IS~疾走する思春期の転生者~   作:大2病ガノタ

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145話の、投下です。
先日弟が風呂上りに『お腹の脂肪、ぷよぷよみたいに連鎖してくれないかな』と言いだしたせいで腹筋に深刻なエラーが発生してましたw

ちなみに今回のイベントは至極平和です。

そして砂糖注意報です。


ハロウィンパーティー開催

 

 

 

 

 

「「「「「「Trick or Treat!」」」」」」

 

 

 

 

 

---週末日曜日、IS学園

ついに『ハロウィンパーティー』が開催された。生徒達は各自ハロウィンに相応しく魔女のような格好になり校内もジャックランタンや蝙蝠の飾りつけで彩られる。

新華は生徒会の仕事である校内巡回に入る前に、まず自分のクラスである3組の売り上げに貢献していた。

 

 

 

 

 

「っしゃーせー! 2名様ですね! 2名様ご案内ィー!」

「ドウゾ、ドウゾ」

「5番テーブル空きました! こちらへどうぞ、注文を承ります!」

「ユックリ、シテイッテネ!」

「イラッシャイ、イラッシャイ」

 

 

 

 

 

クラスの女子達に押し通され、ドラキュラの格好をした新華。女子達に合わせ魔女っぽい格好に見た目を変化させたサヤカ。特に何も変わっていないハロ3機。

この連中+女子達による『パンプキンケーキ屋』、それが3組の出した答えであった。新華が生徒会の仕事に向かっても問題無く集客出来るようにハロによるアピールも行い、何より味で勝負する事で新華が生徒会の仕事に行った後でも売り上げを維持するようにしていた。更にお土産としてお持ち帰りが出来るよう容器も容易してあるので割りと本気だった。

ただまぁ、3組の目的が稼ぎ以外に打倒1組なのでこれだけ本気になるのも無理はないだろう。

 

 

 

 

 

「お持ち帰りですか!? 少々お待ち下さい! ……こちらの用紙に掛かれている商品名に丸を付け、順番が回ってきましたら声をお掛けください!」

「ヤバイ、ホイップ切れそう! 誰か買出し行って来てー!」

「それ以外にもジュースまで切れそう! ああもう、青木君ハロ借りてっていい!?」

「緊急事態だ、構わん、行け!」

「リョウカイ、リョウカイ!」

 

 

 

 

 

慌しく皆が走り回り以前以上の盛り上がりを見せる。前回の学園祭の時に男子2人が思いの外宣伝になったのか、入場する人の数も多かった。

故に教師は全員警備に出張る必要が出てしまい、千冬に至っては復活した『暮桜』のスキャンモードをフル活用していた。

加えて今回、雑誌の取材やニコ生が来ていたりとカメラが入っている。無論それらは千冬達にも向くので教師達は今まで経験した事の無い負担を負うことになっていた。

 

 

 

 

 

「だがしかし、だがしかぁし! このくらいで音を上げていたら今頃死んでるんだよォ! 次ィ!」

「……元気そうで何よりだな」

「いらっしゃ---でゅ、デュノア社長!?」

「「「「「「!?」」」」」」

 

 

 

 

 

新華が変なテンションで接待していると、苦笑いしスーツ姿のシャルロットの父ことデュノア社長が入ってきた。クラス一同も一緒になって驚愕する。

 

 

 

 

 

「え、え!? なんでいらっしゃるんですか!?」

「娘の学園祭に来るのはおかしいのかい?」

「いや、そんなことありませんけど、会社の方はいいんですか!?」

「部下に任せてあるよ。それより、席、いいかな?」

「あ、す、すいません! こちらどうぞ」

 

 

 

 

 

テンパる新華が案内してデュノア社長は席に座り簡単に注文する。彼が頼んだのはモンブランとコーヒー。『デュノア』『社長』という単語に正しく現状を理解した女子生徒が、緊張のまま彼にモンブランとコーヒーを出す。

彼はそのぎこちなさを見て軽く微笑むと、上品にコーヒーを飲みモンブランを口にする。混雑する中、シャルロットの父親だけあるのか優雅に嗜んでいた。

モンブランを食べ終えるのを見計らって新華とサヤカが食器を片付けに行く。

 

 

 

 

 

「ごちそうさま」

「食器お下げします。…シャルロットの所にはもう行かれましたか?」

「ああ。元気そうで安心したよ」

「そうですか」

「いやはや、しかしあれから数ヶ月しか経っていないのに随分と久しぶりに君と会う気がするよ。いつ『挨拶』に来てくれるのかと心待ちにしていたんだけどね」

「やー……ははは。……なんかすいません」

「謝る必要はないさ。青木君も忙しかったようだったしね、特にここ最近では」

「まぁ、はい」

 

 

 

 

 

お客さんを含めたほぼ全員からの視線に堪えることも無く会話をする2人。サヤカが一礼して空になった食器を運びデュノア社長が目を細めた。

 

 

 

 

 

「…君は好色家かい?」

「サヤカの姿は俺の恩師のものなんです。気付いたらこうなっていたんですよ。決してやましい意味はありませんし、そういう嗜好もありません」

「だったら問題無い……なんて、私が言える立場ではないか」

「オヒサシブリ、オヒサシブリ」

「ああ、ハロだったな。久しぶりだね」

 

 

 

 

 

ハロが社長の足元に転がり込み挨拶をする。社長は微笑んでハロに挨拶を返した。

 

 

 

 

 

「そういえば今日はお一人ですか? シャルロットの様子を見に来たのなら夫人達も来ていると思ったのですが」

「ああ、今大事な時期だからね。彼女達には悪いけど留守番を任せているよ」

「社長が出歩いても大丈夫な『大事な時期』、ですか?」

「シャルロットから聞いていないのかい? …まぁ調べれば分かるが、シャルロットから後で聞くといいよ」

「? そう、ですか」

「うんうん。じゃあ私はこれから織斑君に会いに行くつもりだから、この辺で」

「あ、はい」

 

 

 

 

 

社長が席から立ち、未だに慌しいクラスを見て懐かしむように目を細めた。かつてシャルロット母と出会う前の、学生だった頃の思い出が彼の頭をよぎる。かつての思春期を思い出す大人の背中にはどこか寂しさがあった。

新華はその背中を見送ると、サヤカ再び慌しいクラスで接客に励んだ。

 

 

 

 

 

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---午後の部

お客の足がまだ途絶えない中、新華はやっとの思いでクラスを抜け出せた。午前と比べて客足が減った事と、午後の部担当のクラスメイトが戻ってきたことで余裕が出来たお陰である。

新華は早速学園祭の時にも支給されたインカムを耳に付け虚と連絡を取り、まず隣のクラスに居る筈の簪とシャルロットを迎えに行った。

 

 

 

 

 

「簪ーシャルロットー、居るかー?」

「新華君!」

「あ、新華ー」

 

 

 

 

顔を出し声を掛けると、ロングコート+ロングスカートというハロウィンの衣装に身を包んだ簪と、ミニスカ+Yシャツ+蝶ネクタイというあざといチョイスのシャルロットが返事をして振り返る。そして簪が真っ先に駆け寄り新華に抱きついた。あまりの可愛らしさに抱き締め返し、キスをせびられて反射的に情熱的なお返しをすると、周りから女子達の歓声や怨嗟の声が起こる。

キスの後にハートを飛ばしながら抱きつく簪を衣装のマントで包みながら、苦笑しちょっと羨ましそうな顔をするシャルロットに声を掛ける。

 

 

 

 

 

「俺の方終わったぞー。楯無会長と合流しようず。あ、そうそうシャルロットさ、社長さんこっちのクラスにも来たぞ」

「そっちにも? あー、なんかごめんね」

「謝る必要は無いさ、いいことじゃん。ちゃんと見てもらえてるんだろ?」

「うん」

「それが一番だよ。親子仲良くするのが一番。な?」

「…うんっ」

 

 

 

 

 

満面の笑みを浮かべるシャルロットに反応して簪がコートから出る。何も言わずとも分かったような流れでシャルロットが先程の簪のように新華に抱き付いた。

キス魔の簪とは違いシャルロットは人前で自分からキスしようとはしない。甘え誘うが、自分からは動かない。ただ、自身の豊満な体を押し付け新華と同じく相手の体温を出来るだけ感じるだけである。

だが新華がそれに反応しないかと言われれば否である。キスはしない、が

 

 

 

 

 

「あむっ」

「ひああああああ!?」

 

 

 

 

 

ドラキュラの格好をしているからなのかは知らないが、抱き締めた時に無防備になったシャルロットの首筋を甘噛みした。シャルロットは背筋がゾウゾクするのを感じて甘い声を出してしまう。

真っ赤になった顔で責めるように新華を睨むシャルロットだが、着ている服と割と満更でもなさそうなその顔は、ただ新華をムラムラさせるだけだった。

人前でこうもイチャついてるので、周りからは当然のごとく視線が飛んでくる。両手で顔を覆いながら指の隙間からがっつり見ていたり、歯軋りしていたりと人によって反応がまちまちだが注目されている事は確かだった。

 

 

 

 

 

「し、新華さ! ほ、ほら皆見てるし…」

「ん、じゃあ後でな」

「しょ、しょうがないにゃあー…」

 

 

 

 

 

緩みきった表情で若干噛みながらもデレッデレなシャルロットを抱き締めていると、見ていた者達が砂糖を大量生産してコーヒーを探しに隣の3組に駆け込むという事態が発生した。午後担当の3組クラスメイト達がその日見た最初の地獄の原因となるが、当の本人達にとってどうでもいいことだった。

「借りてくぞー」と4組の生徒達に断り、両手に花の状態で移動を開始する。一応生徒会の腕章を新華と簪は付けていたが、殆ど意味を成しているとは思えない。サヤカも付けてはいるが、新華達の後ろに待機しているうえハロが足元に転がっているのでイロモノ臭がするとして誰も近付こうとしなかった。

そして移動し刀奈と合流する。合流直後に刀奈からも飛びつかれたのは最早お決まりである。

 

 

 

 

 

「織斑君は既に引っ張りだこにされながらも警備を開始しているわ。私達も回りましょう」

「それはいいですけど、俺が言うのもアレですがこうして固まってていいんすか? いや、俺としては嬉しい限りなんですけど」

「今回は先生方が頑張ってくれているから大丈夫よ。入場口でISのスキャンを使っているから危険物は持ち込めないし、用意した機材を全部使って入場する人の識別もやってる。監視カメラもあるし報道陣に至っては厳しく取り締まりしてるわ」

「ありがたいことで」

 

 

 

 

 

生徒会と教師一同、出来る限りのことはやっていた。再び敵対勢力に侵入されないよう警備を強化し取材に来た記者に関しては厳重に確認を取る。敵とはいえ死人を出した影響は大きく気合の入り具合も学園祭のそれとは違っていた。

 

 

 

 

 

「だ・か・ら、今日は全員で回りましょ♪ ほら、こうして揃ってデートってしたこと無いじゃない」

「まぁ、確かに」

「それにコンテストもあるから1人ずつだと時間が限られるしね。織斑君のところとは違って私達は全員長い付き合いになるし」

「うん」

「そうですね」

「だから、ね?」

 

 

 

 

 

そう言われると新華は断れない。

 

 

 

 

 

「わかった。なら今日は嫌な予感も無いことだし、目一杯楽しもうか」

「あら、新華君のお墨付きなら大丈夫そうね。じゃあコンテストに出る新華君目当ての娘が諦めるくらい見せ付けて行きましょう!」

「「はい(うん)!」」

「たはは、お手柔らかに」

 

 

 

 

 

3人に引っ張られる形で移動しようとする。が、直前に刀奈が思い出したように新華の目の前でクルリと回転した。

 

 

 

 

 

「うふふ、どう? ちょっと気合入れてみたのだけど」

「……俺、ちょっと幸せ過ぎて明日あたり死ぬんじゃないでしょうかね……?」

 

 

 

 

 

刀奈も簪やシャルロットと同じようにハロウィン向けの魔女の仮装をしていた。ミニスカ+ニーソ+肩出し衣装+長手袋+マントというガチっぷりで自分に見せてくれるのだから嬉しくない筈がない。

今更ながらに自身のリア充っぷりを再認識した新華は言葉を漏らす。無論似合っているし気合が入っているのも分かる。ただ、その女子が自分の女という現実が嬉しいだけで。

 

 

 

 

 

「それは褒め言葉と取っていいかしら?」

「ええ、そりゃもう。…ああ、もう、このまま見ていたいですけど時間無くなりそうなんで、終わって部屋戻ってからにしましょう」

「帰ったら、それこそ隅々まで見られちゃうのかしら? キャッ♪」

「昨日3人で絞ったじゃないですかやめてくださいしんでしまいます。あと人の居る場所でこんな話させないでくださいしんでしまいます」

 

 

 

 

 

などとナチュラルにイチャついて3組の売り上げの貢献や嫉妬を集めながら、教室を見て回る。そしてある程度時間が経ち自分たちの仕事を意識すれば当然の如く

 

 

 

 

 

「おう、一夏よ。青春、してるか?」

「…そんな質問するなんて、疲れてるのか?」

「逆だ逆。もうね、現状どうしようもなく満足できちゃうわけよ。そのうえ更に倍プッシュしてくるもんだから、もう、な?」

「お、おう」

「……なぁ、俺がここに居る意味は?」

 

 

 

 

 

一夏達とコンテスト会場であるIS学園中庭の特設ステージ付近で合流する。そしてついでと言わんばかりに来て虚とデートしていた弾もとっ捕まえ、男子会をしていた。

女子メンバーはちょっと離れた場所でサヤカを含めた女子会である。何やら話し込んでいるが、時々色めきたったり虚が真っ赤になったりしているので触れることはない。

 

 

 

 

 

「おう弾は虚さんとの現状きりきり吐けや。どこまで行ったん? ん?」

「お、お前は…前より元気過ぎないか!?」

「毎日が楽しいんだよ言わせんな恥ずかしい。というわけで俺だけじゃなくお前らにもリア充になってもらう」

「話がいきなり飛びすぎだろ! 脈絡ねぇ!」

「いい加減くっ付けっつってんだ。一夏はともかく弾も良い感じなんだろうに」

 

 

 

 

 

ハロもサヤカも女子に持っていかれ何も持っていない状態の新華は、缶コーヒー片手に一夏と弾を弄る。自分が感じているような幸せを親友達にも是非味わってもらいたいと考える故に話を進める。

 

 

 

 

 

「俺ぁ生徒会だし日常的に言えば弾より虚さんと話す機会も多ければ、昔からの付き合いの楯無会長と本音さんからの意見を聞くことも多い。それに何より、最近虚さんが茶色のヘアバンドを大切そうに扱っているのが確認されている」

「そ、そうか?」

「おうよ。な、一夏」

「ああ。この間そのヘアバンドのこと聞いた時があってさ、本当に大事そうにしてたぞ」

「そ、そっか。よかった~…」

「それに聞くところによれば弾はがっついている訳じゃなさそうだし。勢いがあるのはいい事だがしつこいとウザがられるし」

「…それを新華が言うか? 最近じゃかなりがっついてるように見えるんだけど」

「俺らの場合、お互いにがっついてるからな。それが心地良いんだけど。というか傍から見ればお前ってがっつかれてる側だからな」

 

 

 

 

 

コンテストが行われるまでのステージでは、吹奏楽部とダンス部が協力して歌と踊りを披露していた。IS学園の生徒達の顔面偏差値は物凄く高い。故にニコ生を始めとした人気がとても集まっており、テンションも上がっていた。

それを横目にコーヒーを口にする新華。

 

 

 

 

 

「や、それは最近自覚したけどさー」

「な、何ィ!? い、一夏が、あの一夏が、自覚したぁ!?」

「弾よ、俺ァ頑張ったんだぜ…」

「おお…ようやく、ようやくか…」

「…そんなに俺鈍感だったのか」

「「気付くのが遅ぇんだよ鈍感野郎!」」

 

 

 

 

 

などと騒いでいると、一通り見終えたのか中庭にやってきたデュノア社長が新華たちに声を掛ける。

 

 

 

 

 

「やあ、先程振りだね。相席、いいかい?」

「あ、デュノア社長」

「ブフーッ!?」

 

 

 

 

 

気軽に新華の肩に手を置いた彼と新華の言う『社長』という単語に反応した弾は盛大に噴いた。友人との気軽な会話に『社長』と呼ばれる大人が現れればこうもなろう。

 

 

 

 

 

「しゃ、社長って?」

「ああ、そういや弾は面識無かったな。こちらフランスでIS開発を主に行っている『デュノア社』の社長でシャルロットの父親」

「よろしく。君は……」

「お、俺は五反田 弾って言います!」

「五反田君か、よろしく」

「は、はい…」

 

 

 

 

 

紹介され物凄く緊張する弾。一夏も若干緊張していたが、新華は軽く席を薦める。

 

 

 

 

 

「よっと。いやあ活気があっていいね。教師の方々がちょっと硬い感じがしたが…」

「最近色々とありまして。一通り回られたんですか?」

「うん、普段娘の生活している場所をよく知っておくのも必要だからね。それに今日はプライベートだから、お祭り気分を楽しもうかと思って」

「仕事してるとお祭りに行けるタイミングが限られますからねー。平日開催だったら確実に行けませんし」

「それもあるけど、IS学園(ここ)には開校以来来たことが無かったからね。ラファールが採用されていても後継機の開発に手間取っていてそれどころじゃなかったし」

「あー成程」

 

 

 

 

 

終始軽い感じで新華とデュノア社長が会話を交わす中、一夏と弾は緊張したまま小さく会話するしか出来なかった。おいそれと雲の上の人と話せるほど一夏も弾も度胸が無い。

 

 

 

 

 

「(な、何かあの社長さん? とかるーく会話出来ている新華に驚愕が隠せないんだが)」

「(まぁ…新華だし? 以前会ってシャルの問題どうにかしたみたいだし)」

「(OK把握。新華らしいっちゃあらしいんだが、もうちょっとこう…)」

「(それは俺も思うけど、それで助けられてる人が居るし…)」

「(ダチとしては、もうちょっと大人しくしてもいいんじゃないかなーと)」

「(……無理だと思うぞ)」

「(だよなぁ)」

 

 

 

 

 

一夏は新華の前世を含めて言っていたが、弾は今までの新華の行動パターンと性格、そして虚から聞ける学園での新華を考慮して返事をしていた。

友人2人のそんな会話を他所に新華はデュノア社長との談笑を楽しんでいた。

 

 

 

 

 

「私が学生の頃は、こうしてゆっくりさせてもらう事を許してもらえなかったからね。会社を継ぐ為にと毎日勉学することを2人で強要され、その度に励まし合って夢を語り合っていた」

「夢ですか。当時のあなたの夢とは?」

「2人でいつか、全部忘れて自由に世界を回ることさ。まだISが出る前の話だからね、社長業を時々休めば大丈夫だと幼心で夢見たものだ」

「…その夢は、その」

「1度だけ、新婚旅行として国外に出たことがある。だけどその時には既にあの子が産まれていたからね」

「アチャー」

「うん、だから当時の空気は最悪だったよ。私は、幼馴染を裏切ってしまったのだからね。それでも、いや、だからか、愛してくれる彼女を拒絶することなど出来なかった」

「でも同時に、シャルロットとその母も切り捨てることが出来なかった、と」

「ただの私のわがままさ。愛してくれる幼馴染への謝罪も出来ないまま突き放すことも出来ず、自分自身の血が流れる娘とその母を見捨てることも出来なかった。その結果が、君の怒りだよ」

「…今じゃ俺もあなたと同じですよ。誠実性に欠ける事ばかりだ」

 

 

 

 

 

………友人2人の小話などと比べ物にならない程に重い話をしていた。近くで演奏とダンスが行われているが、そこだけ空気が重かった。

一夏と弾が割り込めないような会話をしている2人は、女子会を終えたサヤカが時間を知らせることでその対話を終える。

 

 

 

 

 

「ご主人様、そろそろお時間です」

「あ、もうそんなか。すいませんデュノア社長、俺達これから生徒会主導のイベントの準備しないといけないので」

「む、そうか。時間を取らせてしまったかな?」

「いえ、いい時間でした。……今度は俺の方から、ちゃんと挨拶に行こうと思います」

「ああ、その時を楽しみにしていよう」

 

 

 

 

 

新華が席を立ち一夏と弾もつられて立った。女子達が近寄り、シャルロットが父親に反応する。

 

 

 

 

 

「………」

「…行ってらっしゃい」

「! …行ってきます!」

 

 

 

 

 

柔らかな表情でデュノア社長が、そしてシャルロットが返事を返して新華の横に立つ。

刀奈と簪がデュノア社長に一礼して新華の周りを囲む。専用機組がステージの裏側へ行くのを見送った彼は、妻達にメールを送りシャルロットが問題無く過ごせていることを伝えた。

 

 

 

 

 




やっぱりサブキャラの内容が濃くなっていく不思議! やー、書いてて楽しいです。
次回はコンテストになります。

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