IS~疾走する思春期の転生者~   作:大2病ガノタ

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遅れ申した! 150話目の投稿でっす!

言い訳させてもらいますと、大学の今期最後の試験受けたり、EVOLVEクアンタ改造完了(仕上げ未完)してたり、地味に何度か書き直したりしてたんです。あとAC3SL終わらせたりとか。
次回は2月中に投稿できればいいなぁ…


ご挨拶:更識家

 

 

 

 

 

---更識家中庭

 

 

 

 

 

「さあ掛かってきなさい」

「………」

 

 

 

 

 

冬の寒い中、和服姿の更識父が弓を構え、剣道着姿の新華が木刀を持って中段に構えていた。

 

 

 

 

 

「だ、大丈夫なんでしょうか、うちの子は」

「大丈夫ですよ。ご主人様ですよ?」

「夫が申し訳ありません。ですが好きにさせてあげてください」

「いえ、それはいいのですが…」

 

 

 

 

 

縁側で更識母と青木父、簪とサヤカ、ハロOが待機していた。

 

 

 

 

 

「新華君、頑張って」

「ご主人様、本日も体調に異常は見られません。頑張ってください!」

「シンカ、ガンバレ、ガンバレ」

 

 

 

 

 

中庭の土を裸足で踏みしめる新華と更識父。お互いに視線を交えつつそれぞれ考えることは

 

 

 

 

 

「(一発痛い目に遭わせないと気が済まん)」

「(弓持ち出すって事は本気で来るな。俺も全力で行かんと)」

 

 

 

 

 

娘2人共取られた父親心故の怒りと、相手の得物への警戒だった。

この日新華は父と共に刀奈と簪との付き合いに纏わる挨拶、つまるところ『実家へのご挨拶』という目的で来ていた。

青木母は家事もあり実と共に留守番していたが、この期に及んで親同士の面識が無いという理由もあり取り敢えず父が出向くことになった。

更識家に着き親同士の挨拶は問題無く終わり新華と姉妹の件について触れると、更識父の機嫌が一変。青木父が冷や汗を掻き簪がオロオロする横で新華にこう言い放った。

 

 

 

 

 

「もし2人と付き合いたいのならば、私に実力を示してみなさい」

 

 

 

 

 

予想外の言葉に青木家側は全員唖然とし、簪は「えっ」という顔を更識父に向け更識母は静かに嘆息した。

更識父が「おい」と言うと、奥の部屋に続く襖が開き更識構成員と思われるスーツ姿の人物が弓道用具一式と剣道用具一式を用意していた。

唖然としたまま更識父は新華に着替えるよう促し、現在に至る。

 

 

 

 

 

「では、合図を」

「分かりました。青木氏も用意はよろしいですか?」

「ええ…」

「では、始め!」

 

 

 

 

 

スーツの構成員が合図を出した瞬間に新華は木刀を振って飛んできた矢を払い地面を蹴った。視線を更識父に向けると既に矢を構えていた。

 

 

 

 

 

「(嘘だろ!?)」

 

 

 

 

 

咄嗟に体を横に回転させ体の軸をずらす。直後自分の居た位置に矢が放たれた。直ぐに体勢を立て直し木刀の有効範囲まで距離を詰めるべく走る。しかし更識父も既に距離と取りながら弓を番えており矢を放つ。

新華は直感で矢の軌道を読み回避を取ろうとするが

 

 

 

 

 

「っ!? (2本同時!?)」

 

 

 

 

 

矢が来ると感じた場所から当たる部位をずらすが同時にもう1本の矢を視認して木刀で弾いた。

 

 

 

 

 

「アッブネ・・・(こんな事まで出来るたぁ思わなんだ。というか状況が整えば千冬さん完封出来るんじゃないかこの人?)」

「(2本では弾かれるか。だがあの様子だと本数増減で惑わせる、か? 何にせよ矢が尽きるまでの攻防か)」

 

 

 

 

 

更識父の思わぬ実力に驚愕しながら木刀を改めて構え、お互い再び得物を構え相手の出方を見る。先程とは違い今度はどちらも動かない。

……ちなみにここまで数秒しか経過していなかったりする。

 

 

 

 

 

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---side観戦側

一連の攻防を青木父は鳩のように目を丸くし、簪は父親の思わぬ力に唖然とし、サヤカは新華のサポートが出来ないことをもどかしく思いながら一部始終の録画を行い、更識母は

 

 

 

 

 

「あらあら、あの人ったら張り切っちゃって。楽しそうね」

「い、今一体何が起きたのですか…?」

「夫が新華君に対し矢を1射、彼がそれを弾いて接近しようとしたところを更に2本同時撃ちして勢いを消したのです。彼はそれに驚きつつ弾くも次の攻撃を警戒し動けず、また夫の方も次の行動を警戒しているのが今です」

「そ、そうですか…」

 

 

 

 

 

うろたえることも無く平常を保ったままだった。

 

 

 

 

 

「お、お母さん、あれって…?」

「ん? お父さんの事?」

「う、うん。あんなに戦えたって知らなかった…」

「『更識』当主たるもの、己が身を危機に晒してでも使命を全うせよ。それこそが楯を持たない者、もしくは存在自体が楯である者、それが『楯無』。それ故に歴代『楯無』は何かしらの武芸を特化、昇華させ、何時いかなる時でもその力を行使するよう努める…というのが、代々我が家に受け継がれている家訓ですね」

「そうなんだ…そうだったんだ…」

 

 

 

 

 

簪は自らの家の知らなかった部分、知ろうともしなかった部分を聞いて改めて父親を見る。

 

 

 

 

 

「その程度であの子達を娶ろうとしたのか貴様ァ!」

「ま、だ、まだァ! ゥラァッ!」

 

 

 

 

 

複数同時に矢を放ち恐ろしい速度で次を放とうとしながら地形把握と新華への罵倒を行っていた。新華も新華で居合いによる風圧で矢を全て落とし左右に走って撹乱しつつ接近しようとしていた。

 

 

 

 

 

「……」

「…えっと、なんというか、本当にすみません」

「いえいえ、これも一種の通過儀礼ですから」

「そ、そうですか…」

 

 

 

 

 

同じ父親として息子の不手際? を謝る青木父だったが、先程から空気に飲まれてばかりで落ち着きが無く、更に自分以外の人間が現状の異常性に動じていない事に疎外感を覚えた。

 

 

 

 

 

「(文字通り住む世界が違うってこういうことなんだな…)」

「それに…」

「はい?」

「夫も、怒っているのは事実ですが本気で恨んだり憎んだりしている訳ではないのです。ただ素直になれないというだけで」

「えっ?」

 

 

 

 

 

青木父に説くような言葉に簪が驚愕の声を上げた。今の更識父はどう見ても怒り心頭にしか見えなかったからである。

 

 

 

 

 

「簪。自分の子供の幸せを願わない親なんて居ないのよ。もし居たのなら、それは親ではない畜生以下でしかないわ」

「…うん」

「あの人もね、あなた達姉妹に幸せになってもらいたいのよ。だからこそ、生半可な覚悟を持った弱い人間では認めるつもりなんて無かったの」

 

 

 

 

 

そう言って更識母は夫に視線を向け、簪も釣られて父と彼氏の戦闘を見る。

 

 

 

 

 

「ここだっ!」

「(しまっ誘い込まれ)っあああああああ!?」

「ぐおおっ!?」

「ご主人様!?」

 

 

 

 

 

更識父が5本同時に矢を放ち、肉薄していた新華は避ける間も無くその全てを受けてしまう。左頬を掠め右肩、左腕、左脇腹、右膝に直撃だった。しかし新華も更識父を袈裟斬りする軌道で木刀を振るった。

新華が被弾するとは思っていなかったサヤカは思わず驚愕の声を上げ、簪と青木父も驚きのあまり口を開け呆けた。ただ、更識母だけはヤレヤレといった感じで溜息を吐き簪に指示を出す。

 

 

 

 

 

「あの人ったらはしゃいじゃって…。その点彼は今見ている通り強いしコチラ側の人間でもあるものね。覚悟を問う必要も無く人としての感性も問題無いとの判断済み。…周りの環境も良かったのでしょうね」

「……あの子は昔から大人びていましたから。ですがああ見えて寂しがり屋な所もあるんですよ? 何かしていても、私達に嫌われたくないという心も親にはバレバレだというのに」

「そういった人間らしさも加味して、問題無しと結論を出しているの。倫理観もしっかり持っているし」

 

 

 

 

 

中庭では互いに武器を捨てたインファイトが始まっていた。

 

 

 

 

 

「この娘泥棒ー!」

「奪われたのは寧ろ俺の方だー!」

「「ぐはぁァっ!?」」

 

 

 

 

 

………インファイト、というかただの喧嘩になっていたが。

 

 

 

 

 

「……あれ、本っ当に止めなくてもいいのですか?」

「ええ、いいのです。そろそろ終わるでしょうし。…話の続きですが、以前から彼を迎え入れようという話はあったのです。入り婿として、ですが」

「「え?」」

「我が家には知っての通り男児が産まれませんでした。その場合は決まって外部から、今までの例だと政治家の家系から『更識』に適した人間を選び婚姻を結ばせておりました」

「昔よく聞いた政略結婚ですか」

「そうすることで重要な役割を受け持つと同時に政府という後ろ盾の確約が出来ていたのですよ。かくいう私も両親は政府高官ですし」

「わーお…。本当にそんな事がまだあったんですね…」

「本当なら簪かどちらかを彼に、片方を政略結婚として…という話もあったのですけど」

 

 

 

 

 

そう話している間にゴッという重い音が鳴り中庭で新華と更識父が沈んだ。

 

 

 

 

 

「ご主人様!?」

「新華君!?」

「…あの子達を見ていると、この結果も良いのではないかと思えますね」

 

 

 

 

 

サヤカと簪が新華に駆け寄り、構成員が更識父を介抱していた。

それに更識母は苦笑し、青木父は頬を引き攣らせていた。

 

 

 

 

 

---side out

 

 

 

 

 

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---一方

ぶっ倒れた新華と更識父は互いに頬を赤く腫らして息を整えていた。そして新華にはサヤカと簪が、更識父には構成員が駆け寄り起こす。

 

 

 

 

 

「いつつ…。クロスカウンターとか生きてて初めてだ」

「新華君、大丈夫?」

「ご主人様大丈夫ですか!?」

「ああ、大丈夫だ」

「…良い拳だった」

「ご隠居、あまり無理はなさらないほうが…」

「刀奈に『楯無』は譲ったが、私はまだまだ現役だ」

 

 

 

 

 

新華も更識父も手を借りて立ち上がる。

 

 

 

 

 

「………痛むか」

「…ええ」

「その痛み、覚えておけ。もし私の娘達を泣かせるようなことがあれば、それでは済まさん」

「!」

「お、お父さん!? そ、それって…」

 

 

 

 

 

更識父の言葉に新華と簪は驚く。そして構成員と縁側から移動している最中の更識母が苦笑した。

 

 

 

 

 

「いいか? ------必ず幸せになりなさい」

「…はいっ!」

「うんっ…! …ありがとう、お父さん」

 

 

 

 

 

新華と簪が両手を取って互いに笑顔を咲かせる。更識父は2人の笑顔を見て満足そうに笑みを作った。

そして縁側から歩いてきた更識母が濡れたタオルを2枚持って青木父とやってきた。

 

 

 

 

 

「派手にやりましたね。はい、あなた」

「む、すまない」

「はい、青木君も」

「あ、すいません」

「簪。心配で飛び出す気持ちも分かるけど、そういう時こそ回りに目をやって気を遣いなさい。出来る事はいくらでもあるわよ」

「う、うん」

 

 

 

 

 

更識母が更識父の腫れた頬に濡れタオルを当て、構成員が戦闘で荒れた中庭に投げ捨てられた木刀と弓道一式を回収していた。

サヤカが新華の身体をスキャンし打撲を幾つか発見し確認していく。青木父が現状に着いて行けず困惑していた、が、更識父の顔を見てある事を思いついた。

 

 

 

 

 

「……(まるで青春物の格闘アニメ見ている感じだったけど)もしかして…」

「何でしょうか?」

「…いえ、気のせいですね。何でも---」

「ああ、夫は今回の決闘をやりたくて仕方なかったので、言いたい事は正しいですよ、青木さん」

「へっ?」

 

 

 

 

 

青木父が思わず言いかけた言葉を正確に読み取り、プロのポーカーフェイスを貫こうとした更識父を無視してサラリと答えてしまう更識母。一瞬青木父が呆けるがすかさず簪のジト目が向けられた。

 

 

 

 

 

「お父さん、どういう事…?」

「いy」

「お父さんも『楯無』継ぐ前は男の子だったという事よ、簪。私はお義父様、つまりあなた達のお爺様から聞いたのだけれど、昔はやんちゃだったらしくて…」

「そうだったんですか…。え、じゃあ今俺と前当主がやったのは…」

「予定調和です。試合の準備は完了していたでしょう? ちなみに夫の昨晩の就寝時間は…」

「もうその辺にしておいてくれないか? 先程から簪の視線が鋭くなってきているのだが」

 

 

 

 

 

更識母の口から出る更識父の、娘には親の威厳的な意味で聞かせてはならない事がポロポロと出てどんどん簪の視線が突き刺さっていった。

同時にサヤカが新華の影から射殺すような視線を送っていたが、そこは新華が抑えていた。

 

 

 

 

 

「グルル…」

「サヤカ、ステイステイ」

「最も先程も言いましたが通過儀礼でもありましたからね。『楯無』の後継者を作る存在になるのですから、相応の強さ、或いは精神の強さも十分でないといけませんし、その証明をするという意味では今回の試合は渡りに船でしたけど」

「えっと、次の後継者っていうと、その…」

 

 

 

 

 

新華が少し顔を赤くしまごつき、簪が言葉の意味を理解してオーバーヒートを起こす。それにニコッと笑顔で

 

 

 

 

 

「最低でも1人あたり2人はお願いしますね? 孫が多いほうが賑やかになるでしょう?」

「あ、あはは…」

「む、むぅー…」///

「と、いうことですので、よろしくお願いしますね?」

「アッハイ」

 

 

 

 

 

新華と簪が互いに意識し合って真っ赤になりつつ、そのまま更識母無双でこの日は終了し無事『実家へのご挨拶:更識家』を終えた。

色々と青木父の胃がマッハになっていたが、まぁ、父親らしい事が出来るという安堵と張り切りもあったのか帰ってから青木母と穏やかな時間を過ごすなど平和に過ごしていた。

 

 

 

 

 

そして、帰宅後に新華はクロエからのメールを受信し、次は現在刀奈の居るロシアへと向かう準備を行った。

 

 

 

 

 




時間経ってたので色々おかしな部分がチラホラと…。駄クオリティですみません。
次回はご挨拶:ロシア編の予定です。その後にクリスマスイベ→ご挨拶:フランスですかね。んで作中新年明けてから決戦になる、筈。ただ亡国の本拠点がまだ定まってないんですよね…。イスラム国的な奴だったら新華が喜んで戦闘員皆殺ししますけど、単独で。
候補は幾つかあるんですけど、明らかに長くなるんですよねぇ…。ヤバイ、本当に200話行ってしまいます…。
ちなみに生身での戦闘は
千冬:三国無双系
新華:PS3アクション洋ゲー系
更識父:DOD系
をイメージ。といっても新華のはP・V・F展開時ですけど。

~あと以下蛇足~
Q:好きなACは?
新華「⑨焔とヴェンデッタ、R.I.P.3/M」
一夏「J栗に白ブロと白栗だな!」
弾「ステイシス子とグリン子…って違う違う、ハングドマン!」

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