IS~疾走する思春期の転生者~   作:大2病ガノタ

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あけましておめでとうございます! 新年初投稿になります。

149.5話。前回150.5話と書きましたが間違いですすみません。

ちなみに今回投稿が遅れた理由はクアンタの最終改造に着手している最中なのとプラモで新華のP・V・Fを再現しようとしていたり、AC3SLが安く(中古800円-新年15%OFF)引継ぎアリ+ナシでプレイしているからというのが主な理由です。


日常の裏で

 

 

 

 

 

 

---日本にあるありふれた工場跡の一角

夜遅くに1台の高級車と1台のワゴン車が停車し、中から1人の老人と幾人のスーツとグラサンを掛けたSP風の男性が降りてくる。

男性達が先導し廃墟となった工場に入っていく。そして工場跡内部に、1人の女性が居た。

 

 

 

 

 

「お待ちしておりましたわ」

「ふん、こんな時間、こんな場所に呼び出して何の用だ?」

 

 

 

 

 

女性が頭を下げ老人が苛立った声で威圧するように問う。彼は亡国機業の出資者に1人であり例の会議に参加している1人だった。

対する女性は暗闇のせいで姿が見えない状態だった。男性達は警戒心を上げ老人と女性の間に身を晒す。

 

 

 

 

 

「まずはこの場に我々側からお呼び出ししてしまった事への謝罪を。実は我々のスポンサーであるあなた様に、ある事をして頂きたいのです」

「ふん、わざわざ私だけを呼び出しての事だ。さぞ利のある内容なのだろうな?」

 

 

 

 

 

老人が棘の有る言葉を投げると、女性が暗闇の中で笑みを作った。

 

 

 

 

 

「もちろんですわ。ただ、あなた様方にもこれから話す内容を口に出す事を控えてもらいたいのですわ」

「ほほぅ、余程の自信のようだな。御託はいい。手短に済ませろ」

「ええ、では」

 

 

 

 

 

そう言って女性が懐に手を伸ばし、男性の1人が前に出る。そして

 

 

 

 

 

「どうぞ、『力』をお受け取りください」

「え? が、ぎゃああああああ!?」

 

 

 

 

 

不意に女性が懐から黒い箱を近付いた男性の胸に押し付けた。直後スパークが走り装甲が現れる。

 

 

 

 

 

「な、なんだっ!? き、貴様っ、何をした!?」

「ふふ、あなた方にしていただきたい事ですわ。こちらの機体、IS『復讐者(アヴェンジャー)』と言いますわ」

「『アヴェンジャー』…復讐者、だと? それに、ISということは…」

「はい。我々『亡国機業(ファントムタスク)』は皆様の支援もあり、遂に『男性でも搭乗可能(・・・・)』なISの開発に成功いたしましたわ」

「おお…! 遂に!」

 

 

 

 

 

男性を外側から押さえつけるように黒いシルエットが闇に浮かぶ。その全長は2メートル程あり犬のような顔を持っていた。右腕に当たる部分は槍の形をした銃器、それも120口径のもの。

マントのような布切れを首元から下ろす姿は、見るものを威圧し恐れを抱かせる。

 

 

 

 

 

「これで我ら、いや、私は…! よくやった」

「ありがとうございますわ。それで、して頂きたいことというのも、この機体についてでして」

「言ってみよ」

 

 

 

 

 

先程とは打って変わり上機嫌になった老人。女性も笑みを深くする。

だが2人とは対照的に男性達はISに乗った後身じろぎもせず、それどころか微動だにしない同僚の姿に嫌な予感しか感じられずより警戒する。

そして、その嫌な予感はすぐに現実のものとなった。

 

 

 

 

 

「ええ、ちょっとした実験を行いたいのですわ。といいますのも、この機体は完成したばかりで稼動データが少ないのですから」

「なら人員を適当に見繕うとしよう。無論、量産は可能なのだろうな?」

「高価ですがそれだけの性能をお約束出来ますわ。それと、人員なら問題ありませんわ」

「む、そうか」

 

 

 

 

 

2人の会話が進むにつれ男性達の警戒心はどんどん強くなる。

彼らは老人にボディーガードとして個人的に雇われている者達であり出身国はバラバラであった。それぞれの国で何かしら体を使う仕事をしていた人間だったが女尊男卑の煽りで(ry

仲間意識は弱いが危険を察知する嗅覚はあった。だからこそ、彼らは次の瞬間に老人を置いて逃げ出そうとした。

 

 

 

 

 

「はい。こうして目の前に(・・・・・・・・)いらっしゃるのですから」

「…んっ?」

「さあ、起動してください。さて、今回は(・・・)何分持つのでしょうか」

「なっ!?」

 

 

 

 

 

女性がそう言うと『アヴェンジャー』が動き銃口を老人達に向けた。半身を向け無駄の無い動作は一瞬で行われ、中に居る男性が悲鳴を上げた。

 

 

 

 

 

「ギッ!?」

「行きなさい」

「う、うわあああああ!?」

 

 

 

 

 

男性達が逃げようと走り出すが、直後『アヴェンジャー』が軽やかに跳躍、男性達の逃げ道を塞ぐように立ちはだかり引き金を引き絞った。

槍状に尖った専用の銃弾を吐き出し老人と男性達を蜂の巣にしていく。まるでバッタのように軽やかな動きをしながら、遊ぶように1人、また1人と撃ち殺していく様は子供が新しいオモチャで遊んでいるかのようだった。

そんなスプラッタな光景を他所に女性---ラクスは髪留めになっている自機でプライベートチャンネルを開く。

 

 

 

 

 

「もしもし、聞こえますか?」

『む、ラクスか。なんだ、もう終わったのか?』

「いえ、すぐ終わると思いますが一応報告をと」

『そうか。全くスコールも人使いが荒い』

「オータム様亡き今、本来後方支援の私ですらこうして動く程に人手不足なのでしょうから、致し方ないかと」

『分かっている』

 

 

 

 

 

繋がった相手はMことマドカ。現在彼女もスコールからの任務を受けて国外に居たが、お互い滞り無いようだった。

 

 

 

 

 

『予定通りMSのデータは抜き取れた。博士に見せればすぐにでも量産は可能だろう』

「では、スコール様は…」

『博士と交渉している頃だろうな。事実上命令だが』

「量産が決まれば『ファミリア』の後継機のコスト削減が期待出来ますわね」

『その無人機のAIが最も高価で面倒なんだがな。…で、当の機体はどうだ』

「そうですね…」

 

 

 

 

 

既にその場に居た男性達は死に絶え、『アヴェンジャー』は展開を解除し取り込まれていた男性が血の海でぐったりと倒れ付していた。

 

 

 

 

 

「があぁ…」

「あらあら、またお一人耐えた方がいらっしゃったようですわ」

『そうか、可愛そうに。それより、終わったのなら急いだ方がいいんじゃないのか?』

「ですわね。サイレンの音も聞こえてきましたし、早々に撤収させてもらいますわ」

『しかし、被害に遭ったのが『これから逮捕しようとした人物』だと知ったらさぞ狼狽するだろうな』

「そうですわね。では私もこれから帰還しますわ」

『了解した。ではな』

 

 

 

 

 

通信が切れるとラクスは唯一の生き残りの男性を脇に抱え闇に消える。

直後駆けつけた警察達は惨状を目の当たりにし、犯人を特定出来ないまま未解決事件として処理されることになった。

後の報道で老人が殺害される直前に『架空口座開設』と『テロリスト支援』等の容疑で検挙されていたと報じられ、『更識』の協力の下に家宅捜査が行われたが証拠となる物は既に処分されており『亡国機業』との繋がりを示すことが出来なかった。

そして、時間が経つと人々はその事件を『過去のもの』として忘れ去った。

 

 

 

 

 

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---某国、某所

『亡国機業』の秘密基地の一角でスコールはマドカとラクスの作戦成功報告を受け取り束、クロエ両名と向き合っていた。

 

 

 

 

 

「それで、この『ファミリア』って奴の後継機を作れって? しかもISの機能の殆どを搭載しないで」

「はい」

「趣味悪いね、こんな物作るなんて」

「無人ISも同様では?」

「一緒にしないでもらいたいなー。素人でも簡単に作れちゃううえにあの程度の性能しか持ってないものとさー」

 

 

 

 

 

お互いの間に不穏な空気が横たわる。クロエは慣れているのか何も言わない。

 

 

 

 

 

「そもそも今は『Ⅳ』の開発が終わって一息付いてたところなんだよ? そこ分かってる?」

「ええ、重々承知しています。ですので、今すぐにとは言いません。データの閲覧、改修設計、機能の簡略化にコスト削減などこちらからの要望は多いのですし、その誰をも近付けない頭脳に負担を掛ける訳にはいきませんから」

「へぇ、言うね」

「はい」

 

 

 

 

 

お互い薄ら寒い笑みを浮かべ威圧しているからか室内の空気が数度下がったような錯覚がクロエを襲う。そんな彼女を他所に束は言葉を続けた。

 

 

 

 

 

「ま、いいけどね。しんくんの作った奴も興味あったところだし、いい機会だと思っておくよ」

「おや、MSをご存知無かったのですか?」

「……」

「ふむ、彼からあまり信頼されてなかったようで」

「あ”?」

「束様、乗せられてます」

「……チッ」

 

 

 

 

 

クロエの言葉で舌打ちしクールダウンする束。束の反応を見て地雷だと理解したスコールは新華の話題を止めた。

 

 

 

 

 

「我々からの要求はマドカが持ち帰った情報と共にお渡しします。それまではどうぞご自由に。もし脱走しようものなら…」

「ッ…」

 

 

 

 

 

スコールが『分かっているな?』と言うようにクロエを見る。現在クロエは束の目を盗んでマドカに入れられている特殊なナノマシンを入れられていた。それは裏切り防止ではなく情報漏えい防止の目的で開発されたもので、ナノマシンの操作権限を持つ者の操作か外的要因によって対象の内臓をズタズタに破壊し死に至らしめる機能を持っていた。

束の数少ない『身内』が人質に取られたことで、束は操作権限を持つスコールに従う羽目になっていた。自力でどうにかしようと試みたことがあったが、その際にナノマシンが反応しクロエが吐血したので断念した。

だからといってこのままにするつもりなど束は毛頭無かったが。

 

 

 

 

 

「分かってるよ。ただし、こっちからも要求を出させてもらうよ?」

「自分の立場をお分かりですか?」

「こっちからの要求は簡単な事だよ。それに今のアンタになら受けておいたほうがお得だよ? そうすれば束さんはそっちの要求全部飲むって言うんだから」

「………聞きましょう」

 

 

 

 

 

スコールの言葉を無視し束の言葉が続き、スコールも有益だと判断し聞く判断をした。

 

 

 

 

 

「簡単なことだよ。『しんくんを連れて来て』。周りの邪魔者は全部消していいから」

「それは…」

「いっくんと箒ちゃん、ちーちゃんの心配なら要らないよ。3人共束さんからの贈り物があるし強いから。だけど、それ以外は邪魔なんだよねー」

「束様…!?」

 

 

 

 

 

聞いていたクロエが話の内容に取り乱す。

 

 

 

 

 

「束様、お気を確かに…!」

「いーのくーちゃん。……しんくんの周りに居る邪魔者は好きにしていいよ。それさえ約束してくれるんならそっちの要求以上に仕上げてあげるけど?」

「ほう、それは」

「あとどうせ無理だと思うけど、しんくんは最悪生きていれば手足無くても妥協するよ」

「!?」

「なんと…」

 

 

 

 

 

あまりにもあんまりな言葉にクロエは己の目と耳を疑った。スコールも同様に驚愕するが、束の目が笑っておらず光を映していないのを見て口には出さなかった。

 

 

 

 

 

「…、では、私のIS『ゴールデン・ドーン』の改修もお願いします。今の装備で以前完封されたので」

「本気のしんくん相手に勝てる奴なんてちーちゃんくらいだろうけど、いいよ。その代わり…」

「ええ、彼の周りに居る者の排除はお任せを」

「っ…」

 

 

 

 

 

束の正気を疑ったクロエは眩暈を覚え壁に手を付く。

 

 

 

 

 

「(わ、私のせいで…。私が油断しなければ、束様がこんな人達と居ることも、こんな事を言うことも…。何とか、何とかしなくては、束様…)」

 

 

 

 

 

クロエがナノマシンを仕込まれたのは、彼女らと接触し束と別行動中の時だった。彼女は新華や束のように万能超人でも、刀奈やスコールのように諜報活動に秀でているわけでもない。

ただ単に不意を付かれ一時的に眠らされた時に注射か何かで注入されたのだ。情けない話と思うかもしれないが、そもそも住む世界が違う故に仕方の無いことでもあった。

 

 

 

 

 

「(何とか、しなきゃ…!)」

 

 

 

 

 

だが彼女には1つだけ希望があった。彼女が慕う2人の人間。1人は目の前の束。そしてもう1人は---

 

 

 

 

 

「(新華さんに知らせなきゃ…!)」

 

 

 

 

 

彼女に女子力と人間性を与え一時行動を共にした、標的にされている新華自身だった。

 

 

 

 

 




亡国機業はマドカを始めとしたクローンが居るのでプル+プルシリーズ出そうかと思っていたのですが、ただでさえキャラ飽和しているのにこれ以上増やせないという意味で没にしました。ちなみにガンダムキャラが多いのは個人的趣味だけでなく出演頻度の高い一般人のあれこれを考えるのが非常に煩わしいという理由があったりします。

次回もいつ更新出来るか分かりませんが、新華視点のクリスマスイベを予定しています。新年迎えたのにこの体たらく…。

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