IS~疾走する思春期の転生者~   作:大2病ガノタ

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159話
就活なう


真夜中の奇襲

 

 

 

 

 

 

---12月28日。

日本時間で5時、唐突にそれは始まった。

 

 

 

 

 

 

「………ふ、あああ」

「おい、静かにしろよ。気が散るだろ」

「つってもよ、こんな時間に魚見てても暇じゃんかよ。どうせ異常は無いんだし寝くもなるわ」

「確かにそうだが、また減俸されたくないだろう。お前がドジ踏むと俺も巻き添えになるだろうが」

「そう言うお前こそ今みたいに雑誌なんざ読んでたから給料減らされたんだろうに」

 

 

 

 

 

ぶつくさ言う大柄の男性2人が、監視カメラの映像が集まった管制室に座っていた。

 

 

 

 

 

「ああ、クソが。酒も飲めなきゃ女も抱けねぇ。この施設自体古いし何も無い上、どこにも行けねぇまるで監獄じゃねぇか」

「もう少しの辛抱だ、我慢しろ。移動準備も終わればこの苦行も終わる」

「へーいへいっと。あー、次はどこに行くのやら……ん? おい、そっちのゲート付近のカメラ、ノイズ走ってんぞ」

「あ? 調子でも悪いのか」

「おいマジかよ面倒臭え。修理しに行かなきゃいけないのかコレ? 俺はやだぜ潜水服あっても真冬で夜中の海ん中入るの」

「俺だって嫌に決まってんだろ。……もうしばらく使わないんだし放っておくか?」

「そうしてえけどよ、バレたらそれこそ終わりだぜ俺ら。他のカメラでカバー出来ね?」

 

 

 

 

 

そう言って手元の機材を操作しどうにかカメラを復旧させようと試みる2人。

しかし次の瞬間、衝撃が襲い彼らは座っていた椅子から投げ出された。

 

同時刻、ノイズが走った4番カメラ付近である影が動いた。

 

 

 

 

 

「ここまでは順調だな。各機、機体に異常は無いか」

『2番機、異常無し』

『今ので酔いが醒めちまったぜ。おっと、3番機異常無し』

『4番機異常無し』

『5番機、異常ありません』

「ミーシャ、また出撃前に飲んでいたのか。まさか機体内に持ち込んでないだろうな」

『へへっ、流石にこのスペースに持ち込めませんぜ隊長』

 

 

 

 

 

水中に舞う粉塵が晴れるとで5つの影がはっきりする。

それぞれ1番機の『スペルビア・ジンクスⅠ』、2番機『ゴッグ』、3番機『ドーシート』、4番機『グーン』、5番機『パイシーズ』であった。

どれもCB製の水陸両用MSであり、特に先頭に居る『スペルビア・ジンクスⅠ』は強襲揚陸用ユニットを装備したうえで擬似太陽炉も確かに搭載していた。しかしベースとなっている機体は『ジンクスⅢ』ではなく『ジンクス』である。加え、原作以上に装備を搭載もしていた。

 

 

 

 

 

「よし、これより敵基地へ進入を開始する。各機『ジンクス』の後ろについてこい。遅れるなよ」

『『『『了解』』』』

 

 

 

 

 

彼らの後方、一部を改装し1機だけではあるがMS搭載機能を持ったシーマ艦隊。その内の1艦が近づいてくる。そしてMSに続き穴から内部へと侵入していく。

穴が開いた部分は、外側から見ればただの島の一部だったが内側から見ると明らかに人工物のそれであり、潜水艦が出入りすると思われる通路が真下に伸びていた。

機体がその暗闇を丸裸にする。見ると3階層程空間が存在し動体反応も確認出来た。

 

 

 

 

 

「魚雷掃射後、手前を1層目とし全機突入。制圧後、艦に突入してもらう。いいか、無茶して負傷するような真似をするなよ!」

『任せてください』

『ミーシャ、酔った勢いで腹の中身ぶちまけるような真似するなよ?』

『ヘッ、言ってろゥ!』

 

 

 

 

 

部下達の軽口に苦笑しつつ、シュナイターは強襲ユニットのGNスラスターを吹かし一気に深度を下げ1階層目の窪みと、そこに停泊中の敵性潜水艦を確認した。

GNミサイルとGNキャノンを潜水艦に叩き込みながら基地内部へと潜入。強襲ユニットを切り離し基地内部のサイレンがうるさく響く中へ、搬入作業中だったのであろう多くの作業服姿の人間が混乱しているところに飛び出した。

 

 

 

 

 

「全機油断するな! 情報の無人機がどこに隠れてるか分からんのだからな。逃げる敵は後回しでいい」

『了解!』

「よし、安全を確保し艦を突入させる。その後バーニィ、ガルシアはこの階層で待機。アンディーとミーシャは俺と2、3階層の制圧だ」

 

 

 

 

 

構成員達が施設奥のエレベーターへと逃げて行くのを確認し、部下と共に近くにあるコンテナと潜水艦を破壊する。コンテナの一部には無人機を入れていたものもあり念入りにコアまで破壊していった。

制圧後、第2、3階層から敵と思われるIS反応が上がってくるのを機体のレーダーで確認し、迎撃に向かう。

 

 

 

 

 

「(敵の対応が遅いな)予定通りアンディーとミーシャは付いて来い。バーニィとガルシアは陸戦隊の援護だ」

 

 

 

 

 

 

味方の潜水艦から基地占領の為の陸戦隊が降り、ガルシアの『グーン』とバーニィの『パイシーズ』が先導するように施設奥のエレベータに向かう。

シュナイターは再び部下と水中に飛び込むと、先程パージし浮遊している強襲ユニットを横に持ち下の階層へと意識を向けた。

機体のレーダーは最低でも20機のIS反応を示していた。

 

 

 

 

 

---side out

 

 

 

 

 

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---side スコール

 

 

 

 

 

「クライン、M、無事!?」

『スコール様!? 私は大丈夫ですが、今の衝撃で作業が…』

『スコール、何が起きた!?』

 

 

 

 

 

彼女は衝撃を基地内部の廊下で感じた。基地内部に走ったそれは大きく、スコールは膝を付いた姿勢のままISによるプライベートチャンネルを開き部下の安否を確認した。

そして、再び走る衝撃に顔を顰めた。

 

 

 

 

 

「管制室、状況を知らせなさい!」

『こち……ザッ、状…不明! 何k…ザザッ…われ…』

「通信妨害? 古い機器のままにしておくから…!」

 

 

 

 

 

スコールが自身の胸元にあるマイクに怒鳴る。

現在スコール達『亡国機業』が居る基地は、立地等の諸々の事情により機材を現代の物に据え置いた程度のものである。故にISを装備する彼女ら実行部隊と今は無き上層部以外は既存の機器による活動を強いられていた。

それはつまり、この基地にGN粒子によるジャミング対策は全く無いということだった。

故にラクス、マドカの2人とは問題無く通信出来ていたのに管制室との通信にノイズが混ざり切れてしまった。その結果から導き出した答えに思わず悪態を付いたスコールは直ぐに部下2人へと指示を出す。

 

 

 

 

 

「2人共、今すぐに基地から脱出しなさい。奴らよ」

『! 分かりました。『ゴーレム』は全機起動でよろしいですね?』

「出し惜しみしていられる状況ではないと判断します。場合によってはこの基地の処分も行うわ」

『分かった。だが我々以外はどうする?』

「当初の予定を早めて脱出してもらうしかないわね。酷だけど、最悪見捨てることになるわ」

『…そうだな』

 

 

 

 

 

マドカの返事に少々の違和感を覚えつつ通路内を走る。ラクスは最下層の潜水艦ドッグにて荷物の積み込みの指揮をしており、マドカは自室で待機していた筈であった。

機能を失っているであろう管制室へ向かい声を張る。

 

 

 

 

 

「状況は!」

「現在敵の攻撃を受けています!」

「そんな事は分かっているわ! 相手はあの『蒼天使』よ。篠ノ之博士は?」

「連絡が取れません。いえ、それどころか博士のラボの反応も確認出来ません!」

「仕方ないわ、直ちにデータを全て削除、主要設備の爆破と施設封鎖カウントダウン開始しなさい。急がないと置いていくわ」

「「りょ、了解!」」

『これより基地を放棄する。総員、直ちに脱出せよ。繰り替えす、直ちに脱出せよ』

 

 

 

 

 

最低限の指示を出し再び駆け出すスコール。基地内部の機器は古い機材、つまり有線なので内部放送は問題無く響いた。

反響し機械の体に響くサイレン、通路を明滅させる赤い非常灯。煩わしい音と光を無視しながら彼女は次の行動と敵の行動予測に思考を巡らせた。

 

 

 

 

 

---side out

 

 

 

 

 

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---同時刻上空付近

1機のコンテナにプロペラを付けたような巨大な輸送機が飛んでいた。

そのコンテナの内部に今、16人もの人影があった。

 

 

 

 

 

『『リリーマルレーン』より通信。奇襲は成功、陸戦隊も基地内部に侵入したとのことです』

「了解。作戦通り俺達も動くぞ」

 

 

 

 

 

コンテナのような輸送機『ガンペリー』の操縦室からの知らせに新華が返事をしその場の全員を見回す。

千冬、山田先生、一夏、箒、鈴、セシリア、ラウラ、シャルロット、刀奈、簪、サヤカ、カナード、実、真、スウェン。

国1つ落とせそうな戦力を乗せたコンテナが左右から開き、足元に射出用のカタパルトがあった。

 

 

 

 

 

「Aチーム、先に行くぞ」

「了解! お気を付けて」

 

 

 

 

 

千冬が前に出て『暮桜』を展開しカタパルトに乗る。反対側ではカナードが『ハイペリオン』に乗り同様にカタパルトに乗っていた。

 

 

 

 

 

「カナードさん、盾役お願いします!」

「フッ、任せておけ。カナード・パルス、『ハイぺリオン』、出るぞ!」

 

 

 

 

 

千冬とカナードがカタパルトから射出される。後に続くのは簪とシャルロットの2人。

 

 

 

 

 

「簪、シャルロット!」

「ん…行ってきます」

「ちゃんと終わらせて戻ってくるよー」

「…頼んだ!」

 

 

 

 

 

2人が出た後に新華はサヤカを呼び出撃の準備を終わらせる。その間に真が『デスティニー』に、スウェンが『ストライクノワール』に乗ってカタパルトへ。

 

 

 

 

 

「Bチーム出撃準備完了。先に行かせてもらいます」

「飛鳥 真、『デスティニー』、行きます!」

「ああ、すぐに行く!」

「スウェン・カル・バヤン、『ストライクノワール』。出るっ!」

 

 

 

 

 

2人が出た後に新華もカタパルトに足を乗せ出撃姿勢になる。と、ISのプライベートチャンネルが開き刀奈の顔が映った。

 

 

 

 

 

『新華君、無茶しちゃ駄目よ? 行ってらっしゃい』

「行ってきます。…青木 新華、『Evolveクアンタ』」

『同じくサヤカ』

「『行きます!』」

 

 

 

 

 

カタパルトが動き射出される。勢い良く空に飛び出し運動エネルギーに従い落下しながら飛び目的の場所を確認した。

先行している仲間達を感じ取り、スラスターを吹かせ加速を開始する。

 

 

 

 

 

「(なんでこんな場所を基地にしようと思ったのかねぇ…)」

 

 

 

 

 

Aチームは地上から出入り口を見つける、ないし作り侵入、調査するチーム。

Bチームは外部水中からシーマ艦隊を援護し陸戦部隊や水陸両用MSと共に行動するチーム。

Cチームは上空で情報を統合しA、Bチームを支援、同時に不測の事態に備えるチームとなっていた。

先行する2機が水中へと入っていったのを確認し、カナードを先頭に島の内部へと降りるAチームを一瞥して自らも水中へと潜っていった。

 

 

 

 

 

『ご主人様、索敵が完了しました。表示します』

「了解」

 

 

 

 

 

サヤカの知らせで左目のディスプレイに簡易マップと味方を示す青い点、敵ISを示す赤い点、識別不明の黒い点が表示された。

『更識』が見つけてきた古い見取り図を映したそれは、ところどころ線が擦れていた。

そして擦れた線同様に擦れた古い漢字が、その場所を示していた。

 

 

 

 

 

---三式潜航輸送艇整備基地

 

 

 

 

 

第二次世界大戦末期に旧大日本帝国の陸軍によって極秘裏に作られた竹島(・・)基地。それが決戦の舞台だった。

 

 

 

 

 


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