IS~疾走する思春期の転生者~   作:大2病ガノタ

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134話。
エロに入るにはもう少しの時間を。あ、キンクリ氏、スタンバッててください。

原作で新たに生まれた伏線をぶっ潰して新たに伏線を上書きしていくスタイル。


秘めた狂気と欲望

 

 

 

 

 

撃った直後に違和感を覚えた新華はトリガーから手を離し、P・V・Fを解除した後Sビット達を回収してスコールから離れた。

煙が晴れる。そこに居たのは

 

 

 

 

 

「…やはりか」

「っ、そのセリフだと、全部知ってるように取るわよ」

「ご自由に」

 

 

 

 

 

対構造物徹甲弾によって体の一部が文字通り(・・・・)蜂の巣になり、穴からスパークが発生している体で息を荒くしたスコールだった。

 

 

 

 

 

「完全義体、サイボーグか。確かに人間でなければ(・・・・・・・)あの熱線の熱量に耐えられんか」

「私は人間よ」

「言ってろ。少なくとも俺は貴様を人間だとは認めん。例え死んでもだ」

 

 

 

 

 

そう言う新華の拳は固く握られ、衝動のままにP・V・Fを再展開していた。フェイスガードの下で獰猛な笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

「青木 新華。あなたの持論など誰も聞いていないわ。でも、私はどういう存在か理解したかしら」

「ああ、これで思う存分貴様を屠る事に躊躇いは無いって事がな」

「……あなたは分からないのかしら。私が1度死んでまでこの体になりこうして生きているのか」

「だったらどうする?」

「…どうしようもない愚か者ね」

「勝手にそう思っていろ無知。少なくとも俺はとっくにお前らの事をそういう目で見ているからな」

 

 

 

 

 

対構造物徹甲弾を3つ装填し銃口を改めてスコールに狙いを定める。

 

 

 

 

 

「死んでまで『監視衛星そのもの』になりたいのかね。しかしこれで合点がいったさ。お前、殺したり捕縛した時点で全衛星が落ちるだろ」

「…さあ、どうかしら」

「とぼけるなよ。こう見えて俺は何度も監視衛星を『使った』事がある。その都度改竄された形跡があったが……道理で改竄相手を逆クラック出来ない訳だ。精神という最強で最弱のセキュリティを持っていたんだからな」

「………」

「図星だろ」

 

 

 

 

 

衛星軌道上に浮かぶ監視衛星郡。それはIS委員会が発足された時に『ISの監視』という名目で打ち上げられた『IS委員会幹部の私物』である。

『福音事件』で役立ったが、『亡国企業』がIS学園に『ゴーレム』を送り込めたり『ソレスタルビーイング』を襲撃後逃走した2機を見逃していたり、『学園祭』でMの行方を見失っていたりとお察しである。

 

 

 

 

 

「確かにそれなら『亡国企業』は楽に堂々と移動したり襲撃出来るもんな。まぁ好き勝手出来るのはそれだけじゃないだろうが、デカイ要素の1つではあろうさ」

「……随分と饒舌なのね。聞いた話だとISに乗っている間は無口だと聞いたけど」

「今はテンションがアッパーでね。ああ、『人』に敵対する『人モドキ』を殺すのは15年振りだな…!」

「っ!?」

 

 

 

 

 

スコールは新華が発する異様な空気に息を飲んだ。そして目を見張った。先程とはP・V・Fの形状が微妙に違う事、蒼色の装甲に赤が混じり始め黒ずみが出来ていた事に。

 

 

 

 

 

「そ、それは……あ、あなた、一体…」

「一々んなもん教えてやるかよ。俺はただ『戦争の引き金になりうる』『人ならざるモノ』をコロしてヘイワを維持すルだけさ。たダ、それだケだ」

「!?」

「アア、そうさ。戦争なんざ起こさせねぇ。俺ハッ!」

 

 

 

 

 

口調がおかしくなった新華に恐怖を覚えたスコールは、次いで頭部装甲を邪魔そうに、捨てるように外した新華の顔に絶句する。

 

 

 

 

 

「テメェら『人かラ生まれた敵』をゼッテーに殲滅スル! テメェらを生ミ出した存在諸共皆殺シニしてやらァ! ソウすりゃ世界モ綺麗になるダロウよ!」

「!? く、狂ってる…」

「テメェがソレを言うノか! ハハハハッ! コりゃア傑作だ! 人ならざるモノが人ヲ語ルか! アッハハハハハハハッ! ----いい加減にしろよ」

「っ」

 

 

 

 

 

狂笑を突然止め表情の無い状態で殺意MAXのまま凄みを効かせる。自分ですら想像出来ない深淵を前にしてスコールは怯える以前に疑問を持った。いつから目の前の化け物はこうして狂っていたのかと。

 

 

 

 

 

「1度死んだ時点でお前は『スコール・ミューゼル』の皮被ったコピーだ。それも『スコール・ミューゼル』以外にゃなれねぇ哀れなコピーだ。『スコール・ミューゼルの残滓』と言っても過言じゃねぇ。そんな狂った存在が人を語る? 笑わせるな」

「っ」

「人間を語る事が出来るのは人間本人だけだ。テメェのような『機械』が語っていいものじゃねぇんだよ」

「……」

「それでも『人』を(かた)り敵になるって言うんなら」

 

 

 

 

 

ジャキッとP・V・Fを構え直し

 

 

 

 

 

「俺が『1人の人間(パラべラム)』として、この『P・V・F(サイコバリスティック・ファイアアームズ)』で殺してやる。『プロメテウスの炎(プロメテウス・ファイア)』も必要無い、俺自身の手でな」

「………化物(バケモノ)め」

化物(ニンゲン)で結構」

 

 

 

 

 

新華はそう言ってトリガーを引こうとした。だが新華とスコールの間をレーザーが通った。

 

 

 

 

 

「「っ!」」

『あら、困りますわ。まだスコール様には死んでもらっては』

 

 

 

 

 

レーザーの発射元を辿ると、『サイレント・ゼルフィス』が居た。だがセリフと声色がM(マドカ)とは違った。装甲越しに見える髪は黒ではなく、驚愕のピンクだった。

 

 

 

 

 

「あなた、どうして…」

『M様が新機体を受領するとの事でして、今回からわたくしめがこの『サイレント・ゼルフィス』に搭乗することになりました。そしてスコール様、オータム様からの要請でわたくしはここに居ります』

「オータムが…?」

『はい』

 

 

 

 

 

『サイレント・ゼルフィス』が『ゴールデン・ドーン』に近付いていく。それを新華はP・V・Fを掃射する事で阻止しようとするが

 

 

 

 

 

『あらあら』

「なっ」

 

 

 

 

 

『サイレント・ゼルフィス』は絶対防御を発動させた。だが操縦者は困った顔をするだけで止まらない。それどころか加速してスコールの元へとたどり着いてしまった。

 

 

 

 

 

「あなた、まだそんな…」

「いいではありませんか。それよりも、早く戻りましょう。ふふっ、あのオータム様の慌てようを早く見せてあげたいですわぁ」

「…そんな事をさせると思うか」

「その通りよ。スコールはともかく、オルコットちゃんのためにもその機体を見逃すわけにはいかないわ」

「アタシとしても黙っちゃいらんねぇ。空母の敵として落とさせてもらうぜ」

 

 

 

 

 

『サイレント・ゼルフィス』の操縦者だけが笑う中、刀奈とイーリスが新華と並び武器を構える。しかし『サイレント・ゼルフィス』の操縦者は表情を変えずウフフと笑うだけだった。

 

 

 

 

 

「テメェ、何がおかしい」

「いえ、ここで戦うのはお互いに為にならないと思いまして。我々は言うまでもありませんが、これ以上騒ぎになって困るのはあなた方でしょう?」

「何を…」

「………自衛隊か」

「「っ!」」

「ふふ、そういうことです。それにわたくし、今日は青木 新華様にご挨拶に来ただけですわ」

「俺に…?」

 

 

 

 

 

彼女の様付けに寒気を感じ、新華は剥き出しの表情を歪めた。

 

 

 

 

 

「はい、この世界に変革をもたらした3人。その最後のクローンとして」

「3人……まさか」

「はい。わたくしは『篠ノ之 束』のクローン、『ラクス・クライン』と申します。以後、お見知りおきを」

「「!!」」

「マジかよ…」

 

 

 

 

 

刀奈とイーリスは声を上げられないくらいに驚いた。刀奈は『このタイミングで』という意味で、イーリスは『何がどうなってやがる』と。

そして新華は

 

 

 

 

 

「(ここにきてう詐欺のクローンが出たか。それも『ラクス・クライン』だとは…)」

 

 

 

 

 

混乱の極地に居た。そんな3人を見て『ラクス・クライン』は笑みを浮かべるだけだった。

 

 

 

 

 

「今日はこのくらいでお暇させていただきますわ」

「っ、させるかっ!」

「いいえ、さようならですわ」

 

 

 

 

 

ラクスは赤いGN粒子が混ざった煙幕を使いセンサーを潰し視界を奪った。そして動いた新華は感覚のままP・V・Fを掃射する。

しかし手応えは無く、レーザーによる返事を受け防ぐ。煙幕が晴れた時にはラクスもスコールの姿も無かった。

 

 

 

 

 

「……この俺が、逃げられただと…サヤカ」

『---駄目です。完全に見失いました』

「マジか…」

「し、新華君…。今のは…」

「訳わかんねぇ…。何がどうなってやがんだ…」

「………切り替えていきましょう。まずはこの場を離れます」

「そ、そうね」

「賛成だ。頭ン中整理しないといけねぇしな…」

 

 

 

 

 

戸惑う2人を連れて新華は移動した。だが海面に潜水艦が1隻浮上してきた事でその行動は変わった。

 

 

 

 

 

「あ、そういや来てたんだっけか…」

「あれって、ロサンゼルス級原子力潜水艦!? どうしてこんなところに」

「あー、そっか。流石にマズイからなぁ。しゃーねぇ、おい更識 楯無に『蒼天使』」

 

 

 

 

 

 

イーリスが新華と刀奈を呼び潜水艦を指す。

 

 

 

 

 

「アタシはここであの艦に近くの港まで送ってもらう事にするわ。あっちに空母の連中も居るしな」

「あの船…? 大丈夫なのかしら」

「ああ、大丈夫ですよ。彼らは海の『運び屋』ですから」

「運び屋……まさか、『シーマ艦隊』?」

「正解です」

 

 

 

 

 

---運び屋、『シーマ艦隊』。元アメリカ国籍ロサンゼルス級原子力潜水艦『リリーマルレーン』を筆頭とした艦隊で、バージニア級潜水艦4隻を所有する大きな組織である。構成員は『シーマ・ガラハウ元中佐』を筆頭にした荒くれ者達であり、彼女を中心として纏められているこの艦隊は表に出せないようなブツを運ぶ裏の存在である。

元々はアメリカの荒くれ者を集めた海兵隊で、その中でも最恐かつカリスマ性の高い『シーマ・ガハラウ』という女性が指揮していた。しかしISが現れ女尊男卑になり大量の男性軍人がリストラされる中、彼女は女性でありながら軍上層部や政府に対し批判的であり女尊男卑を良く思っていなかった。

そんな中で彼女の海兵隊の男達が軒並みリストラの憂き目に遭う。既にその時には『海兵隊』という『家族』同然だった彼女らはこれに抗議。何故国を守る軍人がいきなり大したミスも起こしていないのにリストラされなければいけないのか。その時の返事が新米女性大佐の嘲笑った視線と『ISの世界に男性軍人など不要』という狂った理由だった。

それに激怒し新米大佐をぶん殴った彼女は、女尊男卑に染まりきった女性が大佐に成れてしまうアメリカを見限り『海兵隊』全員で配属されていた原子力潜水艦を全て強奪し脱走。

アメリカはこれを捕まえようと躍起になったが、『シーマ艦隊』は主に海の汚れ仕事を押し付けられていた部隊だったので政府に大きな打撃を与えられる程の情報を持っていた。それを楯に逃げ切り日本付近へと移動。さあどうしようかという所で新華が接触し、現在は『運び屋』として世界各国を股に掛けて物を運びまくっていた。

 

 

 

 

 

「丁度空母の乗組員が自爆に巻き込まれる前にあの艦隊に保護されたからな。このまま日本に行けば国際問題待った無し。じゃあアメリカに通信出来る近くの港に行った方が良いだろ?」

「まぁ、確かに。ですが最大乗員数がもう一杯一杯だと思いますけど」

「こちとら秘匿艦に乗っていたんだぜ? 多少の事くらい我慢するに決まってんだろ。それに『海兵隊』の話は軍内部じゃかなり有名で暗黙の了解になってんだよ。ある意味伝説だな」

「はぁ」

「その艦隊を纏める『シーマ・ガハラウ』って元中佐に会えるんだ。ちょっとワクワクすんだろ」

「…元気ですねぇ」

「んじゃ、そういうこった。アタシはここでお別れだ。来年の『モンドグロッソ』で会おうぜ!」

 

 

 

 

 

そう言ってイーリスは『リリーマルレーン』に入り、『リリーマルレーン』は潜水していき見えなくなった。

 

 

 

 

 

「…帰りましょうか」

「………Jud.」

 

 

 

 

 

色々と疲れた2人が出撃した臨海公園に戻ると、予想外な事に簪と虚と本音の生徒会メンバーが揃っていた。

 

 

 

 

「お帰りなさいませ、お嬢様、新華君」

「ただいま皆」

「おろ、皆さんお揃いですか」

「おかえりあおきー、かいちょ~」

「おかえりなさい…」

 

 

 

 

 

簪達の姿を見て、何故かホッした2人。IS学園の制服のまま皆と合流する。

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん、新華君、大丈夫だった…?」

「結構危ない橋を渡ったわ。でも収穫はあったし、無駄じゃなかったわね」

「むしろあり過ぎて何が何だか…。とりあえず、疲れた」

「お疲れ様でした。今回の報酬はまた後日に」

「Jud. じゃあこれでお仕事は終わりですね」

「はい」

「おつかれさま~」

 

 

 

 

 

新華が体を伸ばし態度が柔らかくなる。だがその顔には疲労の色が見て取れた。それと同時に夜の冷たい風が吹き、海水で濡れた制服と一緒に体を冷やす。

 

 

 

 

 

「さぶっ。ねえ誰かタオル持ってない?」

「持ってきました。どうぞ」

「ありがとう虚ちゃん」

「ほらあおきーも、どうぞ~」

「ありがとさん。じゃ、そこのトイレで着替えてきますんで」

「あ、私も着替えないと」

 

 

 

 

 

新華と刀奈は出撃前に入ったトイレに入って着替えて出る。刀奈は冷えたのか肩掛けを再び付け、新華は刀奈にシャツを貸したままなので半袖だった。だが疲れていたのでそれを指摘はしなかった。

 

 

 

 

 

「今日はもう帰りましょう。報告書書いたりしないといけないし、何より疲れました…」

「そうね…。でも折角のデートがこんな形で終わるなんて、納得いかないわ。仕方ないけど」

「…ご愁傷様です」

「『楯無』である以上仕方ないんだけどねー。でも今日は疲れたし新華君のカッコイイ所も間近で見れたし、満足しておきましょう」

「じゃあみんなで帰ろ~帰ろ~!」

「帰ってみんなでご飯にしようよ…」

「賛成」

 

 

 

 

 

5人で纏まって歩きIS学園に戻っていった。寮に戻り私服のまま食事を取って早めに1050室へと戻る新華と刀奈。

 

 

 

 

 

「ふぃー……つっかれた。さっさと報告書書いて寝るか」

「………」

「さて…ん?」

「………」ギュッ

「…刀奈?」

 

 

 

 

 

刀奈が新華に後ろから無言で抱きついた。新華が声を掛けるが返事は無く、震えていた。

 

 

 

 

 

「あの、どうし---」

「…恐かった」

「?」

「あの時スコールと話していた新華君が、凄く恐かった」

「……ああ」

 

 

 

 

 

新華は刀奈が自分の狂気を見て怯えていると思った。無理も無いと思う。自分で壊れている自覚もあったし狂気も殺意も抑えられなかった。否、抑えるつもりも(・・・・・・・)無かった(・・・・)

だからその気に当てられたのだと思った。だがそれは勘違いだった。

 

 

 

 

 

「でも」

「お?」

「それ以上に強くて格好良くて、頼もしかった」

「は?」

 

 

 

 

 

刀奈から出てきたのは新華が予測していたのとは180°逆の言葉だった。拒絶とか否定とかそういった言葉が出てくるかと思えば惚気。流石の新華もこの展開は読んでいなかった。

そして背筋に悪寒が走り冷や汗を流す。刀奈が抱きついてその豊満な胸を押し付けてきていた。

 

 

 

 

 

「ねぇ新華君」

「ナ、ナンデゴザイマショウカ」

「新華君は私が離れていくと思ったでしょう」

「は、はい」

「そんな訳無いでしょ。ああいった狂気があるのは知っているし、向けられるのは敵にだけ。それも、あの時私の為に怒ってくれたでしょ」

「………敵を倒しただけですよ」

「嘘。見れば分かるわよ」

 

 

 

 

 

新華の頭は『敵を倒しただけ』と言っていたが心は『傷つけさせない』と言っていた。表面上は取り繕えても恋する乙女にはお見通しだった。

 

 

 

 

 

「私の為に怒ってくれた。それが凄く嬉しかった。もっと好きになった」

「………」

「新華君は、私の事嫌い?」

「…そんなわけ無い」

「じゃあ、好き?」

「………」

 

 

 

 

 

新華は謎の冷や汗を流しながら沈黙した。

 

 

 

 

 

「…答えてくれないの?」

「……答えたら不誠実だろ。俺はまだ、選べない」

「だと思った。選択肢は私と簪ちゃんとデュノアちゃん?」

「………そうだよ」

 

 

 

 

 

新華にとってこの3人は特別である。自身の過去を受け入れてくれて尚好いてくれている。自分には勿体無いくらいだと思いながら、同時に選択出来ない自分を情けなく感じていた。

……ちなみに映画部の性関係を新華は殆ど知らない。知っているのは一兎と志甫がいい感じだったのと、一兎が学園祭の時に襲撃してきた乾燥者『四神(しかみ) 美玖(みく)』と何かしらの確執があった事、睦美が『那須 一子』と恋人関係にあった事、そして尾褄と勇樹が何やら怪しかったくらいである。

だからか、貞操感は硬い方だ。特に孤児院時代を経て子供達と触れ合い宮田 彩香の下で教師紛いの事をしていたが故、余計に現在の自分の情けなさが際立ち申し訳なく思っていた。

 

 

 

 

 

「確かに刀奈の事も好きだよ。でも、それと同じくらい簪もシャルロットも好きになっちまってるんだ。時間掛けてちゃんと答えは出す」

「時間を掛けて、ね……。ねえ、新華君」

「ん?」

「あなたが答えを出す間、私はこの体の疼きをどうすればいいの?」

「え…」

 

 

 

 

 

刀奈が背中から新華の右側に移動する。新華はそれを視線で追い

 

 

 

 

 

「んむっ」

「!?」

 

 

 

 

 

刀奈にキスをされた。それもディープな方の。

腕を首に回され舌を入れられる。ピチャピチャと口から卑猥な音が出るのを構わず刀奈は新華の唇を貪った。

 

 

 

 

 

「んんっ、んちゅ、れろっ…」

「んんっ!?」

 

 

 

 

 

一心不乱に貪る刀奈が体重を掛けて新華を押し出し、新華を挟んだ直線上にあったベットに押し倒す。新華の上に乗る形となった刀奈は唾液の糸を引いて新華の唇から離れた。

 

 

 

 

 

「新華くぅん…」

「はあ、はあっ、か、刀奈…?」

 

 

 

 

 

新華が見上げると、顔を赤く染め瞳は潤み、息が荒く蕩けた表情で発情している刀奈が居た。

新華も予想外とはいえ求められた事で鼓動が早くなり息が荒くなる。顔が熱いのが自分でも分かり、自分の男としての性が急速に起き上がるのを感じた。

 

 

 

 

 

「性欲を我慢しているのは、男性だけじゃないの…。新華君が我慢していたように、私だって我慢してたんだから…」

「お、お前…」

「…ずっと新華君とこうしたかった。全部忘れて、新華君と一緒になれるのをずっと想像してきた…」

 

 

 

 

 

刀奈は新華の両手を自分の両手で握る。新華は目を逸らせずゴクリを唾を飲む。

 

 

 

 

 

「命の危機に必ず駆けつけてくれて、いつだって守ってくれた背中を、見てるだけじゃなくて、この手で抱きしめたかった。欲しかった。ずっと、ずっと……」

「………」

「さっきだって、死んじゃうって思ったのに、私じゃ無理だったのに、全部何とかしてくれた。狂気? だからどうしたっていうの。その程度で私の恋が枯れると思ったら大間違いよ」

「……そっか」

 

 

 

 

 

その言葉に安堵すると同時に、目の前の刀奈の方が狂ってるんじゃないかと密かに思った新華。だが正直、悪くないと心のどこかで思ったのも事実だった。

現在の刀奈は『死を意識したことで子孫を残そうとする本能が働いている』状態であった。

 

 

 

 

 

「…そうやって笑うの、反則。本当に我慢出来なくなっちゃうじゃない」

「俺だって色々我慢しているんだ。今はまだ我慢出来るが、お前みたいな高嶺の花にそう何度もせがまれたら、俺だってヤりたくなる」

「シちゃいましょうよ。今、2人だけなのよ」

「だから、俺が答えを出せなきゃ駄目なんだって、言ってるだろうがっ」

「きゃっ!」

 

 

 

 

 

足を絡めてくる刀奈に、押し倒された形を横に回転する事で逆転させた。今度は新華が押し倒す形になり、刀奈は先程までの威勢を無くしてしまった。彼女は今、自身の激しく暴れる心臓の音と目の前にある想い人の顔しか頭に無かった。

 

 

 

 

 

「俺個人としては今すぐにでもお前をぐちゃぐちゃに犯してやりたくらいなんだよ。でも、それをやったらただのクズだろうが。どこぞのスクイズになるだろうが。あんな風になりたくねぇし、お前らをあんな風にさせたくねぇんだよ俺は」

「新華君、私…」

「だから、ごめん」

 

 

 

 

 

新華はそのまま何もせずに刀奈の上から退き、私服のまま部屋を出ようとした。その背中に刀奈が質問を投げる。

 

 

 

 

 

「新華君は、私がどこかの誰かと結ばれてもいいの?」

「………」

 

 

 

 

 

ドアノブに手を掛けようとしていた手を止め、刀奈に振り返る。

 

 

 

 

 

「そのセリフは反則だろうが」

「あ……」

 

 

 

 

 

新華は刀奈の所に戻り、先程のとは違い軽くキスをして今度こそ外に出て行った。

刀奈はその場で唇に触れ、妖しく笑みを作った。

 

 

 

 

 

「新華君の方が、反則よ…」

 

 

 

 

 

部屋を出た新華は、夜道を歩いて前にも来た池に来た。そして

 

 

 

 

 

「………あああああああああああ」

 

 

 

 

 

…頭を掻き毟って悶えた。

しばらく悶えた後に池の水で顔を冷まし、ため息をつく。

 

 

 

 

 

「俺はいつからあんなキザ野郎になったんだ…」

「前からじゃないですか?」

 

 

 

 

 

サヤカの容赦ない追撃にガクッとなる。思い出すのは最後のキス。新華が自分からしたキスはあれが初めてだった。

 

 

 

 

 

「はぁー………これから、どうしよう」

 

 

 

 

 

自分の内にある性欲(ケモノ)を宥めつつ、頭を抱えていた。あんな事をして部屋に戻れる程、新華は図太くも鈍感でも無かった。

 

 

 

 

 

「…しゃーない、一夏に泊めてもらうか。背に腹は変えられん」

「そうですね」

 

 

 

 

 

一夏は1人部屋で寝泊りしている筈だからと、改めて寮に足を向けた。ハロを出すのを忘れるくらいに今の新華には余裕が無かった。

 

 

 

 

 




スコールの監視衛星云々は原作で刀奈が『この場から逃がすことになる』を元に自分で考えました。ちなみにヴェーダで無効化出来ます。

そして束のクローン登場。何故ラクスなのか? ここのラクスも大概狂ってて、セシリアと真に共通の因縁があるんです。
そしてラクスはストフリっぽい機体。真はデスティニー。後は、分かるな?

シーマ艦隊を出せて満足です。海限定の『BLACK LAGOON』勢だと考えて頂ければ。
ちなみに新米大佐というのは士官学校卒のクズですが、シーマ様は叩き上げだったりします。

そしてエロス。新華と刀奈はお互い内面が大人に近いので、どうしても簪とシャルロットよりもエロが入ります。

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