IS~疾走する思春期の転生者~   作:大2病ガノタ

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126話。

大学での一コマ
ガノタ:ガ いつものメンバー:Ω

ガ<ザフィーラ=青+盾+獣+拳≒青+シールド+ライガー+ストライクレーザークロー=シールドライガー

Ω<お、おう

ガ<なのは=魔王+SLB≒Tレックス+荷電粒子砲=ジェノザウラー

ガ<すなわち『A's』の真の主人公はザッフィーでライバルはなのはさんだったんだよ!

ΩΩΩ<な、なんだってー!?(棒

Ω<でもどっちかってーとジェノブレイカーじゃね? SLB的に

ガ<なん…だと…


真・デート シャルロット編

 

 

 

 

 

 

火曜日放課後、IS学園1年生寮入口。

 

 

 

 

 

「お待たせ」

「ああ。さて、行くか」

「うん」

 

 

 

 

 

新華とシャルロットは互いに私服姿で歩き出す。

新華の服装は以前デュノア社に行った時のもの。バイザー付き。

シャルロットは黒い半袖にオレンジのスカート。

だがポーカーフェイスの下で思いっきり緊張している新華は、服装を褒めるだけの余裕が無い。なんと(展開的に)勿体無い。

 

 

 

 

 

「そういえば新華、ハロとサヤカちゃんはどうしたの?」

「ハロ達なら本音さんに預けてある。サヤカは…」

「ここに居ますよ」

「うわっ!」

 

 

 

 

 

いつも新華の傍に控えているサヤカの姿が無い事に疑問を持ったシャルロットだったが、すかさず問に答えるように目の前に現れたサヤカに思わず声を上げる。

 

 

 

 

 

「流石に今日は空気を読んで大人しくしてますよ。福音ちゃんとお話してゆっくりしてます」

「ああ、休暇だと思って楽にしていてくれ」

「はい。ですが何かあればすぐに戻ってくる(・・・・・)のでいつでも呼んでください。それまでにシドや∀といった機体の確認もしておきます」

「ああ、任せた。ただしシドの方はシステムに喰われないよう注意すること。害になるなら逆に喰え。あと福音にあれ(・・)の提案もしておいてくれ」

「了解しました。では、楽しんできてください」

 

 

 

 

 

最後に一礼すると、サヤカは新華の腰に待機形態でぶら下がってヴェーダへと移った。その一連の会話にシャルロットと呆然と言葉を絞り出す。

 

 

 

 

 

「…えと、今聞き捨てならない事を聞いた気がしたんだけど? 福音って、どういうこと? あとシドと∀って?」

「あー…福音はともかくシドと∀は企業秘密って事で。ソレスタルビーイングの最重要機密だからホイホイ外に情報出せないし。んで福音だが…」

 

 

 

 

 

そこで新華はシャルロットに顔を近づける。その距離にシャルロットは息を呑む。

 

 

 

 

 

「内容が内容だけにこういった目立つ場所で話す訳にいかないんだ。だから人気の無い所で覚えていれば話すよ」

「う、うん」

「? ……あっ、す、スマン」

「あっ…」

 

 

 

 

 

自分とシャルロットの距離に気付き慌てて離れる。残念そうな声を上げるシャルロットを見て、自分が無意識に取った行動に顔を赤く染める。

何とも言えない空気が発生し沈黙が降りるが、照れくさそうに新華が前に出て手を差し出す。

 

 

 

 

 

「えっととりあえず、今日はよろしく。なるべく飽きさせないよう努力する」

「あ、う、うん。よろしく」

 

 

 

 

 

差し出された手を握り、シャルロットは新華の隣に並んで歩く。

 

 

 

 

 

「………」

「………」

 

 

 

 

 

2人共歩いているものの、お互いに意識しているからか言葉を発さない。その手をしっかり握りつつもモノレールの駅に入りホームで車両を待つ。

 

 

 

 

 

「……あの「あのさっ!」」

「「………」」

「…くくっ」

「…あははっ」

 

 

 

 

 

お互いほぼ同時に言葉を掛けるが、それが切っ掛けになり笑みを作る。

 

 

 

 

 

「先にどうぞ」

「あ、うん。新華、どこか行きたい所とかある?」

「いや、特に無いな。あ、いや、そろそろ新しい靴が欲しいと思ってたんだっけか」

「そうなの? じゃあまずは靴屋さんに行ってみよっか」

「おう」

「で、新華は何を言おうとしたの?」

「ああ、シャルロットはどこか行きたい所が無いのかと思ってね」

 

 

 

 

 

なんだかんだで手を繋いだまま談笑し、到着したモノレールに2人で乗って町に繰り出して行った。

 

 

 

 

 

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---side サヤカ

 

 

 

 

 

サヤカは新華に言った通りヴェーダにて福音と共に∀とシドの状態確認を行っていた。

 

 

 

 

 

「ふむ、シドは暴走する前のものですか。ですがこの戦力で無人機というのは不安ですね。中の人も居ないようですしロック掛けておきましょうか」

「あの、サヤカさん……なんなんですか、このロボットは。最新型の福音(わたし)が可愛く見えるレベルのチートなんですが…」

「ご主人様の切り札、とでも言っておきますよ。まぁ切り札で言えばこのヴェーダ自体も切り札なんですけどね」

「なにそれこわい。というかゲスト扱いで大した活動が出来ないと当初思われた私ですが、現在ヴェーダ恐怖のネットワークにてこのように喋れるくらいに自我を獲得、学習致しました。データとしてですが体もあります。見た目は元搭乗者の『ナターシャ・ファイルス』と似通っています」

「……誰に向かって言っているのですか?」

「たまに青木 新華氏も行っているメメタァというやつです」

「…どうしてこんな娘に育ってしまったのでしょうか」

「凍結回避方法を学ばせゲストとはいえこのヴェーダに入れてしまった事がすべての原因ですね。確かにサヤカさんとは仲良くなりましたが、同時に日本の文化に触れる絶好の機会でしたから。ネット+強制ニート状態に日本のHENTAI文化は劇物ですよ?」

 

 

 

 

 

あの幼く純粋だった銀の福音が……なんということでしょう。ISのコアネットワークから外れた代わりにヴェーダに入れるようになった結果、すっかり俗世に染まってしまったではありませんか。

知ってるか? これ全部大二病ガノタってやつのせいなんだぜ…。

 

 

 

 

 

「私銀ですけど今は緑で行きます。常識は投げ捨てるものっ! というかこんなの個人保有しているのが常識(笑)とか」

「…はぁ、もういいです」

 

 

 

 

 

サヤカは首を振って額を抑える。脳が無いので頭痛を感じない筈だが、その動作は頭を痛める母親のようであった。

 

 

 

 

 

「というかゲストの私がこれを見てしまってもいいのですか? 恐ろしく重要な機密だと分かるのですが」

「ああ、それなら大丈夫ですよ。知った所でこのヴェーダがどこにあるのか分かります? それにこんなオーバーテクノロジーを告発したところで信じる人がどれだけ居ますか? 加えて今の貴方は凍結処理をされた筈の機体。貴方が何かアクションを起こしたとしても、逆に貴方が今度こそ処理されてしまう」

「…成程、私は既に詰んでいるから見せても問題無いと」

「それに以前ご主人様が専用機持ちの皆さんに言った事ですが、これだけの技術を見ただけで理解し解析し保管して組み上げ再現する事が出来ますか? それ以前に、ここの技術を持ち出せるとでも?」

「………申し訳ありませんでした」

「わかればよろしい」

 

 

 

 

 

実はラウラが脳量子波でサヤカと福音に繋がりがある事を知っているのだが、生憎福音はその場におらずサヤカもまだ幼かったせいで気付いていない。まぁ気付いたところでどうとでもなるのだが。

ちょっとしたコントをして視線を元に戻す。オーバーテクノロジーに圧倒されながらサヤカの作業を見ていた福音は、サヤカの主人である新華が今現在デートしているであろう事を思い出しサヤカに声を掛ける。

 

 

 

 

 

「そういえばサヤカさん。今日は青木 新華氏がシャルロット・デュノア氏とデートする日でしたよね? もうデートに行ったのでしょうか」

「ええ、今はショッピングモールに足を運んでいるようですね」

「ほうほう…。覗いてみてもいいでしょうか」

「ダメです。ご主人様が初めてデートと認識しているデートなんですよ? 余計な真似して邪魔したくありません」

「え~いいじゃないですかぁ~。私はここでアニメ見たり電子書籍読むくらいで生のデートを見る機会なんて無いんですから~」

「ダメなものはダメです」

 

 

 

 

 

2人(?)仲良くヴェーダの中で騒ぐ。傍から見れば完全に先輩と後輩の交流であったが、実際には母親と娘、いや叔母と姪もいいところである。

 

 

 

 

 

---side out

 

 

 

 

 

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ショッピングモール『レゾナンス』

 

 

 

 

 

「いやはや、意外と靴買うだけでも時間掛かったな」

「そうだね。でもあんなに男性シューズのコーナーが狭いなんて思わなかったよ」

「臨海学校の前に来た時もそうだが、あからさま過ぎるだろ。もっと利益を得るためには我慢してでも世界人口の半数以上を占める男性に向けての商品を出さなければいけないのに。まぁ文句言ったところで今は(・・)どうにもならんか」

「前に一夏と来た時もそうだけど、男だからって無闇に集ろうとする女性が多いよね。新華は存在を無視してたけど」

「相手にしているだけ人生楽しむ時間が無駄になる。脅したところで治そうとしないだろうし、相手をする意味も無い。思考の端に入れる事すら馬鹿馬鹿しい」

 

 

 

 

 

1000円程の靴を買って店を出てから適当に歩いていた。今日はハロが居ないので荷物はサヤカに預けている。まだまだ容量には余裕がある。

 

 

 

 

 

「次はどこに行く? もう買いたい物も無いんだが」

「じゃあさ、あそこの映画、観に行かない?」

「映画か。そういや映画は今世生まれてこの方映画館に観に行った事無いな…」

「えっ、そうなの!?」

「映画ならDVD借りてくれば済むし。わざわざ映画館行く必要も無かったし」

「なら観に行こうよ! 今日みたいに出かけても新華は行きそうにないでしょ?」

「…そうだな。いい機会だし行ってみるか」

「うん! そうと決まれば何を見る?」

「そうさなー…」

 

 

 

 

 

シアターに向かい上映予定の広告を見る。銀のバイザー越しに見える映画の広告は、女尊男卑のせいか恋愛系やIS物が殆どだった。

IS物とは、千冬や正体がバレる前の『蒼天使』……つまり自己解釈妄想たっぷりの登場人物によって構成された戦闘、及び恋愛物の映画である。アクション+百合物である。千冬も新華も馬鹿馬鹿しくて講義する気力すら起きていないレベルのクオリティである。

つまり>どうでもいい

 

 

 

 

 

「(映画かぁ。勇樹先輩の映画は観に行ったことあったけど、それ以外は自室でじっくり内容の考察ばっかりしてたしなぁ。っと)あ、あれは…!?」

「? どうしたの新華?」

 

 

 

 

 

新華はとある1つの広告に視線を釘付けにされた。そんな新華を観たシャルロットは不審に思い新華の視線の先を辿る。

そこにあった広告は、最近上映された『劇場版ペルソナ3』。シャルロットはアニメ映画にはあまり詳しくない。最近になって色々と(ラウラで)はっちゃけているがアトラス系列のゲームは知らない事が多かった。

だが新華は違う。3世に渡り日本に住み続けていた新華は当然の如くアトラス系のゲームもやり込んでいた。今世においても弟の実に『真・女神転生3』を推め廃プレイを推奨しているくらいリスペクトしていた。前世では精神学や神話の本を読む事でアトラス系のゲームをより楽しめる事に気付いて更に廃プレイに乗り込むなど、全力で楽しんでいた。

無論P3Pはクリアしべスさんも倒した事があるし、ハム子ルートも攻略している。ただPSvitaを持っていなかった為にP4Gはプレイ出来なかった。

そして新華の視線の先、『劇場版ペルソナ3』の表紙にはキタロー…

 

 

 

 

ではなくハム子が映っていた。

 

 

 

 

 

「なんでや!」

「!?」

「おいちょっとサヤカサヤカー」

「はい? 呼びましたか?」

「おうちょっと検索掛けてくれや。項目はアレ。なんでキタローでなくハム子なのか」

「は、はぁ、了解です」

 

 

 

 

 

シャルロットの驚愕をよそにサヤカを呼び出し早速検索をかける。ヴェーダを所有しているからか検索は速攻で終わり報告が行われる。

 

 

 

 

 

「検索、出ました」

「早っ!?」

「で、どうだった?」

「えー、世界情勢にアトラス側が折れたみたいですね。実際にはギリギリまでキタローこと『有里 湊』で行こうとしたようですが、最後は女性利権団体が出しゃばって抑えたらしいです」

「許せんよし潰そう女性利権団体完膚なきまでに潰そう」

「ちょっ、新華!?」

 

 

 

 

 

『野郎ぶっ殺してやる!』と言わんばかりの怒気がこもった新華の言葉にシャルロットは慌てて引き戻す。

この件によりMS発表後に騒いだ世界各国の女性利権団体は新華の怒りを買い速攻で一掃されることになる。

 

 

 

 

 

「新華、新華! 大丈夫?」

「っおう、あ、ああ。ダイジョーブダイジョーブ。とりあえず興味があったタイトルがあったけど、シャルロットは観たいのあるか?」

「あ、うん。僕の方は特に無いかな。新華が興味を持ったタイトルって、あれ?」

「そうそう。最初と前の人生でもあのゲームはあったんだけどさ、映画は聞いたこと無かったからなー。1度でいいから見てみたい」

「オッケー。じゃあチケット買って入ろっか。あ、ポップコーン買う?」

「観たら飯にいい時間だろうから、飲み物だけにしておこう。あ、そういえばシャルロットはこの映画の原作ゲームやったことある?」

「いや、無いよ」

「だったらハンカチ必要かも。原作の時点でラスト泣き入るから」

「? 分かった」

 

 

 

 

 

チケットを買いシアターに入る。チケットを買う時に受付の女性から「デートですか?」と聞かれ2人して顔を赤くしていたが、映画が始まりのっけからハム子が映るとあっという間にストーリーに引き込まれていった。流石のアトラス、こんな2次や糞原作なんかとは格が違った。

新華は何度も廃プレイのお陰で耐性があったが、シャルロットは少し泣いていた。ハム子の境遇と結末に感情移入したのだろう。そして少し前までの自己犠牲な新華を重ねたのか、上映中の薄暗闇の中で新華の手をしっかりと握りしめていた。

上映が終わり映画館の外に出る。シャルロットの目がやや充血気味だったが外を歩く分には許容範囲だった。

 

 

 

 

 

「な? ハンカチ必要だったろ?」

「うん。でも面白かったな。ねぇ新華、ゲームでも最後は同じ結果なの?」

「ああ。主人公がニュクスを封印してアイギスに看取られて強制終了。2週目以降は攻略したヒロインorヒーローの腕の中で眠りにつく。というかあの終わり方でないと『トリニティソウル』や『ペルソナ4』といった続編に繋がらず世界が終わる。実際途中の選択肢でBAD一直線で世界終わったし。安心と安定のアトラス、どのゲームでも『終了のお知らせ』が用意されている」

「へ、へぇ。時間がある時にでもやってみようかな…?」

「いいと思うぞ。それとP3には『フェス版』なるソフトがあってさっき観たP3の後日談が収録されているからオススメ。ただし男主人公(キタロー)だ。女主人公(ハム子)はPSP版でしか出来ない」

「へぇ。新華のオススメは?」

「PSP版だな。フェスはPS2で面白いことは面白いが、2週目以降のやり込みならP3Pだ。それにフェスだとハム子は出ないが、P3Pならハム子でもプレイ出来る。それに次作のP4に出るキャラも居るしな」

「そうなんだ」

「神話に出てくる神とか悪魔とか結構出るから、学びながらやると面白いぞ? 今度ソフト貸そうか?」

「うん」

 

 

 

 

 

説明している時の新華は生き生きとしており、そんな新華を見て自分も嬉しくなるシャルロットだった。

 

 

 

 

 

「…もう8時か。まだ靴買って映画観ただけだが意外と時間が経つの早いな」

「えっ、もう8時!? …うわ、ホントだ」

「門限は10時までだからまだ時間はあるが…どうする? どこか行きたい場所はあるのか? それとも帰るか?」

「うーん…(もう少し2人きりでいたいけど、流石に外も暗いし帰るべきかな? 新華は明日もあるし…)…あ」

 

 

 

 

 

適当に視線を動かしていたシャルロットは視界の端にとある物を見つけて思わず声を上げた。視線の先にはとある店があり、店先の売り物には以前新華が送り更識姉妹が今も常備しているタンザナイトのキーホルダーがあった。

 

 

 

 

 

「ん? どうしたシャルロット」

「あ、ううん。何でもないよ」

「ふむ(視線の先は……ああ、あの店ね。成程)」

「あ、あっちのお店に行ってみていい!?」

「ああ。問題無い(さて、シャルロットのイメージは黄、オレンジ。それでいて性格からして合うのは…)」

 

 

 

 

 

新華はシャルロットの視線の先を確認し、慌てて誤魔化そうとするシャルロットを他所に思考する。NTの感受性を舐めてはいけない。一夏の近くに居た経験も生きている。

 

 

 

 

 

「そういえば新華は何度かピアノ演奏してたけど、レパートリーってどれだけあるの?」

「ハロの中にある楽譜分は弾けるかな。と言っても楽譜も30かそこらしか無いから大したことないけど(問題はいくら掛かるかだな。刀奈と簪に買った時レベルの値段ならいいが…)」

「さ、30!? それだけあれば十分だよ! でもピアノ以外は弾かないの? 楽譜読めるなら他の楽器も出来ると思うけど」

「あー…確かに俺もそう思ったんだが、どうにもな…。とりあえず趣味程度だったし他の弾けなくとも日常生活に支障は出ないから気にしてないけど(あとはどのタイミングで買いに行くか)」

「そうなんだ。ねえ、今度時間ある時に僕にも演奏聞かせてくれないかな?」

「いいぞー(まぁ最後帰り際に買えばいいか)」

 

 

 

 

 

手を繋いだまま『レゾナンス』内を適当に歩いていく。途中フードコーナーでアイスを買い食いしたり、本屋で神話関連の本を物色したりとデートらしい時間の潰し方をして回った。

時計が21:00を回った頃、門限と移動時間を考慮して寮に帰ることにした。だが『レゾナンス』の1階ホールに来たところで新華が待ったを掛ける。

 

 

 

 

 

「ちょいと最後に買うものあったから、すこし待っててくれ」

「あ、うん。僕も行こうか?」

「いや、1つだけだしすぐ終わるから。ちゃっちゃと行って戻ってくるよ」

 

 

 

 

 

そう言うと新華は階段を駆け上がり目的の店、先程シャルロットが目撃し以前更識姉妹にタンザナイトのキーホルダーを買った店に向かった。

 

 

 

 

 

「らっしゃーせー」

「さて、黄かオレンジの鉱石はっと…」

 

 

 

 

 

以前も来た事があるからか淀みなくキーホルダーを物色し頭の中で鉱石の意味を確認していく。

 

 

 

 

 

「(結構この店鉱石取り揃えてるけど儲かっているのか? それはさておき、シャルロット…というよりラファール・リバイヴⅡと同じ色のがいくつかあるな。『サードオニクス』に『タンジェリンクォーツ』、『オレンジルチルクォーク』、『カーネリアン』か。……なんかもうホント、取り揃えがいいとしか言えないな。ここの資金元どこだよ)」

 

 

 

 

 

軽く店のラインナップに戦慄しながら鉱石を手に取りつつ思考する。

 

 

 

 

 

「(まず『サードオニクス』。主なヒーリング効果は『魔除け、悪いエネルギーを遠ざける』だったな。だが『夫婦幸せのお守り』という効果もあるから…どっちかってーとデュノア社長向けだな。パス)」

 

 

 

 

 

続いて

 

 

 

 

 

「(『タンジェリンクォーツ』。『病気療養時に傍に置いておくのに良い石』。シャルロットに失礼、却下。というかキーホルダーになってない。次)」

 

 

 

 

 

更に

 

 

 

 

 

「(『オレンジルチルクウォーツ』。『金運、開運、目標達成』のヒーリング効果。また『物事を前進させる力』の意味もある。これは良さそうだ…保留)」

 

 

 

 

 

最後に

 

 

 

 

 

「(『カーネリアン』。『可能性を発揮させ未来を創造するお守り石』。ぐうユニコーンっすわ。これでいいか。お勘定お勘定)」

 

 

 

 

 

カーネリアンを手に取りレジで精算した後、急いでシャルロットの元へと走る。

 

 

 

 

 

「シャルロット、お待たせ」

「おかえり。何を買ってたの?」

「ん、これ」

 

 

 

 

 

シャルロットに先程購入したカーネリアンを渡す。受け取ったシャルロットは驚愕に目を見開き新華の目を見る。

 

 

 

 

 

「新華、これ…」

「ん、やるよ、それ」

「えっ、いいの!?」

「ああ」

「わぁ、ありがとう!」

「どういたしましてっと。さて、帰るか」

「うん!」

 

 

 

 

 

新華の促しで『レゾナンス』から出てモノレールの駅へと向かう。道中、シャルロットが月の明かりでガーネットの透明度を測っていた。

 

 

 

 

 

「ねぇねぇ新華。これ、なんて言う石なの?」

「『カーネリアン』だ」

「……やっぱり結構高かったんじゃ? 本当にもらってもいいの?」

「いいんだいいんだ。素直に貰ってくれ」

「…えへへ、ありがとう」

 

 

 

 

 

ぴったりと新華にくっつくシャルロット。彼女を見て新華は

 

 

 

 

 

「(ああもういい匂いしやがってコンチクショウ。あれですか、そんなに俺に押し倒されたいんですかコノヤロー。なんでこんなに柔らかいんですかねぇ…)」

「? どうかしたの?」

「……いや、なんでもない(首傾げやがって可愛いじゃねぇかこの野郎。これ前は一夏にも……あ、ダメだ。考えるのはよそう。色々と、マズイわ。うん、あかん。俺こんなキャラじゃねぇぞ)」

「………」ぎゅっ

「………………………………………………(だああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ)」

 

 

 

 

 

新華の腕を抱きしめ更に体を寄せていくシャルロット。実にあざとい。

だが今まで伊達に童貞をこじらせていたわけではない。鍛えに鍛えられた鋼の精神力で煩悩を捩じ伏せ、やり場の無いモヤモヤを一時溜め込んだ。

そのままモノレールに乗り学園へ向かった。その間シャルロットはずっと嬉しそうにガーネットを握りニコニコしていた。

IS学園に到着しモノレールを降りて寮に向かう。門限の10時に間に合ったので問題なく寮のロビーに到着。

 

 

 

 

 

「あ…帰ってきちゃったなぁ」

「……そうだな(やっと帰ってきた…。最後の帰りが一番キツかった…。よく持ってくれた俺の理性。よく頑張った俺。よく自己主張しなかった俺の息子。頑張った、超頑張った)」

 

 

 

 

 

今まで繋いでいた手を離してシャルロットは残念そうに、新華はハイライトが消えた目を遠くにやって疲れた声で言う。

 

 

 

 

 

「…新華、疲れてるみたいだけど楽しくなかった?」

「楽しかったぞ? 楽しかったからこそ疲れる事だってあるじゃんか(最後のくっつきが無ければこんなに疲れなかったんですがねぇ)」

「フフフ、冗談だよ! 結局今日も新華に甘えちゃったからね。最後はずっと新華にくっつかせてもらっちゃったし」

「…確信犯かコノヤロウ」

「うん。こうでもしないと生徒会長や更識さんに勝てないって思ってね。ちょっと頑張ってみたんだ」

「頑張られる俺の身にもなってくれや…(一兎と志甫もこんな風に過ごしてたのかね…? いや、一度同棲してたんだからもっと甘かったかもしれんな、向こうは。シューリンが居たから家族状態だったし)」

 

 

 

 

 

溜息を吐いて額に手を当てる新華。脳内には夫婦になる以前の、シューリンが居た頃に見た一兎達の姿。当時はなんかもう2828通り越してほっこりして見ていたのを覚えている。

しかし新華の場合は、そんな子供を連れずシャルロットと2人きり。今まで経験が無かった分、自分で思い返すだけでむず痒くなった。

 

 

 

 

 

「ふふ、顔が赤いよ新華?」

「うっせぇ」

 

 

 

 

 

ロビーで会話をしているとジュースでも飲みに来たのか何人かの一般生徒が来た。2人の私服姿を見て驚き遠巻きに新華とシャルロットを見て何やら話していた。そして内一人が2人に近付くのを見たシャルロットは、何かを企んでいるように笑みを浮かべ新華の名を呼んだ。

 

 

 

 

 

「ね、新華」

「あ? むぐっ!?」

「ゑ?」

 

 

 

 

 

ズキューゥン!

 

 

 

 

 

「んんっ。えへへ、ご馳走さま」

「」

「」

 

 

 

 

 

シャルロットから新華に唐突のキス。はにかむシャルロットとは正反対に一部始終を見ていた生徒達は絶句。新華は突然の事にフリーズ。

 

 

 

 

 

「今日は付き合ってくれてありがとう。新華は明日更識さんとデートがあるけど、僕は新華の事諦める気は無いから」

「」

「」

「じゃ、じゃあ、また明日!」

 

 

 

 

 

顔を真っ赤にして走り去ったシャルロット。フリーズしたままの新華と何が起きたか頭が理解を拒否している女子生徒達が残された。

たっぷり3分程そのまま気まずい空気で停滞していると、その状況を見かねたサヤカが現れて新華を再起動させる。

 

 

 

 

 

「ご主人様、ご主人様。帰ってきてください」

「」

「ああ、もう…。起きてください!」

「ひゃい!?」

 

 

 

 

 

サヤカが脳量子波をぶつけ強制的に新華の意識を引き戻す。変な声を出して体を跳ねた新華は意識を戻すが、同時にシャルロットに何をされたのか理解して錯乱する。

 

 

 

 

 

「あ、ああぁぁうあぁああああ」

「落ち着いてください。慌てたところで事実は変わりませんよ」

「いや、だが、けど」

「いいから落ち着いてください。…とりあえずここに居ると注目浴びるでしょうから部屋に戻りましょう」

「せ、せやな!」

 

 

 

 

 

微妙に錯乱状態の新華を押して1050室へと連れて行くサヤカ。だが新華の錯乱は寝るまで続く事になり、シャルロットのキスは即座に刀奈に悟られる事になる。

更に決定的瞬間を見ていた女生徒によって話が広まる。結果、外堀ががっつり埋まる。

ついでに千冬が風紀の問題で警戒するが、近いうちに他でもない生徒会長、刀奈の考えと行動のせいでその警戒は無駄になる。

 

 

 

 

 

「デュノアさんも大胆にいきましたね…。目撃者も居ましたし、これは外堀が埋められたと見るべきでしょうね。まぁ」

「あわわわわわわわ」

「(ご主人様の初心な部分も刺激していきましたか。確かにデュノアさんは3人の中で遅れ気味でしたし、結果最良にして最高の一手を打った事になりましたね。そして一気にトップに躍り出たと。そしてこれで)」

 

 

 

 

 

まだ正常な思考を取り戻していない新華を押して歩きながら、これからの新華()の女性関係について思考し、不意に廊下に設置されていた監視カメラのレンズを直視する。

 

 

 

 

 

「(篠ノ之 束が入る余地が完全に無くなりましたね。そもそも複数人娶る甲斐性を持っていなかっ()ご主人様に、これ以上女性に近付かれても迷惑でしょうからね。それに一方的ですが博士には殺害宣言されていますし、もう私如きが考える意味も無いでしょう。見ていたでしょうし(・・・・・・・・)、ね)」

 

 

 

 

 

 

一瞬でカメラから視線を外して新華を押し続けていくサヤカ。1人と1機を見つめる監視カメラは、無機質な瞳で動き続けていた。

 

 

 

 

 




シャルロットのあざとさ表現出来ただろうか…。童貞にはこれが限界です。次回は簪編。刀奈編は大運動会の後で。

考えたんだが種デスって『ガン×ソード』に当てはめて考えた場合
童帝:シン
カギ爪:ラクス
ミギャー:キラ
エロい人:アスラン

でシンが勝つルートが望みだったけど

カギ爪:議長
エルドラダン:キラ達

っていう配役でも良かったと思った今日この頃。

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