IS~疾走する思春期の転生者~   作:大2病ガノタ

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148話。
Q:どうしてこんなに遅れたの?

A:中々書き始められなかった、何度か全部書き直した、プラモの改造に夢中になってた、作者と作者父の誕生日が来てた、LoWの時限イベ消化してた、艦これ史実動画でガチ泣きしてた(例:赤木さん)、某四姉妹や某ちんじふ見た後にイーノックを見に行っていたets...


誕生日

 

 

 

 

 

---11月23日月曜日、IS学園食堂

 

 

 

 

 

「「「「「「青木君、お誕生日おめでとーう!」」」」」」

「お、おう。皆、わざわざありがとう」

 

 

 

 

 

放課後故か食堂には多くの生徒達が集っていた。1年専用機持ち達だけでなく2、3年の代表候補生も居た。

その光景に割と戸惑う新華。ハロ3機は既に簪や本音達に持って行かれ、サヤカが傍に控えていたがすぐに2、3年の接触が少ない生徒達に拉致されて可愛がられていた。

冒頭の挨拶が終わると女子達が群がってくる。それに対処し危険な質問や発言をのらりくらりとかわしていく様からは慣れを感じられた。

有る程度相手にし終え、サヤカを回収し疲れた表情で傍観していた一夏達のところへ行く。

 

 

 

 

 

「誕生日おめでとう新華!」

『トリィ!』

「おう、ありがとな。しっかし、よくこんなに人が集まったな」

「一夏の時は我々だけでやってしまったからな。今回はIS学園で行うから、逃すまいと必死なのだろう」

「そういやそうだったな」

 

 

 

 

 

トリィを肩に乗せた一夏と箒の台詞に納得して椅子に座り深く息を吐く。サヤカが苦笑して新華の肩を揉む。

 

 

 

 

 

「あ”-、そこそこ」

「……新華、アンタ疲れてるの?」

「ん? ああ、ちょっとな」

「同時にあれだけの人数を相手にするのですから、疲れるのは当然でしょうね…」

「ああ、いや、そっちじゃない。それもあるけど、ちょっと個人的にさ」

「…また何かあったのか?」

 

 

 

 

 

鈴、セシリア、ラウラの言葉にそれぞれ返し、頬杖を付く。

 

 

 

 

 

「人の多いここじゃ詳しく話せんけど、まー胃の痛くなる感じのsomethingをね? お陰でおちおち寝てもいらんねぇ2日間だったよ…」

「お、おう。お疲れ様」

「おうよ。まじ疲れた。家で父さん母さん実が同じように祝ってくれたのにすっごく癒されたよ」

 

 

 

 

 

溶けている新華がサヤカのマッサージを受けていると、後ろからカメラを持った薫子と刀奈、虚が姿を現した。

 

 

 

 

 

「新華君、お誕生日おめでとう。それとお疲れ様」

「ああ、ありがとう。2日も付き合わせて悪かった」

「いいのよ。こちらとしても動く必要のあった内容だったからね」

「そう言ってもらえると助かる。また後日埋め合わせするから」

「無理しなくていいのよ? それに今日は新華君に喜んでもらうためにこうして皆集まったのだから、もっと楽にして頂戴。はいお茶」

「ん、ありがとう」

 

 

 

 

 

体を起こして刀奈が持ってきたお茶を受け取り啜る。疲れのせいか哀愁が漂って見え爺臭かった。

 

 

 

 

 

「ふぅ…。しかし薫子さんと一緒なのは珍しい。何かあったので?」

「いやー何かあったもなにも、青木君はこういう時じゃないと写真撮らせてもらえないからねー。というわけで早速1枚」

「おっと」

 

 

 

 

 

薫子がパシャとシャッターを押すが、新華は反射的にサヤカを盾にして自分は映らないようにする。その結果に薫子は溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

「今に始まったことじゃないとはいえ、相変わらず報道用の写真には写ってくれないのね」

「すいません、基本的に写真は苦手なもんで。フラッシュ見ると体が反射的に動いちまって。これでも良くなった方なんですがね」

「初めて会った時はシャッターすら押させてもらえなかったよね。何年前だっけ?」

「そうっすねー……、もう3、4年くらいですか。もう懐かしいレベルですねぇ」

 

 

 

 

 

未だにパパラッチ達のカメラのフラッシュが忘れられない新華。薫子と昔話をして遠い目になるが、再びカメラのシャッターを押そうとしたタイミングでサヤカを盾にするという、先程と同じ展開を繰り広げてる。

普通に不毛な行為なので刀奈が割り込んでやめさせる。

 

 

 

 

 

「はいはい。薫子ちゃん、あまりしつこくしないの。新華君も気持ちは分かるけど、最低限写りが良くないと逆に付き纏われるわよ?」

「まーそうなんだけどなー。こればっかりは、どうにもこうにも」

「なら今から皆で集合写真撮らない? 以前の集合写真にすら青木君ってば写らないし」

「……集合写真って最近撮りましたっけ?」

「ほら、織斑君がクラス代表に就任した時」

「ああ、あの時。あん時は簪の所に行ってたからなぁ」

「そうそう。だから今から皆で集合して、ね?」

 

 

 

 

 

そう言って薫子が視線をずらすと、興味津々であることがバレバレな生徒達が視線をチラチラ送っていた。新華もそれを分かっているのか、溜息を1つ付いて肩を竦めた。

 

 

 

 

 

「あー…。記念撮影くらいなら、いいか?」

「良くないと私も困るんだけど。主役が居ない集合写真ってどうなのよ」

「それもそうっすね。んー……、どうやら皆撮りたいみたいっすね」

 

 

 

 

 

新華が回りを見ると多くの期待の眼差しが向けられていた。よくよく考えると家族やソレスタルビーイング以外で写真を撮らせたことが無いので(新聞に載るような奴は出身校からの提供)偶にはいいかと承諾する。

女子生徒達が沸き立ち早速集まってくる、が、それよりも早くハロ3機が飛び跳ねて足元に集まる。

 

 

 

 

 

「ハロッ、ハロッ」

「おーおー、お前らも映りたいのか」

「シャシン、シャシン」

「お前らにも撮影機能あるけど使わないよなー。映像ばっかでさ、写真みたいに撮ることってまず無いじゃん?」

「ジュブンツカエテル、ジュウブンツカエテル」

「ま、そうだけどさ」

「私だけでは多方向からの撮影とデータ処理に難がありますから」

「ビルドストライクの調整も全機稼動でかなり捗る要因だしなぁ。やっぱ多方向って重要」

 

 

 

 

 

機械組と会話していると簪と本音がクラスメイト達を連れてやってくる。そして薫子がいつのまにやら三脚をどこからか出して撮影準備を終わらせていた。

 

 

 

 

 

「はいはーい、まずは生徒会の皆で撮って、その後に専用機持ちが集合、でそれから撮影会ねー。この人数だと入りきらないから」

「…ちょっと待って下さい? もしかしてこの場に居る人数分撮影とかしませんよね?」

「流石にそこまではねー(お嬢様達が後で怖いし)。でも、それなりに撮らせてもらうよ? 皆青木君の写真欲しがって価値上がってるんだから」

「……それって一夏の写真は既に売れてるって意味で取りますが」

「需要があったもの。それに青木君と違ってイイのが結構撮れたってのもあるし」

「…ま、一夏だし。中学の時と変わらないしいいか」

 

 

 

 

 

一夏の人気は今に始まったことではないので放置。ハロOを抱き抱えαとFは簪と本音に抱えられる。

 

 

 

 

 

「新華君、隣、いい?」

「おう。一夏はどこにする?」

「俺? 俺は…あー…」

「生徒会としての写真でしょ? なら私が真ん中になって新華君と織斑君が両側になればいいと思うわ」

「まぁ、そうなるな」

 

 

 

 

 

刀奈が真ん中に立ちその両側に一夏と新華が立つ。新華の反対側には簪と本音が、一夏の反対側に虚が立つ。サヤカは新華と簪の後ろに位置する。

 

 

 

 

 

「はーい視線はこちらにー。撮りますよー! 笑顔でお願いしまーす」

「ほら、織斑君も新華君も笑顔笑顔」

「はい」

「あいあい。あ、簪さん本音さん、ハロをちゃんとカメラの方に向けて」

「うん」

「あいあいさ~」

「ではいきますよー」

 

 

 

 

 

生徒会でまずは1枚。続いて専用機持ち達で男2人を中心に集まり1枚。その後は傍観しようとしていた一夏を新華が巻き込んでの撮影会に発展していった。

粗方その場に居た全女子生徒達が概ね満足するくらいの量を撮り終えた時には、既に外は日が落ちていた。

妙な疲労感を新華と一夏は感じながら、逞しく焼き増しの注文を受ける薫子を横目に机に突っ伏していた。

 

 

 

 

 

「つっかれた。なーんで写真撮るだけなのに、こんなに疲れにゃならんのよ」

「しかも何で俺まで…」

「お前だけ楽するとか許さん。それにどうせ流れ的にお前の撮影会も始まってたんだろうし、なら最初から巻き込ませてもらった」

「ひっでぇ。でも、みんな楽しそうだったな」

「そらそうだろうよ。というか写真の焼き増し頼んでる連中の何割が俺の誕生日パーティーってこと覚えてんのかね」

「流石にみんな覚えてるだろ……タブン」

『トリィ?』

 

 

 

 

 

突っ伏す一夏の顔を覗き込むようにトリィがちょこちょこ動く。一夏はトリィの頭を軽く指先で撫でて癒される。新華は焼き増しを頼んでいるヒロインズを眺めていた。

そんな新華を見て一夏はある質問をする。

 

 

 

 

 

「なぁ新華、さっき家でおじさん達が祝ってくれたって言ってたけど、何かプレゼントとか貰ったのか?」

「あん? ああ、いいもんもろうたで」

「何で大阪弁…。何もらったんだ?」

「新しいマウンテンバイク。今まで乗ってたのはかれこれ……8年くらい? 乗り続けてるからガタ来てるし、サドルあれ以上上がらなかったしな。割と有難かった」

「流石おじさん達…新華の欲しい物ピンポイントかよ」

「しかも最新の奴でサイズも申し分無しだったし、ギアも12段階。ベルを敢えて弾くだけの簡単な奴にしている辺り、本当俺をよく見てくれてると思う」

「……本当、おじさん達は凄い人達だな」

「ああ」

 

 

 

 

 

改めて今の両親と、その両親の間に生まれさせてくれた閻魔に感謝する新華。今まで迷惑を掛けた分の親孝行をしきれるのか考えながら刀奈達を眺める。

焼き増しの予約をして写真を楽しみにする姿は他の生徒と変わらないが、他の生徒達と違い即座に視線に気付いて駆け寄ってくる辺り愛を感じる。

 

 

 

 

 

「新華、どうかした?」

「いや、シャルロット達も焼き増し頼む程に俺は写真嫌ってたんだなってさ」

「一応学校の集合写真や証明写真は撮ってたけど、それ以外はからっきしだったからものねぇ。薫子ちゃんも言っていたように筋金入りだったし」

「マスコミはどうもなぁ。フラッシュバックする」

「無理しなくてもいいんだよ…」

 

 

 

 

 

簪が心配そうに顔を覗き込んでくるが、新華は姿勢を正して首を振る。

 

 

 

 

 

「いや、そうも言ってられん感じに世界が動いてるから、早めに治さないと逆にヤバイ。絶対MS関連で一波乱ある」

「た、たしかに」

「自分でやっといてアレだけど、サヤカ所持で2人の男性操縦者の片割れでソレスタ建ててMS作ってってやり過ぎたからね、しょうがないね」

「新華ェ…」

「し、仕方なかったんや! 前2つはともかく俺と同じかそれ以下の思いしてる子供見捨てておけねぇし、保護したらしたで衣食住確保しなきゃいけないし、確保する為には金が必要だし、稼ぐにしても人と土地が必要だったし! んで人手不足は優秀な人達スカウトして、土地っつったらあの場所しか思い浮かばなかったんだし! いい加減末期の『灰色領域』みたいな人体実験やらかしてる奴ら放置する訳にはいかなかったんだし! パラベラム的に!」

「それいじょうはいけない」

 

 

 

 

 

色々と拙い事をぶちまける新華を落ち着かせるように一夏が宥めようとするが、当の本人は当時の苦労を思い出したのかシクシクと呟きだした。

 

 

 

 

 

「もうね、あの馬鹿(う詐欺)の尻拭いに加えて資金確保の為に色々と試行錯誤したり裏取引したりさ、あまりやり過ぎて引き際間違えると抹消目標にされるからさ、しかも父さん達やお前らに知られないようにこっそりやらないといけないし」

「お、おう…」

「でも個人的にちゃんと学校には行きたかったし、でも組織内の秩序や孤児達のPTSDやら自立やら運営資金のやりくりとか自衛手段とかets…。日常回で寝キャラになってもいいでしょ!? もう学校のある日が休日だったよ!」

「…そうか」

「それにね、建設当時はそりゃあ地元からの反応は良くなかったんだよ。今でこそああして受け入れられてるけど、最初はあまりいい顔されなんだ。ちゃんと説明して見返りを示したうえで試験期間を設定、協力を土下座で頼み込んで運営開始。開始後も地元に貢献する形で税金払ったり繰り返し説明したり。フォローもあったけど基本暇無しだったよ!」

「……お疲れ様」

「地道に、地道に時間掛けて信用勝ち取りながら問題は持ち込ませないようにして、有益無害をアピールして実施してさ…! それなのに敵さんはその信用を台無しにするみたいに軽々と襲撃してくれちゃってさ…! アレでもし町に被害出て全部パァになってたらと思うと、もう、もう…っ!」

「もういい休め、な!」

 

 

 

 

 

拳を握り締める新華の姿は、今までとは違った意味で痛々しかった。

 

 

 

 

 

「余裕ぶっこいてるように見えただろ? あれ修羅場じゃなかったからあんなだったんだぜ…。それに今は安定して運営出来て人材不足も補えてるし、ここのところ黒字だし。地元も受け入れてくれてるし、去年は一夏も知ってるようにゆっくり出来てたし今の所は問題無い感じ、なんだけどなぁ…あんなろうども余計なことを…」

「は、ハイそれじゃあ次行こう次!」

 

 

 

 

 

暗くなる雰囲気を払拭しようと一夏が声を上げ近くに居た面子に視線を飛ばす。頷きが返され一夏は新華を復帰させる為に肩を揺さぶって起こす。

 

 

 

 

 

「ほ、ほら、今日は新華の誕生日会なんだからさ。辛かった事も一旦忘れようぜ、な? ほら、お茶飲んで」

「…すまねぇ、こうして祝ってもらえてるのが嬉しくて気が抜けちまって、言わなくていいことまで口にしちまっている」

「いいって。な? さ、明るくいこうぜ」

 

 

 

 

 

一夏が珍しく、写真から大きく逸れた話題を強制的に修正し場を取り成す。周りで新華の様子を見ていた生徒達も空気が戻ることに安堵した。

 

 

 

 

 

「じゃあ次ね。次は…お楽しみのプレゼントの贈呈!」

「お、おー!」

「待ってました!」

 

 

 

 

 

刀奈が仕切り無理やり場を盛り上げる。そしていそいそと自身の機体の拡張領域からデコレートされた箱を出す。

 

 

 

 

 

「コホン、まずは私からでいい?」

「「「「「「どうぞどうぞ」」」」」」

「じゃ、じゃあ、新華君」

「お、おう」

「これ、どうぞ」

 

 

 

 

 

何故か新華も刀奈も初々しい感じになる。家族以外からのプレゼントは受け取って一夏のようにフラグにしたくない(無意味&逆効果)という理由で避けていたからまだいいとして、刀奈の場合は意中の異性(旦那確定)に渡す初めてのプレゼントである。少し緊張するのも仕方ないのかもしれない(血涙

渡されたのは厚みのある四角い箱。なにやらずっしりとした重みがあり機械物が入っていることが伺えた。

 

 

 

 

 

「ほむ、ありがとう(重量的に何かの機械端末か何かか。って端末? ……結構値段したんじゃねぇのか?)」

「開けるのは部屋に戻ってからね♪」

「じゃあ、次は私…」

 

 

 

 

 

そう言って簪が渡したのは、これまた厚みのある四角い箱。だがこちらは刀奈のとは違い大きさに反して軽く片手でも持てた。

 

 

 

 

 

「おう、ありがと(こっちは重量と持った時の振動から小さい奴か。…物によっちゃこっちも結構するが)」

「う、うん! じゃ、じゃあ…」

「次は僕、でいいのかな?」

 

 

 

 

 

シャルロットが出したのは先の2人が出したそれより小さく、縦長の箱であった。重量は先程の物の丁度中間といったところであろうか

 

 

 

 

 

「これ、どうぞ」

「ああ、ありがとさん(それなりに重いな…金属物か?)」

 

 

 

 

 

持った時の重さで大体の予想は付けるが、具体的な予想はせず後回しにする。割と楽しみなので開けるのも確認も後のお楽しみに取っておく。

 

 

 

 

 

「生徒会長と更識さんとシャルが終わったから、次は俺が」

「大盤振る舞いだな」

「普段から世話になってるし、トリィの礼もあるからな」

『トリィ!』

「気にしなくていいって」

「そう言わずに受け取ってくれ。貰ってばっかじゃコッチの方が困るんだ」

 

 

 

 

 

そう言って一夏が出したのは、前3人より大きい箱。しかもそれなりに重いやつだった。

 

 

 

 

「おお、デカイな」

「俺からはこのくらいだ。奮発してみたんだが…」

「いやいやこのくらいって、結構頑張ったんじゃ? お前の小遣い…」

「それこそ『気にしなくていい』さ。あ、もちろん開封は部屋に戻ってからのお楽しみってことで」

「…お前、ほんとイケメンだよな。俺みたいに(・・・・)刺されんなよ?」

「おう! ………………んっ?」

 

 

 

 

 

ひょいひょいとプレゼントの箱をハロの中に収容していく新華の最後にボソッと発した言葉を聞き逃がさなかった。

そして同じように聞き逃さなかった刀奈、簪、シャルロットが動く。

 

 

 

 

 

「ちょっと」

「その話」

「詳しく」

「えっ、あっちょっ」

「…あー…」

 

 

 

 

 

3人に腕を拘束されどこかへとズルズル引き摺られていく新華。そしてそれを、何故か付いて行かずに手を振って見送るサヤカとハロ達。

 

 

 

 

 

「しっかし絞られてきてくださいねー」

「おい      おい」

「人間関係の清算も事前に片付けておくべき案件ですよー。刺した相手が諦めてると思えないのでー。なので、今の内に全部言った方がいいと判断しました」

「っ、い、一夏! ヘルプ!」

「残当。いってらっしゃーい」

ヴァゴム(なぜ)!?」

 

 

 

 

 

見送られる形で新華達4人が居なくなる。その後一夏達は談笑していたが途中で「アッー!」という新華の叫びが聞こえた気がしたもののこれをスルーした。

 

 

 

 

 

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-----------

-------------------------

 

 

 

 

 

---1050室

誕生日会もお開きとなり部屋に戻ってきた新華は、早速貰った箱をハロ達から出していく。

 

 

 

 

 

「いてて…あいつら容赦無く根掘り葉掘りを慣行するとは思わなんだ。ま正座くらいじゃ堪えんのだけども」

「あの叫びと脳量子波は…」

「……そりゃそのままの勢いで押し倒されれば、叫びも上げようさ」

「つまりいつも通りですね」

「…悲しいけどコレ、現実なのよね…。はぁ、古傷はくすぐったいからあまり舐めないでくれと言ったんだけどなぁ」

「(通常運転ですね)」

 

 

 

 

 

サヤカも一緒になって整理し、まず刀奈から貰った物からから開封する。

 

 

 

 

 

「まーずーはー刀奈のから。割と重いが中身は…おっ」

「3DSですか。そういえば以前一緒にプレイしようとおっしゃってましたね」

「それお前が覚醒する前じゃなかったっけ? となると簪のは…」

 

 

 

 

 

3DSの箱を脇に置き、簪から受け取った箱を開けた。新華の予想通り中身はゲームソフトが2つと、無地の箱が入っていた。

 

 

 

 

 

「こりゃ刀奈と簪も同じ物買ってると見た。通信する気満々だな」

「ご丁寧に通信可能なソフトですね。『どうぶつの森』まで」

「後で初期設定終わらせようか。んでこの箱は…」

 

 

 

 

 

そう言って無地の箱を開けると、中には1つのヘッドホンが入っていた。

 

 

 

 

 

「ヘッドホン?」

「そうみたいですね。……ご主人様、このヘッドホン、メーカーの物じゃありませんよ」

「む? そうなのか? じゃあこれは…」

「…手作りのようですね」

「マジか」

 

 

 

 

 

目を見開いてヘッドホンを手に取る。白いフレームに蒼と緑のカラーリングが施されたカラフルなヘッドホンは、明らかに『Evolveクアンタ』を意識していた。

 

 

 

 

 

「手作りか…。サヤカ、一旦戻れ」

「はい」

 

 

 

 

 

サヤカが待機形態のウォークマンになって新華の腰に戻り、ヘッドホンの端末を差し込む。

 

 

 

 

 

「おお、これコード無いと思ったらISのプライベートチャンネルと同期するよう作られてんな。…スゲェ、まだこの部分は解析されてないと思ってた」

『---早速同期します。何か流しますか?』

「そうさな…。…KOKIAの曲何でもいいから流してみてくれ」

 

 

 

 

 

ヘッドホンを付けてサヤカに指示を出す。サヤカが流したのは『たった1つの想い』。

 

 

 

 

 

「おお…透き通るようだな。簪、こういうの作れたんだな…」

『---伊達にISを1人で完成させようとしていた訳ではない、ということでしょうね』

「そうだな。…この曲を流した意味は?」

『---ランダムですよ』

「……そうか」

『---はい』

「…そういうことにしておくか」

 

 

 

 

 

ヘッドホンを首に掛け端末をそのままに曲を止める。あえて同化させず、サヤカを人形態に戻した。

次に開けるのはシャルロットからのもの。縦長の箱を開けると、中には腕時計が入っていた。

 

 

 

 

 

「ほぅ、そうきたか」

「今使っているのと交換します?」

「そうだな。ちょっと勿体無い気がするが、今使ってる奴は仕舞っておこう」

 

 

 

 

 

早速D2(デーツー)の腕時計と交換し付け心地を確かめる。

 

 

 

 

 

「うん、いい感じだ。ゼンマイ式とは分かってる」

「振れば巻かれるタイプですね。先程のは水素電池ですから長持ちしますが…」

「切れたら終わりだからな。こっちを使った方が気分的にも良い」

 

 

 

 

 

腕に付けた時計を眺め終えた後は、一夏からのプレゼントを取り出して開封する。

 

 

 

 

 

「ほう、デカイと思ったらスピーカーか」

「映画鑑賞時に使用するのが織斑さんの意図したところでしょう」

「そういや映画部以外でスピーカー使った事無かったな。ハロの奴は普通のノートPCとなんら変わんねぇし」

「丁度いいですね。…あら、まだありますよ?」

「ん?」

 

 

 

 

 

スピーカーを置いて箱の横にあった物を取り出す。

 

 

 

 

 

「写真スタンドか」

「ガラス張りですね。現像された写真が無いと無用の長物ですが…」

「…写真、ねぇ」

 

 

 

 

 

新華が個人的に持つ写真の数は多くない。そもそも反射的に写真に写らないよう体が動くので、持っている現像写真は10を下回る。中学の修学旅行のスナップ写真に至っては一夏と弾と同時に写っていた1枚と集合写真のみという有様である。

 

 

 

 

 

「……さっきの集合写真の焼き増し、俺も申し込んでおくか」

「あとは、これから写真にちゃんと写るようにしましょうね」

「努力はしよう。…映像を撮るのはいつもの事だが、戦闘ばかりで味気ないか。偶には日常を撮るのもアリか?」

「それこそ、映画風に編集したらどうでしょう?」

「お、いいかもしれん。日常系映画か…。うん、普通にアリだな。生徒会全員で0号試写やるのもいいな」

「そこまでやるのなら、いっそ生徒会の活動として提案してみたらどうでしょう」

「うん、楽しそうだ。忙しくない時に出せるよう後で企画書作っておくか」

 

 

 

 

 

写真スタンドを照明にかざし透明度を確認していた新華は、その風景を想像して微笑む。

 

 

 

 

 

「さて、これ以外にも箒達からのや本音さん達からのも開けないといけないし、どんどん行こうか」

「そうですね」

「さーてと、お次は~っと…」

 

 

 

 

 

ハロOからプレゼントを出して開けて仕舞うという工程を繰り返し、終わった頃を見計らって帰って来た刀奈と付いてきた簪と共に3DSの初期設定と『どうぶつの森』の設定を終えていった。

 

 

 

 

 

「最初のアルバイト終わるまで通信は待ってて」

「早く~」

「分かってるっての。あ、この村オレンジだ。2人のところは」

「私はリンゴ、お姉ちゃんもリンゴ」

「oh…。ま、いいか。オレンジ持ってくからリンゴは貰ってく。あ、タンタンてめぇ64での行方不明事件忘れてねぇぞ」

 

 

 

 

 

新華の首に簪製のヘッドホンを掛けシャルロットから貰った腕時計を付け、3人共どうぶつの森をプレイする。

刀奈は別として、簪は自分の手作りのヘッドホンを早速使ってくれているのを見れて終始嬉しそうだった。

 

 

 

 

 




打ち切りにするならこの辺で締めるのが妥当なのでしょうが…まだ続きます。というか予定では丸1年分+α、つまりこの作中で新年度まで、そして後日談という名の数年後編まで書きます。まぁ、趣味で書いてるのでその辺のgdgdはお許しを。

>64での行方不明事件
当時現役初代どうぶつの森で我が家が経験した悪夢。『おとどけもの』を渡すだけなのに、直前に話した場所から遠く離れた場所にワープしていただけでなく番地の間の木の陰に居やがったせいで苦労しまくった…というもの。
誰か共感してくれる人はおりませんか…?

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