IS~疾走する思春期の転生者~   作:大2病ガノタ

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45話。ノリって怖いですね…


P・V・F  VS  IS

 

青木 新華は元々は怒りを爆発させ暴れるタイプである。前世で両親を殺した時や一兎が映画部に入って初めての戦闘でも当時の担任で連続殺人犯の永山(ながやま)と戦った時、永山の身勝手に怒り、永山が指揮していた銃人の1体を激情のままに蜂の巣にする程だった。

しかし『選択戦争』終結後は敵の居ない平和を満喫し子供達と触れ合い、怒りを爆発させる事は殆ど無く穏やかな性格になっていた。そして転生。

転生後も基本虐めは許さなかったが怒りを爆発させる程の事でも無く鉄拳制裁や言葉攻めで収めてきた。『白騎士・蒼天使事件』の時から隠密性が必要となり姿を隠す為、それ程怒りを膨らませても爆発はさせずに抑えてきた。それを何年も続ける内に戦闘時には無言で戦うのが癖になっていた。しかしこれはクアンタ展開時の話でありP・V・Fのみで戦う事は全く無かった。当然だろう、クアンタは元々戦う為の力ではなくパラベラムとしての能力を隠す為のカモフラージュなのだから。

しかし人とはそれ程便利に出来ている訳では無い。人は何かを我慢したり押さえつけたりすればするほど爆発した時の反動は大きい。まして新華は感情の爆発を何年も抑えてきた。それを知らなかったとはいえラウラが新華のトラウマを刺激してしまった。そしてIS学園に入学後は正体がバレているので隠蔽の必要が無くなった。

 

 

 

 

 

「ボォオオオオデヴィッヒィィィィイイイイイイイ!!!!!!」

 

 

 

 

 

つまり感情の爆発。もう抑える物が無くなり、今まで溜め込んでいた怒りは憎悪へと進化した。新華はエゴ・アームズ『ストーリーズ・イレギュラー』を起動し内観還元力場と桁外れの身体能力を最大限用いラウラとシュヴァルツェア・レーゲンに一直線に突っ込み銃身を叩きつける。

 

 

 

 

 

「なっがっ!」

 

 

 

 

 

そのあまりのスピードにラウラは反応出来なかった。銃身を叩きつけられる直前、新華が壁を蹴る所までは見えたが予測した速度を遥かに上回り、気付いたら絶対防御が発動して吹き飛ばされた。

 

 

 

 

 

「ぐっ、きさ「らああぁああ!!」何っ!?」

 

 

 

 

 

ラウラが新華に怒鳴ろうとしたが、間髪入れずに新華が跳び回転蹴りを顔面目掛け放ち再び絶対防御が発動した。

 

 

 

 

 

「ちぃ!? 一体何「おおおおおおおおお!!」」

 

 

 

 

 

ガガガガガガガガガガガガ!!

 

ラウラに喋らせる暇を与えないかの如く、新華のP・V・Fが火を吹いた。放たれたのは対構造物鉄鋼弾。絶対防御が発動し先程の戦闘とは比べ物にならないエネルギーの減り方をした。ラウラはISの機動にて回避しようと高機動で移動するが新華の銃口はラウラを捉えて離さない。どれだけ早く移動してもまるで読んでいるかの如く弾が吸い込まれていく。

これはある意味当然である。ラウラは軍人であり千冬から指導を受けたとはいえ新華を相手にするには経験が圧倒的に足りていない。かつ『生身でISに勝てない』という偏見により油断があった。それに新華はNTとイノベイターの能力を同時に持ち動きを先読み出来る。そこに経験とP・V・Fによる内観還元力場が加われば当たらない事はほぼ無い。

絶対防御とシュヴァルツェア・レーゲンの装甲に穴が空いてゆく。

 

 

 

 

 

「無様に醜態と死体を晒せええええええええええええ!!!!」

「ちいぃ!」

「この軍人としても適正としても失敗作のゴミクズがあああああああああああ!!!!」

「貴様! 言ったなぁ!」

「だったらどうしたあああああああああ!!!!」

 

 

 

 

 

ラウラはとうとう右肩にあるレールガンを生身の新華に撃った。怒りに任せた行動で正気の沙汰では無かったが、新華に馬鹿にされた怒りと発せられる圧力に全力で痛めつける事にしたのだ。しかしラウラだけではなくその場に居た全員が新華の動きに目を剥いた。

 

 

 

 

 

「おせぇんだよ、三下ぁ!!!!」

「「「「「なっ!?」」」」」

 

 

 

 

 

新華は即座にイド・アームズ『no name』を展開しトラウマシェルを展開、トラウマシェルの側面でレールガンの軌道を逸らし自分の斜め後ろに着弾させる。再び『ストーリーズ・イレギュラー』を展開して爆風を利用、ラウラに一気に接近すると同時に精神系通常弾を装填する。

ラウラは再び接近を許すが、今回は反応が出来た。手を前に突き出しAICを発動、新華を捕える。

 

 

 

 

 

「くっ、手間を掛けさせてくれる…! 先程の発言の分、存分に苦しめ!」

「テメェがなぁ!」

 

 

 

 

 

ラウラが新華にワイヤーブレードを放ち完全に拘束して締め付けようとするが、新華は『no name』を展開、トラウマシェルでAICを無効化し地に足を付け脚部に回し蹴りを放つ。

 

 

ゴッ!

 

 

「なに!? 馬鹿な!」

「喰らえええええええええええええ!!!!」

 

 

ガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!

 

 

「!? ぐあアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 

 

 

 

体勢を崩した所に新華は再び『ストーリーズ・イレギュラー』と精神系通常弾を展開、ラウラの胴に全弾叩き込んだ。これが普通の銃弾であれば絶対防御にて防がれただろう。しかしP・V・Fの精神系通常弾は何故か絶対防御を素通り、もしくは発動しない。これは今までの非合法施設破壊活動中に確認していた。今まで証拠の隠滅やIS操縦者の殺害がスムーズに出来ていたのはこの為である。

 

 

 

 

 

「…ぁがぁ…ぐぅ…」

「「「「「………」」」」」

「痛いか? 苦しいか? だがこの程度で終わると思うなよ?」

 

 

 

 

 

ラウラは精神系の攻撃を初めて食らいその理不尽さに混乱していた。発動する筈の絶対防御はエネルギーが切れた訳でもないのに発動せず、新華の放った弾は自分の体に全弾直撃した。死んだかと思ったが見ると肉体に目立った怪我は無く、その代わり感じた事が無い激痛に襲われた。その激痛のせいか体は動かず呂律も怪しい。訳が分からなかった。一夏達も絶句している。

しかしキレた新華は無慈悲である。

 

 

 

 

 

「なぁ…知っているか? 人は死を極端に恐る。でもある奴が言うには死って『救い』なんだってよ」

「ぎ…ぐぅ…?」

「死っていうのはこの下らない世界の苦しみや憎しみなど…まぁ所謂俗世ってやつだ。その俗世から開放し全てを忘れさせてくれる…らしい。ま、実際にはどうか知らんが」

「…な…にがぁ…」

「おお、流石軍人か。もう喋れるのか」

「き…さ……まはぁ…………ぐっ………わた…し…がぁ………」

「ちょっと黙ろうか」

 

ダァン、ダァン!

 

 

 

 

 

新華は『ストーリーズ・イレギュラー』のセレクターレバーを『semi』にして2発ラウラの胴に打ち込む。

 

 

 

 

 

「おい新華! もういいだろ! 明らかにやり過ぎだ! どうしたんだよ!?」

「新華!? 一体何をしているの!? もうやめなよ!」

「新華君! どうしたの…!?」

「シンカ、トマレ、トマレ」

「ああ、お前ら。そこに倒れてる鈴とセシリアを保健室に連れてけ。動けないみたいだから慎重にな」

 

 

 

 

 

新華はラウラから目を離さずに一夏達に指示する。そこへ千冬が打鉄用ブレードを持ち、楯無がミステリアスレディを展開して来た。

 

 

 

 

 

「遅かったか…」

「こ、これは新華君がやったの…?」

「…来ましたか。俺はこのエセ軍人をボコッただけです。そこに倒れてる2人はこのエセ軍人の仕業ですがね」

「…取り敢えずどけ。事情は後で聞く。じっくりとな」

「知りませんよ。教え子が可愛いのは分かりますが、だからって教育を怠るのは関心しませんな。その結果がコレですし、痛め付け足りないですし」

「なっ! 新華君、止めなさい。そんな事して何になるの」

「何にも。これは俺の憂さ晴らしでもあるんですよ。今まで溜め込んだ、ね」

「新華!」

「なぁ。お前らいい加減に静かにしてくれないか? 今俺はラウラに1方的に殴られる痛さと怖さを教えてやってるんだよ。邪魔すん…!」

 

 

 

 

 

新華が一夏達の方を向いた途端シュヴァルツェア・レーゲンの残った4本のワイヤーブレードが新華の首と心臓、右腕と左足を狙って射出される。ラウラの残った殺意を感じて放たれたのだろう。実質新華は先程の攻防でラウラを痛めつけたがISにはあまりダメージを与えておらず、機能は問題無かった。新華は本来であればそんな殺気だらけの攻撃を避けるのは簡単だが、ラウラを痛めつける為に接近していたせいで避けきれなかった。

ブレードが新華を傷付ける。新華も体を捻り回避するが全て掠ってしまった。右頬と右脇腹、左足太もも裏を軽く裂かれ、右腕に迫ったブレードはP・V・Fの装甲に弾かれた。

 

 

 

 

 

「この程度…!」

「っ! 新華!? 大丈夫か!?」

「当たり前だ」

「新華! 血! 血が!」

「あ? この程度の怪我は問題ねぇよ。それより…」

 

 

 

 

 

新華はラウラを見る。しかしラウラは顔を歪めたまま意識を失っていた。新華の怪我3箇所から血が流れる。

 

 

 

 

 

「チッ、気絶しやがったか…。しょうがねぇ、後は千冬さんにお任せしますよ。しっかり、今度こそ教育しておいてくださいよ。この間の様に(・・・・・・)、今回俺を殺しにきた事は伏せてもいいですから」

「…気付いていたか」

「会長もグルでしょう? でなければラウラがIS学園に居られる筈が無い。おおかた何かの交渉でもした結果でしょ」

「…やっぱりバレバレだったみたいね。でもその話は後。早くその傷を診てもらってきなさい。血、出てるわよ」

「この程度は1年前まで日常茶飯事です。ま、取り敢えずは傷を無理にでも塞いでもらってきますわ。あんまり制服も赤く染めたくありませんしね」

 

 

 

 

 

新華の怪我の部分を見れば、白い制服が血でじんわりと滲んでいた。頬からは既に顎まで血が垂れていた。

 

 

 

 

 

「…し、新華…だ、大丈夫か?」

「言ったろ。ほら、お前らはさっさと鈴とセシリアを連れて行け」

「お、おう…」

「シンカ、ダイジョウブカ? シンカ、ダイジョウブカ?」

「新華君…」

「ん、簪さん、ハロ持っててくれたのか。悪いな」

「ううん。でも、さっきのは…」

「あの戦闘か? それとも、会話?」

「どっちも。一体…」

「さてね。俺から言える事は、俺にも許せない物は有るって事と、人は思ったより歪な存在だということさ」

「イビツ、イビツ」

 

 

 

 

 

新華はそう言うとピットに向けて歩きだした。だが途中で言い忘れた事があるのを思い出して千冬の方に振り返る。

 

 

 

 

 

「ああ、ボーデヴィッヒはしばらく体に障害が出ると思いますが1日位で元に戻りますよ。後遺症もありませんから」

「は? 障害に、後遺症だと!? 新華! 一体何をした…!」

「3/4殺しです。後遺症無いって言ってるじゃないですか。あと、口調が素になってますよ。お先に」

「新華!」

 

 

 

 

 

千冬の叫びを無視し新華はピットへと跳んだ。先程の戦闘で体力を消費している筈なのにそれを感じさせない動きだった。

 

 

 

 

 

「(あのう詐欺のせいで23時間寝れなかった事があったからな…あれに比べたらこの程度は楽だ)」

 

 

 

 

 

新華に救急箱を持った本音と虚が近付いてきた。

 

 

 

 

 

「うわ~、あおきー怪我してる~」

「大丈夫ですか? ボロボロではないですか」

「いや、久々にキレて暴れちゃいました。怪我は痛いですがかなりスッキリしましたよ」

「そうですか。取り敢えず怪我の処置をしますので服を脱いでください」

「え? あ、そっか。虚さん、俺ISスーツ持ってないので脱いだら下着になっちゃうんですよ。なんでここでは勘弁してもらえませんか?」

「…そうでしたね」

「おねぇちゃん大胆~」

「…本音」

「姉妹喧嘩は後にして下さい。鈴とセシリアが来たのでそちら優先で。自分で応急処置くらい出来ますから」

「わかりました。お嬢様と妹様も来た様ですので、お任せします」

「あおきーまた後でね~」

「あいよ~」

 

 

 

 

 

新華は本音が置いていった救急セットと、収納していた自前の救急セットを出し傷を処置していく。

 

 

 

 

 

「まさか入れっぱなしだった救急セットをIS学園でも使う事になろうとは…テキトーにガーゼ貼っとくかね」

「「…新華君!」」

「あらお2人共。ボーデヴィッヒの方に行かなくてもいいのか?」

「ええ。織斑先生が後であなたに話があるとは言っていたけど、ボーデヴィッヒさんも気絶して運びやすかったうえで外的損傷も見当たらなかったから来たの」

「新華君、血が…本音は?」

「鈴とセシリアの方に向かわせた。このくらい自分で出来ないと今まで生きてこれなかったからな。う詐欺はこうゆう事はからっきしでくーちゃんも何も知らないところからのスタートだったし…むしろ俺が教える側だったし…」

「くーちゃん?」

「束さんの助手兼…なんだろ? 娘…かな?」

「む、娘!?」

「義理の、ね。とある施設の生き残りの1人で、あの束さんが興味を持って引き取った初めての『他人』さ。…いてて」

「…新華君、じっとしてて」

 

 

 

 

 

簪は新華の持つ治療道具を半ば奪う様に取り右脇腹の傷を消毒していく。

 

 

 

 

 

「痛た! ちょっと簪さん? 自分で出来るから別にやらなくても…」

「新華君。女の子の好意は素直に受け取っておくものよ? 簪ちゃんに先を越されちゃったけど私も手伝うわ。おねーさんに任せなさい」

「いや、だから自分で出来ると…」

「グダグダ言ってないで顔の傷をこっちに向けなさい。あと、左足は自分でやらないと脱がして消毒しちゃうわよ~」

「…分かりましたよ。お願いします。ただ脱がさないでください」

「いつもの仕返しよ♪」

「…新華君?」

「ちょ、簪さん綿が傷口触れてるから痛たたた!」

 

 

 

 

 

ピットの端で2人の美人に看護される新華。騒がしくウルサイ筈だが新華は安らぎを感じた。

 

 

 

 

 

「…ありがとう」

 

 

 

 

 

だが、だからこそ自分はここ(IS学園)に居てはいけないと、綺麗な手は自分の赤い手で触れて良いものでは無いと思う。それが、今まで人を殺し罪を重ねた自分の『罰』なのだから

 

 

 

 

 




さてはて、どうでしたか?
ぶっちゃけ力に酔ってISに頼ってるガキと、力を貪欲に求め続ける歪んだ戦争経験者じゃ相手になりませんよねwww
ちなみにISはパラベラムの世界で見たら『現代兵器』の括りの中だとガノタは考えております。なにせP・V・F相手だと絶対防御なんて無いに等しいですから。
そして新華の負傷と情報の隠蔽。今までとこれからラウラがIS学園に居られるのは千冬が楯無と交渉してもみ消しているから。教え子を守っていると言えば聞こえは良いですが、この行動も女尊男卑だから出来る事ですよね。ちなみに交渉の内容は更識の構成員の千冬による強化。しかしこちらはラウラの時とは違い更識で教育済なので問題ありません。
そしてガノタの思い…
更識姉妹、頑張って新華を繋ぎ止めて!

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