IS~疾走する思春期の転生者~   作:大2病ガノタ

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16話目、いっきまーす


食堂、専用機

 

 

 

「ぅあぁ眠ぃ。不意打ちで起こさないでほしぃわぁ~。御陰で寝不足ぁあ~」(つoー)

「新華さっきから欠伸凄いな。何かあったのか?」

「あー、まー、ルームメイトの人がなー。…ルームメイトと言やぁお前と箒も同室なんだろ? さっきから箒の機嫌が悪いんだが、何かしたんダロ?」

「なっ、なんで俺が何かしたみたいに言うんだよ!」

「だってお前と仲の良い異性の機嫌が悪いのって大体お前のせいだし。フォローするこっちの身にもなれよ」

「ほぅ…一夏、私が居ない間に軟弱な奴になってしまった様だな…」

「イヤイヤ訳わかんねぇし! って箒! 木刀を振ろうとしないでくれ、ここ食堂だから!」

「ハロッ、ハロッ」

 

 

 

 

 

朝、更識生徒会長が布団に潜り込み未遂事件のせいで毎朝の日課が出来なかった新華は、会長のイタズラと理性と戦いながら一夏達が起きる時間まで体と頭を動かしていた。

生徒会がある彼女は先に部屋を出たが、新華は一夏と箒と合流して朝食を取りに食堂に赴いた。

普段新華は朝5~6時頃に起き柔軟体操とランニングを行なっている。いくら規格外のISと特殊能力を持っているとはいえ、ベースの肉体が貧弱だと戦闘にも直結することを『パラベラム』の世界(前世)で思い知っていた事から、この習慣を行わない事は殆ど無かった。そのトレーニングに加えて年々重くなっている重りを両手両足に付け、風呂と戦闘以外着けっぱなしであるため全て外した時の純粋な身体能力は千冬に勝るとも劣らない。

食券を買い適当に新華、一夏、箒の順で窓側のテーブルに着き食事を開始する。新華は先程から周りの女生徒から批難めいた視線が飛んで来たり、あからさまに聞き取れる陰口を吐いていたが総スルーした。実際には言葉に出されていないのも。

 

 

 

 

 

「(さっきからうるせぇな、目の前で堂々と言われるのもアレだがこうもネチネチとよくもまぁ喋れるな。無視して飯食うか)」

「うぉっ、旨いな! どんな調理方なんだろ」

「この味噌汁はあさり入りか、一つ一つのセットは栄養バランがきちんと考えられている…プロの腕が光ってる」

「こっちのサラダも色んな食材を使ってるし。しかも食べて解るけど鮮度が良い! それに注文してから受け取るまでの時間も早くて見栄えも悪くない。スゴイな…尊敬する」

「…お前たちは評論家か何かか? よくもまぁそんなにスラスラと言えたものだ」

「ハロハロ」

 

 

 

 

 

一夏と新華は朝食のセットを食べるなり料理のレベルの高さに唸った。一夏は家の家事の殆どを毎日やっていた為料理が自然に身に付いている。

新華は、前世で両親を激情のままにP.V.Fで殺害した後バイトをしながら一人暮らしをして生きていた。その時に自分で料理を作っていたのだ。ただ、この世界に転生してからはそんな機会は『白騎士・蒼天使事件』まで無く、事件後はとある少女に教えながら束のラボで家政婦紛いの事を長い間していたので栄養などにはうるさくなってしまったが。

とはいえ一夏も姉に負けないシスコンを発揮して姉の負担を減らすべく健康に良いメニューを作っていたりするので評価する内容が細かくなるのは自然なことだった。

 

 

 

 

 

「んー、主に慣れだな。俺と一夏は家の手伝いの1つで長い間料理とかしてたし。調理法とかコツとか分かるんだよ。それに作ってると段々楽しくなってくるからな」

「そうだなー。こうして食事を楽しめるし、作った物をおいしいって喜んでもらえると俺も嬉しいし」

「…評論家というのは訂正しよう。料理人だなお前ら」

「「「「「「うんうん」」」」」

「ハロハロ」

 

 

 

 

 

箒のセリフに賛同するように頷く周りの生徒たち。一夏はそれに驚いていたが新華は視線とそこに乗せられた感情を感じていたので対して驚いていなかった。そのままズルズルと談笑しながら朝食に舌鼓を打っていると

 

 

 

 

 

「いつまで食べている! さっさと行動しろ! 遅い者はグラウンドを10周させるぞ!」

 

 

 

 

 

我らが寮長にして世界最強(ブリュンヒルデ)、織斑 千冬が現れる。しかし生徒達は初日とは違ってその登場にうっとりせず、むしろ真っ青になって一気に手元の朝食を食べ始めた。

IS学園(ここ)の生徒達は知識以外の能力をISに頼りきっているため身体能力は一般の女子と変わらない。一部の生徒会や代表候補生などは例外で自力、もしくは義務でトレーニングを積んでいるうえ立場がそもそも一般ではない。

新華は既にチートなうえにトレーニングまで欠かさない+一般とは程遠いので(ry

 

 

 

 

 

「やっべ、早く食わねぇと!」

「おーおー頑張りなー。さてごちそうさんっと「ハロッ」よっ、一夏、箒先行くぞー」

「早えぇ! さっきまで俺たちと喋ってなかったかお前!?」

「喋りながら食ってたに決まってんだろ。それよりさっさと食っちまいな、グラウンド10周させられる前に」

「…私も先に行くぞ」

「箒まで!? くっ」

 

 

 

 

 

新華、箒を皮切りに次々と生徒たちが食堂を後にする。結果的に一夏は間に合ったが千冬から遅いと拳骨を貰っていた。

 

 

 

 

 

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「…ISは宇宙での作業を想定されて作られたので、宇宙空間でも活動が可能なように操縦者の全身を特殊なエネルギーで包んでいます。また生体機能を補助する役割もあり--------」

「…(駄目だ、全然わかんねぇ。内容についていけねぇ)」

「………くぁ(ねみぃ。山田先生には悪いが俺にとって当たり前な内容過ぎてつまらん。しばらくヴェーダでも覗いてよっと)」

 

 

 

 

 

 

山田先生による授業が続くが一夏は勉強不足で煙を上げ、新華は当たり前の様に全て頭の中に入っているため退屈になり、目を瞑って密かにイノベ目になりヴェーダとリンクした。

 

 

 

 

 

「先生それって大丈夫----------」

『ふう、さて来たはいいが、何しよう。暇だし時間も授業終わるまでだしテキトーにクアンタの新武装の設計でもしとくか』

 

 

 

 

 

周りの生徒達や先生の会話をよそに新華の意識は閻魔が作っていた月にあるヴェーダへ跳んだ。

そこは透き通るような蒼一色で彩られた球状の巨大な物体の内側で、四方八方に半透明な画面が星の数ほど出ていた。新華はその中で1人、新たに画面を出しファイルを開いて目の前に等身大の立体CGを表示、並行して『ガンダム』作品の中からクアンタにも使われている『GNコンデンサ』と『αアジール』のデータを呼び出し演算を行う。

 

 

 

 

『大体の形は出来てるから後は演算とGN粒子対応型にしてコンデンサを搭載、ファンネルも粒子対応にして作業用アームをファンネルと同じ操作方に設定、調整っと。色は濃い青で。…んーやっぱデカくなるなぁ。えっと資材の方は…大丈夫そうだな。よし、データを『AGEシステム』に転送して分割で製造開始。受け取るまでパーツの状態で保管っと』

 

 

 

 

新華の周りを膨大な情報と画面が行き交い目の前の立体CGが形を変えていく。新華が演算を完了した時には、目の前に3メートル程のユニットの設計図が出来上がっていた。それを新華の管理するとある施設の地下に作った『AGEシステム』に転送。壮大な暇つぶしの1つを完了した。

 

 

 

 

『よっし、中途半端だったユニット完成。後は……!?」

 

ヒュン ←出席簿がおかしな速度で降り下ろされる音

スッ 「ハロッ!?」 ガコンッ ←新華が咄嗟にハロを盾にして出席簿がハロにぶつかった音

 

「チッ」

「あっぶねーぎりぎり。思いっ切り変な音したな、っておおぅ、ハロがフリーズした…」

 

 

 

 

 

殺気を感じて一瞬で肉体に意識を戻した新華は、何も考えずに一連の動作を行なった。結果新華の手は痺れハロがフリーズした。ハロの再起動操作をして足元にハロを置き千冬に目を向ける。

 

 

 

 

「織斑先生力パネェっす。手加減してください。結構な耐久力が有るハロを一撃でフリーズさせるってどんだけっすか」

「お前が真面目に授業に参加していればいい話だ。堂々と私の目の前で居眠りしおって」

「サーセン。でも俺にとっては復習の必要が無いくらい理解している所なんで。織斑先生分かって言ってるでしょ。山田先生には悪いですけど…って何お前らアホ面してんだよ」

「いやだって新華、千冬姉ぇの一撃を簡単に防ぐなんて…」

「殆ど反射の域だったんだぞ今の俺の動き。一歩間違えたら直撃だったけどな」

 

 

キーンコーンカーンコーン「ハロッ」

 

 

教室に微妙な空気が流れる中、チャイムが鳴りハロと教室の全員が再起動を果たした。

 

 

 

 

 

「え、えっとぉ。次の時間は空中でのIS基本動作についてやりますからね!」

 

 

 

 

 

そう言って千冬と共に教室を出る山田先生。するとクラスの生徒ほぼ全員が新華から離れる様に一夏に群がった。

 

 

 

 

 

「織斑君にしつもーん!」

「あのさ、織斑君ってさぁ」

「織斑君って今日暇ある?」

「うわっ、え、えぇと…(新華、HELP! HELP!)」

「…ハァ(ゴメン無理。それは箒にやれ)」

「ちょ、ちょっ…(箒? …うお! あの目はヤベェ!)」

「…………………むー」

 

 

 

 

 

 

一夏の下に集まらない数少ない女子の1人の箒は、一夏が女子に囲まれてちやほやされているのを見て不機嫌だった。しかし他の女子とは違い、IS無しの生身での身体能力が中々な実力がある箒はその視線でも圧力を発生させることができた。おかげで一夏の顔には大量の汗が漫画のように流れる。

群がっている女子の殆どは一夏の優しさにやられたのだが、中には

 

 

 

 

 

『(千冬お姉様の一撃を食らわないなんて生意気ね、しかも千冬お姉様に生意気な口聞くし)』

『(あんなのと比べると織斑君って良い物件よねぇ、優しいしカッコイイし、なによりお姉様の弟ってのが大きいわよね)』

『(お姉様との生活…あぁ想像しただけでもゾクゾクするわ)』

『(全く、男なんて私達の言うこと聞いて出しゃばらなければいいのよ)』

 

 

 

 

 

このように新華を明らかに侮蔑したり見下したり、一夏を通して千冬を見ている者もいた。一夏は気付いていないようだが、新華には邪気としてひしひしと感じていた。

 

 

 

 

 

「(キャンキャンと…。弱い犬ほどよく吠えるってね。全く、うっとおしいことこのうえない)」

 

 

 

 

 

新華にとってはこの程度は慣れっこで、いっそ笑えてくる位だった。そうこうしている内に休み時間はあっという間に過ぎていく。

 

 

 

 

 

「ハロ、ハロ」

「えへへ~、ハロハロ~」

「カワイイわねーこれ。ちゃんと受け答えしてくれるし」

「…ここまで精密で多機能を搭載しつつペットロボとして成り立たせるなんて、何度見ても凄い」

「………完成するまで恐ろしく苦労したけどな。そろそろ休み時間が終わるし先生方が来る前に席戻るな。ほら、簪さんも自分の教室に戻った方がいいぞ。ハロ」

「ハロッ」

 

 

 

 

 

数少ないマトモな女子である布仏 本音(のほとけ ほんね)鷹月 静寐(たかつき しずね)、4組から来た生徒会長の妹の更識 (かんざし)と喋って時間を潰した新華は、時間と山田先生と千冬の接近を感じて着席を促す。

新華自身も席に向かい、未だに騒いでる一夏ゾーン---新華と弾で名付けた一夏と周りでキャッキャ騒いでいる女子たちが形成する非リア充が近づけない領域---をぼんやりと眺めていた。

 

 

 

 

 

「はいはーい、次の質もーん! 千冬お姉様って自宅ではどんな感じなの!? やっぱり家でもクールに過ごしているの!?」

「い、いや。意外とだらし…な”っ」ゴッスッ

「もう休み時間は終わりだぞ。くだらない話をしてないでとっとと座れ」

「のおおおおおおぉぉぉぉぉ」

「(何やってんだあのバカは。流して誤魔化しゃいいものを。しっかしいい音したなぁー)」

 

 

 

 

 

千冬にとってのタブーを言いそうになった一夏は、教室に入ってきた千冬の持つ出席簿で撃墜された。一夏が撃墜された後それまで一夏に群がっていた生徒は出席簿の餌食になる前に自分たちの席に移動していた。その速さは新華でも目を見開くものだったが、理由が理由だったためスルーした。文字通り頭を抱える一夏をよそに千冬は言葉を発する。

 

 

 

 

 

「織斑、1つお前に知らせがある。お前の使用するISなんだが、学園で使える予備機が無いため準備に時間がかかる」

「痛つつ…………準備? 予備機? どう言うことなんだ千冬姉ぇ…え”っ!?」スパァン

「織斑先生と呼べと何度言えば…お前には学園から専用機が用意される事になっている。だからそれが来るまで待て」

 

 

 

 

 

何度も頭を叩かれる一夏は、何とか千冬の説明を聞くが理解が追いついていないようだった。しかしクラスの女子達は違う。専用機を持つと言うことがどれだけ凄いのか知っているためざわざわと騒ぎ出す。

 

 

 

 

 

「せ、専用機!? まだ1年生なのに!?」

「つまり政府から支援されてるってこと…!?」

「いいなぁ~、私も専用機欲しいなぁ」

「えっと…どう言うことだ?」

「…ハァ…青木、専用機について説明してみろ」

「うぃーっす。専用機というのはそこのバカに分かりやすい様に言うと『う詐欺の作ったISは確かに高性能だけどコアがブラックボックス化されて解析出来ないせいで生産出来ねぇ! う詐欺が現存以外のISコアを作らない、もしくは配らないから少ないコアで研究・開発・訓練しなきゃいけない。でも厳しい条件をクリアした優秀な人物にはその国の政府支援で専用機が与えられて最新の装備や武器を使えるよ』と言うところですかね。詳しくは教科書の『専用機と代表候補生』という欄に載っているから後で読んどけ」

「はぇー、そうなのか」

「…お前分かってんの? 今言った厳しい条件すっ飛ばして専用機与えられるってことなんだぞ。いくらお前が珍しい男性操縦者でデータ収集が目的とはいえ、異常性を認識しとけ」

 

 

 

 

新華のかなりざっくりした説明を聞いて一夏は疑問を抱いた。

 

 

 

 

「あれ? それなら新華には専用機は用意されないのか? 新華も同じく男性操縦者なのに」

「あー…まぁそれは」

「新華は既に専用機を持っている。そしてそれに見合う実力もな」

「「「「「「「「えっ!?」」」」」」」」

「ほ、本当ですの!?」

「ま、そういう事だ。実物は今度の決闘(笑)で見せてやるから楽しみにしてな」

「い、今持ってるのか? 確かアクセサリーが待機状態なんだろ? でも新華アクセサリーなんて付けたこと見たことないし、付けたがらないだろ?」

「後でな」

 

 

 

 

 

ざわ… ざわ… と教室が騒めく。千冬と新華はうんざりいた顔になった。

2人共こうして騒ぎになるのを分かっていたから今まで黙っていたのだ。それもニュースで流されていたらもっと面倒になって対処が追いつかないため、むしろこれで良かったはずだが面倒なのに変わりなかった。

そんな中1人の生徒がおずおずと千冬に質問する。

 

 

 

 

 

「あの先生。さっき思ったんですけど、篠ノ之さんってあの篠ノ之博士の関係者なんでしょうか?」

「ん? そうだ。苗字から分かるだろうが、篠ノ之はあいつの妹だ」

「え、えええええーー!? すごい!」

「篠ノ之さん! 博士ってどんな人? 時々見るあの格好は趣味なの!?」

「篠ノ之さん自身も天才だったりする!? 今度ISの操縦教えて!」

 

 

 

 

 

先程まで殆ど居ないものとして扱っていた箒に女子たちの注目が集まる。その余りの自分勝手さに新華はイラッ✩ っときた。

 

 

 

 

 

「あの人は関係無いっ!」

「「「「「!?!」」」」」

 

 

 

 

 

箒が机を叩いて大声で叫ぶ。箒に注目していた女子は一斉に驚いていた。

 

 

 

 

 

「…大声を出して済まない。だが私はあの人じゃないしあの人の様な頭の構造はしていない。済まないが教えられる様な事はない」

「(頭の構造云々は同意するが、関係無いってとこはダウトさせてもらうぞ箒。家族バラバラになったのも、ここに居るのもう詐欺が関係しているだろうが。それにちょくちょく連絡してんのう詐欺から聞かされるウザさを知らないだろjk)」

 

 

 

 

 

箒のセリフで勢いを失った女子たちはその顔に困惑や不快を宿して大人しくなった。新華は新華で内心今の箒のセリフにツッコンでいた。

 

 

 

 

 

「…さて、授業を始めるぞ。山田先生、号令を」

「は、はいっ!」

 

 

 

 

山田先生も困惑していたが千冬の言葉に我に返り、授業を始める。教室は微妙な空気を残したまま授業に入っていった。

 

 

 

 

 




ノリノリで書いてたら容量がいつの間にか15KBになっていたでござるの巻
いつもは8~12KBなんですけど…
生徒会チームとかんちゃんとは事前に更識家にて会っています。いつかそのシーンも書きます。
次回もいつも道理未定です

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