どうぞ
2度目の死
廃墟と化したビル街を、瓦礫を避けながら高速で移動する人影が3つ。
2人は体にピッチリと機械的な鎧なようなものを身に纏っている。1人は湾曲刀を2振り、もう1人は輪の形をしたブーメランを手にした女性。
そしてそれを追う1人の青年は、右腕の部分が自分の身長ほどありそうな巨大な銃器になっていた。
「振り切れない…!」
「くっ、なんなのこいつ!?」
「逃がさん…!」
追っている青年の名は
かつて城戸高校映画部に所属し、戦争を終わらせて犠牲になった
そして同年代の2倍の人生経験を持つ
「"新生人類"はっ…ここでっ!!」
---パラベラムとは自分の殺意や闘志を、銃器の形にして物質化することが可能な特殊能力、及びその能力者のことである。
この能力は、一部の例外を除き利き腕に<サイコバリスティック・ファイアアームズ>---通称<P・V・F>---を召喚し、発生する内観還元力場と言うパラベラムでも超人の様な動きを可能にするフィールドと、精神力で作り出した弾でアクロバティックな戦闘行為を行うことが可能となる。
パラベラムが使用するP・V・Fには2種類あり、防御重視で拳銃の形をしたのイド・アームズ、攻撃重視で大型な銃器のエゴ・アームズ。
イド・アームズは『トラウマ・シェル』と呼ばれる球状の精神によるシールドを貼ることが出来、人によっては索敵や精神弾による負傷の治療が行える者もいる。
エゴ・アームズは精神力で作り出した弾を入れ打ち出す事で、高い攻撃力を作り出す。イド・アームズの発動後時間をおいて発動可能となる。
「ちっ、こうなったらやるしか…! 行くわよ!」
「…! 分かった!」
追われる2人が振り向き新華に相対する。
---新生人類とはパラベラムな中から一部の者たちが『次世代の人類』として生まれ変わった生物。主に生活に必ずついてまわる知識から感情まで、その全てを自身の中で情報として整理、処理することが出来る。生殖はこれまでの様に優性生殖も出来るが、お互いの遺伝子情報を組み合わせて性に関係なく新たな個体を生み出す事も可能である。パラベラムから生まれただけあって戦闘能力は高い。違いはそれまで使用していたP・V・Fが銃器だったのに対しこちらは、それを元にした近接武器が主体となっており、P・V・Fを情報に変換し体に直接鎧のように装備する。更に見える範囲でのみの瞬間移動を可能としており、空中に滞空も可能となっている。しかし肉体をも情報とするためか死亡すると跡形も残らず消滅してしまうという特徴がある。
「! 来るか!」
新華のエゴ・アームズ---45口径『ストーリーズ・イレギュラー』に精神系通常弾の入ったマガジンを装填する。
---パラベラムの使用する弾は主に2種類あり、生物の持つ神経を直接破壊する精神系、生物の身体には全く影響しない対構造物系。
これらを状況で使い分ける事が出来るのがパラベラムの利点だが、どれも自身の精神から生み出すのでコンディションによって戦闘能力が減衰する事や、使いすぎると最悪動けなくなってしまうと言う欠点がある。
「喰らえ…!!」
新華のP・V・Fは3つのガトリング砲が合わさった形をしており、マガジンを1度の戦闘で3つ必要とするが、連射と速射に秀でており大きな破壊力を生む。
その銃口から銃弾が大量に吐き出される。
-----ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!
「くっ…」
「これはっ…!!」
「おおおおオオオオオオオ!!!」
弾幕が2人を襲う。"湾曲刀持ち"は何とか流すが"リング持ち"は慣れて居ないのか幾つか被弾してしまう。
「ぐっ!?」
「!?大丈夫!?『------』!?」
「今だ、落ちろっ!」
「「しまっ---」」
片方が被弾したのに気を取られて"湾曲刀持ち"は動揺し動きが鈍る。そのスキを見逃さず新華はP・V・Fのセレクターレバーを『S・S』にセット。スペシャル・ショットを放つ。
---スペシャル・ショットとは、エゴ・アームズにのみ存在する“諸刃の剣”。威力と効果は人それぞれで同一のモノは存在しない。
破壊力は通常弾より圧倒的に強力で、精神の殆どを使い切る為その後の戦闘がほぼ不可能となる。
新華のP・V・Fの3つのガトリングがそれぞれ外側に向き、中心から1つのコンテナが発射される。
直後、コンテナから無数の小型ミサイルが縦横無尽に打ち出され新生人類の2人を襲う。
そして…
「ああっ!?」
「『------』!!」
「まず1人目!!」
態勢の崩れたリング持ちにミサイルが殺到し、"輪持ち"は消滅する。"湾曲刀持ち"が彼女の名を叫ぶ。しかし殺し合いは止まらない。
「この野郎! よくも私の娘を!」
「娘だと!?」
「そうだっ! アイツと私の絆の証だっ!!」
"湾曲刀持ち"が瞬間移動で切りかかってくる。S・Sを放った直後、P・V・Fをイド・アームズ『no name』に切り替え精神の消費を抑えており短時間だが即座に戦闘が可能となっていた。
「ふざけんな! テメェらのせいで人類が滅びかけたんだぞ!?」
「そのまま滅ぼされとけば私等が新しい人類になれたんだ! 愚行を繰り返すゴミどもなんぞ滅びれば!」
「その見下した考え自体がゴミだっつってんだよぉ!」
2振りの刀が降り下ろされる。イド・アームズで迎撃しようと銃口を向け発砲。しかし瞬間移動により外れる。そのまま後ろに周り込み不可避の斬撃が繰り出される。しかしまるで分かっていたかの様に真後ろに弾丸が飛ぶ。
「ちっ、厄介な…!」
「なんだコイツ!?見切られてる?!?」
「ぐっ、このままだと…」
戦闘が開始されてからそれ程時間が経っていないがお互い心中穏やかではなかった。
新華は軽減したとはいえ、S・Sを撃ち更にイド・アームズでの戦闘で精神を削っており余裕が無くなっている。
対し彼女の方は娘を殺され、更に自分の攻撃が見切られているかの様な相手の戦闘能力により怒りと焦りが生まれ、止まらない攻撃で感情の整理をつけられず更に焦る悪循環に陥っている。
「一気に決める…!!」
「! 冗談じゃ無い…! こんな所でぇ!」
新華が一気に距離を詰める。今までには無い速度だった。それに虚を突かれ取り乱す"湾曲刀持ち"。右手の刀の先を新華に突き出す。
しかし
「ぅぐあっ!」
「!?」
新華は速度を緩めず左腕で刀を受け止め力を入れる。すると筋肉が膨張し刀が固定される。
「しまった!」
「消えろおおおお!!!」
『no name』を直接押しつけ引き金を引く。同時に"湾曲刀持ち"は一瞬で残った一振りを逆手に持ち
「----------」
新華の心臓を貫いた。同時に
---ガガガガガガガ!!!
『no name』が火を吹き"湾曲刀持ち"をこの世から消滅させた。
「ガフッ、ゴポッ」
血を吐きながらP・V・Fを解除しガレキの上に倒れる新華。その胸からは血が吹き出しガレキを赤く染める。
(あぁ、ここで終わりかクソッタレ)
うつ伏せに倒れ朦朧とする意識の中
(今回もまともな死に方してねぇなぁ俺)
最期の思いを吐く。
(皆、あばよ、先に逝くな)
意識が闇に落ちていく-------
いかがでしたか?
この主人公の能力は転生しても引継ぎます。故に最初っからチートです(笑)