IS~疾走する思春期の転生者~   作:大2病ガノタ

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天敵とか『選択戦争』経験して『乾燥者』と戦ったパラベラムにとって地雷なんだよなぁ。あと、もしISコアとかISABの敵が地球外製だったとしても、この世界じゃ駆逐出来そうだし出てこない理由があるなぁ。

………ヴェーダに∀が居てターンXが居ない理由って(震え声

あと今回、サイコフレームがやたらと共振しますので注意。


ラスボス戦

---第3回モンド・グロッソ

 

最終日を迎えたこの日、多くの者が落ち着きの無い様相を呈していた。

選手達は己のISを展開しアリーナで武者震いを抑え、観客達は各々の思いでその時を待ち、テレビカメラの向こう側は録画予約をしている者が多かった。

 

 

 

「いっちにーさんっしー」

「お前本当によく緊張せずにいられるな」

「衆人環視くらいお互い慣れてるだろうに」

「IS学園と世界大会じゃ規模が違うだろ」

「逆に言えば規模が違う程度だっての」

 

 

 

今からその中へ飛び込んでいく予定の新華と見送りに来た一夏がピットで会話していた。

2人は準備運動をしながら新華の出撃指示が来るまで待機している。

 

 

 

「…そういえば、俺は招待状を貰ったから来たけどさ。新華は最初から来ることになってたのか?」

「最初からというか、1年前からな。丁度お前が初めてIS動かした騒動辺りから」

「ああ、なんかもう懐かしい。でも、当時のお前がよく出る決意したな」

「あの時はなー。『更識』とか『CB』の宣伝とか、色々思惑があったからなー。っとそろそろか」

 

 

 

沢山のことが有り過ぎた去年以前の平和を懐かしみつつ、新華は出撃準備を始める。それと同じくして場内放送が始まった。

 

 

 

『さぁさぁ皆様! お待たせしました! これよりエキヴィジョンマッチ! 『白騎士・蒼天使事件』の首謀者が1人! 青木 新華の登場です!』

「首謀者じゃなくてフォローしただけなんだが」

「普通分かる訳ないんだよなぁ」

『メディアへの顔出しも少なくIS学園で撮影された試合映像も少ないため、その実力を機体性能のお陰と疑う者も多い彼ですが、果たしてどんな戦いを見せてくれるのでしょうか!』

「なんですって…?」

「どうどう。最初のセシリアを思い出せよ。あんなもんだって。というか、そうやって油断誘うためにここまで情報出さなかった訳だから、むしろ喜ぶべきだろ」

 

 

 

アナウンサーの言葉にサヤカが怒りを露にするが、当の本人はどこ吹く風だった。

 

 

 

「んじゃ行ってくるわ」

「おう。いってら」

「サヤカ」

「はい」

 

 

 

準備運動を終えるとサヤカを呼び『Evolveクアンタ』を纏い射出台の上に立つ。

その姿を後ろから見た一夏は、1年前に己が初めて『白式』に乗りセシリアとクラス代表を賭けて戦った日を思い出した。

 

 

 

「『Evolveクアンタ』、青木 新華」

「『---同じくサヤカ』」

「出る『---行きます』」

 

 

 

新華が出撃していくのを見送ると、一夏へ近付く1つの影があった。

 

 

 

「…行った?」

「あれ、クーリェさん? いつからそこに?」

「…準備運動始めた辺りから…」

 

 

 

『クーリェ・ルククシェフカ』。ロシアの代表候補生であり専用機『スヴェントヴィト』を持つ1年生。

ロシアの代表候補生として刀奈と交流があり、彼女の紹介で新華とも顔見知りである。

しかし彼女は新華を苦手としており、新華の傍に近寄ろうとしなかった。

 

一夏とは生徒会主催の交流会や訓練で知り合い、懐かれていた。

 

 

 

「そうだったんですか。えっと、観戦室に行くか?」

「……ん」

 

 

 

しかし彼女は、親友の影響で『大人』を意識し出した一夏にとって蘭に次ぐ妹枠になっていた。

某デ○ズニーの『プーさん』の人形を『ぷーちゃん』と呼び引きずって歩いて普段生活している姿は、正に幼い子供のそれであり異性として意識出来ない存在だった。

 

※作者が始めて設定見た時の感想は『うわきつ、えぇ…? うわぁ…』だった。なお他キャラも大体同じ。

 

 

 

「あれ、ベルベットさんは?」

「…探したけど居なかった…」

「そっか」

 

 

 

IS学園で彼女のルームメイト『ベルベット・ヘル』はギリシャ代表候補生の3年生。子供好きで新華と話が合う貴重な人物だが、専用機が『ヘル・アンド・ヘブン』なんて名前だったせいで簪の暴走により某勇者王の『ヘル・アンド・ヘブン』や『ゴルディオンハンマー(笑)』を叩き込まれた可愛そうな人である。

どうやら所属国家のグループに引っ張られクーリェと合流出来なかったらしい。

 

 

 

「……んっ、試合が始まるみたい…」

「ああ。人も集まってる筈だし、肩車でもしようか?」

「………………ん」

 

 

 

ちなみにクーリェが新華を苦手としているのは理由がしっかりとある。

彼女は所謂『霊感のある人間』であり、人には見えない誰か達を『ゴーストフレンド』と呼び会話することで意思決定を行っている。一夏との会話時に溜めがあったのは、それらの意見を聞いているからである。

 

---諸兄は『亡国機業』、篠ノ之 束との最終決戦時にラウラの前で語った言葉を覚えているだろうか。

あの時に新華は『精神系通常弾は霊的存在にも有効』と言っている。これは何も冗談や当てずっぽうで言ったわけではない。

 

…本編開始前に、新華がクーリェの居る孤児院へ行ったことがあるのだ。CBがまだ出来たてでありロシアの孤児を受け入れる場合の注意点を学ぶために。

その時に、彼女に変な者が憑いていると感じた新華がゴーストフレンドに『精神系通常弾』を叩き込み彼女の目の前で消滅させたことである。

結果、クーリェは大いに取り乱すは泣き叫ぶわで大騒ぎに。新華はその彼女の反応と言動で『精神系通常弾』の効果を改めて再確認し、クーリェは己に親身なゴーストフレンドの敵であると認識し、以降近付こうとしないのである。

 

 

 

「……一夏」

「あれ、千冬姉? …と、確か」

「君が一夏君だネ? 『アリーシャ・ジョセスターフ』、イタリアの国家代表をしている者ヨ。よろしくネ」

「何をしているかと思えば…。お前が観戦室に行ったら、それこそ観戦どころではなくなるだろうが馬鹿者。お前は我々とピットのモニター室だ」

「じゃあクーリェさんは…」

「それなら保護者を連れてきたかラ、心配しなくていいヨ?」

「保護者…ああ」

 

 

 

アリーシャの言葉を聞いて一夏が視線を横へスライドさせると、少し離れた場所でクーリェとベルベットが会話をしていた。

 

 

 

「ネ?」

「こちらも移動するぞ。初動を見逃す訳にはいかん」

 

 

 

一夏と千冬、アリーシャはピット横のモニター室へ移動しアリーナ内を見る。

同時に、戦闘開始のブザーが鳴った。

 

 

 

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ピットから飛び出した新華は、選手達が集まっている中空へ。

そして真っ先に視線を刀奈へ向ける。

 

 

 

「さ、て」

「『---全機上がっていますね。全選手、計40機』」

「40対1ね…。『みらい』でも流すか?」

 

 

 

色とりどりのISが40機、新華へと意識を集中させる。その中に油断しているものは無い。

しかし新華の相手が務まるのは、この中で2名しか居ないと観戦していて分かっていた。

 

 

 

「…要警戒なのは刀奈とマーベットさんくらいか」

「『---刀奈さんは我々の手の内を知り尽くしていますし、その刀奈さんをマーベットさんは撃破してますからね』」

「そういうこと。ただ俺用に切り札を温存しているのも居るかもしれんし、慢心はせずに行こうか」

「『---はい』」

 

 

 

深呼吸を行い全身と、非常に広いアリーナ全体の空間へ認識領域を広げる。ハイパーセンサーを普段切っているため自分自身の空間認識を頼りに戦闘を行うのはいつものことであった。

それを感じたのか刀奈がプライベートチャンネルを繋げてきた。

 

 

 

『新華君、今私達に触ったでしょう』

「…今すぐにでも抱きしめたいんだが」

『終わってからね。簪ちゃんもシャロちゃんも見ているんだから嫉妬させるようなことすると、みんなで搾り取るわよ?』

「それ以前に溜まってんだから襲うぞコノヤロー。戻ったら覚悟しとけ」

『やぁん♪』

 

 

 

ちなみにプライベートチャンネルと言っても会話は口で行うため、近くに居た操縦者(彼氏居ない暦=年齢)は会話を拾い歯軋りをしていた。

しかしそんなものを気にする精神だったら彼らはIS学園でも自重している。

 

 

 

簪かシャロ(どっちか)でも一緒に来れたらなー」

『仕方ないでしょ。五反田ちゃんに任せるにはまだ早いし、シャロちゃんは代表候補生として帰ってるし実家で兄弟の面倒を見るって言ってたじゃない』

「3人にハロ預けているから簡単に連絡出来るし毎日しているけど、それでも直接触れ合いたいわな」

『距離に関係無く心で繋がっているんだから、多少は我慢出来るでしょ』

「多少は、な」

 

 

 

この2人の会話に割って入る者は居ない。

理由は、試合開始の合図を待つ間に新華への包囲網を構築しているからである。刀奈は新華の真正面で目を合わせ会話しているため、そこ以外の四方八方に展開。総勢40機、各々の武器を手に持ち狙いを定める。

だが新華はそちらへ視線を向けず刀奈を見据えたままだった。

 

 

 

『ほら、『クルちゃん』も反応してるし、サヤカちゃんも反応してるんでしょ?』

「『---ええ、しっかりと』」

「生中継で見てくれてるんだろうな。というか、この試合に入れていいのか?」

『新華君の制限が外れているのと一緒よ。私達も外からの持ち込みを許可されているの。ただ、そこまでする人はそんなに居ないわ』

「みたいだな。いや、若干一名見覚えのある装備を持っているが」

 

 

 

刀奈の肩に乗った『カーバンクル』の額の『サイコフレーム』が柔らかな光を放ち、『Evolveクアンタ』の中心、新華の心臓付近からも同様の光を放つ。

そして新華への包囲の一角に居るマーベットの『ラファール・リバイブⅢ』は背中に巨大で真っ白なコンテナを背負い、両手にIS用アサルトライフル『ヴェノム』を構えていた。

そのコンテナは、どう見ても『デンドロビウム』のそれだった。

 

 

 

「うーんこの、懐かしさを覚える感覚」

『…あまりやり過ぎちゃ駄目よ?』

「大丈夫大丈夫。全力を尽くすだけだから」

『織斑君と同じ意見になるけど、嫌な予感しかしないのよねぇ』

「何、死にゃしないんだ。気楽に、な」

『この後に織斑君の試合があるんだから、ペース配分考えなさいよ?』

「ういうい」

 

 

 

自分に向けられる気を全て読み取り、AICで空中に足場を作り着地する。全身に気を行き渡らせ即座に動けるようサヤカとリンクする。

そこへようやく準備が整ったのか、場内アナウンスが流れた。

 

 

 

『さあ皆様お待たせしました! ただいまより特別試合、対蒼天使(ラスボス)戦、開幕です!』

『あら、始まるみたいね。言っておくけど、勝ちに行くわよ』

「俺だってそうさ。全力で行く」

 

 

 

そう言い、互いに武器を構える。刀奈はアクアナノマシンを纏わせ目の前の恋人がパーソナルカラーと同じ色の『蒼流旋』を。

新華は両手に『大型ハンドユニット』を。

 

 

 

『…各選手、準備がよろしいようです。それでは、試合、開始!』

 

 

 

開幕のブザーが鳴る。

それと同時に動いた新華と刀奈。

 

 

 

「…!」

『ふっ!』

 

 

 

瞬間加速で彼女に接近すると同時に左右のスラスターバインダーから『Sビット』を射出し、バインダー下部に搭載された『GNソードⅡ』で後方のIS2機を狙撃する。

同様に刀奈が瞬間加速にて蒼流旋を突き出す。彼女に接近した新華は右手の大型ハンドユニットにGNフィールドを張らせ受け流し、左手で拳を握り腰溜めに構える。

 

お互いの視線を交差させると、そのまま離れ上空へ。

 

その初動に全員反応出来たものの、動けたのは彼と戦ったことのあるマーベットと、交戦経験があり『銀の福音(シルバリオン・ゴスペル)』の件もあって警戒していたイーリス・コング3名のみだった。

マーベット即座にその場から後退しコンテナユニットを起動。バズーカが入っていない分より多く搭載されたミサイルを新華目掛け発射する。

 

 

 

『行きなさい!』

「チッ」

 

 

 

大量のミサイルと殺気を感じ他選手達へ飛ばしていたSビットを呼び戻す。

Sビットと頭部バルカン、大型ハンドユニット、バインダーのGNソードⅡを拡散モードにして迎撃する。

 

 

 

『そぉーれっ』

「!? っ」

 

 

 

ミサイルを迎撃し移動する先に蒼流旋の射撃が飛んでくる。進行方向を変え更に加速し回転しながら全てを回避していく。

と、ようやくここでSビットに手を焼いていた他の選手達が新華に照準を合わせ攻撃を開始する。

それらを全て感じ大型ハンドユニットを射出、殴る掴む撃つの3拍子が揃った遠隔兵器が追加され選手達に襲い掛かる。

 

そして、再度刀奈の攻撃が進行方向に置かれる。

 

 

 

『逃がさないから』

「逃げる気も、ねぇよ!」

 

 

 

AMBACで強引に体の向きを変えると同時にPICの足場を蹴り進行方向と反対の、刀奈の真下へ跳び『GNソードⅥ』を構える。

それを分かっていたかのように刀奈もAMBACで軽やかかつ危なげなく射線から逸れ新華へ接近。

 

 

 

『はぁーい♪』

「…ッラァ!」

 

 

 

蒼流旋にGNソードⅥをぶつけ自身の速度を殺し、蒼流旋を蹴り上げるよう足場にして地面に向け宙返りを披露する。

下から刀奈に合流する動きを見せていた1機のISと通り過ぎ、その際にAMBACでくるりと横に回転し胴体へ蹴りを見舞った。

 

 

 

「………」

『相変わらず流れるように戦うわねぇ』

「そっちこそ」

『誰かさんを見ていたからね』

 

 

 

地面を削りながら着地すると、そのまま脚部に内臓されたスラスターで滑るように移動する。

一旦全てのSビットを戻し両手のGNソードⅥを『GNソードⅤ』に持ち替え連結、Sビットを両端に接続させると、腰を捻り思い切り投げSビットのGNスラスターにより凶悪なブーメランとして選手達へ襲い掛かる。

投擲の勢いを利用し回転したまま『フルセイバー・カタールモード』を展開。大運動会時に一夏と得点を競った時のように、アタッチメントにビームピストルを装備して独楽のように回転。

 

回転の強弱こそ変えつつ再び上空へ飛び立ち、選手の群れへ弾丸のように突っ込んで行った。

 

 

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---side フランス

 

シャロことシャルロットは母国フランスの軍事基地、IS操縦者が集まる場所に居た。

『シュラク隊』をはじめ、彼女以外の代表候補生達は例年に無い熱気に包まれており、誰もが食い入るようにその戦いに注目していた。

 

 

 

「…今何基目?」

「20基。ホント、化け物ね」

「IS学園でもあんな感じなの?」

 

 

 

18基のSビットと2基の大型ハンドユニットが飛び交いながら時節カメラが追い付かない機動を見せている新華。シュラク隊は経験があるもののシャロ以外の代表候補生達は普段の彼を知らないため、自然とシャロへ問い掛ける形となる。

優勝した国家代表のマーベットを応援してはいるが、まともに打ち合えているのが刀奈のみという状況に驚きを隠せないでいた。

 

 

 

「まぁ、大体は。ただIS学園(むこう)だとあの動きを知ってる人達で挑むので割と楽しいですよ」

「楽しい、ね」

「普段ならどうする?」

「普段なら…」

 

 

 

普段の訓練時の様子を聞かれシャロは画面の新華を見る。

刀奈の攻撃を回避しながら蹴る、殴る、撃つ、斬る戦いを見て、自分があの場に居たらと想像する。

 

 

 

「…まず一夏と篠ノ之さんが近接戦闘に持ち込みます。Sビットの対処に追われるのは同じですが、ラウラとセシリアが居るので多少は何とか」

 

 

 

最近ますます剣の腕を上げている一夏と箒が自慢の加速力で新華へ肉薄、2人で相手することで両手を塞ぎSビットへ割く思考を削る。

今現在、刀奈が行っている攻撃も同じ意図である。

 

 

 

「僕と簪さん、鈴で中~近距離での支援を行い生徒会長が適切な指示を出す。最初の流れはそんな感じです」

「他の代表候補生は?」

「本人の戦闘スタイルに合ったポジションに付いてもらってますね。ただ、新華はああいった戦い方なうえに反応速度がもの凄いので真っ先に落とされることが多いのですけど」

 

 

 

そう言った直後、後方の迎撃をしたまま飛ぶ新華の真後ろに近接武器を持ったISが1機、その背中へと絶妙なタイミングで武器を突き入れようとした。

瞬間、近接武器を持った腕を2本のSビットが切り裂き新華のAMBACで振るわれた脚部が操縦者の頭部を殴打した。

新華が更なる追撃としてISを踏むように蹴り落とし、そこへ刀奈の突撃が刺さる。

 

…が、それはイド・アームズ『ライフ・ジャッジメント』の『トラウマシェル』によって逸らされた。

 

 

 

「…僕と生徒会長、簪さんは新華の動きをなんとなく分かります」

「え?」

「機体の性能差があったとしても、僕ら3人と幼馴染をやってきた一夏は新華の動きに着いて行けます。だけど」

 

 

 

Sビットを連結したGNソードⅤが戻り、Sビットがスラスターバインダーへ戻る。連結したままのGNソードⅤを杖のように振るい蒼流旋と打ち合い始める。

 

 

 

「困ったことに、新華も僕らの動きを読めますし、何より僕らが居ると張り切っちゃいますから」

 

 

 

刀奈と新華。まるで踊るように切り結ぶ2人が緑色の光を纏いだす。それと同時にシャロの持つ『カーバンクル』の額の『サイコフレーム』も暖かな光を持ち始めた。

その光を通して新華が自身と刀奈、そして日本に居る簪を強く意識しているのを感じた。

 

 

 

「頑張れ、新華」

 

 

 

---side end

 

 

 

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---出場選手

 

慢心したつもりは無かった。油断したつもりも、手加減など考えてすらいなかった。そう考え、シールドエネルギーが無くなり動けなくなった無様な姿で彼女は見上げる。

そこには縦横無尽に飛び回る蒼い天使と、その天使と踊るように飛ぶ青。

 

 

 

「(アレは、一体、何だ)」

 

 

 

刀奈のミステリアス・レディの相手をしながら、まるで片手間と言わんばかりに国家代表達を撃墜していく新華。動作の1つ1つは荒々しいが力強く、次の標的ないし武装を選択する動作に淀みが無い。

 

 

 

「(何だ、アレは!?)」

 

 

 

彼女、いや、この大会に出場した彼女らは強い。だが悲しいかな、千冬やアリーシャより強くは無かった。

それを自覚しながらも、いや、しているからこそ理解出来なかった。

 

 

 

「(何故ああまで動ける、何故ああまで反応出来る、何故、何故、何故!?)」

 

 

 

『蒼天使』。彼女らは今までその実力を疑っていた。しかし、戦って落とされた身では頭以外に動かすものは無かった。

 

 

 

「(『GNドライブ』、あれさえあれば軽く動けるようになるのか)」

 

 

 

---しかし、それだけでは攻撃に『重さ』が無い。

 

 

 

「(ISの自我が目覚めれば、サポートがもっと充実していれば、背後からの攻撃にも対応出来るのか)」

 

 

 

---『ハイパーセンサー』で情報を得られても、それを受け取る操縦者たる人間が情報を精査し動かない限り意味は成さない。

 

 

 

「(『P・V・F』、『ビーム』、『Sビット』、高火力の武器を好きなだけ仕様出来るなら)」

 

 

 

---当てられなければ無駄にエネルギーを消費し隙を生むだけ。

 

しかし、そんな当たり前なことを彼女らは分かっていた。だからこそ

 

 

 

「(---そんな相手に、何故楯無(アレ)は追い縋れる!?)」

 

 

 

それら全てを活かし世界最高峰レベルのIS40機を、ほぼ全く被弾せずに撃墜していく『蒼天使(バケモノ)』。機体性能が劣るにも関わらず、それに付かず離れず相対し続け会話する余裕すらある刀奈。

新華の強さには納得出来る言い訳がある。それこそ搭乗時間も機体性能も何もかも違う。千冬に勝ったという噂すらあるのだから。

 

しかし刀奈は違う。あの若さで自分達と同じ国家代表になっただけの実力があるのは認められる。準優勝であり自分達以上の腕があるのも、癪ではあるが結果として認めるしかない。ただそれまでの試合が圧勝だったかといえば違うと断言出来る。その程度の差しか無い筈だった。

 

 

 

「(IS学園で、一体どうすれば、あんな…)」

 

 

 

IS学園で起きた多くの騒動は外に漏れていない。そして、外に去年のIS学園以上に操縦者へ命の危機が迫ることなど、早々ありはしない。

だから想像など出来る筈も無いのだ。あれだけ濃い一年を、あれだけの修羅場を。死を、悲しみを、痛みを。

 

絶望を。

 

 

 

「(…あの2人が恋人同士、だからなのか?)」

 

 

 

しかし新華が3人と男女の付き合いをしているという情報はやたらと早く世界中に伝わった。女尊男非の世界で色恋というのは非常に美味しいネタである。

見れば、刀奈と新華の2人が緑色の光を薄っすらと纏っていた。

 

 

 

「(あんな、笑顔で…)」

 

 

 

刀奈は、戦っているとは思えない笑顔で飛んでいた。対する新華も装甲の下で同じように笑顔になっているのだと思うと、羨ましさと嫉妬が溢れてきた。

地に叩き落された自分と、天使と飛び続ける刀奈の、あからさまな違いに。

 

 

 

---side out

 

 

 

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---side 刀奈

 

 

 

「(やっぱり、2手足りない!)」

 

 

 

アリーナ上空で新華を相手に飛ぶ刀奈は新華の強さに改めて戦慄する。

今のところ自分が落ちていないのは2つの理由があった。

 

1つ目は自身が新華の行動を読めていること。他の選手がどんどん撃墜される中、しっかりと自分にも飛んでくるSビットやビームを流し回避出来ているのがその証拠だった。

 

2つ目は他の選手が居ること。未だに有効打どころか直撃すら受けていないが、だからといって蔑ろに出来るほど弱くもない。特に自分を撃破したフランス代表は、優勝しただけあって未だに落ちていない。

 

 

 

「(動きが分かり易いのは良いのだけれど、純粋に速い!)」

 

 

 

この場において新華の動きに着いていけるのは刀奈だけだったが、『Evolveクアンタ』の速度に着いていけるISは居なかった。機体の性能差は操縦者の腕でカバーすべきなのだが、その腕自体に差が出ている。

本当ならば40人ものISで連携を取り詰め将棋のように追い詰めるのが理想的なのだが、それが出来るほど彼女らは親密ではなく、またその理想的な状況を『Evolveクアンタ』と新華は想定していたため勝てるかどうかはまた別の話。

 

そして、そんな連携が出来て追い詰めることが出来るのは刀奈と簪、シャロの3人編成。そこへ一夏を加えられれば撃破も夢ではなくなる。

 

 

 

「(…いつものことだけどねっ!)」

 

 

 

刀奈にとって、この状況は予測出来て当然のものだった。そも千冬に勝てる存在が少なく、その千冬をIS学園で制限有りの状態、しかも試験とはいえ真正面から撃破した人間。選手同士の連携が期待出来ない時点で各個撃破されるのは必然とも思えた。

しっかりと連携の取れているIS学園専用機持ち達を同時に相手取る機会が多いのだから。

 

 

 

「(だ、か、らぁ!)」

 

 

 

いつも通りミステリアス・レディと空を駆け、いつも通りではない行動に出る。場内で飛ぶISの数が減り十分な空域が確保出来たのを確認し、刀奈は左腕部に新たに増設されたユニットを起動する。

刀のようなしなやかさを持ったパーツが2本一対で左腕部の左右に広がる。それにアクアナノマシンが絡みつき先端同士から1本の筋を出現させた。

 

 

 

「クルちゃん!」

「キュッ!」

 

 

 

蒼流旋を仕舞い右手でアクアナノマシンの筋を摘んで胸まで引く。出来た隙間の中に刀奈の『カーバンクル』が納まり後足に力を込めた体勢になる。

『スリングショット』、『バリスタ』、いや『カタパルトタートル』とでも言うべきか。P・V・F『アンフォーギヴン・バリスタ』から発想を得て簪の協力の下に製作した新武装。

 

それを感知したのか、1機のISを切り刻もうと動いていた新華の視線が刀奈を捉える。そして両手の武装を収納し右腕にP・V・F『ストーリーズ・イレギュラー』を展開し弾を装填せず、左腕に『レギルスシールド』を装備する。

 

 

 

「スゥー………」

 

 

 

刀奈はこの装備を効果的に使うため父親から弓の心得を学んでいた。しかし短期間で出来ることは限られていたため、基本的な構えと心構えを伝授されるに留まっていた。

だが、今はそれだけで十分だった。

 

 

 

「(武道とは、使う獲物こそ違えど一つの道を究め己を高めることに他ならない)」

 

 

 

左手の人差し指を伸ばし新華へ向け続ける。無論、この間にも彼からSビットが飛んで来ており、それらを最小限の動きで回避しながら。

その弓を引く右手とカーバンクルにブレは無い。

 

 

 

「(一つの道を成す。…私には見えるわ。その道が)」

 

 

 

彼女の視界に薄っすらと光が伸びるのが見えた。それは確かに新華へと向かい己の指先と一直線になる。

 

 

 

「ふぅっ!」

「キュア!」

 

 

 

息を吐くと同時に指を弦から離す。光の線に乗りカーバンクルが矢のように飛び出し龍へと変化、新華へと向かう。

同時に自身も龍となったカーバンクルの装甲に乗り死角から強襲せんと再び蒼流旋を手に取った。

 

 

 

「まだまだ、これからよ!」

「GRAAAAAAAAA!」

 

 

 

----side out

 

 

 

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刀奈の腕から『カーバンクル』が射出された直後、龍の牙が自身の眼前に現れ噛み砕こうとしてくる。

咄嗟にエゴ・アームズ『ストーリーズ・イレギュラー』を展開し、自身が次の標的にしていたISへSビットを集中させ体の向きを変えた。

回避が間に合わず左足と『ストーリーズ・イレギュラー』をカーバンクルの顎に掛け押さえる。

 

 

 

「チッ(ミスった!)」

 

 

 

衝撃を受け止めた新華は己の武装選択を間違えたことに気付く。刀奈の意思を感じ迎撃目的で『ストーリーズ・イレギュラー』と『レギルスシールド』を展開していたが

 

 

 

「(カーバンクル経由でアクアナノマシンがっ!)」

 

 

 

射出する際にカーバンクルに纏わせていたのか、押さえられた顎を伝いアクアナノマシンが『ストーリーズ・イレギュラー』へ流れてくる。

咄嗟に展開を解除し、隙間が出来た一瞬で右手を顎の先端に掛ける。

 

 

 

「よっ(下3、上2、後4、狙撃5。下1は刀奈か)」

 

 

 

右手と空いていた右足で体を引きカーバンクルから離れようと動く。その際にいつもの癖で、龍形態のカーバンクルの胴体を蹴って反動を利用しようとした。

それを見逃す刀奈ではない。機動の先を読み新華へと蒼流旋を突き出す。

真下からの攻撃を脚部に内臓された『GNソード』を使い迎撃を試みるが、それを自身がよく行うAMBACにて回避される。

 

 

 

「カァッ」

「惜しぃ」

 

 

 

宙返り+AMBACでなんとか回避に成功するも、ミステリアス・レディのアクアナノマシンが装甲の表面に張り付く。そう思った瞬間、自身と刀奈を巻き込んで『沈む床(セックヴァベック)』を発動された。

 

 

 

「!」

「今!」

 

 

 

そう刀奈が叫んだ瞬間、残っていた他の選手達が新華へと銃口を向ける。

刀奈も被弾する恐れがあったが、この行動こそが数少ない有効打のチャンスだった。ただでさえ速い新華の動きを止めSビットの粒子残量も少ないため戻している途中。右手は何も武器を展開していないが、左手に胞子ビットを射出するレギルスシールド。

しかし何か展開しようものなら包み込んでいるアクアナノマシンが装甲と武器の隙間に潜り込み押し潰す。

勝つために出来ることを全力でやる。その意思を感じ取った新華は、フェイスガードの下で笑みを作った。

 

 

 

「…サヤカ」

『---全方位レーザー』

 

 

 

それでも、彼女らの上を行く。『Evolveクアンタ』の装甲表面が白と蒼から銀色へと変化する。

サヤカが第3形態である『ELS化』を限定的に行い、全身からレーザーを無数に放つ。ビームで無いのは威力を抑えられるのと、『Gセルフ』のデータが『ヴェーダ』にあったため再現がし易かったというものである。

しかし『沈む床』を吹き飛ばすには十分。同時に眼前の刀奈をレーザーが貫いたが、そのまま色と輪郭を失う。

 

 

 

「! トランザム!」

 

 

 

反射的に虎の子のトランザムを使いその場を離脱する。直後、『沈む床』に使われていたアクアナノマシンが『清い情熱』として自爆。そこへ新システムを起動させたマーベットと『ラファール・リバイヴⅢ』が強襲する。

 

 

 

「行きなさい!」

「っ、のぉ!」

 

 

 

ラファールの主武装『ヴェノム』による弾幕にSビットでGNフィールドを張り防御する。彼女の機体に搭載された新システムは新華が提供したトランザム系の技術が使用されているものの、デュノア社独自の仕様となっていた。

 

限定的に加速を行うのは共通だが、それだけだと操縦者が速度に追いつけないどころか機体制御の難易度も上がるため量産機として採用するには難があった。

そこでISのバイタルデータ収集と搭乗者の肉体に流れる電気信号を検知する基本的な機能に注目。人間の情報処理能力をIS側でも負担させることで機体制御をより簡易にする操縦支援システムを作り融合させている。

 

---後に『PXシステム』としてデュノア社製MSに搭載される、その雛形であった。

またCBと協力して完成される『ジェミナス』はシャロの弟達が搭乗し、とある騒動解決の立役者として活躍することになるがそれは未来の話。

 

 

 

「っづラァ!」

「これでっ!」

 

 

 

トランザムに反応し『零落白夜』と同じエネルギーを纏った『シールドピアース』を新華の胸部目掛け突き出される。咄嗟に『ストーリーズ・イレギュラー』の砲身部分で叩き、カウンターとして砲身をそのまま胴体へ叩き付ける。

そのままレギルスシールドを突き入れようとしたが、横合いからカーバンクルが接近してきたためその場から離脱。

そして刀奈の声が聞こえない代わりにカーバンクルが弓のように放たれた時以上の集中力を感じ意志を向ける。

 

 

 

「!」

「時間は、稼いだわ」

 

 

 

カーバンクルの胴体が射線を塞いでいたが、一瞬だけ左腕に『ミストルティンの槍』を番え今にも放とうとしている姿が見えた。マーベットの言葉を聴き、この状況のための布石であり戦術だと理解する。

 

回避は間に合わない。トランザム中とはいえサイコフレームの光が自身に伸びているため、粒子分解しても追尾されて誤魔化せない。

 

カウンターも間に合わない。カーバンクルの胴体がいやらしくも射線を塞ぐうえにミストルティンの威力に消される。ビット類は他の操縦者へ向かわせてしまった。

 

残るは防御。しかしアレは生で受けられない。受ければ負ける。レギルスシールドは耐久力不足で根本的に解消出来ない。トラウマシェルも同じ。機体本体のGNフィールドは展開までに刺さる。

 

---なら、いつも通りにするだけ。『攻撃は最大の防御』である。

 

 

 

「---」

 

 

 

レギルスシールドを仕舞い『ストーリーズ・イレギュラー』のセレクターレバーを『S・S(スペシャル・ショット)』に。

精神系火薬の満載されたマイクロミサイルが詰まったコンテナが顔を出し、ミストルティンの槍が放たれる。

 

急速接近するそれにS・Sを射出。本来ミサイルを放つ筈のコンテナはミストルティンと接触し大爆発を引き起こした。

爆発に吹き飛ばされるものの直撃を避け、衝撃も軽減されたものの吹き飛ばされる。

 

 

 

「---っと」

『---ご主人様!?』

「大丈夫だ」

 

 

 

吹き飛ばされた先で姿勢制御し競技場の壁に着地する。その際に脚部が壁にめり込み近くの観客席に振動が伝わるアクシデントが発生したが、気にせず再度上空へと跳ぶ。

Sビットを呼び戻し大型ハンドユニットを両手に装備。呼び戻したSビットを連結させ両手からライザーソードを発振する。

 

 

 

「ツインライザーソード」

 

 

 

競技場のシールドが悲鳴を上げる中で容赦無く巨大なビームサーベルを振るい残ったISを薙ぎ払う。その太さとAMBACを利用した速度で振るわれる攻撃を避けられた者は、1人のみ。

 

 

 

「しーんーかーくーんー?」

「ぅぬ!?」

「さっき一歩間違えてたら右腕吹き飛んでいたでしょー」

『GRR』

 

 

 

蒼流旋を回収しカーバンクルを浮かべる刀奈は、先のミストルティンとS・Sがぶつかった際に何が起きたのか理解していた。

そして、負けないために躊躇い無く自身を犠牲にするような行動に出たことに怒っていた。カーバンクルも同意するように小さく唸る。

 

 

 

「しゃーねーだろ、アレしか手が無かったし」

「というか今右腕の感覚無いでしょ? 無理に動かしてるの分かるわよ」

「バレたか」

「分からないとでも?」

「いや、帰ったら簪とシャロが怖いなと」

「私は?」

「怒ってるのも可愛い」

「そんなんじゃ、誤魔化されないわよ!」

 

 

 

精神系火薬の大爆発はすぐ傍にあった新華の右腕神経を焼いていた。もし射出が間に合わなければ刀奈の言った通り右腕を物理的に失っていたことだろう。対構造物鉄鋼弾に精神系通常弾の火薬をたっぷり入れてあるが、本物のミサイルとなんら変わらない威力はあるのだから。

しかもISには劇薬どころか致命的な相性なため何気にサヤカも危険だったが、だからこそ右手で庇い被害を抑えていた。先程サヤカが焦った声を出していたのもそのためである。

現在右腕は脳量子波にて装甲を無理矢理動かしているだけで、P・V・Fは使用不可能どころか握力すら無い状態だった。

 

 

 

「サイコフレーム共振してるから大丈夫だと思った。今は反省している」

「だったら、その証拠を見せなさいな!」

『GAAAAAAAAA』

 

 

 

蒼流旋と左腕のブレードを展開しライザーソードを掻い潜り新華へと接近。残りエネルギーこそ少ないがカーバンクルの存在もありやる気はまだ十分あった。

しかし新華はライザーソードを収め大型ハンドユニットを収納、Sビットもバインダーへと戻しGNソードⅥ展開。刀奈へと向かう。

 

 

 

「!?」

「すまねぇな、心配させちまって」

 

 

 

カーバンクルの胴体を足場にして一気に肉薄、GNソードⅥに左手から生成した対構造物鉄鋼弾を装填しSビットを銃口の左右アタッチメントに接続する。

ビームと実弾を使用可能な仕様にしていたのは、P・V・Fを展開出来ない現状を想定してのものだった。ようやくその機能を使う。

 

 

 

「1人じゃあ、俺自身を守る理由は無ぇからよ」

 

 

 

銃口を刀奈の胸に向け対構造物鉄鋼弾を放つ。人間に効果が無いその銃弾は人を傷付けず、ミステリアス・レディのシールドのみを貫いた。

Sビットにより弾そのものを加速、レールガンのように放たれるそれの威力は高い。それこそ、操縦者を無視してISコアのみを撃ち貫ける程に。

 

---『乾燥者』なら、そんなことせずとも通常攻撃で搭乗者諸共ISを殺せる能力を持つ。

 

---『パラベラム』なら搭乗者を精神系通常弾で撃ち抜くだけで終わらせられるし、そうしない理由が無い。

 

---『零落百夜』はシールドエネルギーに対する特効であり、それだけである。

 

---明確にISのみ(・・・・)を殺せる存在は、この装備を作り運用出来る新華と『Evolveクアンタ』のみ。

 

 

 

「だからやっぱ俺は、お前達が欲しいよ」

「---」

 

 

 

ISから見た新華は、人類から見た『乾燥者』に似た存在、いやそれ以上かもしれない。そんな存在を表す言葉は1つ。

 

---『天敵』、それが相応しい。

 

 

 

「ばっ、こんなところで何言ってんにょ!?」

「とと、まぁアレだ。本当に悪いと思ってるからさ。帰ったら簪とシャロを宥めるの手伝ってくれね?」

「むぅーりぃー!」

 

 

 

最後に残っていた刀奈を(色んな意味で)撃墜したことで競技が終了する。エネルギー切れで落下しそうになる刀奈の手を掴み引き上げると、真っ赤な顔が近くに来るよう腕で抱える。

お姫様抱っこをしてフェイスガードを開くと、ちょうど龍形態から通常形態に戻ったカーバンクルが彼女の上に落ちてきて、それを受け止める刀奈。

その光景がすごく愛おしくて顔が綻ぶ。

 

 

 

「あっはっはっは」

「もぅ…」

「キュー」

 

 

 

顔が綻ぶのを止められない刀奈はカーバンクルをギュッと抱きしめる。

そうやってイチャイチャしつつも近場のピットへと向かう。そこへ一夏からプライベートチャンネルが繋がる。

 

 

 

『………おーい、新華、生徒会長。何やってんの…?』

「おう一夏」

『おうじゃないが。いやほんと、何やってんの? こっちが恥ずかしくなるわ』

「えっ」

「あーそっか。トランザムで高濃度GN粒子が散布されてたから声が届いたのね」

「えっとつまり…」

『…絶句だよ。嫌な予感的中だよ。どうすんだよこの空気』

「なるようになるさ」

 

 

 

トランザム時に放出されたGN粒子により声が会場全域に広がっていたため『欲しい』発言は一夏を含めた全員にバッチリ聞こえていた。

観戦室で一夏達が顔を赤くしながら頭を抱えているが、新華の腕の中の刀奈はそれ以上に顔を真っ赤にして何も言えなくなっていた。

しかし機械は響いた声を記録出来なかったためそのプロポーズは口伝でのみ伝わり、尾ひれが付いた結果『モンド・グロッソの中心で愛を叫んだ男』などと呼ばれることになる。

 

またこの戦闘において、まともな被弾が無かったことから織斑 千冬が同じことを出来たかという議論が起き『人類最強』ではないかと噂されるようになる。

 

 

 

 




新華キラー刀奈爆誕
原作世界行っても新華は十分無双出来ます、『Evolveクアンタ』無しで。

新キャラの喋り方はテキトーです。
というか調子こいて新華に言わせたセリフが新キャラへのフラグになったってどういうことなの…?

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