IS~疾走する思春期の転生者~   作:大2病ガノタ

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107話目。
今回原作からの変更点は、楯無の戦果とシャルロットのストーリーと一夏が攻略する順番くらいです。
でも、なんでそれでこんなに長くなるんだ…orz


介入

 

 

 

---side 一夏&簪

 

 

 

 

 

『---俺を見捨ててでも、皆を、助けだせぇ…!』

「! 新華!?」

「新華君!?」

 

 

 

 

 

一夏と簪は確かに新華の声を聞いた。そして互いに顔を見合わせそれぞれ白式と打鉄弐式に飛び乗る。

 

 

 

 

 

「お、おいおい織斑君! 更識君!」

「すみません、俺ら、今すぐ学園に戻ります!」

「は、はい? ちょっととういうのお姉さん困」

「すいません、でも、今はっ…!」

「正面ぶち抜きます!」

「のわあっ!」

 

 

 

 

 

一夏と簪はそれぞれ荷電粒子砲を放ち壁を吹き飛ばして瞬間加速を使い一気に飛び出した。その姿は研究所からは一気に見えなくなっていく。

 

 

 

 

 

「無茶するねぇ。でも、これが若さか…。ま、いいさ。必要なデータも取れたし」

「げっほげっほ、だ、大丈夫ですか主任…」

「おうよ。さて、これで始められるな。次世代型量産機計画を」

 

 

 

 

 

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瞬間加速を連続で使い2人はIS学園へと一直線に向かった。行きは2時間掛かったものの直線コース、それもISの最大加速を用いたので30分と掛からなかった。

そしてIS学園が目の前に迫った時、ハイパーセンサーがISを展開したまま何処かへ向かっている楯無を捉えた。

 

 

 

 

 

「生徒会長!」

「お姉ちゃん…!」

 

 

 

 

 

簪が楯無の元へと真っ先に向かう。楯無は以外な事に額から一筋の血を流していた。

 

 

 

 

 

「簪ちゃん…。お帰りなさい。でも、急がなくちゃ」

「その怪我…」

「ああ、これ? ちょっと無茶しちゃってね。大丈夫よこのくらいは。それより、2人も声を聞いたから文字通り飛んできたんでしょう?」

「そ、そうだ! 新華は!? 箒達にも通信が届かないし…」

「…今皆、複雑な状況になっているの。案内するから着いて来…っ!」

「お姉ちゃん…! 無理しないで…」

「…ごめんね、心配させちゃって」

「うん…」

「それで、新華達は今どこに…?」

「この学園地下にあるアクセスルームよ。今マップを送るわ」

 

 

 

 

 

楯無は一夏と簪にデータを渡し千冬に連絡を入れる。

 

 

 

 

 

「織斑先生、聞こえますか?」

『ああ。どうした?』

「今、織斑君と簪ちゃんと居ます。緊急なので細かい事は後にして、このまま我々でアクセスルームへと向かいます」

『一夏と、更識が? …まぁいい。こちらも終わったところだ。後は任せろ』

「はい。では失礼します」

『ああ。気を付けて行け』

「はい。…ということで、行くわよ2人共」

「はい!」

「うん…!」

 

 

 

 

 

一夏と簪は楯無と共にマップに従って地下へと急ぐ。新華を含めた専用機持ち達と未だ連絡が取れない事に焦りを感じていた。

 

 

 

 

 

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3人はアクセスルームへとたどり着きISを解除、部屋に入る。楯無の怪我は来る途中で応急処置を済ませガーゼを貼っていた。

 

 

 

 

 

「ここがアクセスルーム…」

「…お嬢様!? それに、織斑副会長に、妹様まで…」

「虚ちゃん、状況は?」

「ご主人様! しっかりしてください!」

「「「!?」」」

 

 

 

 

 

一夏達は声の方を見る。そこには尻尾のような銀色の綱をベットチェアのデスクに繋げ、新華との間にある6角形の壁に阻まれながらも新華の名を叫ぶサヤカの姿があった。

そして、その隣と反対側には気を失っている5人の専用機持ち達が新華と同じようにベットチェアに力なく横たわっていた。

だが新華だけは右腕に『no name』を展開していた。

 

 

 

 

 

「こっこれは…!? 一体何がどうなって」

「今現在、皆さんはIS学園は何者かのハッキングを受けコントロールを失っています。そこで電脳ダイブにてサーバーのコントロールを奪取しようと試みたのですが…」

「…虚ちゃん、何があったの?」

「それが、ダイブした後、サーバーへと向かう途中にアクシデントが発生。新華君が異常を察知しましたが、どうにも出来ず…」

「そんな…」

「でも、今の新華君はどうなって…?」

「…トラウマシェルです」

「サヤカちゃん…?」

 

 

 

 

 

戸惑う一夏達を見ずにサヤカは言葉を発する。

 

 

 

 

 

「この壁はP・V・Fイド・アームズ『no name』の機能である拒絶の力、『トラウマシェル』です。これを破るにはトラウマシェルの耐えられない攻撃、もしくはP・V・F用HEAT弾による攻撃でないと無理です」

「P・V・F用HEAT? じゃあ、ISの火力なら…」

「それだとご主人様に害が及びます。それに、運良くそれで助け出せた所でご主人様の心が崩壊してしまうだけです」

「え、え? 一体何を…」

「…今のご主人様や専用機持ちの皆さんを助けるには、第三者の介入が必要です。それも、親しい者の心による介入が」

 

 

 

 

 

サヤカの言葉に一夏と簪、虚や楯無ですら戸惑いを隠せない。そして問う。

 

 

 

 

 

「…サヤカちゃん。いい加減話してくれないかしら? 新華君のP・V・Fって何? トラウマシェルって…」

「………直ぐに嫌と言う程分かる事になると思います。それよりも、早く織斑さん達も電脳ダイブを。このままでは皆さん目を覚ましません。ご主人様に至っては、最悪人間としての死を迎える事に…」

「「「「っ!?」」」」

 

 

 

 

 

サヤカの言葉に絶句する一同。しかし状況が状況なだけにサヤカの言う通り電脳ダイブをする事にする。

 

 

 

 

 

「私は虚ちゃんのサポートに…」

「いえ、楯無さんも電脳ダイブに参加してください。アクシデントが起こるまで虚さんは問題無くバックアップ出来ていました。それに今助けは多い方がいいです。いえ、ご主人様を本当の意味で救う為にはあなたの存在も不可欠です」

「私も? だけど…」

「…お嬢様。ここは私にお任せを」

「虚ちゃん…」

「今は生徒会長としてではなく、1人の女として行動してくださいませ。後悔の無いように」

「…いいのかしら?」

「ええ。いつか私も同じ事をするかもしれませんから」

「…わかったわ。バックアップ、お願いね」

「仰せのままに」

 

 

 

 

 

そして虚の指示通り3人はベットチェアに体を預け電脳ダイブを行った。

 

 

 

 

 

「…皆さん、お願いします。どうかご主人様を、人間のままで居させてあげてください…」

 

 

 

 

 

サヤカは目を瞑り額を新華のトラウマシェルに当てて、祈るように呟いた。

 

 

 

 

 

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電脳世界、新華達も目を覚ました草原。

3人は即座に目を覚まし自分達の現在の状況を確認する。箒達の時とは違い服装はIS学園の制服のままだった。

そして虚とサヤカの指示通り森の中に入りドアを5つ見つける。

 

 

 

 

 

「この扉をくぐった後に、皆との通信が途切れたのね」

『はい。それぞれ右から凰さん、オルコットさん、ボーデヴィッヒさん、篠ノ之さん、デュノアさんが入って行きました。そして…』

『その更に隣に、ご主人様の扉がありました』

「え? でも、ドアは5つしか…」

『それが、青木君がくぐる直前、異常に気付いて皆さんを止めたのですが一歩遅く、青木君との通信が切れたと思えば扉が黒く染まり消滅してしまったのです』

「しょ、消滅…!?」

『ですがまだご主人様はそこに居ます。ただ何者かに厳重なロックを掛けられているようでして』

「そのロックは解除出来ないの?」

『…それが、どうやらそこの専用機持ちの皆さんの扉が関係しているようです』

「箒達の扉が…?」

 

 

 

 

 

3人は5つの並んだ扉を見る。

 

 

 

 

 

『考えられるに、専用機持ちの皆さんを助け扉を全て消さないとご主人様の扉は出てこないようです。なので、まずは専用機持ちの皆さんの救出を急いでください』

「わ、分かった。じゃあ。鈴から助けに行く」

『分かりました。何かあればこちらでお伝えします。お嬢様と妹様は念の為、織斑君が突入後は外で待機していてください』

「うん…」

「わかった」

「じゃあ、行って来ます」

 

 

 

 

 

そう言って一夏は鈴の扉へと入っていった。

 

 

 

 

 

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結果を言うと、問題無く鈴を助ける事に成功した。しかしその後は鈴救出の影響か一夏が変装しないと他の面子のドアに入れなくなるアクシデントがあったが、虚のサポートによってシャルロットまでの全員を救出出来ていた。

ただ、救出された各専用機持ち達の格好は何やら色々とギリギリであり、一夏ともおかしな空気を醸し出していた。

そして、何があったか聞いた更識姉妹と虚は凄まじく微妙な顔をするしかなかった。

 

 

 

 

 

「…後はデュノアちゃんの扉と、未だにどこにも見当たらない新華君の扉ね」

「うん…。新華君、大丈夫かな…」

「どうなのかしらね。あのドアをくぐる時に新華の焦った声が聞こえたけど、結局その後は私達も分からないからね」

「新華さんが叫んだのは、ああなる事を理解したからでしょうか」

「恐らくな。しかし私はそれに気付けなかった。不覚だ…」

「仕方無いだろう。脳量子波が使える私でも気付けなかったんだ。気にするな」

 

 

 

 

 

一夏以外の女性メンバーが言葉を交わす。そして一夏はシャルロットを助け出す為に衣装を替えてシャルロットの扉の前に立っていた。

 

 

 

 

 

「じゃあ次はシャルだな。新華の為にも急ごう」

「ああ、行ってこい」

「デュノアちゃんも助けてきなさい、男の子」

「はい。それじゃ」

 

 

 

 

 

そして一夏は怪盗の格好でシャルロットの扉をくぐった。

 

 

 

 

 

---side out

 

 

 

 

 

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---side シャルロット

 

 

 

 

 

「(僕の名前はシャルロット・デュノア。IS学園に通う---

 

 

 

『ワールド・パージ、完了』

 

 

 

---豪商、織斑家に仕えるメイド。でもそれも後1週間で終わる。何故なら)」

「シャルロット」

「ひゃぁ! ご、ご主人様!? ま、またそうやってイタズラを…!」

 

 

 

 

 

シャルロットは豪邸の廊下で尻を撫でられ持っていた掃除用具を落としそうになり、慌てて両手で抱きしめ触ってきた犯人を顔を真っ赤にして睨む。

そこに居たのはこの屋敷の主である一夏だった。

 

 

 

 

 

「いいじゃなか、少しくらい。それに、そろそろご主人様はやめてくれないか?」

「で、でも…(…あれ? この会話、最近誰かがしているのを聞いたような…)」

 

 

 

 

 

今のシャルロットの記憶では、教会で育ちこの屋敷の先代当主に拾われた事になっていた。そして先代当主は昨年亡くなり目の前の一夏が当主になっていた。

そしてその一夏は当主になると同時にシャルロットとの結婚を宣言し、式が1週間後に迫っていた。

 

 

 

 

 

「ま、まだ…その、メイドですし…」

「ふぅん? じゃあ、ご主人様の命令は絶対なんだ」

「は、はい、勿論」

「そう、かっ」バッ

「きゃあああああ!?」

 

 

 

 

 

一夏がメイド服のスカートを捲る。

 

 

 

 

 

「今日もエッチな下着を着けているんだな、シャルロットは」

「こ、ここ、これはだって、ご主人様が着けなさいって…」

「でも、まだアイツの事が気になってて着けてないと思ったからさ」

「アイツって…」

「…俺の事っスか? 織斑現当主」

 

 

 

 

 

一夏とシャルロットは声の方を向く。そこには小さなメイドの女の子の両目を手で抑えニヤニヤしている1人の執事が居た。

 

 

 

 

 

「…新華」

「なんですかご主人様。負け犬の俺に何か言いたい事でも?」2828

「…いや」

 

 

 

 

 

一夏は苦虫を潰したような顔をしていた。

執事の名前は青木 新華。一夏の幼馴染でありシャルロットの先輩である。同い年なのだがシャルロットが先代に拾われてメイドとなった時に色々と教え、支えてくれた人物だった。

そして新華が目を抑えている子供は、新華の()である青木 彩香だった。娘と言っても新華が拾って来た娘であり血の繋がりは無い。しかしお互いに親子として信頼し合っている。

そして新華は、シャルロットの初恋の相手である。

 

 

 

 

 

「お父様?」

「あ、彩香。もういいよ。さて、俺達はご主人様達の邪魔にならないように向こうで掃除しような」

「はい! あ、ご主人様、シャルロットさん、また後で!」

「あ、うん…」

「…新華」

「なんです? ご主人様」

 

 

 

 

 

新華は執事としての能力はこれ以上無いと言う程に優秀で完璧人間だった。それこそ、先代当主が自分の子供でない事を惜しむくらいに。人に何かを教える事も上手く気配りが出来、男は嫉妬し女は惚れていった。シャルロットも例に漏れず新華に惚れたのだが、一夏からの熱烈なアピールと新華が彩香を娘として連れてきた事で一夏と人生を共にする事を決心したのだ。

そして新華はシャルロットと一夏が結婚するという事を真っ先に祝ってくれた人物である。一夏がメイドを嫁にするという事でいくつもの問題も起きたが、新華が居た事でその多くの問題を率先して片付けていた。1週間後に控えた結婚式も、新華の主導でセッティングが行われた。

シャルロットは、一夏と結婚する事を決めたとはいえ新華の事が気にならないと言えば嘘になる心境だった。

 

 

 

 

 

「…いや、何でもない」

「そうですか。じゃあ仕事に戻りますね」

 

 

 

 

新華と彩香は手を繋いでその場から去ろうとする。それを見たシャルロットも現状を抜け出す為に仕事に戻ろうとする。

 

 

 

 

 

「…あ、ぼ、僕も仕事に…」

「………逃がさない」ダキッ

「だ、ダメ……です………。仕事がまだ、残って…」

「仕事は、新華! 頼めるか?」

「仰せのままに。というか見せつけないで頂けると彩香の衛生教育上よろしいのですが」

「…?」

 

 

 

 

 

一夏がシャルロットを後ろから抱きしめ尻を撫でる。新華は彩香と共に後ろを向き彩香の耳を塞いでいた。

シャルロットは何故か、この状況に言い知れない不快感を感じた。

 

 

 

 

 

「ははは。ほらシャルロット、俺の相手をするのも仕事だぞ?」

「んっ…わ、わかり…ました……」

「じゃあここの仕事は俺に任せて、結婚前の一時をお愉しみくださいませ」

「ああ。可愛いメイドを捕まえた♪」

「お、お姫様だっこなんて…」

「ふふっ、ごゆっくり。彩香、行こう」

「はい、お父様」

 

 

 

 

 

シャルロットは一夏に抱き抱えられてその場を後にする。同じように新華は彩香と手を繋ぎ2人に背を向けた。それをチラッと確認したシャルロットの心が痛んだ。

 

 

 

 

 

そしてシャルロットが一夏の寝室に連れ込まれ、何か頭にちらつく新華の顔を振り払おうとしながらウェディングドレスを受け取り、一夏の目の前で着替える。

しかしそこで乱入者があった。寝室の扉が吹き飛びいかにも『怪盗です!』と言うような姿の人物が入ってきたのだ。

 

 

 

 

 

「だから、お前は何してるんだよ!」

 

 

 

 

 

警戒心と安心感がシャルロットを支配する。とりあえず自分でも有り得ないと思える動きで脱ぎかけだった下着とスカートを履き、壁にあった剣を取る。

 

 

 

 

 

「なんだお前は!」

「お前こそ何だ!?」

「い、一夏!? ご主人様から離れろ!」

「うおっ!? お、落ち着けシャル!」

「気安く呼ばないで! (…あれ? 『シャル』?)」

 

 

 

 

 

そこでシャルロットは違和感を感じる。

 

 

 

 

 

「助かったよシャルロット」

「(違う、僕、は)」

「無事か、一夏、シャルロットさん!?」

「!? 新華…!?」

「何だ貴様は!? 侵入者だ! 誰か来てくれ!」

 

 

 

 

 

シャルロットが違和感を感じている間に執事服の新華が両手にナイフを持って現れた。そこでシャルロットは既視感と大きな違和感を抱いた。

 

 

 

 

 

「(僕は、メイドの…違う、IS学園の、一夏の、新華の…)うぐっ!」

『ワールド・パージ、強制介入』

「? シャルロット、どうした?」

「シャルロットさん!? 貴様、次期当主婦人に何をした!」

「し、新華も何言っているんだ!? 俺はシャルを迎えに来ただけだ!」

「(シャル…そうだ、僕は…)」

 

 

 

 

 

シャルロットは自分の思いのままに剣を振り抜いた。自分の後ろにいる一夏の首目掛けて。

沈黙が降りる。

 

 

 

 

 

「(一夏に安心させてもらって、新華に救われて恋したシャルロット・デュノアだ!)」

「…偽物とはいえ自分の首が物理的に飛ぶ所を見るなんてな」

 

 

 

 

 

本物の一夏が声を微妙に震わせて呟いた。自分の首が飛んだのを見たのもそうだが、首を飛ばす時のシャルロットの目が恐く感じたのだ。

 

 

 

 

 

「それより、脱出するぞ!」

「待って一夏! この新華は…」

「………ワールド・パージ、異物排除、異物排除」

「「!!」」

 

 

 

 

 

両目を金色に染めた偽新華が一夏に向けて飛び掛る。それを一夏はギリギリの所で躱しシャルロットの隣に立つ。

 

 

 

 

 

「異物排除、異物ハイジョ、イブツハイジョ…」

「くっ、この新華をどうにかしないと駄目か…」

「一夏、あの新華は…」

「偽物だ。さっきシャルが斬った俺の偽物みたいな…っ!」

 

 

 

 

 

新華は本物と遜色無い動きで一夏にナイフの1本を投げる。しかしそれを反射で一夏は回避するが、すぐさま新華は床を蹴り一夏に遅い掛かる。

それを今度はシャルロットがその手に持った剣で受け止める。

 

 

 

 

 

「くっ、偽物なのに、本物みたいな動きだね。しかも、重い!」

「シャル! 下がれ!」

 

 

 

 

 

一夏もシャルロットと同じように壁にあったもう1本の剣を取り新華に斬りかかる。しかしそれをあっさりと余裕を持って新華は躱し距離を開ける。

 

 

 

 

 

「くっ…。まさか偽物とはいえ新華を相手にするなんてな。しかも殺しにきている」

「…脱出するには、新華を倒さないとマズイね。後ろを向いた時に斬られそうだよ」

「ああ。どうにかして新華の動きを止めないと…!」

「ハイジョ、HAIZYO、haizyoooooo……」バッ

「!? ゴメン、新華!」ザシュッ

 

 

 

 

 

突然動きが鈍り一夏へと一直線に飛び掛った新華を、一夏は胴体を剣で刺した。そして、猛烈な吐き気を感じた。

 

 

 

 

 

「う、ぐぅ…」ドサッ

「一夏! 大丈夫?」

「あ、ああ…。…なんで行き成り飛び出してきたんだ、この新華の偽物は? …うっぷ」

 

 

 

 

 

偽物とはいえ新華を刺した事で一夏は吐き気を催した。シャルロットも一夏も偽物を斬った時は本物が居たから問題無く斬った事を受け入れられた。しかし新華は本物が居ないので、まるで新華本人を刺したように感じた。

 

 

 

 

 

「うっく、は、早く脱出しよう。ここは、何かヤバイ」

「う、うん」

 

 

 

 

 

一夏とシャルロットはその世界から脱出した。

 

 

 

 

 

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そこでシャルロットは自分の姿を自覚する。

 

 

 

 

 

「きゃああああ!?」

「げっふっ!?」

「あ、お帰りなさーい。あらら、デュノアちゃんは他の娘と違って毒牙に掛かる数歩先だったのね」

 

 

 

 

 

上半身下着のままで一夏を殴ったシャルロット。その姿を見た楯無は肩を竦め一夏が使った衣装ケースから上着を適当に取り出してシャルロットに渡した。

 

 

 

 

 

「あ、ありがとうございます…」

「あてて…あ、セシリア達は制服に戻ったんだな」

「ええ」

 

 

 

 

 

箒達は既にIS学園の制服に戻っていた。

 

 

 

 

 

「うう…また一夏に下着姿見られたぁ…。新華には全く見せてないのに…」

「そ、それはスマン…。ってそうだよ、新華だよ! 皆これで助け出せたし、後は新華の扉なんだけど…サヤカちゃん?」

『……』

『…! 反応が…』

「! あ、あれ…」

 

 

 

 

 

簪が指を指す方向を見ると、箒達の5つのドアの真下が黒い闇に染まり沈むようにドアを飲み込んだ。そして、新たに黒い扉が空を向くように地面に現れた。

 

 

 

 

 

「こ、これが…」

「新華君の扉? 今までのと違って開けたら下に落ちる感じね。それに…」

「な、なんか禍々しいわね。形は私達のと同じだけど、大きいし、なにより」

「真っ黒だな…。それに、嫌な感じがものすごくする。だが」

「すごく、ボロボロ…。今にも、壊れそうな…」

 

 

 

 

 

新華の扉からは禍々しい黒いオーラが発せられているように感じられた。シャルロットも例外ではなく、足が竦む思いがした。

 

 

 

 

 

『それがご主人様の扉です。ですが、やっぱり拒絶されているようですね』

「拒絶だと…?」

『はい。今のままでは誰が乗っても扉は開かれないでしょう。ですが、全員で乗れば開くと思います』

「それは大丈夫なの? 落ちて何かあったりしない?」

『………』

「…サヤカちゃん? …虚ちゃん、そっちからは?」

『駄目ですね。こちらからは何とも言えません。ですが、その扉の向こう側にIS学園のコントロールサーバーがあるようです。どのみち、入らなければならないかと』

「そう」

 

 

 

 

 

全員で新華の扉をまじまじと見る。禍々しいが、ボロボロな扉には一抹の悲しさを感じた。

 

 

 

 

 

「じゃあ、これに全員で乗ればいい訳ね」

『はい。ですがその前にデュノアさん、まずは着替える事をおすすめします』

「そうします…」

『なるべく早くお願いしますね。皆さん、気付いていますか? ご主人様の扉にある傷、進行しているのが』

「「「「「「えっ!?」」」」」」

 

 

 

 

 

改めて一夏達が扉を見ると、ビキビキと小さく音を立てて傷が進行していた。

 

 

 

 

 

「こ、これは…」

『急いでください。急がないと、間に合わなくなります』

「っ! 急いで着替えてくるね!」

 

 

 

 

 

シャルロットはサヤカの言葉に焦りを感じ木陰に移動して制服に着替える。サヤカの言葉はいつか夢で聞いた事があったから。

そしてすぐさま着替え一夏達と合流する。そして、新華の黒い扉の上に全員で乗る。しかし扉は開かなかった。

 

 

 

 

 

「…開かないけど」

『まず、ご主人様の事を思い浮かべてください。そしてここ最近のご主人様の事を思い浮かべてください』

「ん…」

『…思い浮かべましたか? そうしたら、ご主人様に言いたい事を言って飛んでください。同時にですよ』

「…それでこの新華のドアが開くのか?」

『はい。大丈夫です。あとは、あなた達次第です。ですがなるべく急いでください。時間が無いので』

「…分かったわ。それじゃ、虚ちゃん、後は頼むわね」

『分かりました。いってらっしゃいませ』

「ええ。……皆、大丈夫?」

 

 

 

 

 

楯無がそう言い皆の顔を見て確認を取る。全員頷いたのを確認してタイミングを合わせる。

 

 

 

 

 

「それじゃあ『せーの』で飛ぶわよ。いいわね? ちゃんと新華君に言いたい事も言える?」

 

 

 

 

 

また全員が頷く。そして、飛ぶ。

 

 

 

 

 

「じゃあ…せーのっ!」

 

 

 

 

 

一夏から順に箒、鈴、セシリア、ラウラ、シャルロット、楯無、簪が叫ぶ。

 

 

 

 

 

「新華! 今助けてやる! いつまでも守られている俺じゃないんだ!」

「まだお前には借りがある! だからではないが、助けるぞ!」

「たまには私達に助けられて、素直に戻りなさいよ!」

「一種の恩返しですわ! 少々の我慢を!」

「以前の暴走時の借りを返すぞ、新華!」

「僕の気持ちを聞いてもらう為にも、今行くよ、新華!」

「もう無理しなくていいから、ちゃんと私を頼って、新華君!」

「新華君…! まだ、一緒に居たいから、待ってて…!」

 

 

 

 

 

8人の足が扉を叩く。そして扉が勢い良く開き、8人は闇へと落ちていった。

 

 

 

---side out

 

 

 

 

 




次回でようやく過去バレ…。長かった…。
過去バレかましてトゥルーエンドを迎えたら、いちゃえろが待ってる予定です。ただ、その前にBAD ENDを書くかもしれません。

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