IS~疾走する思春期の転生者~   作:大2病ガノタ

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43話。シャルル回
蛇足かもしれませんが、前回シャルルが言っていたアニメみたいな機動とはギアスのアルビオンだったりNT-Dだったりします。


子供の意思

 

 

 

 

 

1025室。新華は一夏からのメールを受け取りハロを連れて来ていた。部屋には戸惑う一夏と女性特有の膨らみを持ったシャルルが座っていた。

…落ち着く為にお茶を入れラブコメし出したが。

 

 

 

 

 

「心配してるのに…一夏のエッチ」

「なぁっ!?」//////

「お前ら…人の目の前でイチャつくんじゃねぇよ。俺が居るの忘れてるだろ」

「ヒトノコト、イエルカ? イエルカ?」

「わ、わるい」

「あ、ご、ごめんね?」

「ま、いいけどさ。しかし正体バレるの早すぎだろ。一夏、なんでシャルルが女だって分かったんだ?」

「えっと…」

「………」

「…何となく、何となく想像出来たんだが、シャルルから湯気が出てたからシャワー上がりだろう。それで一夏からのメールもそれなりに早かった事が分かる。んでそこのラッキースケベ(一夏)の事だからシャワー上がりに遭遇した…とかか?」

「「………」」//////

「おいおいおいマジかよ…本気でラブコメじゃねぇか。しばらく荒れそうだな…」

「そ、そうだ! 新華はシャルルが女だって知ってたのか? いつから?」

「最初から。具体的には転校してきた時に疑問を感じて、言動と動きで確信した。デュノア社にも代表候補生にも男子で操縦者の情報は今まで無かったし、そんな重大な情報はまず隠し通せるわけ無いからな。なら男装させてると分かるだろ」

「そ、そんなに早くかよ…」

「僕の努力って…」orz

 

 

 

 

 

落ち込むシャルルを新華は無視して問いかける。

 

 

 

 

 

「んで、いい加減聞かせてもらおうか? なんで大胆にも男装して入学してきたのかを」

「そ、そうだな。なんで男のふりなんかしていたんだ?」

「それは、その…実家の方からそうしろって言われて…」

「何…?」

「うん? 実家ってさっき新華も言ってたデュノア社の?」

「そう。僕の父がそこの社長。その人からの直接命令なんだよ」

「…読めた。チッ、だからって自分の娘の人生を棒に振らせる様な事させるのかよ…!」

「…? どういう事だ? 命令って…親だろう? なんでそんな」

「僕はね、一夏、新華。愛人の子なんだよ」

「------」

「…成程な。どうりで情報が無いしこんな事させられる訳だクソッタレ!」

 

 

 

 

 

一夏は絶句し新華は全てを悟る。特に新華は親に前世で酷い目に合わされたので許せない。

 

 

 

 

 

「父に会ったのは2回くらい。会話は数回くらいかな? 普段は別邸で生活をしているんだけど、1度だけ本邸に呼ばれてね。あの時は酷かったなぁ…本妻の人に殴られたよ。『泥棒猫の娘が!』ってね。参るよね。母さんもちょっとくらい教えてくれたら、あんなに戸惑わなかったのにね」

「…ハロ、PCモード。リンクしろ」

「リョウカイ、リョウカイ」カシャッ

「それから少し経って、デュノア社がね、経営危機に陥ったの」

「え? だってデュノア社って量産機ISのシェアが第3位だろ?」

「一夏、それはまだ主流が第2世代だった時の話だ。今は第3世代が主流。いくらラファール・リヴァイブが優秀だからとはいえ量産型の第3世代型が売りに出されれば見向きされなくなる。デュノア社は第3世代型の開発に乗り遅れ既に経費が厳しくなってるのさ」

「それにISの開発っていうのは物凄くお金がかかるしね。それにフランスは欧州連合の統合防衛計画『イグニッション・プラン』から除名されてるから補助金も受けられないし。開発は急務なんだよ。それだけじゃなくて国防もそうなんんだけど、資本力で負ける国が最初のアドバンテージを取れないと悲惨な事になるんだよ」

「そういえばセシリアもそんな事言ってたっけ」

 

 

 

 

 

一夏は以前セシリアがイグニッション・プランについて言っていた事を思い出した。新華は未だにPCハロに向き合って何か操作している。

 

 

 

 

 

「さっき新華が言ったけどデュノア社は第3世代型の開発に遅れていてね。オルコットさんや凰さんの専用機が第3世代試作機なのに対して僕の機体がラファール・リヴァイブの改良型なのがそれを証明してるよ。それに開発する為のデータも時間も圧倒的に不足していてね。なかなか形にならなかったんだよ」

「結果、政府から予算を大幅にカットされ慌てた所に『次回のトライアルで選ばれなければ全面カット、その上IS開発許可も剥奪』ってトドメ刺されて暴走。その結果が今のシャルルだ」

「…新華詳しいな。いつも通り」

「えっと…一応その情報は機密の筈なんだけど、なんで新華は知ってるの?」

「あの程度のセキュリティなんぞ俺と束さんにとっては有って無いようなもんだ。今、クラッキングして情報を入手したうえでの推測。今も情報取得中…」カタカタカタカタ

「「………」」

 

 

 

 

 

新華の話でシャルルだけでなく一夏もフリーズ。しかし現実から目を逸らす事で復帰する。だが実はクラッキングしているのではなくヴェーダからダウンロードしているだけである。だが束の目の前でやるとハッキングされかねないのでガチでクラッキングするだけの技術はあるが。

 

 

 

 

 

「えっと…その暴走ってやつとシャルルの男装がどう繋がってるんだ?」

「簡単だよ。注目を浴びるための広告塔。それに、同じ男子なら日本で登場した特異ケースと接触しやすい。可能であればその使用機体と本人のデータ、あわよくば伝説の『蒼天使』のデータも取れるだろう…ってね」

「それは、つまり」

「そう。僕は白式のデータと『Evolve クアンタ』のデータを盗んで来いって言われてるんだよ。あの人(父親)にね」

 

 

 

 

 

一夏はシャルルの話を聞いて、シャルルの父親に対する態度が他人行儀な事の理由を察する。そして怒りがふつふつと湧いてきた。

 

 

 

 

 

「とまぁ、そんな所かな。でも一夏と新華にバレちゃったし、きっと僕は本国に呼び戻されるだろうね。デュノア社は、まぁ…潰れるか他企業の傘下に入るか、どの道今までの様にはいかないだろうけど、僕にはどうでもいい事かな?」

「「………」」

「ああ、なんだか2人に話したら楽になったよ。聞いてくれてありがとう。それと、今まで嘘をついててゴメン」

「………いいのかそれで」

「え…?」

「それでいいのか? いいはず無いだろ。親がなんだって言うんだ、どうして親だからって子供の自由を奪う権利がある! おかしいだろ、そんな事は!」

「同感だな。子は親に逆らえない、本能でな。それを利用して子供を犠牲にするなんざ親以前に人として失格だ」

「い、一夏…? 新華…?」

「親が生まれなければ子供は生まれない、そりゃそうだろうよ。でも、だからって親が子供に何をしてもいいなんて、そんな馬鹿な事があるか! 生き方を選ぶ権利は誰だってあるはず、それを親に邪魔される言われなんて無いはずだ!」

「親は本来子供を教育し間違った方向へ行かない様に導き、可能性を認め夢を叶えるのを手伝ったり見守るのが役目なんだ。それを自分の道具にしたり見向きもしないなんざ言語道断だ。万死に値する」

 

 

 

 

 

一夏と新華は2人揃って思いのままに言葉を発しシャルルは呆然とする。一夏は怒りを爆発させる形で大声を上げる。新華は静かに言葉を発しているもののその言葉には怒気を超えて殺気が込められていた。

一夏の怒りを富士山の噴火に例えるなら新華の怒りは北極の吹雪である。共通なのは、どちらもシャレになっていない。

 

 

 

 

 

「ど、どうしたの2人共? なんか変だよ?」

「あ、ああ。悪い。つい熱くなっちゃって…」

「いいけど…本当にどうしたの?」

「俺は…俺と千冬姉は両親に捨てられたから…」

「あ………その…ゴメン」

「気にしなくていい。新華は昔からこうだし。俺の家族は千冬姉だけだから、別に親なんて今更会いたいとも思わない。新華の両親が親変わりになってくれたって言うのもあるけどな。それより、シャルルはこれからどうするんだよ」

「どうって…時間の問題じゃないかな? フランス政府も事の真相を知ったら黙っていないだろうし、僕は代表候補生を下ろされて、よくて牢屋じゃないかな」

「………」カタカタカタカタ…

「それでいいのか?」

「良いも悪いも無いよ。僕には選ぶ権利は無いから、仕方ないよ」

「………だったらここに居ろ」

「え?」

 

 

 

 

 

一夏はシャルルの目を見つめながら言葉を綴る。新華は1人、それを静かに冷めた目で聞いていた。

 

 

 

 

 

「(一夏、言ってやれ。救い出してやれ。いつもの様に。お前なら出来る。俺は俺の出来る事をする)」カタカタ…

「特記事項第21、本学園における生徒はその在学中にありとあらゆる国家、組織、団体に帰属しない。本人の同意が無い場合、それらの外的介入は原則として許可されないものとする」

「………」

「つまり、この学園に居れば少なくとも3年間は大丈夫だろ? それだけ時間が有れば、何とかなる方法だって見つけられる。別に急ぐ必要は無いだろ」

「一夏」

「ん? なんだ?」

「よく覚えられたね。特記事項って55個もあるのに」

「………勤勉なんだよ、俺は(新華と簪さんに教わってなんとか覚えてたなんて今は言えない)」

「そうだね。ふふっ」

「(よくやった一夏。争奪戦の激化が予想されるが、今言う事じゃないしそんな空気でもない………っと、これは…)」

 

 

 

 

 

新華がシャルルの心が救われたのを感じ安心するが、ダウンロードにて入手した情報に重要な物を見つけ薄ら寒い笑みを密かに浮かべた。

 

 

 

 

 

「ま、まぁとにかく決めるのはシャルルなんだから、考えてみてくれ」

「うん。そうするよ」

「(このデータが有れば…なら、後は…)」カタカタ…

「ん? 一夏どうしたの?」

「あ、いや…と、取り敢えず、なんだ。シャルル、1回離れてくれ」

「?」

「いや、その、胸元が…」

「(…なんというセクハラ発言。だが一夏だから問題無いんだよなぁ…)」

「い、一夏、胸ばっかり気にしているけど…見たいの?」

「な、なに?」

「(なに!?)」がたっ

「………」

「………」

「………」スッ、カタカタカタ…パルパルパル…

 

 

 

 

 

シャルルの発言に思わずリアクションをとってしまった新華。気まずくなり大人しく座ってパルパルしながらハロを弄るのに戻った。そこにドアをノックする音が響く。

 

 

 

 

 

「一夏さん、いらっしゃいます? 夕食をまだ取られていないようですけど、体の具合でも悪いのですか? あと、新華さんもいらっしゃいます? 更識さんが探しておりますが」

「「!?」」

「俺が出る。シャルルは今見られるとマズイからベットに潜り込んどけ。一夏はなるべく自然体で」

「「わ、わかった」」

「一夏さん? 入りますわよ?」

「あー、ちょっと待ってろ」ガチャ

「あら? 新華さん。やはり一夏さんの部屋にいらっしゃったんですのね。更識さんが探しておりましたわよ」

「ちょっと野暮用でな。すぐ行く。んで、一夏を食事に誘いに来たのか?」

「ええ。一夏さんは?」

「居るぞ。今ハロ使ってたから回収するついでに入れよ」

「ええ。では」

 

 

 

 

 

新華の促しでセシリアが部屋に入る。一夏はカモフラージュのつもりか布団に潜ったシャルルに乗っていた。新華はもう無視してハロの所まで行きPCモードを解除させ通常モードにする。

 

 

 

 

 

「ハロッ」

「…一夏さん、何をしていますの?」

「い、いやシャルルがなんだか風邪っぽかったから、布団をかけてやってたんだ。それだけだぞ、ははは…」

「…日本では病人の上に覆いかぶさる治療法でもあるのかしら?」

「ねぇよ、いつもの一夏の奇行だ。おおかた、いきなり(友人として)意識している異性が来たもんだから慌てたんだろう。この馬鹿の頭の中はくだらない事でときどき埋まるからな」

「あ、あら…わ、私を、意識して…」//////

「セシリア、ノウハミダレテル、ノウハミダレテル」

「(新華話逸らしたな、GJ)と、とにかくだ。シャルルは具合が悪いっていうからしばらく寝てるって。夕食は」

「無理してでも食え。なんでもいいから腹に入れねぇとかえって倒れるぞ。一夏、ここに戻って来るときシャルルの分まで飯持ってっとけ」

「お、おう。(新華演技上手いな)仕方ないし俺ら2人で行こうって話してたんだ」

「そ、そうそう…ご、ゴホッゴホッ」

「(…演技力ねェな。磨けば光るかもしれねぇが、全然だ。流石にセシリアは訝しむ…)」

「あ、あら、そうですの? では、私も丁度夕食はまだですし、ご一緒しましょう。ええ、ええ。珍しい偶然もあったものです」

「………(欲が勝ったか。その方が都合が良いが、お前ら節穴か)」

「ゴホゴホッ、そ、それじゃぁごゆっくり」

「お、おう」

「デュノアさん、お大事に。さあ一夏さん、参りましょう」

「あ、ああ」

「養生しろよ。またな」

「オダイジニ、オダイジニ」

 

 

 

 

 

セシリアが一夏の腕を取り体を密着させる。部屋を出た所で新華はセシリアに聞く。

 

 

 

 

 

「セシリア、簪さんが探していたと言っていたが、食堂にいるのか?」

「いえ、今はまた新華さんの部屋に居るはずですわ」

「りょーかい。2人共、先行ってろ。簪さん連れて行くから」

「マタアトデ、マタアトデ」

「わかった」

「わかりましたわ」

 

 

 

 

 

2人とは反対の方向に向かい自分の部屋に向かう。後ろで「なっ、なっ、何をしている!」と箒の声が聞こえたが無視。1050室に近付くと、扉の前で立っている簪の姿があった。新華はその横顔に声を掛ける。

 

 

 

 

 

「簪さん」

「! 新華君、どこに居たの…?」

「一夏の部屋に野暮用だよ。ただシャルルが風邪ひいたっぽくってさ、それで時間がかかった」

「ヤボヨウ、ヤボヨウ」

「そうなの。…ご飯、まだだよね? 一緒に行こ?」

「簪さんもまだだったのか? 本音さんや会長と先に食べてりゃいいのに」

「2人も待ってる…。お姉ちゃんは新華君と話したい事があるからまだ食べないで待ってるって…」

「あの2人もか…んじゃ、さっさと行きますかね。これ以上待たせる訳にもいかないし、さっさと部屋に戻って整理もしたいし」

「セイリ、セイリ」

「ん、行こ」

 

 

 

 

 

そう言って2人+1で並んで歩く。そして新華は先程シャルルに言った自分の言葉を思い出していた。

 

 

 

 

 

「(万死に値する…か。まったく、どの口がそう言うんだか。人には可能性がある、誰だって。子供だけではない、大人にだってそれはある。それらを無視して今まで自分のエゴで殺してきた俺が、今更…)」

 

 

 

 

 

新華の頭にはかつて初めてP・V・Fで殺した2人---前世のクズ両親---の絶望した死ぬ直前の顔が浮かんでいた。あの時自分がした事は後悔していない。だが人を憎しみのままに殺した事は新華にとって覆しようのない罪として刻まれている。例え大義名分があっても人殺しに変わりはないのだ。IS学園の中に新華程殺しを、いや殺し自体をした事のある者は殆ど居ない。データを見れば軍人のラウラも人を殺した事はない。千冬に鍛え上げられ今の機体を受け取った後は捕縛して相手に屈辱を与えてばかりだったらしい。

 

 

 

 

 

「(ここには綺麗な手を持った者が殆どだ。頭の中は別として。そいつら相手にこの自他の血で染まった手を持つ俺が言っても説得力無いな。殺してきたIS操縦者の中にはまだここの生徒と同い年位のやつも居た訳だし)」

「…? 新華君、どうしたの…?」

「ん、いや何でもない。ほら、さっさと食堂行こう。一夏が先に行っているはずだ」

「うん…」

 

 

 

 

 

簪は新華が黙り何処か知らない場所を見ている様に感じた。もしここに居たのが姉ならば何か話し新華とふざけてみせる事も出来たのだろうが、世話になってばかりで新華の事をあまり知らない簪にはどうすればいいのか分からなかった。

 

 

 

 

 

「(そういえば私、新華君の事あまり知らない…。一緒に居る事はあっても、新華君は何も喋ったりしないから…)」

「(とにかくここに居て出来ることは、一夏達を鍛えその上で守る事だ。う詐欺との契約でどう転ぶかは分からんが、次の接触で終わりだ。そこからは全力で守りに入る。3年でどこまで行けるか分からんが、CBの事もあるし。まぁまずはシャルルの事からだな。一夏のお陰で色々やりやすくなった。後はタイミングだよな…)」

「ムゴン、ムゴン」

 

 

 

 

 

新華と簪の2人はハロの言う通り無言で自分達の思考に耽っていた。それでも歩く。どれだけ悩んでも、どれだけ苦しんでも、進み続ける。止まらずに、歩き続ける。

 

 

 

 

 

 




新華が途中変態紳士になってますねwww 自分で書いててツッコミましたwww
新華はシャルルの家庭状況を許せないです。自分はもっと酷かっただけに。そして今の親が素晴らしい故に。
P・V・F新華 VS ISラウラは2話後になると思います。
因みに一夏がシャルルに晩飯を食べさせるシーンはカットです。

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