IS~疾走する思春期の転生者~   作:大2病ガノタ

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163話目をどうぞご覧ください。
一部キャラが書いている最中に進化してました。あと今回(出番的な意味で)鈴ちゃんは泣いていい。


決着②

 

 

 

 

---side 刀奈

 

『白獅子』から放たれた電撃により『ミステリアス・レディ』の全機能が停止した瞬間、彼女は敵の目の前に敵が居るのに間抜けな声を出し思考を停止してしまった。

彼女とて束製のISを自分の意思と関係無しに停止されることを予想していなかったわけではない。寧ろ、その心構えはしていた。

ただ、無人機の特殊機能が絶対防御の無効化であると、それだけだと油断していたが故の結果であった。

 

 

 

 

 

「まっず、今止まったら…」

 

 

 

 

 

アクアナノマシンも墜ち、PICすら機能せず自由落下が始まる。四肢はISの装甲が重りとなり思うように動けない。AMBACを行おうとすれば目の前の無人機に絶好の隙を晒してしまう。

 

 

 

 

 

「(動いてちょうだい『ミステリアス・レディ』! 今動かなきゃ、今やらなきゃ…!)」

 

 

 

 

 

一夏は箒と共に落ち、刀奈は今1人だった。そして『白獅子』の銃口が向き光が生まれるのが見える。

 

 

 

 

 

「っ! 私は!」

 

 

 

 

 

色を失った『蒼流旋』を自分の前に翳す。だがそれでも足りないと彼女は感じていた。

それに、彼女自身が意地でも目の前の機械に負けたくないと思っていた。それは一夏と違う理由で、同時に簪とシャルロットでないと分からないであろう、無人機から漂う匂い。

 

 

 

 

 

『お前は邪魔』

「私を! ただの女と思うな!」

 

 

 

 

 

それは『白獅子』から滲み出る製作者たる束の、純粋な害意。『白獅子』の感情の無い顔と刀奈へ向ける機械の目が束の言葉を明確に伝えていた。

言葉にこそ出していないが、刀奈はそれを『聴き取り』怒りを抱く。

 

 

 

 

 

「私は、新華君と共に『大人』になる! 『子供』がしゃしゃり出てこないでちょうだい!」

 

 

 

 

 

命の危機にも関わらず刀奈は激情のままに束を『子供』と断言し叫んでいた。そんな彼女の視界に、虹色の粒子がチラついた。

直後、刀奈に向けて真っ直ぐビームの光が伸びる。それに対し刀奈は、信じた。

 

 

 

 

 

「(起きなさい『ミステリアス・レディ』! この程度の相手に殺される程度ではないでしょう、あなたも!)」

 

 

 

 

 

走馬灯は、流れない。流れる必要も無い。

彼女には自分が手塩に掛けて作ったIS(アイボウ)が居て、愛する男の光が届いて、その彼がくれた物(イレギュラー)があった。

そしてそれ(・・)は、確かに起きた。彼女の意思に反応するように。我侭で子供の癇癪を起こす創造主に抗うように。

 

 

 

 

 

『!?』

「私も『ミステリアス・レディ(この子)』も! あなた程度に撃たれる程弱くないのよ! 力でなく、心がね!」

「キューーーー!」

 

 

 

 

 

機能を停止した『ミステリアス・レディ』が再起動を果たし、間一髪で『カーバンクル』を出した。

登場した水色の『カーバンクル』は額のクリスタルを光らせて、『トラウマ・シェル』を発生させてビームを受け止め霧散させた。

その虹の影響か、刀奈と『ミステリアス・レディ』の輪郭が薄っすらと光っていた。

 

 

 

 

 

「生徒会長!」

「あら、そっちも大丈夫かしら?」

「ええ、お陰様で。『赤椿』は『白式』と接触した途端に再起動してくれましたので」

「で、会長、今のは?」

「んー、愛の力って奴かしら」

 

 

 

 

 

一夏と箒の2人が合流し『白獅子』を見る。

『白獅子』は刀奈が纏う光を解析しているのか、銃ノ型を構えたまま動かない。

 

 

 

 

 

「今まで攻めだったのに今度は受け? だとしても、今の私の前では、無意味ね!」

「生徒会長、なんだか高ぶってませんか?」

「ふふん、この光のお陰か今の私は新華君と深い部分で繋がっている感じなのよ。だから今の私は、無敵…!」

「あっはい」

「あと簪ちゃんとデュノアちゃん、それに新華君が役目を終えてこっちに向かってるみたいだから速攻で片付けるわよ」

「わ、分かりました」

 

 

 

 

 

なにやら絶好調で最高にハイになっている刀奈であったが、解析を終えたのか『白獅子』が肉薄する。

それを刀奈は、先程とは違い流れるような動きでナノマシンの剥がれた『蒼流旋』を振るい弾く。

 

 

 

 

 

『…!?』

「さて、織斑君! トリィちゃんを出して援護させてちょうだい! そうした方が早いから」

「はい!」

「じゃあ、行きましょうか。『クルちゃん』、特殊機能を使ってちょうだい」

「キュイ!」

 

 

 

 

 

刀奈の『カーバンクル』は彼女により『クルちゃん』という愛称で呼ばれていた。その『クルちゃん』が、開発段階で仕込まれた特殊機能を発動させる。

額のクリスタル、『サイコフレーム』を中心に姿を変えていく。『カーバンクル』は大きな頭部の中に、そして首同じ太さの胴体が現れる。

神話において『カーバンクル』の額のクリスタルは『ドラゴンの脳みそ』と言われている。そして、その話に違わず『クルちゃん』は大きな龍となり刀奈の傍に浮いていた。

 

 

 

 

 

「GRRRR…」

「ふふ、さて、やるわよ『ミステリアス・レディ』、『クルちゃん』」

「GYOOOOOOOOO!」

 

 

 

 

 

青く長い龍が吼え『白獅子』へと向かう。その『白獅子』は一夏と箒、そしてトリィによって押されていた。

 

 

 

 

 

『トリィィィィ』

「このままでも、行ける!」

「ごめんなさーい、まだ終わってないわよね?」

「GYUOOOOOO」

「ぬっ!? それは龍ですか!?」

「ええ。じゃあラスト、一気に畳み掛けましょう! 私が抑えるから2人で決めなさい」

「「はい!」」

 

 

 

 

 

まず『クルちゃん』が捻りこむように『白獅子』へと向かい刀奈が影に潜む。

『白獅子』は『クルちゃん』の頭部に向けビームを連射するが、光を纏ったその表面にダメージを与えることは出来ない。

突っ込んでくる『クルちゃん』を避けるが、新華のデータで動いてるせいか避ける時に軽く蹴って離れる。

逆に言うと蹴れる距離まで避けずに近付いてしまった。

 

 

 

 

 

「深いところで繋がってるって気持ちいいわね。ただ『言ってない』こともあるようだけど」

『!?』

「後でみっちり絞って『ヴェーダ』とか聞き出してあげるから覚悟なさい!」

 

 

 

 

 

ビームサーベルで対応しようとした『白獅子』だったが、振るう軌道を縫って刀奈は『蒼流旋』を当てる。

先程とは違う動きに『白獅子』はエラーを起こし掛けるが、すぐに学習し銃ノ型で狙いを定める。

同時に、後方から迫る一夏と箒に気付いた。

 

 

 

 

 

「決めるぞ箒!」

「ああ!」

「トリィ!」

 

 

 

 

 

『白獅子』のビームライフルの連射は、全て切り払われる。刀奈は『クルちゃん』の影に隠れ当たらなかった。

 

 

 

 

 

「どうやらさっきの電撃は一定範囲内に対象が入った時、ないし自身が撃墜されそうな時に発動するみたいね。で、発生器は背中の翼みたいよ」

「了、解!」

 

 

 

 

 

『白獅子』との近接戦闘になる2人だったが、先程のようにあしらわれることは無かった。

それは零落白夜で撃墜され掛けた『白獅子』が学習し脅威と判断したためであり、2人がいると刀奈を落とせないと判断したためだった。

だが、既に流れは『白獅子』に無く、一夏と箒は全ての攻撃をいなし、回避していた。

 

 

 

 

 

『!?』

「さっきと違って相手にしてくれるのは嬉しいけどさ!」

「貴様の動き、何度見てきたと思っている!」

 

 

 

 

 

---これまで一夏達に限らず、IS学園の専用機持ち達、クラスメイト達、CBのMS専用機持ち達は大なり小なり新華とサヤカに鍛えられている。授業中、放課後、休日。人によって違うが、特に今作戦に参加した千冬と山田先生以外は新華の本気を何度か受けている。

もちろんその場合は一方的にボコボコにされることが多い。だが、何度も繰り返すと目が肥え慣れていく。

故に新華のデータを使い学習機能を持っていたとしても、武器も少なくサヤカのような相棒も無く理不尽さが足りない『白獅子』は、『壁』足りえど『通過点』にしかならない。

 

 

 

 

 

「そして!」

「ここに叩き込んで、だ!」

「トリィ!」

 

 

 

 

 

箒が『白獅子』の左腕腕を切り上げるように上に向け一夏が左手の『雪羅』を叩き込もうとする。が、当然『白獅子』の蹴り上げが腹に飛んでくる。

それと同時にトリィを突撃させた。

 

 

 

 

 

『!!』

「ト、リイイイ!」

「ぐおおおおおお!」

「これ、でっ!」

 

 

 

 

 

『白獅子』は顔面目掛け飛んできたトリィを間一髪で避けたが、後ろに回ったトリィは戦闘機のような機動で背中の羽をもぎ取った。

箒は『白獅子』の両腕を押さえるように両手の刀で斬り付ける。

そして、蹴り上げられた一夏は空中で『雪平』を逆手持ちにし零落白夜を起動。

 

 

 

 

 

「やれえええええ!」

「トリィ!」

「チィェエエエエエエストオオオオオオオオオオ!!!」

 

 

 

 

 

箒が抑えてた瞬間にトリィが再び突撃し『白獅子』の左肩を破壊。トリィを確保した箒が『白獅子』から距離を取った。

そこに一夏が落ちてくる。体を捻り横に回転しながら『白獅子』を縦に切り裂く。

頭頂部から零落白夜によって切り裂かれた『白獅子』はコアを露出させながら、それでも動いた。

 

 

 

 

 

『キ体破損、データ異常無ジ、破損カ所プログラム消キョ、セントウゾッコウ、排除、排除、排除』

「コイツ、まだ動くか!」

「その根性だけは本物並かしら? いえ、新華君は考える間も無く動くわね」

「GAAAAAAA!!」

 

 

 

 

 

残った右腕のライフルを箒に向けようとした。すかさず一夏が箒の前に出るが、後ろから頭に刀奈を乗せた『クルちゃん』が『喰った』。

正確には龍となった頭部の歯でコアごと『白獅子』を噛み潰した。

 

 

 

 

 

「機能停止を確認、お疲れ様」

「お疲れ様でした。…ふーっ、危なかったぁー」

「色々と言いたいことはありますが…何とかなりましたね」

「ええ。でも、最後まで気を抜いちゃだめよー? 大体終わったみたいだけど、ね」

「トリィ」

「GYURRRRR…」

 

 

 

 

 

いっそ清清しい気持ちで刀奈は、島へと視線を向けた。そしてハイパーセンサーを使っていないのに新華、簪、シャルロットを確認した。

 

 

 

 

 

「さて、私達も合流しますか」

 

 

 

 

 

---side out

 

 

 

 

 

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-------------------

 

 

 

 

 

---side ラウラ

 

ガンペリーが撃墜され山田先生、鈴、ラウラの3名はBチームの援護を行う予定だった。

 

 

 

 

 

「盛り上がっていますね、Bチーム…」

「最悪、この3名で対処せねばならんか。山田先生、デュノア社製の新装備とやらは?」

「一応使い方は理解してますし多少は練習もしましたから心配しなくても大丈夫ですよ。あと、今なら水中にある基地入り口をここから狙い撃てますね」

「ほぅ。では、合図と同時に撃るようエネルギーのチャージを。鈴、前衛一辺倒だ」

「いいけど、向こうの数がこっちの2倍よ? 全部同時に相手出来ないから」

「分かっている。目標はあくまで敵首領1人だけでいい。奴さえ逃さねば問題は無い」

 

 

 

 

 

が、そのBチームがボーイ・ミーツ・ガールしており割り込む感じでもないので、後方支援やってるスウェンに連絡入れて備えていた。

山田先生は相変わらず『ラファール・リヴァイブ』のままだったが、シャルロット経由でデュノア社の最新装備の一部武装を貸与されていた。

真っ白な『メガ・ビーム砲』と名付けられた、全長がISの2、3倍はありそうな砲身を水中の基地入り口に向けエネルギーを充填する。その充填スピードは目を見張るものがあった。

 

 

 

 

 

「充填率20、40、凄い…80」

「ああ、鈴。おそらく乱戦になるだろう。衝撃砲を絶やすな。雑魚には十分な牽制になる」

「オッケー」

 

 

 

 

 

この3人、2人の男子やMSのせいで目立ちにくいが非常に安定したメンバーである。

教師であり元自衛隊かつ千冬に信頼されるレベルの実力がある中距離支援タイプの山田先生。

近~中距離を最も得意とし代表候補生かつ専用機を与えられ努力を惜しまない鈴。

現軍人であり特殊部隊の隊長を務められる実力と指揮能力を持ちながら『ヴォーダン・オージェ』による自己強化が可能なオールラウンダーのラウラ。

そして、この面子だからこそ出来る戦略があった。

 

 

 

 

 

「そろそろ来るぞ。山田先生、充填率は?」

「チャージ出来てます。…展開してから8秒程ですか。使い所に困りますね」

「先生、それ結構収納要領を圧迫してますよね? いざとなったらそれで相手殴ったりしたらどうです?」

「か、考えておきますね」

 

 

 

 

 

山田先生は鈴の提案に苦笑いをする。山田先生はそういった武器の使い方は上手いが、新華のように弾切れしたからといって棍棒代わりに使用することは無い。

そう話していると、ハイパーセンサーが7機のIS反応を捕らえた。それは確かに水中の基地出入り口に向かっていた。

 

 

 

 

 

「よし、山田先生、頼みます。鈴、しくじるなよ」

「お任せください」

「アンタこそタイミング逃すんじゃないわよ」

 

 

 

 

 

ラウラと鈴の2人が山田先生から離れ下方に位置する。そして、7つの反応が出てきたタイミングを見計らい山田先生が『メガ・ビーム砲』の引き金を引いた。

放たれたビームは寸分違わず狙った場所へ向かい、海水を蒸発させ水蒸気爆発を引き起こした。

 

 

 

 

 

「うわーい凄い威力。見た目通りで頼もしいわ」

「さて、敵はどう来る」

 

 

 

 

 

鈴は驚愕の声を上げつつハイパーセンサーで敵を確認し、ラウラは『ヴォーダン・オージェ』を以って敵に備えた。

そして、水柱が立った場所から5つの影が現れる。内1つは紛れも無く全身が金色だった。

 

 

 

 

 

「ラウラ!」

「分かっている、任せたぞ!」

「はいはい!」

「援護します」

 

 

 

 

 

エネルギーの充填を終えた『メガ・ビーム砲』が金色の機体へ向けて放たれ、鈴は黒い5つの機体『スキゾイド・ドーベルマン』に向かいラウラは金色の機体へと向かった。

しかし『メガ・ビーム砲』から発射されたビームは、金色の機体の掲げたシールドによって霧散する。

 

 

 

 

 

『この『暁』に光学兵器は効かないわ』

「そうか、情報をありがとう、とでも言っておく」

「…AICで止めるつもりかしら?」

 

 

 

 

 

金色の機体、『スコール・ミューゼル』の『暁(アカツキガンダム)』は7つの砲塔、ドラグーンを射出し4基ラウラにビームを放つ。

対しラウラは6基中4基のワイヤーブレードを射出し迎え撃つ。しかし内3つは山田先生の元へと向かった。

だがラウラはそのままレーザー手刀でスコールに接近しようとする。

 

 

 

 

 

『あら、お仲間を気にしなくてもいいのかしら?』

「生憎と教官の認めるIS操縦者なのでな。私は自分の役割を果たすだけだ!」

「少しはこっちの心配もしろー!」

 

 

 

 

 

ラウラと山田先生がドラグーンを捌く傍ら、鈴が5機の『スキゾイド・ドーベルマン』を実質1人で相手していた。その悲痛な叫びがラウラの耳に届く。

 

 

 

 

 

『…アレは?』

「冗談を言えるだけ余裕だ」

 

 

 

 

 

鈴の叫びを無視したラウラがスコールに近付こうとするが、ビームライフルの引き撃ちをされて距離が詰められない。

試しにレールキャノンを撃ってみるが回避され、『暁』の腰から強力な2条のビームで返される。

しかしラウラを援護するように山田先生が『メガ・ビーム砲』とマシンガン、グレネードを撃って援護してくれた。

特に『メガ・ビーム砲』についてはシールドを構えて防いでいるので、その都度瞬間加速を使って間合いを詰めていく。

 

 

 

 

 

「(教官が信頼するのも分かる腕前だ。痒い所に手が届く、という奴だな)」

「ボーデヴィッヒさん、気を付けてください。先程から戦闘区域の外へと向かっています! 『メガ・ビーム砲』の射程内ではありますが、このままだと逃げられます!」

「! 了解。鈴、そっちは?」

「あーもう硬い! ゴメンてこずってる!」

「分かった。山田先生、今から言う場所に『メガ・ビーム砲』を順に撃ち込んでください」

「わ、わかりました!」

 

 

 

 

 

そう言うとラウラは残った2本のワイヤーブレードを射出しスコールへと向けた。

無論スコールはワイヤーブレードを迎撃するためにビームライフルを向ける。だがそこに『メガ・ビーム砲』が飛んでくる。

彼女の機体である『暁』に光学兵器は効かない。それは『ガンダムSEED DESTINY』原作と同様の機能『ヤタノミカガミ』を使用しているからであるが、その機能が処理し切れない高出力のビーム、つまり『メガ・ビーム砲』の攻撃はシールドを用いないとダメージが入ってしまう。

故にスコールはシールドを掲げるか回避を行う他無かった。

 

 

 

 

 

『くっ』

「貴様のビット操作能力は、山田先生からすれば取るに足らないようだな」

「結構キツイんですけどね!」

 

 

 

 

 

スコールは回避を選択しラウラのワイヤーブレードにビームを撃ち込む。後方に回避したせいで距離が離れるが、集中力が削られドラグーンがラウラと山田先生により1基ずつ撃墜された。

 

 

 

 

 

『(…頃合いね。BTのエネルギーも危ないし、島からの距離も稼げた。Mとラクスは駄目みたいだけど、アウトローはいつでも補充出来る。『ファミリアⅡ(クロスドレッサー)』を欲しがる勢力や権力者はいくらでも居る)』

「むっ」

 

 

 

 

 

スコールがドラグーンを回収したのを見てラウラは警戒心を強めたが、同時に好機とも考える。

 

 

 

 

 

「(BTのエネルギー回復か誘っているのか、それとも…。だが攻めるなら今、か)」

「ボーデヴィッヒさん!」

「お願いします」

「了解です!」

 

 

 

 

 

ラウラがレールガンとワイヤーブレード、そして山田先生が『メガ・ビーム砲』とマシンガンをスコールに向け一斉に放つ。

それをスコールはシールドで全て防ぎ、破壊された。

そのタイミングを見計らいラウラはレーザー手刀を発振、ワイヤーブレードを戻してエネルギーを集中させる。

 

 

 

 

 

「これで、どうだ!?」

『関節狙いはいい発想だったけど、一手足りなかったわね?』

 

 

 

 

 

エネルギーを集中させたレーザー手刀は発振装置に過負荷を与えつつ、距離が離れたスコールへと伸びた。『光学兵器は効かない』と言いつつシールドを使っていたことから『ヤタノミカガミ』の機能と限界を予測し、回避される可能性のあるレールガンではなく、距離が届かないワイヤーブレードでもなく、無理をすれば届くレーザー手刀を使用して装甲化されていないであろう関節部を狙った攻撃だった。

だがそれは届かず、僅かに空間を空けていた。

だが、その時点で既にラウラの術中に嵌っていた。

 

 

 

 

 

『ではこれで…ん?』

「…1度だけだが、AICが真正面から破られた時があってな」

 

 

 

 

 

スコールはシールドが破壊されると同時に緊急離脱用ブースターを展開し、起動していた。そのまま離脱しようとしていたのだろう。だが、動けない(・・・・)状態になっていることに気付き疑問を抱いた。

そしてラウラが手を伸ばしきった状態で、呟くように独白する。

 

 

 

 

 

「その当時は私が調子に乗っていた時期であり黒歴史という奴であまり思い出したく無かったんだが。しかし軍人でありながら学生として失敗を許されている環境はプレッシャーが少なくてありがたいものだった」

『何を…』

「まぁ要するに、『初心に帰る』という奴だ。軍人と兵器というのは切っても切り離せないものでな? その中で私は戦うために生み出されたわけで、兵器を十全に扱い性能を引き出すことはこれまでずっと行ってきていた」

 

 

 

 

 

元々ラウラはISが無ければ千冬と会う事無く優秀な軍人のままであった。従来の兵器は熟知しており、実力も高い。

だが彼女はISに乗る以前から、普通の人間なら出てくるような『自由な発想』が足りていなかった。ある意味(軍)箱入り娘と言っても差し支えない彼女は自分なりに(・・・・・)兵器を扱っていなかった。

 

新華のように死狂いの如き経験と直感も無く、織斑姉弟のように武器を刀一本に絞ることも無い。彼女本人にあるのは、ある意味で山田先生のような武器を選ばない器用さと体の動かし方であり、そういう意味では専用機より量産機の方が彼女には向いていた。

彼女の出自だけで言うなら、以前新華が言ったような『消耗品』としての適性が最も高い。だが同時に『消耗品』を効率良く運用出来るのも彼女の強みであった。

 

 

 

 

 

「だがISは私からすると癖が強すぎてな。この『シュヴァルツェア・レーゲン』の性能に文句は無いが、こうして自由に活用するには苦労したものだ」

 

 

 

 

 

しかし日本に来てから彼女は変わった。敗北を知り、恋愛を知り、友人が出来、娯楽を知った。

そう、娯楽を知ったのだ。他ならぬ日本で。

 

 

 

 

 

「ああ、今どうして動かないか理解出来ていないだろうな? レーザー手刀を延長させて、その先端からAICを掛けさせてもらった」

『なっ』

「後は、こうするだけだな」

 

 

 

 

 

無理をしてレーザー手刀を伸ばしたのはラウラの言った通りAICの効果範囲を伸ばす為もあった。正直喋ることも億劫であり、ワイヤーブレードを射出しスコールに巻きつけた時は何も言うことが出来ない程に、集中力を使っていた。

 

 

 

 

 

「…ふうっ! 『影縫い』と言ったか、とあるニンジャの技を影ではなくワイヤーブレードで再現してみたのだが、上手くいったな」

 

 

 

 

 

流れる汗を拭い、上手く出来たことに安堵するラウラ。今やっているのはワイヤーブレードに対象を接触させ、ワイヤーブレード越しにAICを叩き込んでいる状態である。強制怯み技とも言える。

そもそもこの技は某有名忍者アニメから発想を得ているが、彼女の想定した技とは少々違う。

対BT攻撃とでも言えばいいか、ワイヤーブレードを振り回しAICを乱発することで浮遊しているBT兵器を一瞬でも停止させ演算を妨害、落とす技であった。初見では新華のSビットですら落とせたこの技は、集中力の問題で隙が出来やすく、またワイヤーブレードの範囲外に居れば意味を成さないうえ斬った方が早いので披露するタイミングは無かった。

だが、こうして敵を捕獲するには大いに役立つ。

 

 

 

 

 

「ん? 待てよ、こういった文化を薦めてきたクラリッサは出来るのか?」(出来ません

『そ、そんなふざけた原理で…』

「存在自体がふざけているような奴や、貴様らのようなふざけた事をやっているテロリストが居るんだ。多少はふざけた方が気が楽でいい」

 

 

 

 

 

そう言ってラウラは山田先生に鈴の援護に向かうよう連絡する。

 

 

 

 

 

「山田先生、援護ありがとうございました。鈴の援護に向かってください」

「えっと、それなんですけど…」

「? 何が…」

『ふ、ふふふ。何も知らないのね』

 

 

 

 

 

山田先生が苦笑するのに疑問を持ったラウラは、次いでスコールの発した言葉に反応する。

 

 

 

 

 

「何だと?」

『私の体にはちょっとした仕掛けがあるの。でももう手遅れね』

「おい、何を言っている、答えろ」

『呪うなら何も言わなかったあの天使と、あなた自身の愚かな無知を呪いなさい』

 

 

 

 

 

ブースターを背負った状態でAICに捕まっている様は実に間抜けだったが、彼女は以前新華とあることを指摘されている。

 

 

 

 

 

『私が死ぬか戦闘不能か何かで捕縛された場合、宇宙に浮いているISを監視するための衛星が落ちる。それも混乱を誘うために人の密集する場所、都市に』

「なっ」

『最も現段階では衛星の軌道が変わった程度で時間が稼げる。でもこのまま私が捕縛されたままなら、どうなるかしら?』

 

 

 

 

 

ラウラはスコールを睨む。もし言っていることが本当ならば手放して対策を取るべきである。だが盛大なブラフと一蹴する方が早い内容でもある。

だが何も言わなかった天使と言った。大体新華のことだろうと予想出来るが、新華なのでどっちもあり得た。

 

 

 

 

 

「(しかし、コイツの体が機械なのは今確認出来た。空に向けて信号を送っているのも確かだ。だが、コイツを逃がす訳には)」

「あの、ボーデヴィッヒさん? 鳳さんのことですが…」

「今はそれどころでは」

「ああ、大丈夫だぞラウラ。もう終わってる」

「『!?』」

 

 

 

 

 

そして、気付けば光を纏った新華がそこに居た。ラウラとスコールは現れた新華に驚愕する。

 

 

 

 

 

「お前、いつから」

「今着いたばかりだが? ああ、あと鈴については『クロスドレッサー』を全部破壊したから問題無い。他の戦場も終息してきたしな」

『『蒼天使』…っ!』

「よう人形。この間ぶりだな。元気そうで何よりだ」

 

 

 

 

 

そう言いつつ新華は左手の『GNソードⅥ』で緊急離脱用ブースターを切断した。ラウラはその行動に慌てて合わせて、AICを継続した。

 

 

 

 

 

「新華、唐突に攻撃しないでくれないか」

「スマン。けどこれでチェックメイトだ」

『…分かっているのかしら? 今、監視衛星は』

「終わったと言った。…まぁ、そのせいで後で3人に絞られるんだが」

 

 

 

 

 

未だに光を纏う新華は心なしかテンションが上がっているように見えた。右手の『GNソードⅥ』とは別に、左手にエゴ・アームズ『ライフ・ジャッジメント』を構えている。

 

 

 

 

 

「端的に言っちまえば作戦前に衛星を(ヴェーダで)抑えてあったんだよ。出力と情報処理能力の差でまず負けんし、お前さんが信号を送ってくれてるお陰で逆にクラック出来る」

『そんなことが』

「出来るんだよ無知野郎。まぁ知っているのは俺とサヤカ含め5人だけだし言いふらすことでも無いしな。あと他の奴に言ってなかったのは単純に俺が忘れてたから。いやこれに関しては本当に俺が悪い。スマンラウラ」

「…『銀の福音』の時の、独自のネットワークか?」

「あれ、知ってたのか? ああそうか、脳量子波使えるんだったな。数ヶ月前なのに随分前の事に思えるな」

 

 

 

 

 

軽く言う新華だったが、右手のP・V・Fに弾奏が自動的にセットされ『GNソードⅥ』がライフルモードになる。

 

 

 

 

 

「ともあれ、だ。『アカツキ』なんぞ持ち出しやがって。一部ビーム反射とか面倒にも程があるぞ」

『な…』

「対処のしようはあるがな。それに今の状態だと精神系通常弾を装填する過程が省略されていいな。あと精神系通常弾は当たると神経を焼き切って脳みそには特効なんだが…あ、ラウラ、撃つからよろしく」

 

 

 

 

 

そう言って『GNソードⅥ』で実弾を数発放ちスコールの頭部と後頭部を露出させ

 

 

 

 

 

『ぐっ』

「別にロボットや人形、果ては霊的存在相手にも効くんだこれが。ちなみにテメェみたいな機械の場合は電脳チップに当てれば終わりだ」

 

 

 

 

 

精神系通常弾を後頭部と口に撃ち込んだ。

 

 

 

 

 

「つってもまだ裏付けやらZipして情報抜き出したりとかやることあるし殺さないけどな。いやはや簪がデータサルベージしてコイツのデータ見てたから良かった。しかし分かり合うってこういうことなんだな」

「…何の話だ?」

「いや、こっちの話。…ああ、お疲れさん。これで作戦はほぼ完了ってことになるな。正直、助かった」

「ああ、そうだな。いい経験になった」

「山田先生もお疲れ様です。先に鈴が島に居るんで合流してください」

「わ、分かりました」

「コイツの首の回路は焼ききったから動かないと思うが、一応監視しといてくれ」

「いいが、どこに置いておく」

「丁度『亡国機業』のIS搭乗者を捕縛してあるが、そいつらから離れた島の上で。場所は任せる」

「了解」

 

 

 

 

 

新華を恨めしそうに睨むスコールだが新華は既に終わったように別の方向を向いていた。

 

 

 

 

 

「簪とシャルロットが出てきたってことは一通り終わりってことか。刀奈の方も終わったようだし、ガンペリーが落とされたのは…後でサルベージ依頼をしておくか。どちらにせよ、1つ懸念事項が減ったか」

「新華、想定された篠ノ之博士は…」

「来るさ、確実に。というか、来るようにかた…楯無が挑発したっぽい。心配なのは分かるが、島に着いたら武装解除とか軍人視点で出来ることを頼む」

 

 

 

 

 

そう言った後、新華は竹島へと飛んでいく。それとは別に島へ向かう蛇のような物体が新華の纏っていたのと同じ光を纏いながら飛んでいるのを見た。

 

 

 

 

 

「やれやれ、作戦の目的は達成出来たが気を抜けそうにないな。と、夜明けか」

 

 

 

 

 

新華の発言に多くの謎を抱きつつ島へ向かう。AICで固定され牽引される『暁』の装甲が光っていたが、虚しく泣いているように感じたラウラだった。

 

 

 

 

 

---side out

 

 

 

 

 

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なぜこんなことになってしまったんだ…(AA略 あーもう無茶苦茶だよ。

ノリで書くとキャラが変な方向に向かうのはご愛嬌(白目
あと山田先生が使ってた『メガ・ビーム砲』はデンドロのアレです。
アカツキに関しては、原作でビームライフルを反射してもターンホイザーはシールドで防いでいたことからの自己解釈です。

次回、決戦③
全ての元凶が表れクライマックス。
しかし新華とヒロインの絆を見せ付けられ暴走する彼女に戦いを挑むのは、主人公たる新華ではなく、親友の千冬でもなく、原作主人公の一夏でもなく、妹の箒でもない。
その赤い瞳は、理不尽を打ち砕き運命を切り開く。

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