IS~疾走する思春期の転生者~   作:大2病ガノタ

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46話。やっぱ日常は書きにくい…


フルボッコ後

 

 

 

 

 

IS学園校舎保健室。第3アリーナの1件から1時間が過ぎていた。現在部屋に居るのは右脇腹と左太ももに包帯を巻き右頬にガーゼを張った新華、ハロ、簪、一夏、そしてベットで安静になっている鈴とセシリア。鈴とセシリアは自分達が気絶した後どうなったのか、新華の怪我の原因を1通り聞かされた。

 

 

 

 

 

「「………」」

「…鈴、セシリア。何か喋ったら?」

「シャベル、シャベル」

「別に助けてくれなくても良かったのに」

「あのまま続けていれば勝っていましたわ」

「よく言うぜ。あの状況をどうやって覆す気だったんだ」

「まあまあ。でも、2人の怪我が大した事無かったみたいで良かったぜ」

「うん。良かったね…」

「こんなの怪我の内に入らな---いたたたっ!」

「そもそもこうやって横になっている事自体無意味---つううぅっ!」

「…(馬鹿なんだろうか)」

「バカって何よ一夏! アンタの方が馬鹿じゃない!」

「一夏さんこそ大馬鹿ですわ!」

「また心読まれた!」

「顔に出てんだよ。前にも言ったろ」

 

 

 

 

 

鈴とセシリアの2人は新華程目立った傷は無かった。一夏の言う通り大した傷を負っている事も無く、寧ろ新華の方がダメージを負っていた。新華は3箇所に切り傷が出来ただけでなく右足を捻挫していた。原因はラウラと戦闘していた時に体勢を崩させる目的で放った蹴り。流石に内観還元力場で肉体が強化されていても装甲相手に全力で生身の蹴りを放てば足の方が参ってしまう。それも体勢を崩すという目的を達成出来た威力だったのだ。いくら鍛えていようとも怪我を負うのは当たり前で、寧ろ内観還元力場のお陰で捻挫で済んだと言える。

 

 

 

 

 

「好きな人に格好悪い所見られたから恥ずかしいんだよ」

「ん?」

「だな。見得張ってんのバレバレだ」

「バレバレ、バレバレ」

「なななな何を言っているのか全然分っかんないわね! こここここれだから欧州(ヨーロッパ)人って困るのよねぇっ!」//////

「べべべべ別に私はっ! そ、そういう邪推をされるといささか気分を害しますわねっ!」//////

「嘘が下手だなお前ら。そしてバレバレなのに気付かないこの一夏(ヴァカ)…」

「は? 気付かないって?」

「あはは…はい、ウーロン茶と紅茶。これ飲んで落ち着いて、ね?」

「ふ、ふん!」ゴクッゴクッ

「不本意ですが頂きましょう!」コクッコクッ

「コラコラ落ち着いて飲め。腹壊すぞ」

「コワス、コワス」

 

 

 

 

 

シャルルが自販機から買って来たドリンクを一気に飲み干す2人。そこに多くの足音が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

「まあ先生も落ち着いたら帰っていいって言われてるし、しばらく休んだら…」

「…一夏、なんだかそうも行きそうにないぞ」

「へ? …な、なんだ? この音」

「足音…?」

「アア"アア"アア"アア"アア"アア"アア"アア"アア"」

「…ハロが小刻みに跳ねる程の揺れを出してんのかよ…つぅかハロうるせぇ…」

 

 

 

 

 

そうして揺れが近付いてくるのを聞いていると勢い良く扉が文字通り吹き飛ぶ。飛んできた扉を新華は思わずフルセイバーユニットの中心部、GNカタールで串刺しにして受け止める。

 

 

 

 

 

「あっぶね!」ザンッ

「織斑君!」

「デュノア君!」

「青木君!」

「な、何だ何だ!?」

「み、皆どうしたの!?」

「「「「「「これ!」」」」」」

「なになに…」

「『今月開催する学年別トーナメントでは、より実践的な模擬戦闘を行うため、2人組で参加を必須とする。尚、ペアが出来なかった者は抽選により選ばれた生徒同士で組むものとする。締切は』」

「ああ、そこまででいいから!」

「「「「「「私と組んで!」」」」」」

「え、えっと…(ヤバい! シャルルは女の子だから…!)」

「(超他人事。俺出れねェし。というか誰かコレどうにかするの手伝って…)」

「悪いな、俺はシャルルと組むから諦めてくれ!」

「「「「「「………」」」」」」

「まぁ、そう言う事なら…」

「他の女子と組まれるよりはいいし…」

「男同士って言うのも絵になるし…ゴホんゴホん」

「ふぅ…」

「よ…いしょっと。簪さんサンキュ」

「ううん…」

「シンカ、オツカレ、シンカ、オツカレ」

 

 

 

 

 

簪の手伝いで扉を静かに立てかけた新華に女子達の視線が集中する。

 

 

 

 

 

「だったら青木君!」

「優勝目指して!」

「私と組んで!」

「はぁ…お前ら、その手に持っているプリント、最後の注釈読んでみな。代表で、一夏。お前が読め」

「えっ、俺か!? まぁいいけど…えっと、『尚、1年生の青木 新華に関しては他の生徒と実力、機体性能共に差が有りすぎるのでトーナメントには出場出来ないものとする。ただし、もし彼との戦闘を希望するのであれば、学年問わず優勝したチームに交戦権が与えられる。その場合、青木 新華は1人で戦うものとする』」

「そういう事だ。流石に俺が出たらマズイだろってな事で、優勝者の意思で戦うかどうかを決めてもらうのさ。そしてその戦闘は俺 対 タッグの1 対 2。ま、実質的な参加禁止だな」

「キンシ、キンシ」

「あー…確かに新華が出るとなると1年生で勝てる人って居ないよね…?」

「というか世界規模で千冬姉か生徒会長位じゃないか? ってかそもそも使っているISが可笑しいし」

「そこは置いといてだ。兎に角俺は参加出来ねぇ。だからアキラメロン」

「ま、まぁそれだったら…」

「よくよく考えれば組んだら優勝確定よね…」

「流石にそんな無理ゲーにはならなかったってことね」

 

 

 

 

 

それで納得したのか女子たちは保健室を後にした。しかし彼女たちの方でもペア探しは必要なのでまた戻ってきた。

 

 

 

 

 

「なら簪さんは!?」

「え、えっと…わ、私は本音と、もう組んでるから………」

「遅かったぁ!」

「チクショウ!」

 

 

 

 

 

また慌ただしく去って行くのを見送ると今度は室内のベッドから。

 

 

 

 

 

「一夏!」

「一夏さん!」

「あ、あたしと組みなさいよ! 幼馴染でしょうが!」

「いえ、クラスメイトとしてここは私と!」

「ダメですよお2人共」

「おわぁ!」

「驚きすぎだ。というかあれだけ派手にやらかして出れるわけねェだろ。山田先生、解説お願いします」

「は、はい。えっとお2人のISの状態をさっき確認しましたけど、ダメージレベルがCを超えています。当分は修復に専念していただかないと、後々重大な欠陥を生じさせますよ? ISを休ませる意味でも、トーナメントに参加は許可出来ません」

「うっ、ぐっ………! わ、わかりました………」

「不本意ですが…非常に、非っ常に! 不本意ですが! トーナメント参加は諦めます………」

「分かってくれて先生嬉しいです。ISに無理をさせるとそのツケはいつか自分で支払う事になりますからね。肝心なところでチャンスを失うのは、とても残念な事です。あなた達にはそうなって欲しくはないですからね」

「はい………」

「わかりました………」

「あと、青木君。ボーデヴィッヒさんの事なんですが…」

「あれ? もう起きましたか? というか今あの馬鹿はどこに居るんですかい?」

 

 

 

 

 

山田先生がラウラの名前を出した途端、保健室に居た全員が体を強ばらせる。しかし当事者の新華はいつも通り、あれだけブチキレていたのが嘘の様に落ち着いていた。

 

 

 

 

 

「いえ、まだ目は覚めていないのですが…織斑先生が話を聞きたいと。今ボーデヴィッヒさんは今彼女の部屋で寝かせているので…えっと」

「ああ、まだ寝てたか。で、なんですか?」

「えっと…訓練場に来いと」

「…成程ね。確かにあそこなら防音が完璧だし殆ど誰も来ないから安心だ。りょーかいです。今からですか?」

「ええ。もう既にいらっしゃると思います」

「わかりました。今から行きます。簪さん、俺そのまま部屋に戻るだろうから会長達と合流してな。ハロ、来い」

「ハロッ、ハロッ」

「え? あ、うん……新華君? そっちは窓じゃ…」

「…新華? まさかとは思うが…」

「一夏、お前の予想は正しい。と言うわけで、また明日、かな?」

「マタアシタ、マタアシタ」

「ちょ!? 新華あんたまさか…!」

「新華さん流石にそれはマズイですわよ!?」

「だいじょーぶだいじょーぶ。…ん。ここからなら訓練場まで1直線か。よしっ」

「よしじゃない! 早まるな、新華!」

「新華!? さっきまで無理していたのにそれはマズイよ!」

「あ、青木君!?」

 

 

 

 

 

その場の全員で新華の行動を止めようとするも新華はP・V・F『ストーリーズ・イレギュラー』を展開、窓辺に足を掛け

 

 

 

 

 

「アディオス!」ダンッ

「「「「「「跳んだーーーーー!?!?」」」」」」

「トゥー!」

「ヘァー! 、ヘァー!」

 

 

 

 

 

予想通り新華は跳んだ。内観還元力場で強化された足で絶妙な力加減を行い、綺麗なアーチを描く様に訓練場の前に飛んでいく。そして地面に到達するが距離と勢いのせいで地面を削り停止する。それを見ていた6人は

 

 

 

 

 

「う、うわー…ホントに跳んだわねアイツ…」

「ど、どれほどの距離を跳んだので?」

「あそこにある施設の目の前まで…大体…80m位、かな?」

「そ、そんなにですか!? 青木君、怪我しているのではなかったのでは!?」

「そ、そうだった! でも問題無く着地したっぽいぞ?」

「ん…いつも通りの新華君」

「「「「「いつも通り!?」」」」」」

 

 

 

 

 

などと騒いでいた。新華は訓練場の扉を開け今は必要ないハロをクアンタに収納する。中では千冬が棚から銃を手に取りながら待っていた。

 

 

 

 

 

「お待たせしました、千冬さん」

「…来たか。では、聞かせてもらうぞ。ボーデヴィッヒに…いや、ラウラに何をしたのかを」

「はいはい。と言ってもやった事は単純ですが」

 

 

 

 

 

千冬は銃を棚に戻し新華を見やるが、新華はその視線を無視するように、千冬が持っていた銃を手に取る。

 

 

 

 

 

「クアンタに搭載されている(・・・・・・・)武装『P・V・F』でボーデヴィッヒを直接撃った。これだけです」

「…本当にそれだけか? 絶対防御があるから軍人のラウラがあそこまでダメージを受ける事は有り得ないが」

「千冬さん、この世に『有り得ない』なんて殆ど無いんですよ? それに嘘だと思うんなら一夏達に聞いてみるんですな。見ていたわけですし」

 

 

 

 

 

新華は銃を少し分解し異常が無いか確認した後、試射台に行き銃を構える。

 

 

 

 

 

「…では障害や後遺症とはどういう事だ?」

「障害は言葉通りの意味。しばらく体が動かなくなる程度ですよ。時間が経てばその内キッチリ治るんで問題無し。後遺症もしつこいですけど無いんで心配しなくも大丈夫…ですっ!」ダンッダンッダンッ

 

 

 

 

 

新華はそのまま銃を撃つ。発砲で音が響くが新華はその表情に変わりはなく、千冬は少し顔を顰めたが微動だにしていない。

 

 

 

 

 

「流石轡木さんだ…しっかり弾補充してる。あ、すいませんね、行き成り発砲して」

「…まぁいい。だがあのP・V・Fとは何だ? あの機体に始めから(・・・・)搭載されているものだが…」

「さあ? あればっかりは分かりませんよ。セカンドシフトまでしてんのに殆ど変わらない武装ですからね」

 

 

 

 

 

などといけしゃあしゃあと嘘を吐き手に持つ銃を分解していく。1つ1つ、丁寧に。クアンタはP・V・Fのカモフラージュとして開発された為、武装欄の中に名前があった。しかし情報は全く無い。あくまで名前のみ登録されているのだから。そしてP・V・F発動時にIS反応は出ない。故にいつも気軽にP・V・Fを展開していた。

 

 

 

 

 

「お前でも分からないのか」

「誰にだって分からないことの1つや2つありますよ。取り敢えず今回の事はP・V・Fでボーデヴィッヒを3/4殺しにした。これだけです。…もういいですか? こんな事何度言っても無意味です。今日のここ(訓練場)での訓練も終わってるんで部屋戻って傷癒したいんですが」

「あ、ああ。わかった」

 

 

 

 

 

新華は銃を組み直し元の棚に戻し出口に歩いて行く。千冬はその背中に声を掛けた

 

 

 

 

 

「…新華」

「なんですか?」

「…お前が今まで子供達を保護し(・・・)研究施設を破壊してきたのは知っている。理由も聞いた。だが、何故だ? 何故そこまで子供達の未来に、可能性に固執する? 白騎士の時もそうだが、異常だぞ、お前は」

「………」

「新華?」

「…まぁ、そうっすね。確かに、異常ですよね…」

 

 

 

 

 

新華は扉に体を向けたまま、千冬に背を向けたまま立ち尽くす。

 

 

 

 

 

「…千冬さん。あなたは『親』についてどう考えています?」

「何…?」

「あ、いえ、あなた方織斑家ではなく、『親』とはどうあるべきか、って意味なんですけど」

「ふむ…親、か…」

 

 

 

 

 

新華の質問に千冬は考え込む。一夏には親の事は詮索させないように言っているが、自分はどう思っているかなど考えた事は無かった。今までたった1人の家族である一夏を守る為に忙しかった。

 

 

 

 

 

「今までそういう事は余り意識しなかったな…だが、お前のご両親が理想的だと私は考えているが」

「そう…ですよね。ええ、今の(・・)両親が一番ですよね。決して、決してあんな…」

「…? 新華、どうした」

「千冬さん。もし、もしですよ? 子供を1度捨てて蒸発した挙句、ある日突然戻ってきて子供を虐待し働かせる親が居たら…許せますか?」

「…無理だな。自分の子供を働かせて虐待するなど、人の風上にも置けん。だが、なぜ行き成りそんな話を?」

「いえ…俺はそうなった家庭を知っています。そしてその家庭の結末を」

「…そうか」

「その家庭は…子供が怒りを爆発させ両親を嬲り殺しにしたんです。ただその子供はそれ以降ずっとその事を忘れられずに生きているんです。俺は、その子達より酷い環境で生きていた子供達を見てきました…でも、その子供達にだって自分のしたいことをやる権利がある。大人の自分勝手な都合で未来を閉ざさせるなんて事をさせたくない。そんな大人たちに、生きる資格は無い…!」

「おい、新華?」

「…簡単に言えば、悲惨な目にあった友人(・・)と同じ思いをさせたくないって話です。ただ、それだけですよ…」

 

 

 

 

 

新華はそう言うと扉を開け訓練場から出ていった。残された千冬は新華の言葉を受け止め、新華の背中が普段より小さく見えたのが気になっていた。

 

 

 

 

 

「新華、お前は…どんな地獄を見てきたんだ?」

 

 

 

 

 

千冬が何気なく射撃の的を見れば、的の中心に3発分の穴が重なる様に空いていた。

 

 

 

 

 

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次の日、ラウラは確かに新華の言った通り授業に復帰していた。その瞳には今まで以上に新華に対しての怒りが宿っていた。

 

 

 

 

 

「まったく、タフな事で」

 

 

 

 

 




新華の怪我は見た目とは違い殆ど問題無しです。それよりヤバい傷を負った事ありますし。すりつぶしとか心臓1突きとか
あと石田さんごめんなさい。
ここの千冬さんはプライベートでは身内を名前で呼びます。鈴だったら凰→鈴音といった風に
新華が千冬に言った友人とは転生前の、パラベラムの世界に居た頃の新華です。詳しくは設定を見てください。

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