新華がフランスに来て7日目のの朝。新華はフランス国際空港に居た。傍にはデュノア一家も居た。
「いやー、忙しかったけどなんだかんだで有意義な1週間でした。やりたい事もやり終えましたし、概ね満足です」
「そうかい? それは良かった」
「開発も進んでいるみたいだし、経営もこれで落ち着くでしょう。感謝してもしきれないわね」
「シャルロットの事ももう安心出来るし、本当に、ありがとうね」
「いえいえ。こうしてお土産も貰った事ですし、要望も受け入れてもらえたみたいなんでお礼は別にいいですよ」
「ハロッ、ハロッ」
新華は帰りの飛行機待の搭乗開始待ちで、デュノア一家はその新華の見送りである。新華の近くの席にはお土産のお菓子が並んでいた。
「これだけあればお土産としては十分ですね。なんとかレポートの方は帰りながらで出来そうですし」
「オミヤゲ、オミヤゲ、ジュブン、ジュウブン」
「まだ搭乗まで時間が掛かるみたいだし、少し話でもしないかい?」
「そうですね。いいですよ」
「そうだなぁ…君の親は…」
他愛の無い話をして時間を潰していく。新華の両親の話に始まり学園生活や一夏の話、ハロの事や技術的な話など内容は様々だった。
「あ、もう搭乗時間になっちゃいましたね」
「おや、本当だな。この時間も終わりか…」
「これが今世の別れって訳じゃ無いんですから。また会えますよ」
「激動の1週間だったわね…」
この1週間を振り返ると、おかしなくらいに密度が濃かった。デュノア家はしみじみしているのに対して新華はゲンナリしていた。
「もうこんな面倒事で来るんじゃなくて、観光とかでまた来たいですね。ゆっくり出来ませんでしたから」
「そうみたいだね。今度は、シャルロットと一夏君と来るのもいいんじゃないかい?」
「あ、それいいですね。ただいつになるか分かりませんが」
「いつでもいいさ。今度来た時は、もっと話をしてみたいな」
「日本のお土産でも持参しますよ」
「楽しみにしておくさ」
新華は会話を区切り荷物を持ちハロを連れ搭乗口に向かう。
「あ、そうだ青木君」
「なんですか?」
「これを、娘に渡してくれないか?」
「これって…USB? 何でまた」
「家族からのメッセージって所かな…今更だが父親らしい事を出来なかったからね。少しでも出来る事をしようと思って」
「そうですか。分かりました。責任を持ってシャルルに渡します」
「頼んだよ」
「また来てね」
「シャルロットによろしくね」
「はい。では、さようなら」
「マタナ、マタナ」
搭乗口に消えて行く新華を見送ったデュノア家はある会話をした。
「行ってしまったな…」
「そうね…『蒼天使』抜きでも欲しい人材だったわね。それに、普通の会話をしていた時はまるで息子が出来たみたいだったわね」
「もし…シャルロットが彼と結ばれれば、本当に息子になるのに」
「だが、それはそれだ。今私達が言っても本人達次第だ。それにシャルロットは織斑 一夏君に夢中という話じゃないか。無理に期待はしない方がいいさ」
「でも本当に惜しいわ。あの情報網に技術力。そして大胆さに人の良さ。味方となるとこれ以上に安心出来る人はそうそう居ないわね」
「そうだな。この1週間で好印象を持ってくれればいいのだが…」
「…期待出来そうにないわね」
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新華が帰国しIS学園に帰った頃には既に日は落ち夜になっていた。
*日本とフランスの時差はだいたい7時間で日本の方が進んでます。
1度寮に戻ると気付いた生徒から続々と集まってきた。
「あ! 青木君! 久しぶり!」
「1週間もどこに行ってたの?」
「ただいまーってちょ、離れて! 今手持ちがいっぱいだから。疲れたし部屋に行かせて」
「タダイマ、タダイマ」
騒ぎを聞きつけて簪と一夏を始めとしたメンバーが集まってきた。
「新華! 1週間も何処に行ってたんだよ!」
「ただいま。ちょっとな。おっと、後で皆にお土産渡すから1階ロビーに集合なー」
「お土産…?」
「そう。あ、そうそう簪さん、会長どこに居るか分かる? 帰国報告しなきゃなんないんだけど」
「「「「「「帰国ぅ!?」」」」」」
「五月蝿い。ああでもこのノリ、変に安心するなぁ~」
「アンシン、アンシン」
「うん、まだ校舎で仕事していると思う…」
「なんかね~あおきーのせいで仕事が増えたーって怒ってたよ~」
「あー…そりゃそうか。結構無茶したしな。早めに行った方がいいかな? 取り敢えず部屋に荷物置いてこなきゃな」
「ハロハロ」
その後制服に着替えロビーでお土産を広げた。
「おおー! お菓子だー!」
「やだ、コレ英語? 高そう…」
「あ、あれ? これって…」
「シャルル? どうかしたのか?」
「あ、うん。これフランス語だよ。新華! フランス行ってきたの?」
「
「僕に?」
「ああ。コレ」
「これは…USB?」
「そ。シャルルの親父さんから」
「え!?」
「新華、シャルルの親父さんに会ったのか!?」
「その話は後で。これから会長のトコ行かなきゃいけねえから明日な」
シャルルにUSBを渡し新華はハロと共に寮を出た。一夏とシャルルに話を聞いていた簪を始めとする数人の女子は呆然としていた。
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校舎に着き生徒会室へと向かった新華。部屋に近づくと簪が言っていた通り仕事をしているのだろう、明かりが扉から零れていた。
疲れているのか、明かりと共に零れている張り詰めた空気に気付かず新華は扉を開けた。
「ちわー。青木 新華ただいま帰国し-----」
「………」
「………」
「………ぅぁ」
「ハ、ハロ~」
部屋に入った途端、重い空気が頬を撫でる。一筋汗が流れた所で楯無が書類から顔を上げ新華に視線を向けた。その瞳には何も映っていなかった。
「………あらあら新華君じゃない。1週間もどこほっつき歩いていたのかしら?」
「え、ええと、申請した通りフランスの方に。女性権利団体を潰してシャルルの問題を解決してきました」
「そう。ええ、結果としてはそうね。申請理由はちゃんと達成してきたみたいでお姉さん嬉しいわ」
「そ、それはどうも…」
楯無はおもむろに立ち上がり新華の方へ歩いてゆく。新華はその間動けなかった、いや楯無から溢れる怒気が逃げさせてくれなかった。新華の目の前に立つと、瞳にハッキリと怒りの感情を浮かべ新華の制服の胸ぐらを掴んだ。
「新華君、言ってたわよね? なるべく騒ぎにしたくないって。行く直前にもなるべく早く帰るって」
「え、ええ。言いましたね」
「それがどうして1週間も掛かったうえにあれだけの大きな騒ぎを起こすのよーーーーーーーーーー!?!?!?!? 御陰で私達に来る仕事が増えて終わらないじゃなーーーーーーい!!!!!!」
「す、すみませーーーーーーん!!!!!」
夜、警備員と千冬が来る程の大声が響き、千冬が来た事で新華に対する説教は更に激しくなった。
ちなみに新華が一番怖かったのは2人からの説教ではなく、まるで幽霊の様に仕事を片付け続けながら新華を時節何も言わずに見てくる虚だった。
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次の日から新華は授業だろうと関係無しに1週間程生徒会室に拉致され仕事を手伝わされ、シャルルの新華に対する態度が少し変わった。
新華、帰国しました。シャルルに渡されたUSBの中には社長からのビデオが入っていました。
次回はようやくラウライベントを書く予定です。