって所に」

「………青木、何故そんな事が分かる?」

「なんでしょうかね………勘、と言いますか、脳量子波の乱れと言いますか。まぁ、要は自分でもよく分かってないんですけど」

「…?」

「あいつなら、主人公らしくこのタイミングで何か起きてもおかしくないと思うんですよ。ほら、一夏って昔からそうじゃないですか。強気をくじき弱きを助けってのを地で行ってますし、ピンチの時でも何かしらのフラグが回収されて無事でいたり」

「だが、それとこれとは…」

「どうでしょうかね? なんせ一夏は予想出来ない所で、良い意味で驚かせてくれますから。そのせいで落ちる女子も大量発生するんですが………」

 

 

 

 

 

新華は明るい笑みで

 

 

 

 

 

「あいつにとっての仲間(・・)がピンチなのに寝てるのを許容できる程、一夏は出来ちゃいません。何かしらのイベントが起きてまた立ち上がりますよ。それに、騎士(一夏)を導くのは天使(自分)の役目ですし」

 

 

 

 

 

新華は簪を誘い一夏が寝る部屋に向かった。

 

 

 

 

 

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---side 一夏

 

 

 

 

 

今一夏は不思議な空間にいた。一面浅い水辺で、空の青さと雲が水面に映っている。それ以外に有るのは1本の木と空に映る月だけだった。

一夏は周りを見渡す。木以外に何も無いが不思議と不安は無い。

 

 

 

 

 

「………」

 

 

 

 

 

波の音だけが響く。ふと一夏が見ると、いつの間にか1人の少女が立っていた。黒髪ロングで真っ白なワンピースを着て、麦わら帽子をかぶっていた。

 

 

 

 

 

「………君は」

「何故力を求めるのですか?」

「え?」

「アナタの近くには、アナタを守ってくれる人達がいる。アナタが戦わなくても守ってくれる人が居るのに」

「それって…千冬姉や新華の事か?」

「はい」

「それは………」

 

 

 

 

 

一夏が答えようとしたとき、強い風が吹き何処からか緑色に輝く羽が月に向かい飛ぶ。一夏がその羽を見送った後少女を見ると、少女が居た所にその姿は無かった。

 

 

 

 

 

「あ、あれ?」

「力を欲しますか…?」

「え…」

 

 

 

 

 

一夏が声がした後ろを向くと、白く輝く甲冑を身に付け、大剣を自らの目の前に突き立てその上に両手を預けている女性がいた。先程の少女と同じ黒い長髪を持ち、目を覆うガードに隠され顔は下半分しか見えなかった。

 

 

 

 

 

「力を欲しますか…? なんの為に…?」

「それは、さっきの問いに答えろってことか?」

「………」

「そうだなぁ…ダチを、仲間を守る為かなぁ」

「仲間を…」

「そうさ。なんていうか、世界って色々戦わないといけないだろ? 今までは千冬姉や新華が守ってくれたみたいだけど、それだけじゃ駄目だと思うんだ」

「………」

「腕力とか、そういう強さも必要だけどさ。色んな事で不条理とか出た時に、いつも千冬姉や新華がいる訳じゃないんだ。そうでなくとも、俺は仲間を守りたい。新華だって人間なんだし、頼りすぎるのは良くないだろ?」

「………」

「だからさ。俺は自分の大切な物を守る為に、千冬姉や新華だって守れる位に強くなりたい。新華だって人間なんだ。神様みたいに完璧じゃない」

 

 

 

 

 

一夏は以前、自分と弾の前で泣き出しそうな新華の姿が思い出される。あの姿を見て全てを頼ろうとは思えない。むしろ

 

 

 

 

 

「だから、俺は強くなりたいんだ。仲間を守る為に。新華を救う為に」

「そう…」

「なら、行かなきゃね」

「えっ?」

 

 

 

 

 

後ろを向くと先程の少女が居た。

 

 

 

 

 

「ほら、ね?」

「ああ!」

 

 

 

 

 

そして一夏の視界が真っ白になるその中で

 

 

 

 

 

「(ああ…そういえばあの人、誰かに似てたなぁ…白い、騎士の人)」

 

 

 

 

 

その美しい世界から一夏の姿が消えた。

 

 

 

 

 

---side out

 

 

 

 

 

---side サヤカ

 

 

 

 

 

一夏が消えた直後、月から1つの緑色に輝く羽が舞い降りた。その羽は水面に着いた途端、光を放ち銀色の女性、サヤカになった。

 

 

 

 

 

『彼、行っちゃったね』

「仲間を守る為に…」

『うん。ご主人様が言っていた通り、どこまでも真っ直ぐだった』

 

 

 

 

 

不思議で美しい空間はサヤカの言葉を響かせる。白の彼女と会話が出来る程に。

 

 

 

 

 

『真っ直ぐで…なにも分かっていなかった』

「…?」

『ご主人様がどれだけ不条理を経験したか。この世界がどれだけ人類に優しいか。人がどれだけ欲深いか』

「………そうなの?」

『…でも、あなた達は知らなくてもいいかもしれない。ご主人様が願う通り、何も知らないままの方が笑顔でいられるかもしれない…』

「………」

『でも、私はそうは思わない。ご主人様は既に疲れきってる。誰かが癒してあげないとどうなるか分からない。でもご主人様を救えるのは、隣に立てるのは、本当の理解者だけ。ご主人様の全部を知った上で一緒に居たいと思ってくれる人だけ』

「…それが、あなた?」

『ううん。私じゃ癒す事は出来ない。まだまだ知らない、知りたい事が沢山ある私じゃ…。理解者として横に立てるのはあなたのご主人様を含めた皆だけ。だから、お願い』

 

 

 

 

 

サヤカは再び羽になり月へと飛んでいく。

 

 

 

 

 

『私のご主人様を癒せる人達を、出来る限り、守ってあげて。それまでご主人様の心は、私が守るから』

 

 

 

 

 

---side out

 

 

 

 

 

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新華は寝ていた一夏が起き上がるのを簪と共に見ていた。簪は信じられないと言った顔で一夏を見つめる。一夏が起きる直前の一瞬、サヤカが居なくなった気がした新華だが、気のせいかサヤカは腰にクアンタとしてぶら下がったままだった。

 

 

 

 

 

「よお、起きたか一夏」

「あ…新華か」

「どうだ? 調子は」

「ああ…なんだか、軽い気がする」

「うそ………」

「簪さん。言っただろ? これが一夏なんだよ。で? 一夏、行くか?」

 

 

 

 

 

簪の肩を優しく叩いた後、一夏に笑みを浮かべ聞く新華。一夏も新華が何を言いたいか理解し笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

「…ああ! 今度こそ、勝つ!」

「よし。ならさっさと行こう。簪さんはどうする?」

「………」

「行かないのであれば帰りを待っててもらう事になるが」

「…私も行く。待っているなんて、出来ない…!」

「いい返事だ! よし、作戦を伝える! 織斑 一夏、更識 簪の両名は私青木 新華の機体を利用し先行(・・)している専用機持ち達と協力し、銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)を撃墜せよ! いいか! 全員、福音のパイロット含めて全員で帰投するぞ!」

「お、おうっ!」

「は、はいっ!」

 

 

 

 

 

新華は声を上げ2人からの返事を聞くと、部屋の外の庭に跳びαユニット装備状態のクアンタを展開する。一夏も簪も己のISを展開しαユニットに捕まる。しかし一夏の白式の姿は大きく変わっていた。

 

 

 

 

 

「織斑君…、その機体は…」

「ああ。白式が第2形態移行(セカンド・シフト)したらしい。これで!」

「………準備はいいな、2人共」

「ああ」

「うん」

『青木? どうした』

「千冬さん。俺の勘は当たってたようです。これより青木 新華、織斑 一夏、更識 簪の3名で戦闘空域へ直行、先行(・・)している専用機持ち達と合流して福音の撃墜に当たります」

『え!? 先行とか、どういう意味ですか!?』

「話は後で。それより、サポートを頼みます」

『あ、青木君!?』

「………行くぞ。青木 新華、EvolveクアンタVer.α」

「えっと、織斑 一夏、白式(びゃくしき)

「…さ、更識 簪、打鉄弐式」

「「「行きます!」」」

 

 

 

 

 

プロペラントのスラスターが唸り3人を乗せ上空へと飛び立つ。

 

 

 

 

 

「行くぞクアンタ。また付き合ってもらう」

『------』ご主人様の心のままに

「………ありがとう」

 

 

 

 

 

緑色の羽の様に軽い粒子を放ちクアンタは空を翔る。1つの光となって。

 

 

 

 

 

 




フラグ立ってますが、すぐに回収します。でないと折角の戦闘シーンがあっさり終わってしまうので。
新華がヒロイン達が飛び出して喜んでいたのは、箒がちゃんと立ち直り自分の信頼が裏切られなかった事への喜びです。
あと、鈴が言っていた専用機持ちがどうのというのは、お前が言うなって感じですよね。どの口が言うんだか。
あと、箒のセリフをシンっぽくしてみましたが、合ってますかね…?

やっぱ書いててアレですが、新華は愛されてますよね。本当に報われてほしい…。

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