IS~疾走する思春期の転生者~   作:大2病ガノタ

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108話前編。
さっさと終わらせたいのに…


過去 人編

 

 

 

闇の中で新華は歩いていた。今の新華の姿は、ボロボロの城戸高校の制服に、同じくボロボロになったP・V・Fエゴ・アームズ『ストーリーズ・イレギュラー』を右腕に展開し、心臓の部分に漆黒の杭が貫通していた。

 

 

 

 

 

「………」

 

 

 

 

 

片足を引き摺りながら、ただひたすらに歩いていく新華。足元は真っ赤な液体で浸り、その中をザブザブと歩く。どこに向かっているかなど新華には分からなかったが、ただ歩かなければいけないという一心で足を動かしていた。

そんな新華に1対の黒い手が声と共に上から伸びてきた。

 

 

 

 

 

『ワールド・パージ、開始…』

「……」

 

 

 

 

 

新華の首へと手が伸びる。それを新華は

 

 

 

 

 

「…一夏、一兎…皆……」

『ワールド・パージ…』

 

 

 

 

 

目を瞑り受け入れた。しかしそこで新たな乱入者が入る。

 

 

 

 

 

「もう俺、疲れたよ…」

「…やれやれ、世話の掛かる後輩だ」

『…ERROR』

「…え…?」

「少しだけ寝ていろ」

 

 

 

 

 

露出度の高い機械のような鎧を身に纏った、ライオンのような雰囲気の美女が黒い手を払い、新華の目に手を置いて新華の意識を奪った。

 

 

 

 

 

「これでも、気休め程度にしかならないか。だがこれ以上ここに居ると彼女達に悟られそうなんでな」

 

 

 

 

 

新華は意識を失い膝を付く。その右腕のP・V・Fもそのままに。

 

 

 

 

 

「さて、後は…」

「………せん」

「ん?」

「すみません、先輩…」

「………」

「すみません、すみません…」

 

 

 

 

 

新華は意識を失ったまま懺悔の言葉を吐いていた。

 

 

 

 

 

「全く、死んだ後も引き摺ってどうする。…すまなかったな、お前をここまで苦しめて」

 

 

 

 

 

その女性は新華の心臓に刺さっていた杭を引き抜いた。

 

 

 

 

 

「…時間だ。また、会おう」

「あ…あぁ…」

 

 

 

 

 

女性は新華に刺さっていた杭を持って消えた。

そして、膝を付く新華の周りの闇が少し晴れた。

 

 

 

 

 

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---side 専用機持ち達

 

 

 

 

 

一夏達は闇の中を落下して、一瞬の浮遊感の後に足が硬い大地に着いた。

 

 

 

 

 

「よ…っと。皆、大丈夫か!?」

「あ、ああ。私は大丈夫だ」

「こっちも問題無いわ」

「わたくしもですわ」

「同じく」

「ちゃんと皆いるよ」

「ここは…」

「真っ暗ねぇ。これが新華君の居る場所なのかしら…」

『そうです』

「「「「「「!!」」」」」」

 

 

 

 

 

皆で無事を確認し周りを見渡した。そこは完全な暗闇で、一夏達それぞれを中心とした直径3mは白く光り闇が弾かれていた。

サヤカの声が聞こえて一同は驚く。

 

 

 

 

 

「サヤカ!? 見えているのか!」

『ご主人様は私を通して電脳ダイブしましたから、こうして通信くらいは出来ます。その分外は虚さんに任せきりなんで心許ないですが』

「もう何でもアリね、新華とサヤカは。それで、新華はドコ?」

『……』

「…サヤカ?」

『…わかりません。ご主人様がこの闇のどこかに居る事は分かるのですが…』

「でも、大まかな位置くらいは分かるんじゃないの?」

『…駄目です。…ああ、時間が無いのに…!』

「そんな…。どうすれば…」

 

 

 

 

 

一夏達は集まり顔を見合わせる。と、そこで一夏達の頭上から1つの光が降りてくる。

 

 

 

 

 

『トリィ…』

「え…この音声、トリィ!? どうして…」

『トリィ…!』

 

 

 

 

 

光に包まれたトリィが一夏の頭上に留まる。そして、蛍のように闇の中へと入っていく。まるで一夏がいつか見た夢のように。

 

 

 

 

 

「まさか、付いてこいって事なのか?」

「あ…」

「光が、これって…」

 

 

 

 

 

楯無と簪の腰にあるタンザナイトのキーホルダーから、シャルロットの胸元にあるラファール・リバイヴⅡの待機携帯からトリィと同じ方向に光が伸びた。その光景もやはり、いつかの夢のようだった。

 

 

 

 

 

「まさか、あの夢と同じ事が起きているっていうの…?」

『あの、一体何が起きたのですか? こちらは行き成り、織斑さんの白式さんが持っていたトリィが突然起動して扉の中に入っていったのを確認したのですが…』

「あ、ああ。トリィが光を放って、先導してくれるらしい。シャルロットと生徒会長、更識のISとキーホルダーが光って追えるようだが…」

『光…? …急いでそれを追ってください。恐らく、ご主人様がそれらに重大な影響を与えたから反応しているのだと思います。トリィはご主人様が造った物として、キーホルダーはご主人様からのプレゼントとして、ISはご主人様が新システムに関わった事で』

「そ、そんな事が有り得るのですの!?」

『細かい事は後でいくらでも考えられます! それよりも、今は急いでください!』

「「「「!!」」」」

 

 

 

 

 

一夏、シャルロット、楯無、簪の4人はサヤカの言葉に体を突き動かされた。所謂デジャブという奴である。このままでは取り返しの付かない事になってしまう、夢のように新華に別れを告げられてしまうと。

4人が走り出し、残りの4人もそれを追う。白い8つの円は闇を掻き分けて進む。

 

 

 

 

 

「くっ、皆離れるなよ!」

「分かっている! ここでお前らを見失えば、はぐれて前に進めそうに無いのでな!」

「ああ! 新華を見付けて言いたい事の1つも言えないのでは格好が付かない!」

「それに、わたくし達だけがあんな恥ずかしい思いをしてますのに、新華さんは無しなんで不公平ですわ! 急いででも、たどり着かなければ…!」

「そう、だね! 光もトリィもまだ止まらないから、このまま走ろう!」

『…その先にご主人様の反応があります!』

「! それじゃぁ…!」

『でも、変です。この感じ、まさか…』

 

 

 

 

 

サヤカの声に疑問が入り、一夏達は闇を抜けた。そこは1本の通路になっており、その上にトリィが、光の筋が通っていた。

 

 

 

 

 

「闇を抜けたと思えば、何、この通路は」

「さぁ…? サヤカ?」

『…その通路の先にご主人様の反応があります』

「この道の先に?」

『はい。ですけど、この道は…』

「とにかく、急ごう。時間が無いんだろ?」

 

 

 

 

 

そう言って一夏達は通路を走り出す。しかし直後、一夏達は小さな子供を追い抜いた気がした。

 

 

 

 

 

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玄関から走ってリビングで家計簿を付けていた母に駆け寄る。そして嬉しい気持ちで背中に背負っていたランドセルから小テストの紙を取り出す。

 

 

 

 

 

「おかーさん! 見てみて! ちゃんと100点取ってきたよ!」

「お! やったじゃない! 勉強したかいがあったね」

「うん!」

 

 

 

 

 

満面の笑みで頷く。母親が頭を撫でて暖かい気持ちになった。

 

 

 

 

 

「じゃあこれから---君と遊んでくるね! いいでしょ!」

「はいはい。じゃあ…4時までね?」

「はーい!」

 

 

 

 

 

笑顔のままランドセルを放り出して玄関に向かう。

 

 

 

 

 

「行って来まーす!」

「はーい、いってらっしゃい。車には気を付けてねー」

「はーい!」

 

 

 

 

 

ドアを開けて明るい日差しの中へと飛び出していった。

 

…まだこの頃は、自分の居る世界が輝いて見えた。

 

 

 

 

 

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「「「「「「っ!?」」」」」」

 

 

 

 

 

一夏達は思わず足を止めた。突然過ぎたのと、脳に直接見えた今の映像と音声がやけにリアルで驚いたからだ。

 

 

 

 

 

「い、今のは…?」

「まさか、今のが新華の…?」

「サヤカちゃん、分かる?」

『…進めば分かります。しっかりと、受け止めてください。ご主人様の、真実を』

「新華の、真実…?」

『…先を急いでください。そこで立ち止まってても何にもなりません』

「で、でも…」

「…あぁもう! 時間が無いんだったら、さっさと新華を助けてどういう事か説明してもらおうじゃないか! 行くぞ!」

「あっ、一夏!」

 

 

 

 

 

一夏がまた光の示す通路の先へと走り出した。他の一同も追いかけるように走り、今度は中学生くらいの少年を追い抜いた。

 

 

 

 

 

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クスクス…

 

   クスクス…

 

 

 

 

 

学校にある鯉が泳ぐ池、その前で呆然と立ち尽くしていた。まるで、背後で自分を見ている者達が笑っているような気がした。

担任を始めとする教師が何か言っているような気もした。肩を掴まれた気もした。だけどこの時の()は、頭が真っ白になって何が何だか分からなかった。

中学に上がってから虐められた。もう何が原因だったか覚えていなかったけど、何となく理不尽な理由だったと思う。物を隠されたり机に落書きされたり、直接無意味な暴力を受けたりパシリにされたり…。親に、教師に助けを求めた事もあった。

だが、その結果は直接的な暴力の頻度が減っただけで陰湿な物が増えただけだった。落書きがサインペンから何かしらの金属で削られたものになり、教師が居ないからといって大人数で暴力を振るってきた事もあった。最悪だったのは、殆どの教師の前では授業中だろうと嫌がらせが起きていた事だった。今思うと、教師は何かのアクションを起こしてPTAに訴えられて、今の職を失いたくなかったのだろうと思う。虐められている生徒がどんな気持ちか知らずに。周りの生徒達も巻き込まれまいと遠目に見るだけだった。味方は、居なかった。

だが親に心配を掛けまいと我慢した。そして、コレだった。

池の中には自分の使っていた文房具一式、上履きが沈められていた。

 

 

 

 

 

クスクス…

 

   クスクス…

 

 ケタケタ…

 

 

 

 

 

今では本当に誰かが笑っていたかは分からない。この後、()はもう嫌になって学校に行かなくなったから。ニュースにもなって新聞社のパパラッチも来るようになった。直ぐに消えたけど、その薄情さと情報に群がる汚さには吐き気がした。自分達が生きるために、お金が欲しいために他人の悲しみを表面上は悲しげに喜々としてほじくり返そうとするヤツラを、()は人として見る事が出来なかった。

でも、それでも一番辛かった事は、そんな自分を最後まで心配してずっと悩んでやつれた父さんと母さんの姿を見る事だった。

 

 

 

 

 

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「「「「「「っ!!」」」」」」

 

 

 

 

一同は再び足を止めた。しかし今度は驚きもあったが何より、胸糞悪さを感じてだった。特に、箒が受けた衝撃は大きいものだった。

 

 

 

 

 

「これが、新華の真実って言うのかっ!? なぁサヤカ!」

『そうです。ですが、ここはまだ序盤です。今に至るまで、P・V・Fを手に入れるまで、まだ先です』

「P・V・Fを、手に入れる…?」

『足が止まっていますよ。考えてもいいですが、足は止めないでください』

「でも、俺は知らないぞ! 俺は新華とずっと一緒だった! 中学の時も! だけど、こんな事はなかった!」

「そ、そうよ! 中学でこんな事はなかったわ! なんで今のが新華の真実なのよ!」

『…直ぐに分かります。足を進めるのを止めないでください』

「でも、いくらんでもこれは…」

『…何度も言いますが、今のご主人様に時間は残っていないんです。早く先を急いで!』

「くっ、くそっ…!」

 

 

 

 

 

一同は疑問を抱えながらまた走った。そして今度は、ブレザータイプの制服を着た青年と私服を着た青年の成長した姿を追い越したと気付いた。

 

 

 

 

 

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高校の頃の事は覚えていない。

不登校になっている間、勉強した御陰で都立に入る事が出来た。だけど『灰色の3年間』と言える時間でもあった。友達は居なく部活にも入らなかった。当時俗に言う『ガリ勉』の部類に入っていたかもしれない。根暗でネガティブになっていた事もあり()に人が近付いてくる事も無かった。

僕は、人が恐くなっていた。

 

 

 

 

 

「…すみません、この本を借りたいんですが…」

「……」

 

 

 

 

 

少しでも人と離れたくて、でもそんな僕を教師は見ていられなかったんだと思う。静かだけど地味な図書委員会に入らされた。正直委員会にも入りたくなかったけど、今思えばこの時の担任には感謝しなきゃいけないと思う。この時に1人で本を読んでいた御陰で知識を頭に入れる事が出来た。神話とかは苦手だったけどライトノベルや書籍を多く読んで、灰色なりに楽しめていた。逆に言えば、それしか無かった。

でも人が怖いのは変わりなかった。それでも、人の顔をちゃんと見るくらいに正常になる事が出来た3年間だった。逆に言えば3年間掛けてようやく顔をちゃんと見る事しか出来なかったのだが。

何より、嫌がらせはあったものの全部無視していた事で1年生の時に嫌がらせが無くなったのが大きいと思う。同時に友達も出来なかったが。

 

 

 

 

 

「よ、よろしく」

「あ、よ、よろしく」

 

 

 

 

 

それが変わったのは大学に入ってからだ。勉強の甲斐あってかそれなりの私立大学に入れた。元々何か作ったり何か読んだりと1人で居る事が多かった自分は文系理系のどちらか選ぶか迷った。

結局父さん母さん、当時の担任の勧めで理系を選んだ。奨学金も取って父さん母さんだけじゃなく、心配してくれたおじいちゃんおばあちゃんにも迷惑掛けないようにした。

その大学は入学直後に生徒間の交流を促す目的で1泊2日の旅行が行われていた。僕は勇気を出して、行った。そして、友達を得た。

 

 

 

 

 

「-----、おはよー」

「あ、----おはよう。今日の講義実験だけどレポートやった?」

「ウェッ!? …あ、やったやった。先週のうちにやって出してたわ。あっぶねー思い出してよかった…。お前は?」

「僕も出したよ。でも片対数グラフ用紙買ってなかったからちょっと財布が…」

「あー分かる分かる。俺ついでにライターとか買ったよ、この大学の。なんか親が買ってこいって言ってさー。ライター渡して代金貰ったけど」

「ウウェーイ」(´∀`)ノ

「あ、イエェ"アア!」(・∀・)ノ

「アア"ァ"イ!」へ(^O^)へ

「おはよー。レポートやったー? ----?」

「…片対数グラフ誰か俺に分けて」

「やってねぇんかい! というか買いに行け!」

「土日でやろうと思ったけど、中古で買ったPSPのソフトにハマってな…。それと、バイトの給料が入るのは来週や! 金が無い!」

「中古買う前に用紙買え!」

「何してんの----は……」

「遊んでましたが、何か」キリッ

「何かじゃねぇよアホ!」

 

 

 

 

 

馬鹿も居たけど、心地よかった。1年間だけだった(・・・・・・・・)けど、楽しかった。希望があった。だけどある朝、近くの本屋に行くために歩いていたら

 

 

 

 

 

「………ねっむい。…あ、メールだ。…来週カラオケ? まあ定期試験も終わるしいいけど、単位大丈夫なの…?」

 

 

 

 

 

今は凄い事になっている(・・・・・・・・・・・)ウォークマンでアニソンを聴きながら、折り畳み式の携帯でメールを見る。

…この時に気付いていたとしても、多分どうにもならなかった。

 

 

 

 

 

「えっと、行くけど何時に集合? …っと。送信。…?」

 

 

 

 

 

メールを返信して前を見た。その時に見えたのは、運転手がハンドルに顔をうずめ自分の方に向かってきていたトラックだった。

 

 

 

 

 

「----------え?」

 

 

 

 

 

そのまま轢かれる事は無かった。運転手が体制を崩したのかは知らないけどトラックは自分から逸れる向きになった。でも1度大きい質量が持った運動エネルギーが直ぐに無くなる事はない。

トラックの運転席にぶつかる事は無かったけど、後ろのコンテナと自分を挟んだ反対側の壁にすり潰された。自分の頭蓋骨が割れる音が聞こえた気がしたけど、それだけだった。

 

ようやく明日に希望を持てていたのに…

 

 

 

 

 

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「「「「「「----------」」」」」」

 

 

 

 

 

今度は一夏達は足を止めなかった、否、止めるだけの余裕も無かった。あまりの衝撃に頭が真っ白になり足を止める事すら出来なかった。

そしてそんな事になっていても、道は続いていた。そして足を止めなかったからか、また小さな子供を追い抜いた。

 

 

 

 

 

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「なんなのよこの子は…! 気持ち悪い。私達の子供じゃないみたい…」

「まるで赤の他人が入っているようだ。何なんだコレは!」

 

 

 

 

 

死んだ。少なくても僕は確かにトラックに潰されて死んだ筈だった。だけど不思議な事に赤ん坊に逆戻りしていた。転生か、はたまた憑依か。何にせよ3文小説のような状況になって最初は混乱した。

でも記憶があった事で僕はやりたい事が出来ると思った。前世であった虐めを回避し青春を送り、産んでくれた両親に恩返しが出来ると。

だから、自重せずに頑張った。誰にも言われずに勉強して頭を使った。1人で居ずに誰かと仲良くなろうと努力した。結果的に前世とは違い友達がたくさん出来た。

だけど今度は、自重しなかったせいか両親に気味悪がられた。そして、暴力を振るわれるようになった。

僕はこの頃から他人の気持ちの機敏に気をつけるようになっていた。そして両親の目に自分を気味悪がる感情と共に嫉妬の感情があるのを知った。

 

 

 

 

 

「やめて…」

「喋るんじゃないよ!」

「いたい…」

「痛くしてるんだよ、このガキが! 気持ち悪い!」

 

 

 

 

僕はただ両親に喜んでもらいたかっただけなのに。友達も出来た、勉強でも点を取れた。大学に行っていたのだから当然だったけど、それでも両親には喜んでもらいたかった。

でも、その感情も時間が経つにつれ無くなっていった。なんで、どうしてという感情ばかりが頭にあった。学校で友達が心配してくれたけど、言えなかった。なまじ生前で優しくされたから両親を擁護してしまった。

そんな必要もない屑だったのに…。

 

 

 

 

 

「…おとうさん、おかあさん、どこ…?」

 

 

 

 

 

ある日、小学校から帰ると住んでいたマンションから両親が消えていた。両親だけでなく家具の一切が無くなっていた。管理人さんから聞いたところ、自分が学校に行っている時に引越しをしたらしかった。行き先は誰も知らなかった。

そこで自分は捨てられた事を知った。

泣いた。せっかく手に入れたやり直しの人生。でも前世で支えてくれた両親は居ない。自分の支えになってくれる存在が消えたことに。

それから僕は親戚の家をたらい回しにされる…かと思ったけど、そんな事は無かった。どうやら僕の今世の両親は相当な鼻つまみ者だったらしく、親戚は誰も引き取りたがらず祖父母は別の孫に夢中で自分の存在を知らなかった。そういうのも、僕の両親が家出同然に結婚して連絡を取らなかったからだという。それ以前にも問題を沢山起こしていたようで、祖父母はそんな子供の孫の面倒を見るのは真っ平御免だと言って、僕は施設に入れられた。

それだけではなく、自分の両親は少々の借金を抱えていたらしくそれらを押し付けられた。僕は中学に上がると同時に新聞配達のバイトを始めた。朝大変だったけど施設の近くに住む人達は笑顔で自分と接してくれた。それだけが当時の支えだった。

 

 

 

 

 

「あら青木君、今日も朝早いわね~」

「はい。おはようございます。新聞です」

「ありがとう。頑張ってね」

「はい。じゃあ、失礼します」

 

 

 

 

 

そうやって微々たるものだがお金を稼いだ。施設の人が自分に弁護士を付けてくれた時は嬉しさで涙が出そうになった。そして借金は本当に微々たるものだったらしく、死ぬ気で働いた結果借金を全て返す事が出来た。

このままなら自分で生きれそうだと楽観視したりも出来た。だけど、そこでまた地獄が来た。

両親が借金を返し終わったのを見計らって戻ってきたのだ。

そして、再び虐待の地獄が待っていた。

 

 

 

 

 

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3度目の立ち止まり。一夏達は何も言えずに呼吸が乱れていた。

 

 

 

 

 

「「「「「「………」」」」」」

『…残酷でしょうが、これがご主人様の真実です。あなた達が本来知る事も無い筈のご主人様の記憶。一緒に居るのなら、真に救いたいのなら知らなければならない事』

「「「「「「………」」」」」」

 

 

 

 

 

眩暈がしていた。こんなの、予想出来なかった。新華の記憶に自分が出ない事が些細に思えた一夏達。だが、まだ続く。

新華の記憶に自分たちが出ても続く、続いているのだから。

 

 

 

---side out

 

 

 

 

 




エヴァ+『翼をください』=シャレになってねぇ!? 3ndインパクトが来ちゃうー!

パラべラム+『千の風になって』=最後はマジである人がそうなってるんですが…

次回はパラべラムになった切っ掛けからです。1回で纏める予定だったのに…

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