IS~疾走する思春期の転生者~   作:大2病ガノタ

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160話目になります。
就活終了しました。


戦況

 

 

 

---side ガンペリー機内

新華達が出撃した後、閉じたコンテナ内部に残った刀奈をはじめとするCチームが残っていた。

 

 

 

 

 

「さて、改めて確認するわよ。私達Cチームは予備戦力としてこの『ガンペリー』で待機。指揮は私に任されているけど、何か懸念事項があれば言ってちょうだい」

 

 

 

 

 

現在彼女らが乗り作戦区域上空を飛んでいる『ガンペリー』はCBが外部委託で作戦に間に合わせたMS輸送機であり、様々な機能を持つ。

 

今回の奇襲作戦は、いくつかの段階に分けられていた。

第一段階でCBが雇った外部戦力(シーマ艦隊)による基地への直接攻撃と、水中から水陸両用型MSを用いた侵入。

第二段階でISとMSの混成部隊が陸上からの侵入と外部戦力の援護。

第三段階で敵性勢力の排除と基地の制圧。

篠ノ之 束博士の確保も作戦内容に入るが、今回の目標はあくまで『亡国機業』の殲滅なので優先順位は低い。

 

 

 

 

 

「確認されたのは三式潜航輸送艇の改良型と思われる潜水艇3隻に無人ISが30、工作員が100近くか」

「これだけの戦力を持っていたなんて」

 

 

 

 

 

ラウラと箒の言葉は同時に、束が確認されていないことを示すものだった。束の持つ移動式ラボ『吾輩は猫である』は特殊であり『居る』なら一目で分かる。その情報はこの作戦に参加する全ての人間に共有されていた。

 

 

 

 

 

『Aチームは予定通り基地内部を移動中。Bチームも敵と交戦に入りました』

『ガンペリーはこの空域で待機します。エネルギーの回復と簡易修理も行えますので効果的に活用してください』

「了解。利用させてもらうわ」

「しかし姉さんは一体何処に…」

「意外と近くに居たりしませんか? 青木君だけでなく織斑先生と篠ノ之さんもいますし…」

「だとしても、戦闘区域より外でしょうね。居れば『シーマ艦隊』が教えてくれる筈でしょうし」

 

 

 

 

 

束が居ないという不安があったが、考えても彼女の行動を図れるとは思えないので、頭の片隅にしまっておくことになった。

現在情報はガンペリーに流れてきており、その情報を刀奈と千冬が纏めていた。

 

 

 

 

 

「…横殴りには警戒しておくということで。Aチームと『シーマ艦隊』MS隊の侵攻はどこまで進んでいるかしら?」

『……Aチームの報告だと基地は図面通りの構造になっており、トラップは確認していないようです。またBチームの報告からMS隊も陸戦隊を援護しつつ基地内部を進行中とのことです』

「奇襲が功を奏したと思いたいわね」

『またBチームから2機のISと遭遇、海上に向かっているとの報告です。『デスティニー』と『ストライクノワール』が追撃、『Evolveクアンタ』は2、3層目の制圧を行うとのことです』

「確認しましたわ! 未確認ISが1、それとこれは、『サイレント・ゼルフィス』の反応!?」

「この反応、前に街中で襲ってきた奴だ!」

 

 

 

 

 

報告を聞きセシリアと一夏がハイパーセンサーからの情報に反応した。

刀奈は素早く判断を下す。

 

 

 

 

 

「オルコットちゃんと実君、出撃して! ビットと火力で逃げ道を塞いで、確実に落とすのよ」

「わかりましたわ」

「了解」

 

 

 

 

 

セシリアが『ブルー・ティアーズ』を、実が『W0カスタム』を身に纏いビットを射出しながら飛び出していく。

直後、海上へと飛び出してきた2機のIS。それに対応するのを確認した刀奈は、まだ基地内で作戦行動中の妹とシャルロット、そして水中で戦闘しているであろう新華を想った。

 

 

 

 

 

「みんな、頑張って」

 

 

 

 

 

---side out

 

 

 

 

 

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---潜水艇ドッグ、海中

新華は真とスウェンを追撃に出した後も戦闘を続けていた。予想以上に新型の『ゴーレムⅣ』と水中型に梃子摺っていた。

 

 

 

 

 

「チッ、水中は慣れたつもりだったが…」

『相手が居なかったから戦闘もありませんでしたからねぇ…』

「…抵抗が煩わしい…!」

 

 

 

 

 

新華は水陸両用MSを製作するにあたり流体力学を学び直している。しかし時間が取れず開発と製作は開発陣に任せ切りで、やったことは試験場の確保と結果のレポートを元にした大まかな営業計画の立案、外見から機体名を強引に決めたくらいである。

だからか、日本国外への移動に衛星監視の届かない海中を利用していた新華にとって水中戦闘に発生する煩わしさは予想外だった。

敵の無人機の動きが速いのも関係していた。

 

 

 

 

 

「まぁ、その上で動けばいいだけだが、コイツら…」

『先程から逃げてばかりで積極的に仕掛けてきませんね』

「……露骨な…」

 

 

 

 

 

加えて、先程から新華にあまり近付かずに潜入中の陸戦隊の母艦にばかり狙いを定め、新華を攻撃に集中させてこない。

しかもこれまでのAIより完成度が上がったのか、はたまた水中だからかSビットの攻撃が中々当たらない。

 

 

 

 

 

「…だが、何とかするしかないか」

『ですね。…新たな反応、後方から!?』

「ッ! ビット!」

 

 

 

 

 

サヤカが叫ぶのと同時に新華はSビットを潜水艦の前に送り悪意を迎撃させる。と同時に無人機達が群がる。

 

 

 

 

「こいつらっ…!」

『ご主人様、Sビットの制御を! 回避運動はこちらでサポートします!』

「頼む!」

 

 

 

 

 

新華は目を閉じ、見えていないにも関わらずSビットを操作して潜水艦を狙う悪意を迎撃する。

サヤカは脳量子波でSビットを操作する新華を邪魔しないよう機械の体を動かし、無人機の攻撃を回避していく。

そして新華の操作するSビットと黄金色に輝く砲塔が水中へと入ってくる。

 

 

 

 

 

「サヤカ、替われ!」

『はい!』

 

 

 

 

 

Sビットを戻すと、新華が操縦系を戻す。そして迫る無人機をGNソードⅥで貫き、水中に入ってきた黄金色に視線を向けた。

 

 

 

 

 

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---side 束

『吾輩は猫である』から全てを見ていた束は不機嫌だった。

 

 

 

 

 

「まーだかなー。まーだかなー」

「この調子ですと、もうすぐじゃありませんか?」

「だねー」

 

 

 

 

 

整然と並ぶ機械の中であまりにも場違いなファンシーなテーブルが置かれている。そこにうつ伏せになっている束と紅茶を入れるクロエ。彼女らの隣には白いISが1機佇んでいた。

 

 

 

 

 

「と、いうよりも邪魔しないとフツーに終わっちゃうねこれ」

「戦力差と奇襲と練度の差が泣けるくらいに酷いですからね。逃げるにしてもブースターを展開してたら破壊されますし、撃退するにしても戦力差でどうしようもないですね」

「しんくんの作ったMSっていうのは性能が良いみたいだしねー。『黒騎士』なら1対1で勝てるけどー」

「数の差に加え連携もしっかりされてますし、1対1を3回こなせればワンチャン…」

「流石にあの子に4対2は厳しいかなー? あのピンクが機体を活かせてないし」

 

 

 

 

 

彼女らはこれまでやってきたように、安全な場所に隠れて好き勝手やっていた。今は新華達の作戦を外から見ている。

 

 

 

 

 

「可能性があるのは『基地内部でトラップを仕掛け迎撃、あわよくば1人でも捕虜にして盾にする』というやり方ですか」

「それでも上と下から同時に来たら対処し切れないし、火力が高い武器を使えば閉所だから自滅になりかねないよね」

「MSはどISと違い火器を持った装甲が迫ってくると言った方が良さそうですものね」

「うん。だからコレ、外部からの妨害が無いと基本的に『詰んでる』状態だよねー。戦略的にも能力的にもさ」

 

 

 

 

 

うつ伏せの状態で見る空間ディスプレイ。それとこの後の展開を考えると束はため息を吐いた。

 

 

 

 

 

「やー、あんまり期待はしてなかったけどねー? しんくん本気出しすぎだよー」

「戦力見ても政府と交わした契約書類見ても『テロリスト絶対殺すマン』になってますね。勝っても負けても政府が得するようになってますし」

「なーんでしんくんはあんな詰らない奴らと契約しちゃうかなー? お金のことと自分のことしか考えてない奴らなのにー」

「…まとめて釣って潰すんじゃありませんか?」

「おお! 確かにやりそう!」

 

 

 

 

 

いつも通りに好き勝手言う。自分達が一番新華を理解していると思っている束だからこその台詞である。

口で分からないように言っているが、実際にはクロエに自分の望む回答を言わせているだけである。クロエもそれを理解しているが、束より比較的マトモな中身を持っていた。ただ、束至上主義なだけである。

 

 

 

 

 

「でもそっちはどうでもいいか。しかし本当に手を出さないとマズそうだねー」

「…出しますか?」

「んー、そうだね。出そっか!」

 

 

 

 

 

そう言うと、束の言葉に反応するようにラボの機械が動く。ゴウンッという音を立てて白いISが床ごと真下に運ばれる。

 

 

 

 

 

「ターゲットの優先順位は新華さんでよろしいですか?」

「んーん。しんくんには悪いけどあの飛んでる箱を先に破壊しちゃおう! で、乗ってる邪魔者を先にやっつけちゃえ」

「『更識 楯無』ですね。『織斑 千冬』様はどうしましょうか」

「ちーちゃんはスパーリング相手になってもらうよ。この子は私に似て天才に仕上げてあるからね! 奥の手もあるし」

「了解しました。では出撃シークエンス開始します。同時にオペレーションシステムを起動」

 

 

 

 

 

白いISが運ばれた先で空間ディスプレイが開き、同時に束とクロエの周囲に新たに現れる。

ISとは、機械とは思えない顔の目が開く。同時に背中の羽が無い翼が一度だけ電磁波を発生させ姿を消す。

 

 

 

 

 

「それじゃーいってみよー! 『白獅子』、はっしーん!」

「『白獅子(レオン)』、出撃してください」

 

 

 

 

 

テンションを上げた束と抑揚の無い声のクロエ。その言葉と同時に白いIS『白獅子』こと『ガンダムレオン』の床が開き水中へと落とされた。

 

 

 

 

 

『出撃シークエンス確認、出撃します』

 

 

 

 

 

機体AIが正常に働き姿を消したまま海中を行く。海中出撃が可能なのは行動を共にしていた時の新華が束に物申したから。

海中行動が可能なのは新華がよく行動していたから。

姿を消したまま行動出来るのは、新華がよくやっていたから。

そしてその両手に持つ武装は、新華が使用していた武器と戦闘スタイルを再現するために。

 

そして背中の羽は、新華だけでなく全ての兵器を無効化させるためのものだった。

最後に外見は勿論新華の搭乗機であり後にこの世界でMSの代名詞とされる『ガンダム』を取り込んだデザインだった。

 

言わばこのISは、新華と束の子と言える固体だった。

 

 

 

 

 

 




漫画『機動戦士ガンダム Reon』より主人公機『レオン』最終装備です。マイナー作品なので分かる人が居たら嬉しいですが。

それとR-TYPEで二次創作始めました。『猟犬の見る悪夢』というタイトルで全13話予定です。既に全話書き終えてあるので13日間毎日投稿出来ると思います。

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