最近興味があったので『フリーダムウォーズ』のプレイ動画(序盤)を見てたんです。最初の世界観説明の段階で
「ここのサーバー破壊しに行かなきゃ」
うん、AC3やり終えたばかりだったとはいえ、イレギュラーですわ。
---朝、青木家新華の自室。
オータムの襲撃から数日、IS学園に行かずソレスタルビーイングで活動していた。新華はサヤカの脳量子波に誘われ意識を覚醒させ目を開ける。
「おはようございますご主人様。そろそろ時間です」
「ああ、おはよう。ぅあー」
欠伸をしてベッドから体を起こそうとした新華は、自身の上に程よい暖かさと重さが毛布の下にあるのに気付いた。
仕事終わりに風呂も入らず倒れるように寝ていた筈だったが、見るといつの間にか掛かっていた毛布の下、自分の上で刀奈が丸くなって眠っていた。
「おろ、刀奈?」
「ご主人様が眠った後に様子を見に来まして。寝顔を堪能していらしたのですが、途中からご主人様の腕に抱かれてゆっくりと眠ってしまわれました」
「あー、ここ数日張り詰めていたもんなー。……もうちょっと寝かせておこうか」
「そうですね。まだ時間もありますし」
この数日間、新華を含めたソレスタルビーイング一行と刀奈達更識一行は協力しながらも慌しかった。
ソレスタルビーイングはオータムとアラクネの扱いについてアメリカと交渉をしたり、地元町と連絡を取り詳細説明や連絡事項にイベントの手続き、被害集計と残骸処理にデータ解析など、やるべき事が多すぎた。
更識一行も拘束したオータムの監視やIS学園の状況に暗部としての仕事、情報収集に追われ忙しく刀奈も頑張っていた。
「…そろそろ時間とか言ってなかったか?」
「こうしてゆっくりする時間も含めての計算なので何も問題はありません」
「そっか。忙しかったもんなー」
自分の腕の中で眠る青い頭を優しく抱き、彼女の鼓動と体温の暖かみを感じる。それだけで愛おしさを感じ、髪を指で梳いて抱く力を強める。
力を入れた事が原因なのか、刀奈が唸りもぞもぞと動く。そして目を覚まし寝起きのまま新華の顔を至近距離で見つめる。
「…おはよう…」
「おう、おはよう」
「んー」
ごく当たり前のように寝ぼけ眼で新華にキスすると、幸せそうにエヘヘとだらしなくニヤけ新華の胸に頭をぐりぐりとうずめ、クンカクンカと匂いを堪能する刀奈。
されるがままの新華も新華で、彼女を止めずにソファから起き上がりもせず彼女を抱き締め返す。女性特有の甘い香りを抱きながら、刀奈が甘えてくる現状に幸せを感じていた。
その態勢のままたっぷり10分程イチャつき、ついでに一戦ヤって完全に起きた刀奈と共に着替えて部屋の換気をする。
「んー……っ、好きな人の腕の中で起きるってやっぱり幸せね。疲れなんて吹き飛ぶわ」
「そうだな。それに心地良いし、満たされる感じがする」
「IS学園に戻ったら簪ちゃんとシャルロットちゃんにもシてあげなさいよ? きっと寂しがってるから、その分も、ね?」
「勿論。じゃ、さっさと今日の大仕事終わらせようか」
先にIS学園へと帰した簪とシャルロットにはソレスタルビーイングでの戦闘の報告と一夏達から話を聞く作業、トリィの修理を頼んである。逆に虚は更識としての仕事を優先し入れ替わりになるようにソレスタルビーイングに来ていた。
新華は自身の意識をプライベートのそれから仕事時に切り替え、刀奈と一緒に朝食を取って家を出る。管理棟に入り普段より緊張感のある館内を歩き、更識の構成員が待機している扉の前へと行く。構成員に軽く会釈をして中に入ると真っ暗な部屋に大量の画面が浮かんでおり、画面の前に何人かの人間が座っていた。
「お嬢様、青木君、おはようございます。お待ちしていました」
「お待たせ虚ちゃん。異常は?」
「何も。それと、そろそろアメリカ側からのお迎えが到着するのでお出迎えの方を」
「わかりました。予定通り奴の搬送と福音の再起動作業が完了次第、警戒態勢を解除します。MS隊はそれまで警戒を厳に。経営部もこのまま警戒を」
「「「「了解」」」」
新華の瞳が虹色に光り、現在誰も居ない院長室で画面が現れる。院長室のシステムは見ての通り簡易だが外宇宙航行母艦『ソレスタルビーイング』でリボンズが居た場所のそれと同じであり、イノベイターの力を持つ新華なら遠隔操作も可能である。
そのシステムを今居る監視カメラ制御兼管制室と繋げる事で最新の情報を正確に入手し、素早い状況判断でMS隊のサポートを行うのが『経営事務部』の役割の1つである。
今回は前回の襲撃から数日を挟んで再びMSによる厳重な警戒態勢が敷かれていた。アメリカとの交渉により、オータムはアメリカに護送され裁判を受ける事になっていた。
「…アメリカからの使者、門を通過しました」
「ではオータムの搬送準備を。それと研究所のエレベーターから用意した機材一式も引っ張り出すのもお願いします」
「了解」
「じゃ、出迎えてきますんで
「分かったわ」
監視カメラの一つに護送車と1台のトレーラーが敷地内を移動するのが写される。それを確認した新華は刀奈、虚と別れ管理棟の出入り口に向かう。
護送車とトレーラーが到着しMS隊の護衛が着く中、人が何人も出てくる。トレーラーに至ってはコンテナを開き、『
護送車から出てくるのは2人の女性。片方はアメリカIS国家代表『イーリス・コーリング』。もう片方は福音の元操縦者であり代表候補の『ナターシャ・ファイルス』。そしてトレーラーから現れるのはアメリカとイスラエルの、福音開発担当者達。
「よぉ、意外と早い再会になったな」
「久しいわね、『蒼天使』君?」
「ええ、お二人ともお久しぶりです。早速ですが先に時間の掛かりそうな福音から手を付けましょう」
「そうしてもらいたいけど……本当に大丈夫なの?」
「何も問題ありません。というか驚くと思いますよ」
ナターシャの不安と期待の混ざった声に答え、MS隊を興味津々に観察する開発担当者達から福音のコアを受け取り装甲の下へと近付く。
そして封印を解くと当たり前のようにコアを装甲にセットした。
「なっ、おい!? 何もしないのか!?」
「もうやる事は終わってる、いえ終わらせてありますから。後は彼女に機械の体に神経を通させるだけです」
コアが唸り装甲が反応していく。開発担当者たちがざわめくのを無視して新華は待った。
そして恐ろしい速度でコアと装甲のマッチングが行われ『銀の福音』が再び息を吹き返す。そして開発担当者達の想像を超えて、福音から1人のナターシャ似の銀髪少女が現れた。
『んー、久しぶりの外だー!』
「「「「「「はっ?」」」」」」
「どうだ調子は?」
『新品の装甲のお陰で最高ですよー! 後は実際に飛んでみるのが一番ですねー』
「じゃあ後は俺の出る必要は無いか。後は開発担当の人達に任せるとしよう」
アメリカsideの目が点になる中、サヤカも出てきて会話に入る。
「良かったですね。これでまた、空を飛べますね」
『はい! いつか一緒に、今度は戦闘無しで飛べればいいですね!』
「ふふ、その時を楽しみにしてますよ」
「というわけなんで、福音はもう大丈夫です。驚いたでしょう?」
そう言う新華の視界には、苦笑するように肩を竦めるMS達と、目を丸くしたアメリカsideの姿だった。
「……オイィ? 確かにイーリスから『友達になりたい』発言したって聞いたが、こんな光景は想像してなかったぞ?」
「…えっと、『
『そうですよ
「え、ええ。よろしく」
イーリスとナターシャの戸惑う声が彼らを復活させる切欠になったのか、開発担当者達は早速福音に取り付き機材を繋げ調査とデータ採りを開始した。
福音も彼らから呼ばれイーリスとナターシャの傍を離れる。
「……なんだコレ、なんだコレ」
「…結果オーライ、という奴なのかしら?」
「以前ファイルスさん経由で彼女にサヤカの羽を渡したことがありましたよね? それのお陰です。ちゃんと秘密にしていてくれたようで何よりですよ」
「そ、そう」
「それはそうと、ファイルスさんは福音の方に行かなくていいんですか? 調整とかあるでしょうに」
「…そうね。じゃあイーリス、そっちは頼んだわよ」
「お、おう」
ナターシャは福音の下に行き開発担当者達と言葉を交わしながら調整を始めた。それをイーリスは呆然としながら見るが、すぐにハッとなり新華に視線を移す。
「お前、一体何をしたんだ?」
「何も。強いて言えば何かをしたのは彼女、福音自身です」
「ISの自我が、か?」
「ええ。サヤカを見れば分かると思いますが成長したIS自我は人間とほぼ変わりません。細かい倫理や技術的な面は後で専門家に聞いてもらうとして、こちらはこちらでやる事を済ませましょう」
「いや、それ以前に聞かなきゃいけないことが大量にあると思うんだが…」
「そんなの時間が出来た時でいいでしょう? 以前お会いした時と同じで今回も非公式なんですから」
今回アメリカsideがここに居るのも、新華の言う通り非公式であった。もし今回のことが表沙汰になればアメリカは『ISを奪われた国』、『代表候補生に逃げられた無能』など世間から多くの批判を受け現政権は崩壊してしまう。それだけでなく『IS管理が出来ない国』としてレッテルを貼られ所有ISコアを減らされる可能性もあった。既にMSの量産を目標にしているとはいえ世界からの評価を落として良い事など無く、こうして非公式な取引が行われていた。
最も新華やシーマ、カナードといった一部の人間達から見れば、当の昔に墜ちているのだが。
「そりゃあ、そうだけどよ」
「やるべき事は早急かつ簡潔に、でしょう? それよか奴をさっさと引き取ってください。ここに奴が居たところで良い事どころか悪い事しか無いんですから」
「お、おう」
「というわけで、お願いします」
新華は近くに居た更識の構成員に頼む。すると構成員達は行動を開始しMS隊も配置を変える。
イーリスと共にチビチビと会話をしながら福音の作業を見ていると、管理棟から仰仰しい檻とそれを護衛するように周りを囲む構成員、ザクファントム隊が現れた。
「お、あれか? 例の
「ええ。アレに入ってます。一応言っておきますが、奪われていたISアラクネは奴の手にはありませんのであしからず」
「分かってる。……だが、1ついいか?」
「なんでしょう」
「なんでここにロシアの代表が居る?」
構成員を先導するように歩いてくるのは刀奈と虚。それを見たイーリスは露骨に眉を顰めた。
「そりゃ今回の当事者ですし協力者ですから。それ以前にIS学園入る前から、彼女はここに出入りしてますし」
「…聞いた通りか。こりゃ上が焦ってIS学園に突撃かましたのも無理ないか」
「こちらとしてはいい迷惑なんですがね。ほんと世界の警察()さんとやらは碌な事をしませんな」
「……うるせぇな。お前そんなねちっこい奴だったか?」
「彼女がちょいと世話になりましたし、そうでなくても色々とあるんでね。愚痴の1つや2つくらい出るってもんでさ」
「「………」」
お互いの視線をバチバチ言わせて睨み合う新華とイーリス。特に仲が悪い訳ではないが良い訳でもないうえ、新華は今になってワールドパージの時に刀奈がアメリカの工作部隊に負傷させられたことを思い出していたので険悪気味になっていた。
だがその空気を壊すのは、話題に上がった刀奈本人であった。
「なーに険悪な雰囲気になってるのよ」
「ん、いや。何でもないですよ」
「嘘おっしゃい。むこうから見ていた時にでも分かったわよ」
「でも大した内容じゃありませんし? まぁでもアメリカに言いたいことはあってもコーリングさんには特に言う事はありませんしね。素直に謝罪します。さーせんっした」
「……喧嘩売ってんのか?」
「別に? 秘匿艦で無断で領海侵犯していた挙句テロリストに母艦撃沈されて潜入しつつ船員の救助していた相手に戦闘ふっかけて邪魔したIS国家代表サンに思うところなどとてもとても」
「いい性格してんじゃねぇか…!」
「はいはい、新華君も挑発しないの」
殺伐とした2人の間に刀奈が割り込む。刀奈も色々と思うところはあれど今揉め事を起こすのは面倒だった。
その背景に檻が到着する。その中に全身を拘束されたオータムが入っており見世物の動物のようだった。現に口すら塞がれている彼女の金髪は痛み目は新華を射殺そうと言わんばかりにギラギラしていた。
「…おい、睨まれてんぞ。お前何やったんだ?」
「別に。ただプライドに差し障るだけの拷問と痛みを与えただけです」
「やってるじゃねえかよ。拷問って何したんだ」
「くすぐり地獄」
「ハァ?」
新華の言ったことにイマイチ理解出来なかったイーリスは変な声を出した。刀奈は肩を竦め苦笑する。
「普通の拷問だと普通に耐えかねませんし今までの復讐も出来ませんからね。ですから、誘導尋問してもらって情報を出せるだけ出した後に動けないところを」
「……それ本当に拷問か?」
「いやーくすぐりが効かない人も居ますけど、屈辱与えられるだけの生き地獄見せられたんで満足ですわ。気絶&失禁の2コンボ出た時は笑いましたけど」
「うへぇ…」
オータムからの殺意が高まる。イーリスは痛んだ金髪と合わせてその形相にライオンを思い浮かべたが、新華と刀奈は威嚇する子猫程度の認識だった。
オータムなんぞより人としての成熟度も、単体での戦闘技能も、覚悟も、そして気高さも生き様も睦美が上回っていただけである。彼女と比べる事すらおこがましい。
「後はそうですねぇ…。戦闘中に腰の骨を粉砕したまま放置して下半身不随にさせたり、抵抗すら出来ないように両肩を外したまま放置したり、あまりに五月蝿いから喉を殴打して潰したりとか、そのくらいでしょうか」
「…流石にやりすぎじゃねぇか?」
「何がです?」
流石の内容にイーリスはドン引きしていた。だが新華は
「世紀のテロリスト相手にやりすぎもなにもありませんよ。今まで散々痛い目見せられてきました憂さ晴らしも兼ねてます。それとも、捕虜の扱いがどうこうとか言うおつもりで?」
「いや、そうじゃなくてだな…」
「ま、どちらにしろ引き渡した後はそちらで有効活用するでしょうしどうでもいいですけどね。ま、忙しくなるでしょうけど頑張ってください」
「………」
新華が正気であり目が本気であることを悟り、末恐ろしそうな目で新華を見るイーリス。新華はオータムを1度睨み、次に興味を無くして刀奈とアイコンタクトを取った。
「じゃあ後は福音待ちですね。皆さんの作業が終わるまで待ってましょうか」
「そうね。そういえば新華君、ハロちゃん達は出さないの?」
「Oはともかく、αとFはこの間の戦闘でユニットが大破しているので家に置いてあります。Oは今出すと福音の方に行って邪魔になりそうなんで出しません」
「新しく作らないの?」
「ちょっと改良したいんで、しばらく出さないでしょうね。簪に見せて意見も聞きたいですし、今は別のもの入れる予定ですし」
2人が話している後ろでサヤカが待機している光景を見たイーリスは、2人の距離がなんとなく以前より近い気がしていた。雰囲気も一気に柔らかいものになり、笑顔も浮かんでいた。
「(そういやIS学園に居る奴からの報告が確かなら、コイツら…)」
「その時は私にも教えて頂戴?」
「勿論ですよ。まぁその前に生徒会の仕事がてんこ盛りですけどね」
「この数日、虚ちゃんを呼んだものだから溜まってるでしょうね」
「一夏の件もありますし、しばらくは授業終わりに生徒会室直行ですね」
「(…末恐ろしい関係だな)」
自由国籍が存在する現在、一夫多妻や多夫一妻の前例は意外と存在していた。だが新華達のように全員がそれなりの戦闘能力持ちでコネまでしっかりしているなどという頭おかしい面子は流石に例が無く、イーリスは普通に引いた。
その後、時間が掛かるからと新華がイーリスに見える分のMSの解説を行うなど雑談をして時間を潰した。そして2時間後、福音が装甲とのマッチングを完全に終え異常が無いどころか以前より強固になっているセキュリティなど開発担当者達が新華に問い詰めたくなるような結果を出し、ナターシャが福音との付き合いに悩むという新たな問題を出してアメリカsideは撤収の準備をする。
拘束されなくとも動けないオータムを檻から護送車へと移し福音の開発担当者達も撤収作業を完了させ、皆完成度の高いMS達に興味津々になっていた。
「あ、作業終わりましたか。では、お帰りください」
「随分ストレートに言うなお前」
「やること沢山あってあなた方だけに時間取る訳にはいかないんですよ。そちらに都合があるように、こちらだって都合がありますから」
「それにそちらは『銀の福音』が復帰したとはいえ重要人物の護送をしないといけない。だから早めに帰る必要もあるのでは?」
「いやま、そうだが、そうなんだが…」
「というかさっさとIS学園行きたいんですよ。簪とシャルロットも居ればもっと温いんですよ。何が悲しくて糞ビッチに時間割かなきゃならんのです」
釈然としないものを胸に抱きイーリスは頭を掻く。一方で福音を連れたナターシャが新華に詰め寄る。
「……ちょっといいかしら?」
「なんでしょう」
「以前会った時にそこの大きくなったサヤカちゃんは、
「ええ」
「……凍結処理されていたはずのこの子が、こんなに感情豊かになるほどの情報をどうやって手に入れていたというの? あなた、何か知っているでしょう」
「ええ、知っています。ですが言うわけ無いでしょう。何真面目に真正面から聞いてきてるんです? 本人から聞いてください」
「その本人が言おうとしないからきいてるんでしょう」
「自分でお考えください。用件はそれだけですか?」
ナターシャが問い詰めようとするが新華はバッサリ切り捨てた。後ろでサヤカと刀奈が言葉を交わす。
「サヤカちゃん、新華君があんなに荒んでるのって疲れがあるから?」
「いえ、ただ単に簪さんとシャルロットさんと離れているからでしょうね」
「私が居るのに?」
「あなたが居なかったらもっと苛立っているでしょう」
「まぁ確かに? 新華君のスキンシップがここ最近激しかったけど」
「でも、嫌じゃないのでしょう?」
「当たり前じゃない♪」
両極端な空気が混在する場に、福音がボソリと呟く。
「なぁにこれぇ」
「ほら、こんなことを言うような子じゃなかったわ。一体何をしたというの…!?」
「……俺
「…なあ、気のせいならいいんだが、ISの自我がはっきり証明されたのってこれで2件目か? ヤバくね?」
「アメリカも大変ですね、お疲れ様です」
福音のせいか、サヤカが産まれたばかりの時の新華のように詰め寄るナターシャに冷静に現状を理解したイーリス。オータムを放置していることを忘れての会話を刀奈とサヤカは苦笑して眺めていた。
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---翌日早朝、始発電車内。
後処理を最低限終えて経営部に後を任せ、久方ぶりにIS学園へと赴く新華、刀奈、虚の生徒会頭脳陣。秋に入り遅くなった日の出の光が電車の中を照らす。
そこには座席の手摺りに寄り掛かり眠る虚と、新華に寄り添うようにもたれ掛かりしっかりと手を握って眠る刀奈と、握り返し太陽を眺めながら反対側の手で赤い宝石のようなものを転がす新華が居た。
「………」
『---ご主人様、眠らないのですか?』
「ん、ああ。ちょっとな」
新華の手にあるものはIS『アラクネ』のコア。オータムと同時に運ぶと同時に強奪される恐れがあるということでIS学園の鈴のルームメイト、ティナ・ハミルトン経由でアメリカに運ばれ再び代表候補生の中から新たな操縦者を選別される運びになっていた。
サヤカは乗車賃が掛からないよう待機状態で新華と刀奈の間に挟まれていた。脳量子波と口答での会話も電車内の人間が新華達のみなので誰も聞く者は居なかった。
「……これで大人しくアレが終わってくれれば楽なんだけどなぁ」
『---期待せずに待ちましょう』
「だよなぁ。これで逆恨みで復讐とか言ったらアレだけど。まぁそもそも---」
新華の瞳が虹色に輝く。そして意識は月へ。
『---逃げたら殺すけど』
ヴェーダに接続し組んだプログラムを見る。オータムに対して下半身不随や肩外しをやらかした新華だが、くすぐり地獄を行う以前にオータムの首に爆弾を仕込んでいた。『OOP』や『OOF』にてマレーネ、フォンの首に付けられていたソレであった。
首肌に密着した状態であり動脈の律動を感知するようになっており、外そうとするかヴェーダで爆破信号を送るかすると、オータムの動脈を巻き込んで自爆する。もし亡国機業の手で脱出された場合は信号を、外そうとすればプログラムが起動する。
死が救いとなるのは苦しみ続けた者、あるいは理不尽な苦しみを味わう者である。逆に生が苦でなく楽な者や死に恐怖する者にとって立派な罰となる。
オータムは後者で、死ぬ覚悟が無い屑であった。
「問題は誘導尋問で分かったオータムとスコールの関係だ。ビッチじゃなくてガチレズだってことは逆恨みして襲ってくるやもしれん」
『---面倒ですね』
「ああ。しかも俺じゃなく刀奈達を狙うだろうな。手を出す前に嬲り殺すけど。……ハロやトリィみたいなのを作るか」
刀奈の手を握り返し頭を傾ける。
「……暖かいな」
『---…はい』
「………着いたら起こしてくれ」
『---はい』
刀奈の暖かみを感じながら目を閉じる。日光から伝わる紫外線の、秋には丁度良い暖かさの中で眠る。
電車の中の広告の一部は既にハロウィンに染まっており、新華達の向かうIS学園もイベントの開催が近付いていた。
この作品でのオータムの出番はあと1回です(何
最近HGブレイヴ購入して製作したのですが、PCパーツ無いのに驚きました。なのに完全変形という日本の変態度よ…。
まぁもう1機買ってきて線の乙女作ろうと考えてる自分が言えた義理じゃないでしょうが、
次回は世界の黒い部分を書いてオータム終了させるか、もうハロウィンイベントでいちゃいちゃ書くのか迷ってます。
追記:マクロスで最新作計画始動しているようですね! ⊿らしいですよ! ……黒い機体だけフォールド断層から帰ってこなさそうなタイトルですな。