IS~疾走する思春期の転生者~   作:大2病ガノタ

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162話目になります。戦闘回となりますが、量が多くて数話に分けて投稿します。

あと今回も、ですがノリと勢いで書いてます。分からない描写なんかは感想欄で質問するか脳内保管でオナシャス!


決戦①

 

 

 

 

---side セシリア

 

彼女らの戦いは、他の戦いとは違いセシリアが終始圧倒していた。

機体の性能で言えば、ラクスの機体の方が上である。元々セシリアの搭乗する『ブルー・ティアーズ』の姉妹機で後続機なのだから当然と言えば当然だが。

だが今まで後方支援が主で戦闘など出来ないに等しいラクスと、修羅場を潜り抜けてきたセシリアとでは、どうしようもない程の差があった。

 

 

 

 

 

「流石、この『ブルー・ティアーズ』の姉妹機。その性能の高さは誇らしく思いますわ」

「ええ、わたくしが戦えているのですもの。良い機体ですわ」

「…だからこそ、今の姿は見るに耐えません! 覚悟なさい、『亡国機業』!」

 

 

 

 

 

声を上げ先程から攻撃を行う手を緩めず、セシリアは確実にラクスを追い詰めていた。

具体的に言うと、武装がナイフ以外破壊された上で竹島表層付近まで下がっていた。

 

 

 

 

 

「流石にこの状態では…」

「……一つ聞かせてもらってよよろしいかしら?」

「おや、何でしょうか?」

 

 

 

 

 

『サイレント・ゼフィルス』の残存エネルギーが危険域に達したのを見計らいセシリアが、『スターライトMKⅢ』を向けたままラクスに語り掛ける。

ラクスはこの期に及んで逃げる為に、敢えて問いに答え時間稼ぎを行う。自機の状態を確認しハイパーセンサーで抜け道を探す。

 

 

 

 

 

「その機体『サイレント・ゼフィルス』は誰の手引きで手に入れたものですか」

「誰の、と申しますと?」

「とぼけないでください! 『ブルー・ティアーズ』は我がオルコット財閥を代表する機体です。その姉妹機は当然ながら厳重なセキュリティを掛けて開発されていたのです!」

 

 

 

 

 

セシリアにとって『サイレント・ゼフィルス』とは、愛機の『ブルー・ティアーズ』のデータを使い開発されていた故に思い入れのある機体であった。また彼女が言った通りオルコット財閥を代表する機体でありセキュリティも万全だったと言えたものだった。

新華や束のようなチートでも無い限り、ライバル企業やテロリスト相手に遅れを取るとは思えなかったのである。

 

 

 

 

 

「さぁ、わたくしは重要度の高い情報を自由に閲覧出来ませんから」

「……先日、我が財閥の1人が亡くなりましたわ」

「あら、それはそれは。ご冥福をお祈りしますわ」

「……彼の遺体のあった場所は治安が悪く、何か用事があったとしても足を運ぶことは無い、そんな場所でしたの。ですから、警察の捜査に私達も協力して原因を探りましたの」

 

 

 

 

 

セシリアの『スターライトMKⅢ』を握る手に力が篭る。

 

 

 

 

 

「その結果、彼は誰かと会う予定があったらしく護衛を複数人連れていたことが分かりました。同時に、『サイレント・ゼフィルス』が盗まれる前後に不審な動きがあったことも判明しました」

「では、その方が?」

「ええ。記録が改竄されていたらしく調べるのに時間が掛かっていましたが、彼が手引きしたそうです」

「まぁ…」

 

 

 

 

 

ラクスが息を吐くように呟いた直後、セシリアは引き金を引きナイフを撃ち落した。

 

 

 

 

 

「くっ」

「彼もあなたがたも! どれだけ人を馬鹿にして! その機体を作るのにどれだけの時間と労力が必要だと思っているのですか!」

 

 

 

 

 

セシリアはラクスとピンク色に塗られた『サイレント・ゼフィルス』を見て怒りを抱かずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

「この『ブルー・ティアーズ』が作られた時も、多くの時間を擁し大勢の技術者達が汗を流し完成させたのです! その『サイレント・ゼフィルス』も同様に作られました! 彼らは、テロリストの犯罪に加担するためにその機体を作ったのではありません!」

 

 

 

 

 

ガチャッと銃口を突き付ける。感情が高ぶっているセシリアの影でラクスは、最後の手段を使うタイミングを見計らっていた。

 

 

 

 

 

「(コアを抜き取り自爆させるやり方は一応教えてもらいましたが、この状況では意味がありませんわね。やはり緊急離脱用ブースターを使わなければ、しかし…)」

「それなのに…あなたのような素人に乗られ、あまつさえそのような…そのような色にされてしまうとは!」

「あら、かわいい色じゃありませんか?」

「あなたが言うのならそうなのでしょう、あなたの中では」

 

 

 

 

 

ビキビキ…と音が聞こえてきそうなくらいにセシリアは怒りが有頂天だった。そして、サイトスコープから目を離し『スターライトMKⅢ』を振り銃口をラクスから大きく逸らした。

それにラクスは反応し緊急離脱用ブースターを起動した。

 

 

 

 

 

「(今!)」

「ああ、そうそう言い忘れていましたわ」

 

 

 

 

 

このブースターはマドカとオータムがCBから逃げる時と、スコールとラクスがオータムの処刑場から離脱する際に使用したものであった。複数の高出力ブースターを同時に点火することで、慣性モーメントこそ大きいが最高速度まで一気に加速することが出来た。

だがセシリアは全く焦らずにBTを射出。

ラクスはブースターの加速にBTのレーザーが間に合わないと確信し笑みを深めた。だがそのラクスの予想外の行動をセシリアが取った。

 

 

 

 

 

「なっ!?」

「先程から話し方を聞いてい思ったのですが」

 

 

 

 

 

『スターライトMKⅢ』をラピッドスイッチで近接武器『インターセプター』に持ち替えて投げつけたのだった。無論ラクスは回避出来ずにその場から後ろへ押される。

ブースターの火が吹き、前に出る。しかしそこにBTのレーザーが集中した。当然ブースターが爆発を起こし、結果、セシリアの目の前に無防備なラクスの姿が晒される状態になった。

 

 

 

 

 

「キャラが被ってるんです! その喋り方をどうにかしなさい!」

「ぐっ、ああああああああああ!」

 

 

 

 

 

迫るラクスの腹に蹴りを食らわせ、直後に『スターライトMKⅢ』を撃ち込む。島の地表に叩き付けられたラクスは意識が絶える前に返事をした。

 

 

 

 

 

「り、理不尽ですわ…」

「ふん、どの口が言いますの」

 

 

 

 

 

倒れたラクスの前にセシリアが降り立ち見下ろす。エネルギー切れした『サイレント・ゼフィルス』が機能保全のため待機形態に戻る。

『ブルー・ティアーズ』同様イヤリングになった『サイレント・ゼフィルス』を、ラクスの耳から外す。

 

 

 

 

 

「……おかえりなさい」

 

 

 

 

 

様々な感情を込めながら、ようやく取り戻した『サイレント・ゼフィルス』を握り締めた。

 

 

 

 

 

---side out

 

 

 

 

 

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---side マドカ

 

 

 

 

 

「くそっ、いい加減に!」

『させないっ!』

 

 

 

 

 

『黒騎士』に搭乗するマドカは3機のMSを相手に苦戦を強いられていた。

相手の真、実、スウェンの3人はコンビネーションを崩さず、『黒騎士』のエネルギー残量を確実に減らしていた。

マドカは苛立ちが隠せなかった。

 

 

 

 

 

「貴様ら、何故ここまでやる!?」

『何が!』

「私は姉さんの横に立ちたいんだ! こんな場所で終わる訳にいかない!」

 

 

 

 

 

マドカは以前、今は亡きオータムと共にCBを襲撃し実と交戦した。その際に実は言葉を投げ掛け問答に動揺しており、その同僚である他2機に隙が出来るかと思って出た言葉だった。

しかし、その相手の反応は予想と違い甘くはなかった。

 

 

 

 

 

『そんなの、知るかよ! どんな理由があってもテロリストを見逃す理由にはならない!』

「(ほう…)だが、そうでなければ私は!」

『言葉で惑わそうとしても無駄だ。ここは戦場で、貴様は敵であることに変わりない』

 

 

 

 

 

真の叫びとスウェンの冷静な指摘にマドカは小さく舌打ちしつつ小剣と大剣を振るう。

 

 

 

 

 

「チッ、そう上手くいかないか」

『君は、まだ織斑さんを諦めきれないのか!』

「…いや、そうでもないか」

 

 

 

 

 

実が相変わらずマドカに突っかかる。その事実に口角を少し上げた。

 

 

 

 

 

「諦め切れるものか! 姉さんの隣に立てれば…」

『だからって! それに、立てたとして、その後はどうするつもりなんだ!』

「その後か…」

 

 

 

 

 

バスターライフルを牽制にしてビームサーベルで切りかかってくる実。マドカは零落白夜でそれを受け止めた。

…正直、マドカの行動指針は今言った通り『一夏を排除し千冬の隣に立つ』ことだった。今まで通りなら、それだけ見ていた。

彼女自身は気付いていないが、元々マドカが千冬の隣に執着する理由は『寂しかったから』である。彼女の周りに『親』も『家族』も居らず、自分と同じようにクローン体である実は知らぬ間に救い出され、ラクスは『友人』であっても『家族』では無かった。

本当の意味で彼女を受け入れる存在は、『織斑 マドカ』という『人間』を受け入れてくれる存在は居なかったと言えた。

 

 

 

 

 

そんなこと(・・・・・)は考えたことが無かったな」

 

 

 

 

 

そんな彼女が、恵まれない境遇の中で抱いた淡い期待こそが『千冬に認めて貰えれば、自分を家族として見てもらえる』というものだった。

無自覚に発生した期待だった故に、それはいつの間にか歪んでいた。『認めてもらう』為に強くなり『受け入れてもらう』為に隣に立つ。彼女を作った者達が、彼女に強さを求めたために生じた歪み。

そしてそれは同時に、既に『隣に居た』一夏への害意となる。一夏が居る位置が自分の求めるものだと。

だからマドカは一夏を排除しようとした。その場所を得るために。

 

 

 

 

 

『そんなの! そんなの悲しすぎる! 戦う以外の方法だってあるだろう!』

「貴様は恵まれたからそんな事が言える! 貴様には分からんだろう。縋れるものがそれしか無い者の気持ちが!」

『くっ、そんなこと…!』

 

 

 

 

 

零落白夜を振るい実を弾き飛ばす。瞬間加速で肉薄し白い翼に傷を与えた。

実は負けじと反論しようとするが、2人に割り込む怒気があった。

 

 

 

 

 

『ふざけるな、ふざけるなよ!』

『真!?』

「何だ!」

『自分だけが不幸だと思うなああああああ!』

 

 

 

 

 

赤い光の翼を発しデスティニーがアロンダイトを構え突撃してくる。マドカは『黒騎士』に搭載された9つのビットを放ち迎撃するが、光の翼がハイパーセンサーを惑わし着弾させられなかった。マドカは突撃を回避し距離を取るが真は左手でフラッシュエッジを放つ。

 

 

 

 

 

「貴様っ!」

『お前らのせいで、それだけの人が悲しい思いをしていると思っているんだ! アンタ達のせいでアンタ以上に不幸な人だっているんだ!』

「そんなこと、知ったことか! 私は…!」

 

 

 

 

 

激しい戦闘によるエネルギーの消耗が激しい中で、緊急離脱用ブースターの存在が脳裏にチラついた。

しかし、援護に徹しつつビットの相手をしているスウェンの存在がその選択を取らせてくれなかった。

 

 

 

 

 

「(そろそろ離脱を考える時だが、黒い奴が目を光らせているせいで使えん。それに、今更離脱したところで…)」

『うおおおおおお!』

「くぉっ、邪魔だああああ!」

 

 

 

 

 

しつこく食い下がる真にマドカは剣を振るう。それに対し、真は

 

 

 

 

 

『ここだああああ!』

「! 何っ!?」

 

 

 

 

 

アロンダイトを戻し白羽取りした。マドカは一度驚いたがすぐに零落白夜を起動させる。

しかし真は両手からパルマフィオキーナを発振して受け止める。

 

 

 

 

 

『ここだ、実!』

『たああああああ!』

「ば、馬鹿なっ!」

 

 

 

 

 

マドカが戸惑った隙を突き実がビームサーベルで『黒騎士』の両腕を切断した。これで、マドカはビット以外の全ての武装を使用出来なくなった。

 

 

 

 

 

『もうこれでっ』

「まだァ!」

 

 

 

 

 

そこからの行動は、マドカの意地だった。残ったビットを無茶苦茶に暴れさせ緊急離脱用ブースターを出現させる。

規則性が無くレーザーを放ちブレードで切り付けてくるビットに実達は対処を強いられる。

ほんの僅かに生まれた間に、マドカは1機だけビットを呼び戻しブースターを点火する。

蹴りを入れる姿勢でビットを足裏に配置し、ブースターの勢いそのままに実へと向かっていった。

 

 

 

 

 

「ぐぅっぁああああ!」

『ゼロオオオオオオ!』

 

 

 

 

 

実も即座に反応したが、ISのハイパーセンサーをも振り切るブースターによる加速を利用した一撃は、『ウィングゼロカスタム』の無傷だった右翼に刺さり稼動軸ごと本体から剥ぎ取った。

同時にゼロシステムで動いた実によりマドカが展開していたブースターも背中から切り離され、慣性のままに飛んでいた。

 

 

 

 

 

「ああ、くそっ。ぐあっ」

 

 

 

 

 

その一言を呟いた時、マドカは自分が敗れたことを自覚した。直後、左足が何かに引っ張られ失速し逆さにぶら下げられた。

見ると、黒い機体『ストライクノワールガンダム』の手の平から伸びるワイヤーが刺さっていた。

そのまま島に下ろされワイヤーで拘束された。

 

 

 

 

 

「………」

『…終わりだよ』

「…フン」

 

 

 

 

 

『ストライクノワールガンダム』『デスティニーガンダム』『ウィングゼロカスタム』の3機に囲まれて抗うだけの意思が既にマドカには無かった。

そんなマドカの前に、割と満身創痍な実がフェイスカバーを空けてマドカの前に立つ。

 

 

 

 

 

「…何だ」

「……今、この作戦に織斑 千冬さんも織斑 一夏さんも参加してる」

「! …そうか」

「……会いに行きたくないのか?」

「行きたいさ。だが、この状況では無理だろう?」

「そりゃ、そうだけどさ」

『随分と物分りがいいんだな?』

 

 

 

 

 

先程の勢いが無いマドカにスウェンが疑問を持つ。思わず笑ってしまうマドカ。

 

 

 

 

 

「ふっ、自分でも不思議なくらいだ。以前ならこの状態に怒り狂っていたのだろうが、そんな気は起きんな」

『それは、何故』

「さあな」

 

 

 

 

 

これまでマドカは実に付き纏われていた。多くが偶然による遭遇であったが、彼女からすれば実はストーカーのように接触してくるうっとおしい奴という認識だった。

だが今までと違ったのは、彼が彼女のことを知ろうとし、彼女という『人間』を見ようとし、助けようとしたことだった。殺意を向けられようと諦めなかった姿勢が彼女の意識を引いた。

結果、マドカに余裕が生まれ千冬と一夏への執着が薄れた。それが今のマドカの落ち着きようと言えた。

 

 

 

 

 

「……夜が、明けるな」

「……そうだな」

 

 

 

 

 

暗闇の中に夜明けの光が差す。マドカの心にもようやく光が差したように思えた。

 

 

 

 

 

---side out

 

 

 

 

 

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---side 一夏

 

一夏、箒、刀奈の3人は唐突に現れた白きガンダムを相手に戦闘を行っていた。

しかし相手の戦闘能力は凄まじく、1機を相手に大苦戦を強いられていた。

 

 

 

 

 

「くぅっ!」

「生徒会長! くそっ、こっちを見ろ!」

「一夏、あまり先走るな! 連携で!」

 

 

 

 

 

刀奈を集中的に攻撃する『白獅子(レオン)』に一夏は箒と共に攻撃を仕掛ける。しかし現実は片手間にあしらわれる状態だった。

 

 

 

 

 

「ありがとう。…2人共、気付いてる?」

「え、ええ。一応」

「動きが、新華と似ていますね」

「似ていると言うより、そのままね。随分と厄介だわ」

 

 

 

 

 

『白獅子』の戦闘スタイルは彼らの言う通り新華のもの、つまり銃ノ型(ガンカタ)に剣道を元にした剣術、そして得意の喧嘩スタイルである。

両腕のライフルで銃ノ型を行い内蔵されたビームサーベルで斬り、銃身と脚部で殴打してくる。ビットは無いが、当たり前のように『絶対防御』を無効化し、時節姿を消してくる。

 

 

 

 

 

「君は一体何が目的なんだ! さっきから会長にばかり攻撃して、何がしたいんだ!」

『………』

「貴様、聞こえているなら返事くらいしたらどうだ!」

 

 

 

 

 

一夏と箒が『白獅子』に叫ぶ。彼らから見たら『顔』がある『白獅子』は『人間』に見えた。しかし同時に、あまりに親友と似た動きをする存在に疑問も抱いていた。

 

 

 

 

 

「あの子…いえ、あれは恐らく無人機でしょうね」

「やっぱり、そうですか?」

「前の無人機が襲撃してきた時、動きに見覚えがあったでしょう? あの時の無人機と重なるのよ。それに、関係者でもない人間が、ああも新華君の動きを真似出来る訳が無いでしょ?」

「ですね。…つまり、十中八九姉さんの作ったIS、ということでしょうね…」

「まぁ、束さん以外にああいうのを作る人も居ないでしょうし」

 

 

 

 

 

戦闘スタイル、MSの外見、天使を思わせる色と背中の羽。ここまで新華を意識し、更に刀奈を積極的に攻撃し一夏と箒には消極的。

『亡国機業』の新たな無人機という見方もあるが、出現場所と攻撃を仕掛けたタイミングを考えると外部の機体であり、同時にこんなものを作れるのは実質1人のみであった。

 

 

 

 

 

「…ということは、もしかしなくても束さんがこの近くに!?」

「だと思うわ。『ガンペリー』が健在なら『シーマ艦隊』に確認を取ったのだけど、ね!」

 

 

 

 

 

刀奈はアクアランス『蒼流旋』でビームを受け流す。ビームだけは受けまいと動くと隙が生まれ殴打される。加えてアクアランスにビームが触れてナノマシンごと蒸発し熱によるダメージも蓄積されていた。

一夏と箒の妨害により何とかなっている状態だが、『白獅子』の動きは段々と刀奈を捕らえていた。

一夏はこの状況に強い苛立ちを感じていた。

 

 

 

 

 

「(あの機体が新華の動きを真似しているのもイライラするけど、それ以上に俺達じゃ相手にならないって言われているみたいだ!)」

 

 

 

 

 

『白獅子』の目標は『刀奈の排除』であり、一夏達への対応については命令されていない。しかし一夏達と比べ刀奈の方が優先順位が高く銃ノ型にて迎撃可能だから相手にしていない、というだけであった。

だが一夏にはそれが我慢ならない。

彼は自分が『強くなってきた』とは思えても『強い存在』とは思っていなかった。それは高過ぎる目標を目指し壁となる実力を持った友人達が居るからである。

精神的に足りない部分があることも自覚している。だが、一番許せないのは

 

 

 

 

 

「(コイツに相手されないってことは、新華に相手にされないのと同じになっちまう! それじゃあ駄目なんだ!)」

 

 

 

 

 

ラウラが『VTシステム』に飲み込まれた時のような衝動とは別の感情。

 

 

 

 

 

「箒!」

「ああ! 生徒会長、援護をお願いします!」

「! 任せなさい!」

 

 

 

 

 

一夏と箒が刀奈に攻撃を仕掛けている『白獅子』へ向かう。刀奈は『白獅子』に合わせて踊る。

 

 

 

 

 

『!』

「あなたの動きはね、私の大好きな人のものなの。ずっと見てきたんだから、次にどう動くかくらいは予測出来る…!」

「そこを!」

「俺達が切り開く!」

 

 

 

 

 

刀奈によって生まれた僅かな隙へ一夏と箒が斬り込む。

『白獅子』も迎撃を行おうと銃口を向け引き金が引かれる。連続して放たれるビームは確実に直撃コースだったが、それらは一夏と箒の刀により切り払われる。

 

 

 

 

 

「「おおおおおお!」」

 

 

 

 

 

2人が左右から挟むように肉薄し剣を振るう。『白獅子』はビームサーベルを展開し水平方向に回転することで2人の剣を切り払った。

そこに刀奈から援護射撃が行われるものの、『白獅子』は自由落下するように銃口を一夏と箒に向けたまま回避する。

だが、その行動を予測していた一夏と箒が再び攻撃を行う。

 

 

 

 

 

「ハアッ!」

「うりゃあああ!」

『!』

 

 

 

 

 

箒がエネルギー光波を2振り放ち、一夏が垂直方向から零落白夜で迫る。

『白獅子』は光波をビームライフルで迎撃しつつ一夏に蹴りを放ち刀奈の位置を再度捕捉する。

 

 

 

 

 

「ハッ!」

『!!』

「っ、浅い!」

 

 

 

 

 

背後に回っていた刀奈は『蒼流旋』で『白獅子』を突いたが、『白獅子』が咄嗟に反応し前に出たせいでダメージを軽減されてしまう。

 

 

 

 

 

「なーんてね」

「っ、ふっ!」

『!!?』

「箒、スイッチ!」

「ああ!」

 

 

 

 

 

その前に出た瞬間に一夏が零落白夜で渾身の一撃を放った。結果は胸部に小さな切り傷を入れただけだったが、それがこの戦闘の決定的な流れの変化に繋がった。

一夏と箒が切り払い役と切り込み役を入れ替える。『白獅子』はすかさず銃口を突き出し殴打するが、箒がその銃にエネルギーシールドを当てた。

 

 

 

 

 

『!』

「『赤椿』の展開装甲にはこういう使い方もある!」

『……』

 

 

 

 

 

『白獅子』がもう片方の銃口を刀奈に向け大の字になる。刀奈は慌てず射線から逃れ背後を取るよう動き、一夏が『白獅子』の真正面へと切りかかる。

流石にその行動を見た刀奈が避けぶ。

 

 

 

 

 

「ちょ、織斑君!?」

「いけ、一夏!」

「----!」

 

 

 

 

 

箒からの声援を受け、声を出さずに瞬間加速を掛けた一夏は『白獅子』の懐に飛び込み零落白夜を放つ。

だが、その瞬間に『白獅子』の背中の翼から電撃が空間に放たれ零落白夜どころか、『白式』、『赤椿』、『ミステリアス・レディ』の機能が停止した。

 

 

 

 

 

「…は?」

「んなっ」

「え?」

 

 

 

 

 

一夏、箒、刀奈が同時に間抜けな声を出す。零落白夜は起動せず、展開装甲のエネルギーシールドは消え、アクアナノマシンは海へ落下する。

機体も停止し、一夏は勢い余って『白獅子』に激突した。

 

 

 

 

 

「あがっ!?」

『………』

「『赤椿』! どうした!?」

「まっず、今止まったら…」

 

 

 

 

 

一夏の激突を受け流した『白獅子』は、一夏と箒を無視し自由落下を始めた刀奈に銃口を向ける。

ナノマシンはともかく、何の反応も起こさない『ミステリアス・レディ』に刀奈は焦っていた。

落下する一夏はそれを見て腹に力を入れた。

 

 

 

 

 

「ぅぐおおおおお!」

「一夏!」

「『白式』いいいいいい!」

 

 

 

 

 

反転した視界で共に落下する箒を見て一夏が叫ぶ。新華仕込みのAMBACの要領で剣を振るい箒に手を伸ばした。

そこで、声を聞いた気がした。

 

 

 

 

 

『---大丈夫、私はまだ飛べるよ』

 

 

 

 

 

その言葉を証明するように『白式』が再起動を果たす。一夏は箒の手を掴み落下を止める。

 

 

 

 

 

「箒!」

「一夏! 生徒会長が!」

 

 

 

 

 

箒の叫びと同時に、『白獅子』からビームが放たれる。

が、それは何か小さいものによって遮られた。

最近見覚えのあった、一夏の『トリィ』の兄弟とも言えるものに。

 

 

 

 

 

---side out

 

 

 

 

 

----

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『白獅子』ことREONの性能は設定に上げておきます。もう特殊能力全部使ったので。
次回は刀奈視点からスタートとなります。

最初はここまでREONに苦戦しないと思ったんですけどねぇ。
ちなみに新華本人だと、機能停止は無いものの、これにSビットが飛んできてビームが追尾して白羽取り出来て大量の武器を切り替えてトランザムしてくる模様(白目

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