IS~疾走する思春期の転生者~   作:大2病ガノタ

62 / 173
60話目。
サクッっと行きましょう。


ファーストコンタクト

 

 

 

 

 

午前11時半。快晴の空が広がる中へ、砂浜から飛び立ち突っ切る紅と白のISを新華は、最終調整とGN粒子のチャージをしながら見ていた。

 

 

 

 

 

「行ったか。あと少しで作業が終わるから、終わり次第俺も向かおう」

 

 

 

 

 

コンテナに組み上げられたαユニットにクアンタを展開して乗っていた。現在、ハロを2機共収納して各武装とユニットの調整をしている。コンテナに固定されたままなので、新華の視線は高い。

一夏と箒の出撃を確認したのだろう、簪とシャルルが緊張した顔で新華の足元に来た。

 

 

 

 

 

「新華。一夏達行ったよ」

「…ここから見えた」

「大丈夫…かな。心配だよ」

「…さてな」

 

 

 

 

 

新華は話していても手は止めない。そして新華の目がクアンタのツインアイの下で光ると、アームユニットが動き動作を確認する。

 

 

 

 

 

「わぁ…動きが滑らか…」

「しかも可動範囲も広いみたい。新華、どうやって動かしているの?」

「………脳量子波だ。ファングと同じと考えろ」

「へぇー、脳量子波って便利だね。じゃあラウラも出来るの?」

「………どうだかな。設定を変えれば出来ない事は無いだろう」

「…凄いね。それでさ、あの………」

「………?」

「その、あの、お、大っきい、突き出した部分は、何の意味が?」///

「…? …ああ。Iフィールド発生器だ」

「Iフィールド?」

「束さんも気になるなぁ」

「あっ、篠ノ之博士………」

 

 

 

 

 

草むらから兎耳をひょっこり覗かせ束が出てきた。束は簪とシャルルを無視して新華を見上げていた。

 

 

 

 

 

「しんくんはいつも束さんが思いつかない事に気付いたり形にするからね。今回コンテナを運んでくれって言われた時から期待してたんだよ。それでさ、その『Iフィールド』とやらは一体何なんだい?」

「………簡単に言うと、理論上ビーム系の射撃を無効化する機能だ。ある粒子を使う事でビームを弾く。だがサーベルに耐えるだけの強度は無く防げるのは射撃のみ」

「へぇー…でもさ、ビーム兵器を持ってる機体って少ないよね? 装備した意味あるの?」

「…保険の意味がある。使わなければそれで良し。何分、大きいユニットだから防御が必要だ」

「ふーん…じゃあ特殊な粒子って?」

「………自分で考えろ。天才なんだろ」

「む! そう言われると知りたくなっちゃうよー!」

 

 

 

 

 

束が五月蝿いが簪もシャルルも新華の言っている事は理解出来た。しかし先程言っていた『クアンタは束が開発したものではない』というのと、『束が思いつかない事を形にする』という言葉、そして今の新華と束のやり取り。2人共、新華が遠く感じられた。

因みに束が思い付かなかった物の代表例は、『ヒートスコップ』。

 

 

 

 

 

 

「………よし。同期とGN粒子チャージ完了。出撃可能」

 

 

 

 

 

新華はクアンタの通信機能で千冬達に連絡を入れる。

 

 

 

 

 

「千冬さん。出撃準備完了しました。これより出撃するので一夏達と目標の座標をください」

『そうか。了解した。データはすぐに送る。織斑達は既に戦闘に入っているが未だ撃墜には至っていない。苦戦しているようだから加勢しろ』

「Jud. 簪さん、シャルル、う詐欺、離れてろ」

「わかった…気を付けて」

「うん、いってらっしゃい」

「なんで束さんだけ名前じゃないのー!?」

 

 

 

 

 

束の講義を無視して新華はハロ兄を出しコンテナを収納、プロペラントのスラスターを起動させ浮く。

 

 

 

 

 

「Evolveクアンタ、青木 新華、出る」

 

 

 

 

 

ゆっくりと上昇、長いプロペラントを振り回し方向転換、体を傾けスラスターを前回にして一気に加速する。

 

 

 

 

 

『急いでください! 織斑君も篠ノ之さんもエネルギーがどんどん減っています!』

「Jud. 直線コースで向かいます。付近の教員にも連絡を」

 

 

 

 

 

αユニットの腕部分をたたみ空気抵抗を減らし加速。更にエゴ・アームズ『ストーリーズ・イレギュラー』を展開して内観還元力場で更に加速を促す。その速度は紅椿のそれと同等か上回っていた。

 

 

 

 

 

---

-----------

-----------------------

 

 

 

 

 

---side 一夏&箒

 

 

 

 

 

『今青木君がそちらに向かいました! データを送ります!』

「はいっ! っく!」

「La---」

「こうも弾幕が濃いと…! ええい! 引いていられるか! 一夏!」

「おう!」

 

 

 

 

 

銀の福音と接触後、零落白夜の1撃は躱され交戦に入った。必殺の1撃を躱された後福音はその背に装備した翼型のマルチスラスターで方向転換をして、脅威の機動性を2人に見せつけ、同じく翼に付いた砲口を向けて光弾を次々と発射。機動性と火力を惜しみなく使われ攻撃は当たらずエネルギーをいたずらに消費するだけだった。

 

 

 

 

 

「おおお!」

「いけぇ!」

「La---」

 

 

 

 

 

何度も突撃と回避を繰り返す。箒も紅椿の機能を使い攻撃するが全て避けられ逆に打撃によるカウンターを返されてしまう。

 

 

 

 

 

「チィ! たあアアアア!」

 

 

 

 

 

箒が紅椿の武装を全て使い2刀流で怒涛の斬撃を放つ。これに福音は後退を強いられた。その際隙が出来る。しかし福音も攪乱の為か光弾を拡散させて放つ。しかし出来た隙を埋めるには弾幕は足りなかった。

 

 

 

 

 

「一夏ぁ!」

「うおおおお!」

 

 

 

 

 

その隙を逃さない様にと箒は一夏に叫ぶ。そして一夏は最大加速で飛ぶ。

………下方に。零落白夜で海面に落ちる弾幕の幾つかを消す。

 

 

 

 

 

「何をしている一夏!?」

「船が居るんだ! 海上は先生方が封鎖していたはずなのに…! 密漁船が!」

「馬鹿者! 犯罪者などをかばって…! そんな奴等は!」

「箒!」

「!?」

「箒、そんな、そんな寂しい事は言うなよ。力を手にしたら、弱い奴の事が見えなくなるなんて………らしくないじゃないか。箒らしくないぜ」

「わ、私は………」

『馬鹿野郎! 戦場で止まるな! !! 2人共避けろおおおお!』

「「!」」

 

 

 

 

 

新華の叫びが響く。話している間に福音は箒から距離を取り光弾を放つ。2人共防御するが一夏はエネルギーが限界に達し直撃。箒もマトモに直撃し髪を結っていたリボンが焼き切れる。

 

 

 

 

 

「ぐああああああ!」

「一夏ぁ!」

『落とさん…!』

 

 

 

 

 

新華のクアンタが戦闘空域外からハンドユニットを射出、全力で飛んだハンドユニットは一夏を掴み海中に落ちるのを防いだ。

 

 

 

 

 

「一夏…!」

「動け箒! 死ぬぞ!」

「くそぉ!」

「La---」

 

 

 

 

 

新華が空域に到着し戦力が増えるが攻撃の要である一夏が撃墜、箒も撃墜寸前だった。

 

 

 

 

 

---side out

 

 

 

 

 

------

----------------

-------------------------------

 

 

 

 

 

「(密漁船!? こんな時にぃ…! 戦力はほぼ俺だけ。だが一夏と箒が邪魔だ! ここは………)山田先生、織斑先生。一夏は撃墜、箒も撃墜寸前。作戦は失敗です! 撤退許可を!」

『………』

「ああ…一夏…私が…」

「くそがぁ!」

「La---」

 

 

 

 

 

新華は千冬達に連絡を入れ動きが格段に落ちた箒の腕を掴みハンドユニットが掴んでいる一夏を回収しに降下。ハンドユニットの連結をして一夏に呼びかける。

 

 

 

 

 

「一夏! 聞こえているなら返事しろ! 千冬さん! 応答を!」

「一夏ぁ! 一夏ぁ!」

「………ほ、うき…に………しん、か…? 船は………?」

「生きてるな! 船はまだ大丈夫だ!」

「よ、よかっ…た………」ガクッ

「一夏ぁ!?」

『くっ、撤退だ。作戦は中止、撤退しろ』

「そんな!? 新華ならあいつを落とせるだろう!?」

「お前らが居なければな! 荷物を持って最新の軍用ISは落とせない! こうして逃げるのが精一杯だ!」

 

 

 

 

 

左腕で掴んだ箒の叫びに叫びで返して右腕の一夏を抱えて福音から逃げる新華。クアンタのαユニットはアームユニットから有線アームビームガンを回転させ福音に弾幕を張るが躱され時間稼ぎにもならない。

 

 

 

 

 

「(どうする。流石に両手に荷物を抱えて戦闘する程俺は無謀じゃない。撤退許可も出たし何とか…!)」

 

 

 

 

 

牽制でビームを打ち続けるが福音は段々と近付いてくる。そこに新華の思考に先程の密漁船の存在が出た。

 

 

 

 

 

「(迷惑を掛けた挙句に一夏に守ってもらったんだ。文句は言わせねぇ)箒、舌噛むなよ………!」

「何…? ぐぅっ!」

 

 

 

 

 

新華は急激にAMBACを使い方向転換。弾幕を張るのを止め一気に密漁船まで飛ぶ。

 

 

 

 

 

「何をする気だ新華!?」

「黙ってろ!」

 

 

 

 

 

密漁船に到着すると同時、一夏と箒を降ろす。

 

 

 

 

 

「な、何を!?」

「船借りるぞ! 全員捕まってろ! 箒も一夏をしっかり抱えな!」

 

 

 

 

 

新華はαユニットが海水に浸かるのを承知で船の後部に手を当て、スラスターを全開にする。その無防備な姿を逃すまいと光弾を一斉に撃つ。

 

 

 

 

 

「(想定内だ!)」

 

 

 

 

 

新華の指示でクアンタの腰に付いているシールドの装甲が中間で開く様に展開し、中から福音とは違う黄色の光弾が飛び出す。

 

 

 

 

 

「こ、これは!?」

「(精度が違うんだよ!)」

 

 

 

 

 

新華の放った光弾は、福音のそれより精度が高く福音の放った光弾と衝突し爆発する。福音も驚いたようで一瞬ひるむ。

 

 

 

 

 

「(今だ!)全員捕まってろお!」

 

 

 

 

 

船が進み加速する。まるで荒波を無視するかの様に荒々しく、力強く進む。そして新華は再び光弾を発射。

 

 

 

 

 

「(行け! 胞子ビット!)」

 

 

 

 

 

今度は不規則な動きをさせ福音に向かわせる。福音は当然回避行動を取るが自身の操る光弾より精度も密度も高い攻撃で新華達から離れるしかなかった。

一定の距離を離れた所で

 

 

 

 

 

「(爆散!」)」

「!」

 

 

 

 

 

胞子ビットが全て爆発。そのまま新華は船を押して戦闘空域から離脱した。

 

 

 

 

 

----

--------------

-----------------------------

 

 

 

 

 

砂浜。新華が押してきた船は浜にうち上がり、千冬を始めとした作戦関係者が集まっていた。

 

 

 

 

 

「一夏あ! 一夏あ!」

「そ、そんな…」

「………」

 

 

 

 

 

救急班に応急処置されて旅館に運ばれて行く一夏と泣すがる箒。そして呆然と見ることしか出来ない専用機達。新華はずぶ濡れのクアンタを海中から出し、船の上で呆然としていた犯罪者達の前にクアンタを解除して降りる。

 

 

 

 

 

「………あなた方を拘束します。何故あの場所に居たのか、きっちり吐いてもらう」

 

 

 

 

 

新華は素早く乗組員を拘束、空域監視から戻ってきた教員に引き渡す。

 

 

 

 

 

「………作戦終了---」

 

 

 

 

 

被害は攻撃の要であった一夏が撃墜、最新型ISを駆った箒も撃墜寸前まで追い詰められ新華が無傷。作戦は失敗し、原因である密漁船と乗組員は確保。一夏撃墜の影響で専用機達の士気は下がった。しかし---

 

 

 

 

 

「---ミッション継続」

 

 

 

 

 

まだ終わっていない。

 

 

 

 

 

 




はい撃墜。わりと撃墜の原因は箒だと皆さん言ってますが、確かに人として一夏の行動は間違っちゃいません。しかし本物の実戦という視点で見ると一夏の行動は致命的です。
原作でもガノタが思った事なんですが
『あのままだと確実に密漁船は沈み一夏の行動は無駄になる』
ってな事になるかと。箒は密漁船を庇わず一夏を連れて帰投しそうですし、放って置かれた密漁船を福音が見逃すとは思えませんし。
それなら一夏は無視してでも福音を撃墜しておく方が正解かと。同じ撃墜でも結果に雲泥の差がありますから。作戦成功、その代わり密漁船は撃沈。作戦失敗、密漁船も撃沈。
多分原作は後者だと思うんですが、どうですか?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。