「はぁああ!」
「…っ、胴ぉぉ!」
「一本! 勝負あり!」
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そこで現在彼---青木 新華---は多くの門下生と試合をしていた。その中には一夏や、ここの師範代の娘の篠ノ之
「ふぅ、やっぱり強いな新華は」
「ああ、そうだな。私も未だに勝てる気がしない」
「お前らもいい動きするようになってきてるからな。だけどまだまだ負けねぇよ」
試合後一夏と箒と話す。一夏と新華はあれから時が経ち小学生になっていた。箒とは小学校に上がる少し前に知り合った。
一夏の姉織斑
「まあ父さんや千冬さんとまともに打ち合える数少ない人間だからな。本当に同い年かと疑いたくなる」
「それ以前に本当に人間か? 一通りここにいる全員と試合したのに息切れしてないって、どんな体力だよ」
「それなりに鍛えているからな。何があってもいいように強くならないと、いつか絶対に後悔するからな」(ボソッ)
「?」
「? お、次は俺だな。よしっ」
一瞬だけ暗い表情を宿す新華。一夏と箒はよく分からなかったが一夏の試合の順番が来たため意識をそちらに移した。
ギュッ「よし、行ってくる」
「ああ、行ってこい!」
「俺はまたいつもの所に行ってるからな」
「ああ、分かった」
一夏は試合に行き、箒はそれを見送り自分も次の試合に備え、新華はその場を後にした。
---篠ノ之道場裏手
だれも居ない、木が茂っている中にある少々広い空き地。この場所も篠ノ之道場の敷地であり人がいることは殆ど無い。
新華は普段から動きやすい様な組み合わせの私服に着替え、2本の木刀を持ち立ったまま瞑想していた。
そして目を開け、空気が張り詰める。向かいに仮想敵---前世の最後の敵の新生人類の2人---を思い浮かべ
「---------」
地面を蹴る。左手の木刀で"リング持ち"に切り掛る。"リング持ち"は回避。後ろから"湾曲刀持ち"が切りかかってくるが右手の木刀で受ける。"湾曲刀持ち"は両手の刀で斬撃を繰り出してくるが、"リング持ち"を蹴り飛ばしてその場から離れる。
「------シッ」
再び地面を蹴り"湾曲刀持ち"に一振り。瞬間移動で後ろに回りこまれ刀が降り下ろされるが、空いた左手の木刀で受け流す。
そこに"リング持ち"のリングが襲いかかるが木刀でそれぞれ受け流し、叩き落とし踏み砕く。その刹那、"湾曲刀持ち"が後ろから切りかかる------が
「------ワンパターン過ぎる------」
体をずらし木刀で一突き。"湾曲刀持ち"は空振りし、木刀が額に刺さる。そのまま木刀を振り下ろし、背後から襲いかかってきた"リング持ち"を
「------ハアァッ!」
両手の木刀で切り刻む。しかし"リング持ち"は一歩後ろに瞬間移動し時間差で残った最後のリングを投げる。飛んできたリングを弾き加速、瞬間移動をさせる間もなく切り刻む。
「------っふう、仮想敵の動きがそろそろワンパターンになってきたな。今度は別の人物でやってみるか?」
張り詰めた空気が元に戻り、新華は息を切らさずにゆっくりと
風が吹き、木々が揺れ、穏やかな時間が発生する。そこには先程の---仮想敵とはいえ---激しい戦闘を行なっていたとは思えない空間になっていた。
「………………………………」
木刀と重りを横に置き、ゆっくりとした空間で目を閉じる。
「………………………………………………平和だ。この穏やかな時間をどれだけ望んでいたか」
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---何もかもが曖昧な空間
「起きろ青木 新華」
「………!? 何であんたが? また会うとは思わなかったぞ」
閻魔に起こされ、再会したことに戸惑う新華。閻魔は5年以上の歳月が経ったにもかかわらず、何も変わらない姿でそこに存在した。
「いや、それ以前にここはどこです? 以前の白い空間じゃないが」
「あそこは神か死者しか存在出来ない場所だったからな。ここはお前の夢の中だ」
「………また、あっさりとんでもない事しますね。しかし大丈夫なんですか? 神クラスの存在がこうも簡単に世界に介入しても」
「そこは色々あってな、気にしなくていい。今日は用があって来た」
「…用、ですか? 閻魔様がわざわざ会いに来る用ってなんですか?」
夢の中と言われても動じない新華。前世で精神に依存するP・V・Fで戦っていたからか、人間の曖昧な部分を利用する、される事に耐性が付いていた。それよりも、そのあとに続いた『閻魔の用事』に意識が向いた。
「あの後やはり最高神様たちに言われてな、お前、P・V・Fは正常に起動したか?」
「えぇ、問題なく」
「もしそれを使って騒ぎになったらお前の願いである『普通の人生』と『暖かい家族』が崩壊しかねんからと言うことで、カモフラージュ可能なチートISを創った。それの引渡しをな」
「………………」
新華が固まる。閻魔が言ったことは『P・V・Fのカモフラージュとして
「………………マジ、ですか? でも、それこそ俺の願いの『普通の人生』からかけ離れるのですが」
「そこについても、話さなければいけない事がある」
「…なんでしょうか?」
まだなにかあんのか………と思いながら次の言葉を待つ新華。夢の中のハズなのに休むどころか疲れてきていた。
「お前が要求した『部下の罰』と『暖かい家族』はなんとかなった。『サードプロメテウスファイア』に繋がれていた
「………そうですか…よかった、一兎」
戦友であり、数少ない友人であった一兎が無事に生きられる事に安堵する新華。
「ここからが本題なんだが、『普通の人生』は私ではどうにもならん」
「…どうゆうことですか?」
「我々は世界に介入する事は出来ても人同士の関係や心、運命までは操作することが出来ない。そもそも神達ですらその分野はどうにも出来ないのだ。『普通の人生』を送りたいのなら、それ相応の努力をしなければならない。こちらでその土壌は創ってやれたが、それではP・V・Fが邪魔になってくる。そこで」
「そのP・V・FをカモフラージュするためのISが必要になったと」
「その通り。ISには都合のいい『待機形態』がある。それを日常に違和感の無い物にしてしまえば、あとはお前次第だ」
「………」
新華にとって疲れた心を癒す『普通の人生』は、P・V・Fが必要のない暮らしだった。この先どんなことがあっても後悔しないように体を鍛えてる新華にとって、P・V・Fは最後の手段として無意識に頭の中にあった。もしP・V・Fの存在が誰かに知られたら、確実に
故にカモフラージュとしてのISは有難いものがあった。それに、バレたときのリスクは、そのISが有る、無いでは雲泥の差があった。
「………分かりました。自分の日常は自分の手で築きます。そのISも有難く頂きます」
「そうしてくれ。お前の体が起きた時には、腰の辺を確認しておけ。ではな」
「はい、有難うございました」
消える閻魔に頭を下げ、夢に溶け込む新華。
そして---------
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---道場裏の空き地
「…んっ、ふぁああ」
木に寄りかかって寝ていた新華が目を覚ます。
「今、何時だ?」(まだ日は高いし、道場から竹刀の音がしているから、そんなに時間は経ってない…か)
ゆっくり立ち上がり、延びをして手を腰にやる。すると、ひどく懐かしい違和感を感じた。
「ん? これは…」
そこには、新華が最初に生きた世界で中学から大学まで使い古したウォークマンがぶら下がっていた。
「これが、例のISの待機形態? 何故これにしたんだ? ………………生前の曲全部入ってるし。」
首を傾げながら操作する新華。
「………まぁ、詳しくは帰ってからにするか。そろそろ道場に戻らないとな」
………………帰ってから再び硬直することを、彼はまだ知らない………
「ガンダァァァァァァァァァァァァァァムッ!!!!!!!!!!!!」
篠ノ之家が出ました。主人公は既にチートwww 箒さんは一夏に惚れてますが、学校では一夏と主人公で女子が半々に分かれます。次回白騎士事件を出したいと思ってます