IS~疾走する思春期の転生者~   作:大2病ガノタ

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110話。
新華達の居る新華の深層心理の風景は、OO2ndのED2におけるOOガンダムと少年兵せっさんが居るあの風景です。ガノタのPCの待受画面だったりします。『ガンダムまとめ速報』というサイトに画像があるので探してみては?

前回のラストで以前の新華が戻るシーンがありますよね? あれってP4でペルソナ手に入るイベントだと思うんですが…どうでしょう?


終わらない明日へ

 

 

 

 

新華は一夏達と共に、睦美先輩と尾褄先輩以外成長した姿の一兎達を見て唖然としていた。対する一兎達はそんな新華達を見て苦笑する。

 

一兎はその右腕に人類最強の力、P・V・F120口径『アンフォーギヴン(許さざれる者の)・バリスタ』を

 

志甫はエゴ・アームズ、68口径『ブリリアント・カタルシス』を

 

尾褄はエゴ・アームズ、68口径『アーキタイプ・ブレイカー』を

 

勇樹はイド・アームズ、45口径『ブラインド・ジャスティス』を

 

睦美は『半新生人類』の姿で

 

そして宮田 彩香は、新華が死んだ日に着ていた服で佇んでいた。

 

 

 

 

 

「ほら、いつまで呆けているんだ。シャキっとしいないか」

「っ! ほ、本当に睦美先輩なんですか!? あなたは、あの日死んだ筈。尾褄部長も…!」

「ああ。だから、俺は所謂残留思念って奴かな? まさかこんな経験するなんて思ってなかったが」

「私の場合、確かに肉体は消滅したが意識はあったのでな。ずっとお前達を見ていたよ」

 

 

 

 

 

新華は皆の姿を見て、沢山の想いが湧き上がった。一兎が無事に生きている事、睦美先輩が生きていた事、尾褄先輩がここに居る事、彩香先生が居る事、自分が死んだ後はどうなったのか、今はどうしているのか…。

とにかく聞きたい事、話したい事が沢山あって言葉にならなかった。

 

 

 

 

 

「……新華君」

「彩香先生…ご無沙汰、してます」

「そうですね。あれから、私達の方では4年経ちました。この4年で皆、大きくなりましたよ」

「そう、みたいですね…。あれから、世界は、どうなりましたか…?」

「安心しろ、新華。俺が起きれたくらいに、平和になったよ。戦前のように……とはいかなくても、皆明日に希望を持って生きてる。俺も、先生も、皆」

「そう、か……。なぁ、一兎」

「何だ?」

「お前は今、幸せに生きられているか…?」

「お前は俺の保護者かよ。……大丈夫。志甫も居るし、少なくとも生活に困っているとかいう事は無いよ」

「そうそう。私達の心配は要らないよ? それよりも、私達よりも新華の方が心配だったんだけど…」

 

 

 

 

 

そう言って志甫を始めとしたパラべラム勢は新華を中心とした一夏達を見る。一夏達は一兎達の視線を受けて緊張するが、そんな一夏達を見た一兎達は揃って優しい笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

「そんなに緊張しなくてもいいよ。別に取って食う訳じゃない。しかし、新華」

「あ、ああ」

「……いい友達を持ったみたいだな」

「………ああ。俺にはもったいない位の、な」

「おいおい、その言い方だと俺らは別にそうでもなかったみたいじゃないか」

「そんな事はないですよ…。尾褄部長達も俺にとってはかけがえのない人達です」

「ははは、冗談だよ。俺だって勇樹含めたこのメンバーは大切な奴らだからな。先生も、ですよ?」

「それは嬉しいですね。私だって皆さんの事は大切な生徒達です。今も昔も、おそらく、これからも……」

 

 

 

 

 

そう話して、彩香先生は新華の目を見る。新華はそれに気付いて、P・V・Fを支えにして立ち上がろうとする。

 

 

 

 

 

「ぐっ…」

「あっ、新華! 無理しないで」

「…っ」

「くっ、す、済まない…」

 

 

 

 

 

シャルロット、簪、楯無、サヤカの支えられ、心配されながら立ち彩香先生の目を見つめ返す新華。彩香先生はそんな新華を見て、次いで新華の後ろに居るサヤカを見た。

 

 

 

 

 

「…新華君、もしかしなくても、私との約束を引き摺ってるんですか?」

「……『帰る』って約束、守れませんでしたから。気にしますよ、そりゃ。でも、大丈夫だったんでしょう?」

「そんな訳ないじゃないですか。皆、泣いてましたよ。もちろん、私も」

「…すみませんでした」

「……もう大丈夫ですよ。あの時泣いていた子達も、今は新華君の死を乗り越えて生きています。ちゃんと新華君に教わった事を活かして」

「……そう、ですか。なら、良かったです。俺が生きた意味は、ありましたよね…?」

「勿論ですよ。そして、今もそうでしょう?」

 

 

 

 

 

そう言って彩香先生は一夏達に視線を送る。それに気付いた一夏達は勢いよく首を縦に振って肯定する。

 

 

 

 

 

「ほら、新華君が自分の存在意義に疑問を持つ必要はもう無いんですよ。今の新華君には、今傍に居てくれる仲間の方々が居るじゃないですか」

「そうだぞ新華。俺達の事を心配してくれるのは嬉しいけど、もうお前が出来る事はしていたじゃないか。だから、お前は今を生きろよ」

「そうそう。もっと自分にワガママに生きなきゃ。私みたいにっ!」

「へ?」

「ほら、これ」

「そっ、それは…っ!?」

 

 

 

 

 

志甫が左手を出して新華に見せる。薬指に指輪が嵌っており、見れば一兎の左手にも同じように付いていた。新華は目を限界まで見開いて

 

 

 

 

 

「マ……ジ………?」

「…まぁ、驚くよね。再会して初めての報告だもの」

「でも新華のお墓の前で一応報告はしたよ? 勿論尾褄さんと睦美さんのお墓の前でも」

「俺はその御陰で知っているけど…」

「私は戸籍を入れてる瞬間を見ていたからな。だが新華は…」

「………」

 

 

 

 

 

新華は一兎と志甫を見て固まっていた。支えられながら固まっていたので支えている楯無達から声を掛けられる。

 

 

 

 

 

「…新華君?」

「………」

「あの、新華?」

「ハッ!? あ、ああ、えっと…………おめでとう、2人共」

「…ああ、ありがとう」

「ふふっ。ありがと、新華」

 

 

 

 

 

再起動した後に、心から祝福の言葉を送る新華。一兎と志甫は嬉しそうに、そして新華は満たされた表情で2人を見た。

 

 

 

 

 

「ああ、そっか…」

「? どうか、したのって新華君!?」

 

 

 

 

 

新華の目から再び涙が流れる。今度は目を左手で抑えて、嗚咽を漏らしながら。流石にこの新華の様子に一兎達も慌てる。

 

 

 

 

 

「ど、どうかしたのか新華?」

「いや、違うんだ…」

「違うって、何が?」

「俺は、そうやって幸せそうにしている一兎達が、見たかったんだって、その為にあの時戦ったんだって、そう思い出したら……すまん、少し、こうさせてくれ…」

「新華君…」

 

 

 

 

 

新華の両目から涙が流れる。顔から落ちる涙の雫は足元の水へと落ち、そこに綺麗な色の花を咲かせた。

 

 

 

 

 

「…すまない、もう大丈夫だ。…改めて一兎、志甫、おめでとう」

「ああ」

「うん、ありがとう。……新華も、幸せを掴まないと駄目だよ? こっちで生きていた時とは違う、新華自身の為の幸せをね」

「俺自身の、幸せ、か」

「そうだな。いい加減新華だって愛する者と添い遂げる事を考えるべきだ。その方が人生、生きるのが苦にならない」

「……そう言われましても…えっと…」

 

 

 

 

尾褄のセリフに新華は思わず楯無達の顔を見てしまう。そして先程3人からされた事を思い出して顔を赤くした。

 

 

 

 

 

「……『英雄色を好む』じゃないけど、程々にね?」

「お、俺は英雄なんて柄じゃありませんしそんな資格はありませんよ。一兎は文句無しの英雄というか救世主ですけど」

「俺だって救世主なんて柄じゃないし、正直4年経った今でも落ち着かないさ。それに英雄なんてものにならなくても、新華だって俺みたいに小さな幸せを手に入れる資格はあるさ」

「そうそう。好きな人と結ばれるって、凄く満たされるんだよ? 新華だってその権利はあるよ」

「……そうかな?」

「そうですよ。それに、私を安心させる意味でも、幸せになってもらわないと。生徒の苦しむ姿を見ていると、こちらまで苦しくなるじゃないですか。だから、幸せに生きてください」

「………はい」

 

 

 

 

 

新華は彩香先生に笑顔で返事をした。それを見て彩香先生は微笑み、次いで一夏達に声を掛ける。

 

 

 

 

 

「えっと、織斑君……でいいのですか?」

「えっ、は、はい」

「……私の生徒を、新華君の事、よろしくお願いしますね」

「も、勿論です! 新華は俺が、俺達が守ります!」

「……そちらの女の子達も」

「…勿論、新華君を支えたいと思ってますし、一緒に居たいとも思いますので」

「わ、私もっ」

「僕も、まだ新華と居たいので…」

「……そして、後ろに居るあなた…」

「…はい」

「……今までよく頑張ったわね。これからも、私の生徒の力になってあげてね」

「無論です。その為に私は創られたので」

「……でも、あなたも彼にとっては必要な『人』なのよ。だから、ね?」

「…はい」

 

 

 

 

 

彩香先生の話が終わり一兎達の姿がぼやける。それに全員驚き、新華は慌てた。

 

 

 

 

 

「なっ!? 一兎! 彩香先生!」

「もう、時間切れみたいだね。正直もっと話したい事だってあったけど…」

「俺だって、まだ話したい事が、沢山っ…!」

「ああ。だけど、本来こうして話す事なんてありえない筈だっただろう? 今話せたこの奇跡に感謝するとしよう」

「睦美先輩…っ!」

「最後に、新華。幸せになれよ」

「っ!」

「そうそう。ちゃんと幸せにね」

「ああ。でないと俺も安心して成仏出来ないだろう?」

「…大丈夫。僕らは僕らで生きていく。自分が出来る事をしながら」

「新華。早苗の事はもう気にするな。あれは誰の責任でもない。それでもと言うなら、私はお前を許すよ」

「私達の孤児院の事は気にしなくても問題無くやっていけてます。だから後は、自分の事を考えて生きてください」

「皆っ! 俺っ、俺っ!」

 

 

 

 

 

新華は自分に掛けられた言葉がどれだけ自分にとっての救いか、感じていた。そして沢山の想いを込めて叫んだ。

 

 

 

 

 

「皆! 今まで、ありがとう…っ! 俺、こっちで生きる。皆の事を忘れる事は出来ないけど、ちゃんと生きるっ! だから、だから、ありがとう! さよなら!」

「ああ。さようなら」

「じゃあね」

「あばよ、新華」

「さよなら、新華君」

「ちゃんと幸せを掴めよ? …さよならだ」

「私の方こそ、今までありがとうございました。さようなら」

 

 

 

 

 

別れを告げ、パラべラムメンバーは居なくなった。今世の別れだったが、新華の中にあったのは悲しみではなく幸福感だった。

 

 

 

 

 

「………」

「…行っちゃったな」

「…ええ」

 

 

 

 

 

そこに新たな乱入者が現れる。

 

 

 

 

 

「どうやら私のお節介は役立ったようだな。どうだった? かつての仲間との邂逅は」

「「「「「「!?」」」」」」

「…感謝してもしきれませんよ、『閻魔様』。ご無沙汰してます」

「そうか」

 

 

 

 

 

黒と赤で彩られた服とマントを身に付けた男性が水上に浮いて新華達を見ていた。新華は何となく、今の状況が目の前の閻魔によるものだと理解していた。

そして一夏達は不思議な感覚に陥っていた。新華とサヤカには閻魔の姿がハッキリと見えて認識出来ているが、一夏達からは黒い影がぼんやりと浮かんでいるように見えており、新華が呼んだ『閻魔様』という名前も認識出来ずにいた。

 

 

 

 

 

「そして、久しいな。こうして会うのは初めてか、『Evolveクアンタ』、いや『サヤカ』」

「はい、創造主様」

「「「「「「!?」」」」」」

「全く、私が思ってもいなかった方向で成長したな」

「はい、お陰様でこうして話す事も可能となりました。最も、ここに居る人達に私の存在目的である『カモフラージュ』の意味は無くなってしまいましたけど」

「問題無かろう。その者達なら心配する必要もあるまい。不安なら記憶を消す事も可能だが?」

「…いえ、これ以上閻魔様にご迷惑を掛けるような事はしたくありません。俺は、こいつらを信じたいです」

「そうか」

 

 

 

 

 

一夏達は混乱するばかりだった。いきなり現れたと思えばサヤカに創造主と呼ばれ、新華が迷惑を掛けたと言ったのだ。相手がどういった姿をしているのかは分からないが、少なくとも相手が人間ではない事は漠然と感じた一夏達。

新華とサヤカだけは閻魔の澄み切った瞳を見て会話をする。

 

 

 

 

 

「ふむ、お前も勘付いているだろうが『シンクロ二シティ』と言う者達にこの世界は観測されていない事を伝えておこう。少々気を使ったがな」

「ありがとうございます。すみません、俺の為に」

「いい気分転換にもなった。なるほど、ゼウス様が多くの世界を創り出したりアレスが楽しみにするだけはあったな。だがやはり、私には仕事をしている方がいいな」

「……そうですか。ですが、やはり感謝します。俺がこうしてこいつらと出会えたのも、あなたがこの世界に転生させてくれたからですから」

「感謝は受け取っておいた方がいいか。さて、私も仕事があるのでな。退散させてもらうとしよう。もうお前に記憶がある内に会う事は、もう無いだろう。せいぜい悔いのないように生きるのだな」

 

 

 

 

 

そう言って閻魔は姿を消した、一兎達の時とは違い一瞬で。一夏達は終始戸惑う事しか出来なかったが、新華とサヤカにとっては間違いなくかけがえのない時間であり、これからを生きる力となる出来事だった。

そこにようやく外でナビゲートしている筈の虚からの通信が入った。

 

 

 

 

 

『…さん! 皆さん! お嬢様! 妹様!』

「あ、虚ちゃん…。…聞こえているわ」

『どうしたのですか急に!? 今数秒通信が切れましたが、何かありましたか!?』

「は…? 数秒…?」

「…どういう事なの? 私達からしてみれば、30分以上は経ったように思ったのだけど…」

『30分、ですか?』

「……多分」

「新華君…?」

「今、一兎や閻魔様が現れた事で時間の概念が薄くなったんだと思う」

「時間の概念?」

『えっと、こちらからはよく分かりませんが、青木君は無事なんですね?』

「はい。ご迷惑をお掛けしました。俺はもう、大丈夫です」

 

 

 

 

 

新華はそうハッキリと返事をして、しっかりと自分の2本の足で立つ。

 

 

 

 

 

『そうですか…。話は後で聞くとして、システム中枢は目の前なので早めの復旧をお願いします』

「あ、そうだった!」

『この先にこれ以上のトラップの存在は確認されていません。消耗した皆さんは1度こちらに戻ってきてもらいたいのですが…』

「…なら、俺が行きます」

「し、新華!?」

「ちょっとしたお礼を、な。もうすぐなんだろ?」

 

 

 

 

 

そう言って新華は前に足を踏み出そうとするが、後ろからサヤカに抱きつかれて中断する。

 

 

 

 

 

「サヤカ?」

「……ご主人様、帰りましょう」

「………」

「ようやくご主人様は『救い』を手に入れられたんです。今はゆっくり、休みましょう?」

「そうよ新華君」

「会長…」

「うん。今までの新華は無茶ばっかりだったでしょ? 帰ろう? 僕らの世界に」

「もう、新華君を1人にしないから…ね? 帰ろう…?」

「シャルロット、簪さん…でも、一夏達は…」

「……新華。後は俺に任せろ」

 

 

 

 

 

行こうとする新華を返すように一夏は新華に言葉を放つ。

 

 

 

 

 

「一夏…」

「これが初めてかもしれないけど…俺を信じて、任せてくれ。あの人達からも任せられたんだ。言っただろ? 今度は俺が新華を守る番だって」

「………」

「だから、な?」

「…ああ。分かった」

「箒達も先に戻っててくれ。後は俺が行く」

「…いいのか?」

「ああ。任せろ!」

「……わかりましたわ。一夏さん、お任せいたしいます。お先に戻りますわ」

「ああ」

 

 

 

 

 

そう言って一夏を除き新華を含めた専用機持ち達は一斉に接続を切ろうとした。と、そこで新華はある事に気付いた。

 

 

 

 

 

「あ、この花は…」

「…? この足元の花が、どうしたの?」

「……?」

 

 

 

 

 

新華はしゃがみ込み、その花に手を触れる。そして記憶の中からある事を思い出した。それは最初の人生で、大学に通っていたある日に友人が持ってきた漫画の花。

 

 

 

 

 

『おーい、今日はこんなの持ってきたぞぉ!』

『え? 漫画? ちょ』

『オメェ何持ってきてんだよ。……『青血のハグルマ』?』

『最近見っけてきたんよ。3巻までは近くのブックセンターイトウで見つけたんだけどそれ以降が見つかんなくてさー…。んで、この間聖蹟の本屋行ったら全巻あって。これは買うしかないだろうと』

『色が凄いね…』

『綺麗っしょ? これが内容の方も面白くてさー。で、面白いエピソードもあるんだがヒロインの1人の名前である花がこれまた綺麗なんよ』

『ふーん。……所々で色が付いているのな』

『それの4巻見てみそ。綺麗な花があるから』

『あ、じゃあ借りるけど……。これ? 本当に綺麗な色してるね…』

『だろ? それの名前が確か……』

 

 

 

 

 

記憶の中から新華は花の名前を呟く。

 

 

 

 

 

「『ファリア』……」

「『ファリア』?」

「意味は確か……『光りある未来』、だったっけ…」

 

 

 

 

 

そう言った次の瞬間、新華の深層心理である美しい世界は輝き光を放った。そして新華はそこで意識が浮き体へと還るのを感じた。

 

 

 

 

 

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新華が目を覚ますと、そこは記憶を失っていた時に入ったIS学園地下のアクセスルームだった。

 

 

 

 

 

「う……」

「…新華君、起きた?」

「新華!?」

「新華君…!」

「ご主人様!」

「……お前ら…」

 

 

 

 

 

真っ先に目に入ってきたのは、心配そうに自分の顔を覗き込んでくる楯無、簪、シャルロット、サヤカの顔だった。新華が返事をすると明らかに安堵の表情を浮かべ、サヤカが抱きついてきた。

 

 

 

 

 

「ご主人様ぁ…! 良かったです。無事で本当に、良かったです…!」

「新華君、変な所は無い? 私が分かる?」

「新華、大丈夫だよね!? ちゃんとここに居るよね!?」

「新華君…! 新華君…!」

「…ああ、戻ってきたのか…」

 

 

 

 

 

新華はサヤカが抱きついてくる感覚で、自分が生きている事を強く意識した。

 

 

 

 

 

「…あれは、夢だったのか…? 夢だったとしても、幸せな夢を見たもんだ…」

「いいえ、夢じゃないわ」

「…え?」

「そうだよ。あの光景は僕らも一緒に見たよ。あの人達とも、ね」

「うん…。言ったよね? もう新華君は1人じゃないって…」

「あ…」

「ご主人様。ご主人様は、もう『救い』を受け入れてもいいんですよ。これからは、皆さんを信じましょう? 皆さんに頼りましょう?」

「………」

 

 

 

 

 

新華の目から涙が再び流れる。最近泣いてばかりだと自覚するが、それでも涙は止められなかった、否止めようと思わなかった。

衝動のままに楯無、簪、シャルロットの3人を引き寄せ、纏めて抱き寄せる。

 

 

 

 

 

「わわっ、新華!?」

「ありがとう」

「え…?」

「こんな俺を、受け入れてくれて…。こんな俺を好きでいてくれて…」

「新華君…」

「ありがとう…ありがとう……ありがとう………っ!」

「…ご主人様」

 

 

 

 

 

新華はそのまま4人を抱きしめて、泣いた。ただただ沢山の想いを込めた『ありがとう』を呟きながら。

後ろで呆れた表情や羨む表情を浮かべた専用機持ち達が居たが、関係無かった。新華の心には幸せが溢れて止まなかった。

 

 

 

 

 

この日、新華はようやく『救い』を得て心に潤いがもたらされた。それは以前の友情以上に新華の心に染みるもので、涙腺が崩壊するくらいに、子供のように泣き続けるのだった。

 

 

 

 

 




『青血のハグルマ』:全6巻の主人公技術チート物です。転生とか無しで。戦争物です。
分かる人居るかなぁ…? これもかなりマイナーなので。
あ、ちなみに新華の大学時代の同級生のモデルは、ガノタ自身と友人杉です。ビックスカイとF-stomeは誰か分かるよね?

ようやくここまで来たって感じですね…。とりあえずガノタの頭の中に貯めていたストーリーはここまでです。後はだらだらと原作が発売されるまで事後処理やらBAD ENDやらイチャコラやら書く事にします。
次回は事後処理のストーリーの予定なので早めに書き上げられればと思ってます。

では次回 ノシ

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