IS~疾走する思春期の転生者~   作:大2病ガノタ

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33話でし。


新華 VS ゴーレムトリニティ

 

 

 

 

 

新華がGNソードⅤで躍り出ると近接型がバスターソードで応戦し、射撃型は散開し擬似太陽炉搭載型は腕に内蔵されていたアームビームガンを展開しクアンタにロックする。3機に撤退という選択肢は無いようだった。

新華は目の前の近接型と切り結びながらソードビットで残りの2機を攻撃しようとクアンタに指示を出そうとした時

 

 

 

 

 

「…!(完全にスローネっぽいなコノヤロウ。まさかファングを隠していたとは)」

 

 

 

 

 

切り結んでいた近接型が足や背中などからファングを射出、新華に向け射撃と突撃をさせる。新華はすぐさま切り結ぶのを止め武装をGNソードからP・V・Fに切り替え対構造物徹甲弾を装填、内観還元力場とクアンタの性能に反射神経を使いファングの攻撃と擬似太陽炉搭載型の射撃、離れた所からの射撃型の砲撃を回避する。近接型が切り掛って来て攻撃が和らいだ時新華はソードビットを射出。3機はすぐさま反応して攻撃を回避、AMBACを用いて(・・・・・・・・・)行う。特に射撃型は先程の一夏達の戦闘とはうってかわって無駄な動きや棒立ちが無くなっていた。しかも左腕が切り飛ばされ重心が偏っているはずなのだが、むしろ残った腕を振り回しANBACに活かしていた。

 

 

 

 

 

「………(おいおいこりゃ…俺の戦闘データが元か?)」

 

 

 

 

 

新華は3機の動きを見て気付いた。そもそもANBAC機動自体が新華の十八番で使っている者は殆ど居なく、なおかつ射撃型の動きは新華がP・V・Fを展開した時に多様する物だった。ファングも新華のソードビットと斬り合いながら舞っている事もそうである。もしこれがセシリアなどの操縦者ならばソードビットの速さと密度に翻弄され切り刻まれるのだが、まるでビットがどこを斬るのか分かっている様な動きをしていた。

 

 

 

 

 

「………(きっついなぁ…でも、機械相手に(・・・・・)、それもこの程度の動きで当たる程場数踏んでねぇんでね)」

 

 

 

 

 

新華は体を回転させP・V・Fを掃射する。ANBACを用いた攻撃は幾つかのファングを捉え破壊する。そのまま近接型の左足を直撃、蜂の巣にし大破させる。

 

 

 

 

 

「…!(まだまだぁ!)」

 

 

 

 

 

今度は近接型に突っ込む。近接型はバスターソードで応戦しようと構えるが、新華はバスターソードの攻撃範囲外ギリギリで体ごと上空を向く。股下ががら空きになり隙をわざと作った---と思わせ腰に装備されていたフルセイバーユニットのソード部分を射出する。ユニットは慣性と射出による運動エネルギーにより勢い良く近接型を強襲、右腕の破壊に成功する。フルセイバーユニットは直ぐに役目を果たし拡張領域に収納され、新華はそのまま地上に向け加速、再び反転しアリーナの地面を抉り勢いを殺し停止する。ゴーレムトリニティはファングを回収し再び集まる。

 

 

 

 

 

「………(…まさか自分の戦闘データと戦う事になるなんてな…正直面倒いけど、いい機会だ。俺の弱点も見極めるか)」

 

 

 

 

 

新華はP・V・Fを解除し再びフルセイバーユニットを腰に展開、今度はサイドに付いているビームピストルを手に装備しトリニティを見上げる。

 

 

 

 

 

「………(期待を裏切るなよ…トリニティ、俺の弱点を教えろ)」

 

 

 

 

 

トリニティは、今度は射撃型が前に出て腕の銃口を新華に向け砲身を伸ばした。残りの2機は後ろに回りコードを接続。すると今までよりも太く威力の大きいビームを放つ。新華は地面を垂直に蹴り攻撃を回避、そのまま勢いをつけたままに加速、3機に向け突撃して行った。

 

 

 

 

---side 簪

 

 

 

 

簪はその光景を一夏達と共にピットで見ていた。今まで簪は姉の楯無と虚、本音と共に一般生徒の避難誘導を行なっており一夏達の援護が出来なかった。誘導完了後、千冬の居る管制室に行ったところこの場所に行くよう言われ戦闘に参加しないよう言われた。実際新華が行なっている戦闘は4機のビームが行き交いファングとソードビットが乱舞する程の激しい戦いで、介入の余地が無かった。

 

 

 

 

 

「凄い…」

「さっきと動きが全然違う…しかも新華の攻撃をあんなに躱すなんて…」

「また、私のBTの優位性が…」

「…何よあれ…人間が出来る動きじゃ無いわよ…」

 

 

 

 

 

一夏達は今まで新華の規格外を見てきたが、こうして実際に戦う所を見るは初めてである。しかも新華だけではなく相手の3機も高い性能を持ち、一夏と鈴が苦戦し辛勝した時よりも断然動きが良い機体と互角に戦っているのだ。それも4機ともファングを避ける為に高速で移動し続けているという、極めて高度な戦いだった。唖然となるのも無理はない。

 

 

 

 

 

「くそっ、やっぱり遊ばれていたのか? また新華に守られているのかよ…!」

「一夏…」

「一夏、アンタ…」

「一夏さん…」

「……」

 

 

 

 

 

簪は拳を固く握り締めている一夏を見る。一夏の顔には悔しさが滲み出ていた。

 

 

 

 

 

「俺たちのさっきの戦いは、あの戦いを見てると新華が言っていた通り本当に遊びに思えてくる…。あれだけ必死になったに関わらずに」

「そう、ね。正直レベルが違い過ぎるわ」

「あ、頭がおかしくなりそうですわ…あんなに高度なBT操作をするなんて…」

「………」

 

 

 

 

 

セシリアの言う通りビットの動きは既におかしかった。ただ乱舞している様に見えるがそれはお互いの攻撃を避けている為で、彼女らが加わった途端に落とされてしまう事は容易に想像出来た。それは新華に認められた簪も同じで、自分があの戦いに参加しても邪魔になるだけだと直感した。

 

 

 

 

 

「………? あの機体、動きが…?」

「? どうしたんですの、更識さん?」

「あの3機、動きが新華君に似ている…。まるでコピーされたような…」

「…確かに、戦闘の凄さと新華のセリフで圧倒されて気付かなかったが…剣の軌道と回避法が新華のと同じだ」

「…それだけではありませんわね。BT類の兵器の動かし方が似通ってますわ。それに射撃もそれぞれの武装の構えが同じのようですし」

「って事はあれか? あの無人機は新華の戦闘データが元になって動いているって事か!?」

「…? 無人機? どういう事?」

「…実はな、俺と鈴があの片腕が無い機体と戦っていた時、妙に行動に違和感を感じてさ。鈴と話し合った後無人機って分かって思いっ切り切りつけたんだ。ほら、あそこに腕落ちてるだろ?」

「…ん。断面が、機械…?」

「そう。実際に斬ったら出たのは血じゃなくてオイルだった。セシリアもそれを見て心置きなく撃てたんでろうけど…」

「ええ。それに一夏さんの期待もありましたし、エネルギーに余裕をもたせる為にも1撃で仕留めるべきでしたし」

「…そういえば新華はアレが無人機だと知っているのか? 知らなかったら先程の一夏の様に決定打を与えられないのでは?」

「「「!」」」

 

 

 

 

 

一夏達は箒の言葉で新華を見上げる。新華は相手になかなか攻撃を仕掛けていなかった。それに気付いた一夏達は新華に無人機の事を伝えようとするが

 

 

 

 

 

「っく、まずい! 新華に伝えないと…!」

「…いや、新華は気付いたようだ。流れが変わった」

「! BT類を戻しましたわ! これは…」

「…オルコットさんの時の流れ…もう、終わる」

 

 

 

 

 

新華の行動によりもうこの戦闘が終わるのを感じ取った簪は、新華の動きを見逃すまいと目を凝らした。

 

 

 

 

 

-----side out

 

 

 

 

 

簪達の予想通り戦いは終わりが近付いていた。新華はもう満足していた。

 

 

 

 

 

「(さて、大体弱点には気づけた。ってか何で今まで気付かなかったのかねぇ…)」

 

 

 

 

 

新華が気付いた弱点は以下。

・ANBACの多様のし過ぎで回転中に隙が出来ている。

・ファングの攻撃部分が間接に集中しすぎている。

・動きがだんだん直線的になる。

・複数の武装を活かしきれていない。

・バ火力に頼り過ぎている。

・無駄な移動が多い。

 

 

 

 

 

「(クアンタとP・V・Fに頼り過ぎだな。意識しないと一夏達に偉そうに言えねぇな)」

 

 

 

 

 

ソードビットを戻し粒子チャージをさっさと終わらせる。こうしている間もトリニティからは攻撃が続いている。

 

 

 

 

 

「(よし、チャージ完了…このチャージスピードにも頼りすぎているな。調子に乗らないようにしないと)」

 

 

 

 

 

近接型がファングを飛ばし斬りに来る。新華は殲滅を開始する。

 

 

 

 

 

「………(終わりだ)」

 

 

 

 

 

近接型のバスターソードを腰のフルセイバーを分離後左手に持ち受ける。その隙に射撃型が接近、殴った後零距離でビームを撃つつもりなのか拳を腰に溜め勢い良く突っ込んでくる。

 

 

 

 

 

「(悪いが、その攻撃も俺の十八番だ。だから---)」

 

 

 

 

 

突き出された拳をP・V・Fの砲身部分で(・・・・・・・・・・・)受け止める。流石に予想外だったのかトリニティ全機が動きを止める。

 

 

 

 

 

「…!?」

「(対策も簡単に割り出せる。それにお前らと俺()には決定的な違いがある)」

 

 

 

 

 

そのままP・V・Fを発砲。射撃型の腕は完全に破壊され地上へ降下、その間に突然動きを変えたソードビットがファングを全て切り裂く。

 

 

 

 

 

「!!!」

「(人は、戦っている最中でも、成長すんだよ!)」

 

 

 

 

 

丁度真後ろで擬似太陽炉搭載機がビームを新華に向け撃つ。しかし新華は冷静にソードビットでGNシールドを張り弾く。新華はそのまま自分の腕力のみ(・・・・・・・)で近接型のバスターソードを押し突き飛ばした。ISであり人ではない無人機、特に近接型は腕部や四肢などの出力を上げられており並みの人間にはまず負けないパワーがあった。だが新華はそれを押し切り突き飛ばした。ゴーレムのCPUは予測外の事態の連続でショートしかけていた。しかし新華はそこに止めを差しに行った。

 

 

 

 

 

「(砕けぇ!)」ドガァン!

 

 

 

 

 

即座に手持ちの武装を解除し大型ハンドユニットを展開、拳を握り締め近接型の真上に跳び一回り大きな拳を叩きつけた。その際、機体の全スラスター、上半身の回転、腕の振り抜き、ハンドユニットの射出機構を同時に作用させて破壊力を最大限引き出す。結果、近接型は為す術も無くアリーナの地面に叩きつけられコアごと(・・・・)胸部を潰された。

近接型を撃破した新華は地面に叩きつけた近接型に興味を失ったかの様に、まだ上空で浮いている擬似太陽炉搭載型()を見やり、地面を蹴って接近した。擬似太陽炉搭載型は直ぐに腕の中にマウントされていたのであろう、ビームサーベルを引き出し新華を迎撃しようとした。

 

 

 

 

 

「(頂く…!)」

 

 

 

 

 

新華は大型ハンドユニットの指先にある銃口からビームを発振、サーベルの形を形成させクローとして機能させる。そして擬似太陽炉搭載型が小振りで鋭く斬ろうとしたが

 

 

 

 

 

「(貰いっ!)」

 

 

 

 

 

新華は斬撃を紙一重で躱しクローで太陽炉兼コア部分を正確に抉り取った(・・・・・)。擬似太陽炉搭載型はそれで完全に機能停止し、体の各所から残っていた擬似GN粒子を薄く吐き出した。その時

 

 

 

 

 

「(さっきの射撃型かっ!)」

 

 

 

 

 

両腕を破壊されたがコアとスラスター部が無傷の射撃型が地上で最後の足掻きに腹部に隠されていたビーム砲を構える。丁度新華が2機を相手にしていた間にチャージが完了したのだろう、もう発射寸前だった。これがもし一般のIS操縦者ならば直撃していただろう素晴らしいタイミングとポジションだった。

 

 

 

 

 

「(………)」

 

 

 

 

 

しかし新華は何も考えずに体を傾けた。直後射撃型のビームが新華に伸びる。だが新華が体を傾けた事で角度が調節され、大型ハンドユニットのクリア部分がせり出し展開、ユニットの表面に薄いGNフィールドをはりビームを弾き空へと逸らした。傾けたエネルギーをそのままに回転、地面へと急降下し再び地面を抉り着地。そのまま大型ハンドユニットの手の平を射撃型の頭部に叩きつけ一気に壁へと押し付ける。

 

 

 

 

 

「…砕けろ」

 

 

 

 

 

そのまままた新華自身の握力を経由して射撃型の頭部を握り潰す。射撃型は残った足と胴を振り回し足掻いていたが鍛えられた強靭な肉体とクアンタの装甲の前には全く意味は無く、ギーッっと嫌な音を立ててオイルを飛び散らして頭部を破壊された。残った胴はズルズルと足を屈め座りこむように崩れ落ちた。潰された頭部からはオイルが流れ、まるで惨殺現場に見えた。

 

 

 

 

 

「…状況終了」

 

 

 

 

 

新華は何事もなかったかの様に呟き徐ろにクアンタの手を見る。トリニティの流したオイルまみれだった。それはまるで

 

 

 

 

 

「………返り血、か」

 

 

 

 

 

新華にとっては見慣れてしまったもの。そしてもうこびり付いて落ちない、罪の証である血。今、IS学園という箱庭(ぬるま湯)で改めて己の罪を自覚する。

 

 

 

 

 

「………」

『し、新華…? 大丈夫か?』

「ん。………大丈夫だ。後は教師陣にお任せしよう…」

『そ、そうだな…』

 

 

 

 

 

一夏から通信が入る。その声には少々怯えが混じっていた。無理もないと新華は思う。かつて虐めを受けていた頃の自分であれば下手をすると失禁してしまう光景だろうと。それ程に新華の今の手と惨状はおぞましかった。新華の目の前には頭を潰され惨殺されたような両腕の無い機体、少し離れた所には五体満足だが胴が完全に潰れオイル溜まりが広がっている機体、更に少し離れて胸を抉られた女性型の機体が転がっている。そして新華の手はオイルまみれ。ぱっと見どう考えても殺害現場にしか見えないだろう。

その証拠に遅れてようやく到着した教師陣の中には口を抑える者や顔を真っ青にする人物が少なからず居た。

 

 

 

 

 

「…戻ろう。箒、鈴、セシリア。一夏も今までの戦闘でダメージが有るはずだ。念の為、今すぐ医務室に行ってこい」

『あ、ああ』

『し、新華はどうすんのよ?』

「俺も行くが、まずは織斑先生に報告だ。先に行ってろ」

『え、ええ。そうしますわ』

「…簪さんも会長に報告に行ってくれ。後始末は任せて」

『…でも』

「………なに、気にすることはないさ。さ、時間は有限だ。さっさと動く」

『う、うん…』

 

 

 

 

 

一夏達はピットから居なくなり新華もピットへ移動した。後ろを振り向きぎこちない動作で作業をする教師陣を見た。

 

 

 

 

 

「…これからの俺以外の生徒達の安全はあんたら(箱庭の管理者)が握ってんだ。精々、がっかりさせないでくれよ」

 

 

 

 

 

そう零して新華もピットを去った。

 

 

 

 

 

 




最近ちょこちょこ少なく書きすぎて所々おかしな所があるかもしれませんが、暖かく見守ってくれていただけると嬉しいです。
ちなみに新華の癖は文中以外に
・一気に決める時になるとソードビットを回収する
・なるべく最低限の動きだけで終わらせようとする
があります。前者は相手にタイミングを気取られますし、後者は狙いが正確過ぎてむしろ相手が強者なら防御されやすいという弱点を持っています。新華は気付いていません。

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