IS~疾走する思春期の転生者~   作:大2病ガノタ

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USBメモリの調子が悪いのでしばらく更新遅くなるかもしれません。


試合後

 

 

 

 

セシリアを彼女の居たピットに戻し堂々と一夏達の居るピットに戻ってきた新華。

 

 

 

 

 

「…………ふぅ、よっと」

「ハロッ」

 

 

 

 

 

ピットに降り立つや否やクアンタを解除してハロを取り出す。そこに一夏達が駆け寄る。

 

 

 

 

 

「新華!」

「おう一夏、箒。ちゃんと見てたか?」

「見てたかじゃねぇよ! やりすぎだろ!? 明らかにオルコットの奴怯えてたぞ!」

「あー、クアンタ展開すると手加減出来なくなるからなぁー。ま、止めようとは思わねぇが」

「新華!」

「あのな、俺は今まで 落とされる=死 って状況にいたんだぞ? それを何年も繰り返していた奴がどうやって手加減しろと?」

「…新華、お前はあの人と何していたんだ…」

「ハロ、シンカキケン、キケン」

 

 

 

 

 

一夏が新華に詰め寄るが汗一つ無い新華には全く意味がない。

 

 

 

 

 

「オルコットにはいい薬になっただろうが、最後の斬撃は要らなかったな。あの時点で勝敗は決していた」

「ですけど、ホント手加減出来ないんスよ、織斑先生。殺れる時に殺る、でないと死に直結するんで。いくらクアンタが高性能でも俺が殺られちゃ意味ないっスから」

「さ、殺伐としてますね…でもIS学園は安全なのでそこまで考えなくてもいいのでは?」

「…俺から見たら穴だらけなんですが…俺にも譲れない物があるんですよ。まぁ以降は実戦(・・)と区別するよう努力はします、好奇心で向かって来る奴は。まだ何かネチネチ言ってくる奴等にはしませんが」

「後者は加減で済ませろ。何にせよ今日はこれで終わりだ。帰って休め」

「うぃーっす。行くぞハロ」

「ハロッハロッ」

 

 

 

 

 

千冬の解散宣言で一夏は新華にまた話しかけようとするが新華はひと足早く廊下のドアに向かっていた。そこで箒が一夏と話たがっているのに気付く。

 

 

 

 

 

「一夏ー、言いたいことは分かるが俺は考えを変える気は無いからな。あと、箒がお前さんと話したいみたいだから先寮に戻るわな」

「新華!」

「箒、ガンバ。お膳立てはしといた」

「ちょ、新華!?」

 

 

 

 

 

そうして箒に小言で呟きながら通り過ぎようとする。しかし1度立ち止まり再び箒の耳に小声で呟く。

 

 

 

 

 

「あ、それと、ライバルが増えたよ! やったね箒!」

「ハァッ!? どういう意味だ新華…!」

「さぁーてぬぇ~♪ 因みにあと少ししたらそこに+1人入って来ると思うから、楽しみにしてるよ~♪」

「待て新華…!」

「新華! おい!」

 

 

 

 

 

新華は2人の静止を無視してピットから出る。そこに残された一夏と箒はやり場の無いモヤモヤを抱える羽目になった。

 

 

 

 

 

「新華、あいつ…」

「…一夏、新華は中学の時音楽同好会に所属していたと言うのは本当か? 歩き方から身のこなしまで何かやっていた様な動きなんだが」

「…一応、本当だ。あの頃からのトレーニングは欠かさずしているみたいだけど………あ」

「? どうした、何か思い出したのか?」

「あ、ああ。実は新華、始めてISが出てきた事件の後から行方不明になる事が多かったんだよな。しかも数日間も」

「なんだと…? ではその間に?」

「多分…………あーもう何なんだ! 新華は一体どうしちまったんだ!?」

 

 

 

 

 

余りにも新華の存在が謎過ぎて叫び出す一夏。箒も戸惑いを感じているようだった。

 

 

 

 

 

「………悔しい」

「は?」

「俺たちが学校で過ごしている間に新華はどこまでも強くなっていく。俺が苦戦しまくっていたオルコットは新華にとって相手にならなかった。昔から新華は知らない所で守ってくれていたみたいだけど…」

「………」

「俺は守られるんじゃなくて守りたい! 大切な物を! 昔からそう思っていたし今でもその思いは変わらない! でも俺は今まで千冬姉ぇどころか同い年の新華にまで守られていた! それが本当に悔しい…!」

「………一夏…」

「…クソッ…」

 

 

 

 

 

それは紛れもない一夏の意思。その思いはセシリアと戦った新華に影響され叫びとなり『思い』を『想い』へと進化させる。その想いは箒をも突き動かす。

 

 

 

 

 

「なら、一夏。強くなれ」

「! 箒」

「私だって…!」

 

 

 

 

 

箒も一夏と同じ様に叫ぶ。

 

 

 

 

 

「新華に剣道の自信を打ち砕かれた時悔しかった! 自分が道を見失って愚かにも天狗になっていた時にあいつは、目標だった奴は更に遠くまで離れてしまっていた! かつて一夏と3人で己を高め合っていた頃以上に差が開いて挫けかけた! でもあいつは私にまた共に3人で剣道をしようと言ってくれた!」

 

 

 

 

 

箒の叫びがピークになる。

 

 

 

 

 

「その時は嬉しかったさ! またあの頃の様に剣道が出来ると! だがあの戦闘を見てあいつが昔より手加減して来る事が分かって悔しかった! 新華との実力差に! いつの間にか上を目指さなくなっていた自分に!」

「………箒…」

「ハァッ、ハァッ、ハァッ、い、一夏…。強く、なるぞ…」

「…あぁ! 強くなって…!」

「更に上に行く為に…」

「新華すらも含めた、大切なもの全てを、守る為に…」

「「いつか新華をギャフンと言わせてやる!!!」」

「…」

「…」

「………」

「………」

「………フッ」

「………はは」

「「あははハハハハハハッ!!!!!!」」

「やってやろうぜ! 箒!」

「ああ! やってやろう!」

 

 

 

 

 

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「青春、してるなぁー。しかし分かってんのかね? 俺を超えるって事は人間辞める様なもんだと」

「あれぇー? あおきー自覚してたのー?」

「あのな本音さん、俺だって幼い頃から毎日欠かさず鍛えてたんだぜ? 今も、ほら。両腕と両足に重り付いてるだろ?」

「あ、ホントだー」

「これら無しで俺を今から超えるって、アイツ等の才能が有ればいつか出来るかもだけどそんな直ぐに出来る筈ないよ。残酷だろうけどそれだけ俺は努力をしてきた。俺にはアイツ等みたいな何かに特化した才能なんて無いからね」

「えっ、そうなの…?」

「…簪さん、俺も人間だからな? 何もせずにあんな戦闘は出来ねぇよ。ま、取り敢えず歩かねぇ?」

「ハロハロ」

 

 

 

 

 

ピットから出た新華は、扉のすぐ側に来ていた簪と本音と共に新華と箒の宣言を聞いていた。

 

 

 

 

 

「幼い頃から努力して努力して…一夏が言っている様に俺も大切なものを守れるだけの強さが欲しかったんだよ。それもあの事件でそのハードルが恐ろしく高くなったけどね」

「事件って…『白騎士・蒼天使事件』?」

「そう。あれで箒の一家とは離れ離れになったけど安全が確保されていたんだ。でも千冬さんと一夏は違った。束さんと深く関わっていたから狙われやすくて危険だった。でも政府からの音沙汰は無し。そんな鴨を各国が放っておく訳が無い」

「うわぁー」

「そんな…!」

「当然2人を狙ってスカウトやらエージェントやらわんさか来たさ。だけど千冬さんの方は束さんが変態的な行動で問題なかったんだが、問題は一夏の方だった。束さんなら一夏の方も何とかなるはずだったんだが、当時はまだ監視が付いていたから限界があった。そこで丁度一夏と一緒に居た俺に白羽の矢が立った。俺なら普段から鍛えていたしクアンタ---あ、『蒼天使』の事ね---もあるし問題無いと」

 

 

 

 

 

もう今更になるので新華は簪と本音の2人につらつらと話す。

 

 

 

 

 

「もうそれからあのクソう詐欺(束さん)が監視すり抜けてフラフラする3年前まで大変だったよ…。攫おうとする奴等は片っ端からそこらへんの不良共と一緒にボコボコにして帰ってもらい…スカウトやら勧誘やらは丁重にお断りして帰ってもらい…それがほぼ毎日続いて、いつの間にか慣れちまった…。気付いたとき割と凹んだよ…」

「あおきー…」

「新華君…」

「っと話がずれたな。そんな事出来るのも昔から人一倍一生懸命鍛えてきたからだ。昔から守りたい想いは人より何倍も強いと自負していたし、何よりようやく手に入れた(・・・・・・・・・)幸せな日常を手放す気は無かったからね」

「へぇ~」

「…ん?」

「ま、一夏の護衛で更に戦った事で経験を積み重ねられたし、仕事でしょっちゅう色んなトコ行っている間でも護衛を安心して頼める『更識』の人達に会えたのは+だったけど」

「凄いねあおきー、いっぱい色んな苦労してきたんだねぇ~」

「…本音さんが言うと力が抜けてくるな。んで、そうやって今までの時間過ごして今の俺が居るんだ。いくら才能があったとしてもそう簡単には超えられないし超えさせるつもりも無い。アイツ等はこれからも狙われる事になる。IS学園がいくら安全を謳っても卒業後外に出てしまえば関係無いんだ、そうなるといつかアイツ等自信の能力だけで何とかしなきゃならない。それまでアイツ等の目標になり続ける事で鍛え上げるのが俺の今の目標かな?」

「ん~、なんかあおきーって過保護なお母さんみたいだね~」

「か、過保護…、お母さん…」

 

 

 

 

 

本音の一言でダメージを受ける新華。今まで弾もそんな感想を抱いた事があったが口に出さなかった為新華は気付いていなかった。本音はダメージを受け狼狽える新華をケラケラ笑いながら見ていたが、簪は何かを悩む様な顔になっていた。

 

 

 

 

 

「(ようやく手に入れたと言っていたけど…どういう事? 彼には両親も友達も最初から居るはずなのに…)」

 

 

 

 

 

新華がうっかり呟いた一言が引っ掛かった簪は考えるが、新華がまさか転生者だという結論には至らず疑問を抱いた。しかしそう悩んでいる間も歩いている為、寮に近付いていく。

 

 

 

 

 

「…お、寮に着くじゃん」

「あ、ほんとだ~」

「…あ」

「んじゃ俺はこれで。後で一夏達とまた会って反省会する予定だから先行くな」

「うん、おつかれあおきー」

「お疲れ様…」

「うい、お疲れー」

「ミンナオツカレ、ミンナオツカレ」

 

 

 

 

 

新華はこの後の反省会の準備の為に簪と本音と別れ先に自身の部屋に向かう。残された2人も自分達の部屋に戻って行く。

 

 

 

 

 

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「やぁ」

「…おう、来たな」

「新華か」

「ハロッ」

 

 

 

 

 

新華は夜1025室にハロを連れて来ていた。反省会をするために一夏と自分の戦闘データを持って来ていた。

 

 

 

 

 

「さて、やるぞ反省会。またテレビ借りるぞ」

「その前に新華、聞きたい事がある」

「ん? 何だ?」

「お前は今日試合の時リミッターを機体に掛けていたと聞いたんだが、本当か?」

「そうそう。本来の5割も性能出ないって聞いたんだけど」

「ああ。本当だ。千冬さん辺りから聞いたのか? まぁいいけど、俺のクアンタはIS学園で使う様な試合用の物じゃねぇんだ」

「ほぅ…」

「そういや新華はあの機体を『クアンタ』って言ってるよな? 『蒼天使』じゃないのか?」

「『蒼天使』は世間で言われている通称。正式名称は『Evolve クアンタ』って言うんだ。俺はクアンタって言っている」

 

 

 

 

 

一夏と箒の質問に律儀に答える新華。新華にとって本当に今更で教えても問題無い為スラスラと答える。その間もハロを使った作業は進めていく。

 

 

 

 

 

「『Evolve クアンタ』…」

「そ。明日辺り試合用のデータが公表されると思うから詳しくはそっち見な、一々説明すんのも面倒いし。よっし接続完了。他に何か質問あるか?」

「では、お前が言っていた譲れない物とは何だ? お前の事だ、プライドなどではないだろう?」

「当然。だけどそれは少し待っててくれ。説明するには時間が掛かる。時期が来たら教えてやるよ」

「…そうか」

「じゃあさ、あの山田先生に返事したときの『jud.』って何だ? 山田先生も知らなかったみたいだけど」

「あれは『judment』を略した俺の集中時の返事だ。咎人用の物だな」

「咎人って、新華が?」

「あぁ、俺は罪を既に大量に重ねて来た。でもその罪は公になる事はほぼ無いと行って良い。だけど俺自信はその罪を忘れないし背負い続けていく。そんな咎人だから『jud.』って言っているのさ」

 

 

 

 

 

自分の決意と強い意思を2人に示しハロの準備を終える。一夏と箒は新華のセリフに言葉を無くす。新華の言葉に悲しさと自分達が知らない何かを感じ取っていた。

 

 

 

 

 

「質問無ければ反省会始めるぞ。大丈夫か?」

「…あぁ。問題無い」

「…おう」

「………じゃ、流すぞ。途中途中止めながら解説・反省点の指摘をするから参考にしろ」

 

 

 

 

 

一夏 対 セシリア の試合映像を流し容赦なく指摘をしていく新華。その容赦の無さに一夏はボコボコにされるのだった。

 

 

 

 

 

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---side セシリア・オルコット

 

 

 

 

 

「織斑 一夏…」

 

 

 

 

 

部屋に備え付けられたシャワールームで今日の試合の汗を流すセシリア。その整った体に沿って温水が流れるがセシリアの頭の中には自分に立ち向かって来る一夏の姿があった。

 

 

 

 

 

「あの方は…」

 

 

 

 

 

セシリアの男性に対する一般像は女尊男卑に染まっていると思われるが厳密には違う。セシリアの家庭にその原因はあった。セシリアの家族は母親と父親とセシリアの3人家族。しかし父親はオルコット家に来た婿養子であり立場は母親よりも低いものだった。セシリアは父が母の顔色を伺っている姿しか見ておらず、他にいた男性も母のご機嫌取りなどをして碌な者が居なかったせいでイメージが歪んでしまったのだ。女尊男卑による男性を見下す風潮は歪みを深くさせただけに過ぎない。そんな男性のイメージが強くなっていたせいか彼女は自然と他人に高圧的になり、代わりに無意識で他人に自分以上の強さと勇ましさを求めていた。

そこに世界初の男性操縦者が目の前に現われ素人にも関わらず自分を撃墜あと一歩まで、一歩も引かずに追い詰めた。その意思の強さはセシリアが男性に求めていた理想の人物であった。

簡単に言えば、一夏はセシリアのストライクゾーンど真ん中であったのだ。

これまで良い出会いが無かった彼女が恋に落ちるのは自然の流れだっただろう。

 

 

 

 

 

「一夏さん…」

 

 

 

 

 

ウットリとトリップしながら今日の試合での一夏の雄姿を思い浮かべるセシリア。しかし

 

 

 

 

 

「青木 新華…ッ」

 

 

 

 

 

一夏と戦った後に相対した、自分のブルーティアーズより深い青と白のカラーリングで彩られた伝説の『蒼天使』に身を包んだ大人びたもう1人の男性操縦者。彼との試合とは呼べない様な一方的な戦いが、死の予感がまざまざと思い出される。

セシリアはあの試合がトラウマになっていた。初めは自分の本気のBTすら使った攻撃をBTに似た武器で完全に無効化され、BTにエネルギーチャージして再び射出した時BTの様な兵器を仕舞い攻撃が全て避けられた。絶対防御が発動すると確信した攻撃は全てギリギリの所で回避された。自分の放ったミサイルの爆風で姿を見失ったと思えば全ての射撃武装を破壊され、縦に切られ、首に刃を添えられていた。

ガラス越しに見えた目からは表情が何も感じられず、強く死を意識した。試合終了の合図があり彼が後ろを向いた時生きている事に安心して無様に気絶してしまい屈辱を感じたが、それ以前に恐怖が湧き上がった。

 

 

 

 

 

「あれが『蒼天使』…青木 新華…一夏さんの幼馴染…」

 

 

 

 

 

クラスが同じであり好きになった一夏と殆ど一緒に過ごす彼は、セシリアにとって恐怖の対象であり一夏に近付きにくい原因だった。

しかし一夏と仲を深めると言うことは彼とも接することになり憂鬱になるのだった。

 

 

 

 

 

「…ハァ…」

 

 

 

 

 

セシリアはまず自身の行動を顧みて一夏になるべく集中する事で恐怖を回避しようと思うのであった。

 

 

 

 

 

 




+1は皆さんお待ちかね鈴ちゃんです。ヴェーダを舐めるなと。
セシリアにトラウマァ。
書いてたら何か一夏と箒がまとも?な青春を・・・
新華が進化させたってね

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