IS~疾走する思春期の転生者~   作:大2病ガノタ

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37話。シリアス回。


矛盾

 

 

 

新華の一言で店の空気は凍りつく。普通は訳が分からずに首を傾げたり笑い出したりするだろう。しかし新華の言葉には笑い飛ばせない力が篭っていた。一夏、弾、蘭の3人は訳が分からないが新華の顔に表情が薄い事に気付き新華が苛ついているのは分かった。

 

 

 

 

 

「おい青木のガキ。何ふざけた事言ってやがる。人を殺すだと? IS学園ってのはそんな事教えてんのか?」

「似たようなもんですよ。学園ではISについての知識と武器の扱い、注意点を指導します。でも道徳については一般の高校並かそれ以上に触れないんです」

「…何が言いたい」

「つまり、『他人に武器や凶器を向ける事に抵抗を感じなくなる』んです。それも女尊男卑が進んでいるせいで向けられる側にならないと異常とは思わない社会が出来ているんです。今まで俺が見たIS学園出身の操縦者は殆どがその事に疑問を持ち合わせていませんでした」

「………どう言う事かしら新華君? ISは安全が確保された健全なスポーツよね?」

「まずそこの認識の相違から話しますか」

 

 

 

 

 

新華は既に空になった食器を横にスライドさせハロを抱きかかえる。

 

 

 

 

 

「そもそもISが健全なスポーツだという所に異議がありますね。安全だからといって本物の剣や銃を未成年の女の子に振り回させる事の何処が健全ですか? 剣道や弓道、フェイシングだって安全性を確保したうえで危なくない物を使っています。いくらISが現代兵器より画期的で絶対防御があるからと言っても、現代兵器より強力な武装を当たり前の様に持たせるなんて正気じゃありませんよ」

「…で、でもさ新華。世界には本物の刃物を使って戦う競技だってあるだろ?」

「イタリアの『グラディエーター』の事だな。あれは競技じゃなく職種だ。かつてのコロッセオに出ていた選手達の戦いを現代まで伝え続ける職業な。あれは確かに危険は有るがきちんとルールを決めて十分広く障害の無い所でやっているし、怪我をしても自己責任だ。だがIS学園の代表、代表候補生以外の生徒は誰も怪我することを覚悟していない。怪我をすればすぐに保護者がしゃしゃり出てきて学園側に賠償やら責任を押し付ける。生徒も管理する教師を糾弾するだろうな。『安全な筈なのに怪我をさせるとはどういう事だ』ってな」

「モンスターペアレント…」

「そうだ。一夏、鈴のIS『甲龍』に搭載されている衝撃砲を覚えているだろ?」

「あ、ああ」

「アレが一番いい例だ。例え絶対防御があって操縦者の命の危険が無いと言っても怪我は当然負う。鈴も言っていただろ? 『ISの絶対防御も完全じゃない。シールドエネルギーを突破出来る攻撃力があれば操縦者本体にダメージを与えられる』って。お前も直にその威力を味わっただろ。世間では誤解があるが『絶対防御は操縦者の生命を守る』が『操縦者の細かい怪我までは防げる訳でも治せる訳でもない』って違いがある。絶対防御=絶対的な安全 じゃないんだ」

「そ、そうなのか?」

「弾も覚えとけ。この世界に絶対なんてものは存在しない。どんな物でも欠点や弱点は存在するんだ。アニメやゲームとは違う。だが操縦者側で自覚している奴は殆ど居ない。それどころか本当にゲーム感覚で軍に居る奴まで居やがる」

「…まて青木のガキ、何で行き成り軍の話が出てくる? ISは世界で軍事利用は禁止されている筈だろうが」

「確かに世間ではそうなっていますね。では聞きますが、ISが軍事利用を禁止されているにも関わらず軍の主力として研究、開発されている傍ら、これまで有った戦闘機などの現代兵器は何処に行ったか知っていますか?」

「む? 軍が管理しているんじゃあねぇのか?」

 

 

 

 

 

店の中は新華の話の影響で静まっている。新華の話には多く考えさせる所があるのだろう、誰もが耳を傾けていた。

 

 

 

 

 

「してませんよ。むしろ維持費がどうのと言って最低限以外は手放してます、男性の軍人達も一緒にね。IS1つでこれまでの現代兵器を相手にして勝利を治める事が出来る。コストも現代兵器何十機よりIS1機、男性の兵士何百人より操縦者1人の方が安いですしね」

「…本当か? それが事実なら、とんでもないぞ。理不尽に扱われた軍人は何を仕出かすか分からんからな、最近やけに元軍人による犯罪が多いと思えばそれが原因か」

「そうです。しかも根本は女尊男卑による女性の傲慢が殆どです。ISに乗れる乗れない関係無しに男を奴隷か何かと勘違いしているクズのせいでISが出る以前より犯罪件数は世界規模で年々増加しています。失礼ですが、厳さんの蘭ちゃんへの甘やかしもその女尊男卑に一役買っているようなものなんですよ?」

「何?」

「女尊男卑のバカ女はISが原因で湧き出たってだけじゃない。それらを助長する様に子供を甘やかした、親としての教育を怠った親にも責任はある。先程モンスターペアレントの話が出ましたが、甘やかされて育った馬鹿はバブルに溺れた人より悲惨だ。バブル世代の人達は善悪の区別位はつく、金銭感覚が可笑しいというだけで。しかし甘やかされた奴は善悪の区別がつかない。怒って修正してくれる親は怒らず、教育する教師達は無責任な親達のせいで何も出来ない。結果虐めや今の女尊男卑が当たり前に発生するんですよ」

「………」

「蘭ちゃんは俺や一夏、それに弾が居たから今の所問題は無いでしょう。ですがこのままいけば自覚の無いまま碌な人間にはなりませんね」

「そ、そんなことは!」

「本人には分からない事だってあるさ。それほどISによる認識の歪みは本人の知らぬ所で起きる」

 

 

 

 

 

蘭が声を上げるが新華は一蹴する。人の精神は思っている以上に強くないことを新華は身にしみて良く分かっているからだ。

 

 

 

 

 

「考えてみて下さい。操縦者は被弾して怪我をしない代わりにシールドエネルギーを消費する。これってゲームのHPゲージと同じと思いませんか? 相手がISを操縦していればHPゲージの減らし合い、相手がISを所持していないテロ組織や犯罪者ならシューティングやアクションゲーム感覚で平気で殺していく。特に男性相手には罪悪感を感じずにね」

「それは、本当なの新華君? やけに実感が篭っているみたいだけど、そもそも何故そんな事を知っているのかしら」

「実際に見てきたからですよ。人っていうのは慣れる生き物だ。自分の周りの環境や状況に対応し、長い間同じ環境に留まっていればいつしかそれが当たり前だと感じる。ISは悪い方向でそれを助長させる機能も存在しています」

「…なんですかそれは?」

「『ハイパーセンサー』だ。この機能は以前の現代兵器を圧倒した機能の1つなんだが、機能の内容は知っているな? 操縦者の知覚を補助して目視出来ない遠距離や視覚の外を知覚できる性能を持つ、言わば第3の目だ。この機能、戦場や実戦で致命的な問題を抱えている」

「問題? 何でだ? 凄く便利だろ。相手の挙動が細かく分かるし、遠く離れていても誰か識別出来るんだから」

「確かに、今一夏が言った様にそれなりに腕がある人物が使えば便利だと感じるだろう。だが、その目の良さが命取りなんだよ」

 

 

 

 

 

新華は目を閉じる。脳裏に映すのはこれまで殺してきた人の数々。いつかの研究員の様にP・V・Fで精神を破壊した者も居ればクアンタの火力で引き裂いた者も居る。死ぬ間際、殆どが泣き喚き生への執着を見せていたり、自分がしてきた事は間違っていないと自分理論を展開し足掻いた者が殆どだった。しかし中にはそれまでしてきた事への罪を自覚し大人しく死を望む者も居た。だが今となっては全て関係無かった。束と共に情報操作を繰り返し、大量の血を流し続けてここにいる。罪を再認識し目を開く。

 

 

 

 

 

「もし、仮にだ。ISの武装をIS無しの生身の人間に使用してみろ。人はあっさり死ぬ。驚く程に、理解が追いつかない程にな。そしてハイパーセンサーなんだが、死体の細かい部分が丸見えになるんだよ。もし剣で切ればその断面が、銃で撃てばその穴が。鈍器で殴ればミンチになって飛び散った肉片が、全て視界情報として頭に流れ込む。調子に乗って無双でもしてみろ。一面死体だらけで血の匂いがキツく、更にハイパーセンサーでその死体の状況が細かく分かってしまう。…地獄だぞ」

「………」

「そして人は慣れる生き物だとさっき言ったな? 今言った地獄が何度も、それこそ何十、何百と続けば脳が危険を感じて苦痛を無かった事にしてしまうんだ。脳ってのは無意識に自分を守る機能があってな? 自分自身の肉体だけじゃ自分は殺せない様に出来ている。それと同じで、許容範囲以上の苦痛や痛みを無かった事にするか快楽に変換するんだ。そんな中でISに乗ってみろ。感覚を麻痺させたクズになる」

「…お前はどうなんだ青木のガキ。お前もそのISを使っているんだろ。お前にも言える事じゃねぇのか」

「…少なくとも快楽など覚えませんよ。でも確かに感覚は麻痺してきていますね。そこを見れば俺もクズですな、自覚はしてますけど。だからと言って後悔も止める気もありません。例え俺のエゴだと言われても、これまで相手にしてこの手にかけてきた奴等は生かしては置けないと思ったからですし、放っておけば何を仕出かすかわかったものじゃありませんでしたから」

「そこまでヒドイのか? IS操縦者ってのは」

「一夏や鈴などマトモな操縦者も居ますが、学園を卒業して軍に入ったり女尊男卑の強い職場にでも行けば大抵の奴は駄目になってます。そもそも何で軍で研究開発している様な代物を成人していない少女達に持ち運びさせているとか思わないんですか? 有り得ないでしょう。それも操縦者の殆ど、それも蘭ちゃんの様な大して何も考えてない、ファッションと勘違いしている女が溢れているせいでもある。極め付けは、政治家の中に女性権利団体なんて巫山戯た存在まで蔓延る位だ。知ってます? そいつら自分達の息が掛かった女性なら犯罪を犯してもすぐに釈放させて駒として操ったり揉み消したりするんですよ? 平気で、何度も。そんな奴等を野放しに出来るとでも?」

 

 

 

 

 

新華の言葉が重く響く。その顔には怒りに塗れた狂気があった。

 

 

 

 

 

「ここで話を戻しますが、IS学園に入れば確かに一夏に先輩として教えて貰えるでしょう。生徒もそこらの高校生と変わらない。故に問題無く通える。だが、その後は? 卒業した後、適正ランクがAで優秀なIS操縦者を一般の企業や普通の生活に入れてくれると思いますか? 蘭ちゃん、さっき適正測定は『IS操縦者を集める為に政府が無料で行なっている』って言ったのを覚えているな?」

「は、はい」

「その言葉の意味、よく考えろよ。ISの絶対総数が467機しかないのになんで優秀な操縦者を必要とするんだ? さっき軍のコストの話をしただろ? だったらIS1機に見合わない数の操縦者を確保するのはおかしくないか?」

「そ、それは…」

「モンドグロッソとかの大会で優勝する為とかじゃないのか? 優勝すれば有名になれるし、新華が前に言っていたけど宣伝にもなるんだろ?」

「それだけなら最低限の人材を確保して自分達で訓練させ、競い合わせればいいんだ。代表候補生がいい例だ。国家代表の座を巡って競わせればいい。そうすれば一々外からスカウトさせなくて済むからな。だが実際はIS学園なる施設が作られISの操縦者になるための講義が行われている。467機の何倍、何十倍の操縦者を育成しているんだ」

「た、確かに…」

「そこから導き出される意味。…一応言っておくが、今から言う事は俺が出した結論で実際とは違う可能性がある事に注意してくれよ」

「お、おう」

 

 

 

 

 

新華は話を聞くその場の全員の顔を見、口を開く。

 

 

 

 

 

「今の国家代表や代表候補生以外の操縦者は、いざって時の操縦者スペア(・・・)だ。もし操縦者が死亡しても別の人間が乗って動かす為の、言わば消耗品」

 

 

 

 

 

再び空気が凍りつく。

 

 

 

 

 

「これなら1機のISに対して多過ぎる操縦者を確保する理由になるし、IS学園で操縦者を育成するのにも納得がいく。もし戦場で操縦者が死亡してもISコアさえ無事なら回収は簡単だし、次の操縦者さえ決まれば装甲のマッチングを除けばすぐに動かせる。ISという究極の兵器を効率良く運用するには、この方法もなかなかのものだ。ISの奴隷に見えるけどね」

「ど、奴隷って…」

「何が違うよ。この場合優先されるのは人命じゃなくISコアと時間だ。またコストの話になるが人件費と機械の維持費じゃ後者の方が安い。全国の工場やらATMやら機械化が進んでいるのがその証明だ。機械を効率良く運用する為に人を犠牲にする。本来人を楽にさせる為の機械のハズが機械を楽に運用させる為に人が苦労する。入れ替わってんだよ、目的と手段が」

 

 

 

 

 

新華の言葉はその場に居た全員に怒りを覚えさせると同時に、寒いものを感じた。新華はその認識の変化を感じ取り、表情に呆れが浮かぶのを抑えられなかった。

 

 

 

 

 

「少し話を変えてみようか。皆も知っている通り俺は世間で『蒼天使』とか呼ばれている。正確にはIS『Evolveクアンタ』という名前だが今は置いておこう。問題はリミッターを掛けても現存するISを圧倒する性能を持っていて情報が全く無いってトコだ」

「…あれ? 学園で解析したんじゃないのか? 千冬姉や山田先生が性能の話してたし」

「全部が全部出来たってわけじゃねェんだと。無限機関が4つ搭載されて未だに実用化の目処が立っていない全身装甲の技術も備わっているが解析出来ず(俺以外)仕組みも分かっていないんだとさ」

「む、無限機関ですか!? そんな物有り得るんですか!?」

「現に使ってるしなぁ…YesかNoで言ったらYesだ。しかもそのお陰で出力も馬鹿デカく絶対防御が紙だったし。ま、そんなトコで世界中の国や科学者はこぞってデータを欲しがるけど無いものは無いからな。となると今度はクアンタ自体を欲する。どうも俺が高い戦闘能力を持っているのはクアンタに依存しているからだと思っている奴等ばっかりらしくてな、強硬手段に出る馬鹿も多かった。俺と束さんに偽情報を流して罠に嵌め捕獲しようとしていた事もあったが、全部俺と束さんの前には無意味に終わったな。結局情報は無いに等しく、むしろ科学者達の執念を燃やす結果になったけどな」

「…ちょっといいかしら? 束って名前が出たけど、まさか『篠ノ之 束』博士? IS開発者の?」

「そうですよ。昔何度か俺が行方不明になった時が頻繁にあったでしょう? 束さんに拉致されてたんですよ。でもそんなことは今どうでもいい、重要なことじゃないんだ。重要なのは『誰もが欲しがる絶対的な強さを持つ無所属IS』って事なんです」

 

 

 

 

 

新華が何やらオレンジの霧になりかけたが話は続く。

 

 

 

 

 

「そこで考えて欲しい。もし俺がどの国家も所属しない場所---南極北極太平洋、どこでもいい---でクアンタを残して死亡したとしよう」

「し、新華!? 何言って---」

「仮の、ifの話だ。残されたクアンタもISだ。操縦者が居なければ、又は第3者が動かさなければ、その場に永遠に留まったままだ。だがクアンタを技術もろとも欲しがっているのは全世界共通だ。回収して解析に成功すれば現存するISに応用が出来、性能も格段に引き上がるだろう。回収した、もしくは指示した人物は国民から英雄と呼ばれるかもな。はいここで問題。弾、この場合お前が軍の司令官だとしたらどうする」

「えっ!? 俺!? えっと…他の国よりも早く回収させる、とか?」

「正解。どこの国もそういう指示を出すだろうな。でももしタイミングが悪く2つ以上の国の軍が鉢合わせたら、1機しかないクアンタを巡って戦闘が始まるだろうな。だがこのご時世、それだけで終わるハズもない。IS同士の戦闘ってのは意外と長い。もし漁夫の利を狙って別の軍のISが来ればそれはそれで戦闘になる。あとは泥沼、ずるずると戦争にまで発展するだろうな。極秘で回収しようにもIS同士の激しい戦闘となればパパラッチはすぐに聞きつけ騒ぎ立てる。公になってしまえばもう歯止めは効かない。IS委員会が決めた条約なんて皆無視して戦闘に参加するだろう。『この時のために研究開発してきたIS、兵器だ』とね。そして矢面に立つのは操縦者の女。後はさっき言った消耗品の話。操縦者が駄目になれば次の人、次の人、次の人…とね。足りなければ連れてくればいいんだし」

「は? どこからだよ」

「IS学園から」

「「「「「「!?!!?」」」」」」

「それが駄目なら…IS簡易適性が高ランクの奴からスカウト、もしくは拉致したりな」

「!!?」

 

 

 

 

 

戦慄が走る。特に最後の一言で蘭は自分の体を抱きしめた。

 

 

 

 

 

「そんな事…っ!」

「厳さん、あなたなら分かるはずです。暴走した軍がどれだけ愚かな行為に走るかを。そして軍相手に民間人が出来る事などたかが知れている事を。そして戦場に出た兵士の悲惨さ、特に捕虜に関する扱いを」

「………」

「IS学園も来れば抵抗するでしょう、千冬さんが先頭に立って。しかし教師だけで守るには生徒の数が多過ぎる。専用機持ちが相手になる事も出来ない、最悪敵に回る事にもなる」

「え!? クラスメイトや友達を守らないのか!?」

「守らないんじゃない、守れないんだ。代表候補生は軍属だぞ? 所属国家の要請が有ればそれに従うしかない。命令とあれば、任務を遂行しなきゃいけないんだ。たとえそれが、かつての友人であっても、恋心を寄せた相手でも、命令があれば撃たなきゃいけないんだ」

「そ、そんな…」

「…ま、俺はそんなに簡単に殺される訳にもいかないですけどね。仕事もありますし、やるべき事、やりたい事も沢山ありますから。折角生きているんだ、罪を背負っても意地汚くこの命にしがみつきますよ。でも今の話は覚えておいて下さい。冗談で話したつもりはありませんから」

「「「「「「………」」」」」」

 

 

 

 

 

沈黙。新華の表情は言いたい事が言えたせいか心無しか晴れやかだ。お茶を一啜り飲む音だけが響く。

 

 

 

 

 

「…話している内に最初の話題から逸れましたね。でもま、『殺しに躊躇しなくなる』ってのはハイパーセンサーの所で言いましたし、地味に厳さんのセリフに反応して言った『タダより高いモノはない』ってのにも最後触れましたし、後は入学反対の事なんですが…」

 

 

 

 

 

コップをテーブルの上に置き蘭に視線を向ける。蘭は新華の視線を受けてビクッと体を反応させるが

 

 

 

 

 

「正直反対していた理由が、何も考えていない事への怒りと厳さんの甘えに対する苛つきだったから、今の話を聞いて尚IS学園に来るって言うなら反対はしない」

「え………」

「ちゃんと自分で良く考えて、話し合う事が大切なんだ。頭ごなしに決めつけるんじゃなくて理解して受け入れ糧にする。俺の話で普通の生活を送るもよし、一夏と一緒に居たいと思ってIS学園に来るもよし。1度きりの人生なんだ。悩むだけ悩めばいい。俺や一夏、箒の様に強制されてる訳じゃない。人生の分かれ道、もう1度、考え直してみな。ただIS学園に来るのであれば俺も一夏も歓迎するよ。な?」

「あ、ああ…」

「そういう事だ…………」

 

 

 

 

 

再び沈黙。偶然新華の話に巻き込まれた客も、新華の監視役の『更識』も、各々が話を受け止め考え込んでいるようだった。しかしその沈黙は余りに長く、自分で作り出しておきながら耐えられなくなった新華は、手を叩き

 

 

 

 

 

「………あー! 止め止め! この話は終わり! この後考えるんなら自分の部屋に戻ってからとかにしてくださいな。俺が言ってもアレですが、まだ営業中でしょう? 店の中がこんなんじゃ誰も入って来ませんよ。ほらほら一夏も弾も戻ってこい」

「あ、あぁ」

「お、おう」

「蓮さんも、スマイルスマイル。蘭ちゃんも、ほら」

「え、えぇ」

「は、はい」

「な? ほらもう食器片して、外行こうぜ。いつまでも暗いまんまより明るく行こうぜ! 俺たちは今、ここで生きているんだからさ」

「イキテル、イキテル」

 

 

 

 

新華は自分の昼食の食器を持ち、ハロと歩く。一夏と弾も慌てて食器を持ち片付ける。

 

 

 

 

 

「んじゃ、街に繰り出しますか。お昼、ご馳走様でしたー」ガララッ

「ゴチソウサマ、ゴチソウサマ」

「新華、待てって! あ、ご馳走様でした、厳さん、蓮さん」

「えっと、じーちゃん、お袋、それに蘭。行ってきます」

「…おう」

「…行ってらしゃい」

「………」

 

 

 

 

 

新華を先頭に一夏、弾が続く。蘭は3人が出ていった後、しばらくして自分の食器を片付け部屋に戻って行った。

 

 

 

 

 

 




シャルロットとラウラを楽しみにしている人はもう少しお待ち下さい。あと1話挟んでからです。この1日はまだ続きます。

追記
グラディエーターに関する話が途中出ましたが、『ダーリンは外国人』の『イタリアで大の字』からの情報です。その後ネットでグラディエーターに関して調べてみたのですが、詳しい資料が無かったのでそのまま書いてしまいました。間違いが有るかもしれないので鵜呑みにしないでください。失礼しました。8/3

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