IS~疾走する思春期の転生者~   作:大2病ガノタ

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103話。

とあるヲタ仲間「PSPのゲームでISとAngel Beats! 出るけど、どっち買う?」

ガノタ「Beats一択で」即答

-追記-
メールにて
ガノタ「おいこら、調べたらPSPじゃなくてPCじゃねーか」

ヲタ仲間「え、マジで?」

ガノタ「だとしてもISは買わないがな! それよりクアンタの改造用にHGのFX、もしくはスタークジェガンが欲しい」


喪失

 

 

 

新華は深い闇の中に居た。深い闇の中を漂うように、目を閉じていた。

 

 

 

 

 

「…………んぅ」

 

 

 

 

 

闇の中で新華は目を覚ます。辺りを見渡して、自分しか居らず、自分が何も着ていない事に気付く。

 

 

 

 

 

「…おお、なんだここは? …寒いな…っと」ダンッダンッダンッ

 

 

 

 

 

新華はP・V・Fエゴ・アームズ『ストーリーズ・イレギュラー』を展開して内観還元力場を纏う。しかし内観還元力場が発生したにも関わらず、体が酷く重く感じられた。

 

 

 

 

 

「何だ? ダルイ…。というか俺はこんな所で何をしているんだ? それにこの空間…誰かのS・Sか? だとすれば、早く脱出しないとな。しっかし、暗いなここは」

 

 

 

 

 

辺りをもう1度見渡し目を凝らす。しかし、何も見えなかった。

 

 

 

 

 

「…ふぅ。駄目だこりゃ。せめて、何かしらの変化があればいいんだが…もしかして、何の変化も無く長時間この世界に留まらせて発狂させるのが目的とか? うっわ、きっついなぁ…」

 

 

 

 

 

P・V・Fを展開していない左手で頭を掻く。しかし何もしないより何かをするべきだと思い動く。

 

 

 

 

 

「誰か見てるかもしれんが、俺のS・Sには純粋な攻撃力と誘爆における攻撃範囲の広さが売りなんだ。コンテナにみっちり詰まった対構造物徹甲弾のミサイル、その中には精神系爆薬が詰め込まれている。もしコレが空間全体に広がったら…」

 

 

 

 

 

自身のS・Sの説明をして反応を伺う。しかし何の変化も起きない。

 

 

 

 

 

「…ハァ。こりゃ、本当に撃つしか無いかね? いいのかー? 本当に撃っちまうぞー?」

 

 

 

 

 

セレクターレバーをS・Sにセットしコンテナを出す。

 

 

 

 

 

「…さーて、派手に行きますか。………ん?」

 

 

 

 

 

新華はそこでようやく空間に変化が起きた事にある種の安堵を感じた。

 

 

 

 

 

「ふぅ、ようやく何か起きるのか。やれやれ。さて、鬼が出るか蛇がでるか…」

『………! ………ん!』

「? 声? 誰のだ?」

『……君! 新華君!』

「俺の名前を…? そういえば、俺はこの空間に来る前は何をしてたんだっけ?」

 

 

 

 

 

声の方を向くと白い光が自分に向かって広がっていた。しかしその光から離れなければいけない気がした。

 

 

 

 

 

「ってそんな事言ってる場合じゃないかも…? あ、今度はどんどん体が重く…」

『新華君! 新華君!』

『新華! 新華!』

「あー…五月蝿い。何だ? この子供の声は。それにこの光、妙に暖かいな…」

『ご主人様! ご主人様ぁ!』

「ご、ご主人様ぁ!? 何だ、何がっ!?」

 

 

 

 

 

狼狽えている間に新華は光に飲まれる。体も完全に動かなくなり

 

 

 

 

 

「あー…駄目だこりゃ」

 

 

 

 

 

目を瞑った。その光に身を任せ意識を手放した。

 

 

 

 

 

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---side 一夏

 

 

 

 

 

一夏は新華が倒れてから1週間が経過したこの日、新華の眠る病室に専用機持ち全員で足を運んだ。最近一夏達は新華にこれ以上の負担を掛けられないと猛特訓の日々を過ごしており、新華の傷ついた姿を思い出しては鍛えるという行程を繰り返していた。

新華の御陰で皆ISの損傷はそれ程無く、だが激しい戦闘で内部損傷がありメンテナンスが必要だった。故にサヤカから新華が毎日行なっていた鍛錬の内容を聞いて、それのランクダウンしたトレーニングを行なっていた。

今日はトレーニングでくたくたになったものの何とか授業を消化し、丁度1週間だということで皆揃っていた。皆疲労が顔に出ており眠そうだった。

 

 

 

 

 

「ね、眠い…。新華はコレを毎日やってたんだろ?」

「はい。それもあなた達とは違って重りを着けたうえに、ソレスタルビーイングと生徒会の仕事、私と追加武装の調整や新型の設計も並行されてました」

「ホント、聞いただけでも気が滅入るわ。同理で勝てない訳よ。地力がそもそも違ううえ経験も段違い。普段寝るのも納得だわ」

「しかも人の感情の変移にも敏感でフォローも出来、相手を思いやる…。同年代とは思えない程に完成されてますわね」

「でも自分自身を顧みないのは止めて欲しいよ。見てるこっちが辛いんだからさ」

「そうね…。それほどまでに私達は頼りなく新華君に写ってるのかしら」

「…新華君…」

 

 

 

 

 

簪は新華の右手を握る。皆新華がやっていたトレーニングをやって新華の凄さを再確認し、同時に新華が無理し過ぎだと思った。

1週間前に新華が意識を失った時間になる。すると今まで何の反応もしなかった新華に変化が起きた。

 

 

 

 

 

「………んぅ」

「「「「「「!!」」」」」」

「い、今の…」

「ああ。新華が…」

「新華君!」

 

 

 

 

 

小さく声を出して首を動かした。1週間全く動かなかったのを考えると、一夏達は泣きそうになった。簪を筆頭に声を掛けていく。

 

 

 

 

 

「新華!」

「新華君…!」

「新華ぁ!」

「ご主人様!」

「………」

 

 

 

 

 

声が聞こえていないかのように静かになる新華。また眠ったと思えば、簪が握っていた右腕が薄く光り出した。

 

 

 

 

 

「これ…?」

「それは…簪さん、離れてください」

「え、あ、うん…」

 

 

 

 

 

簪が手を離し離れると、音を立ててP・V・Fが右腕に召喚される。一夏と楯無は既にサヤカ無しでの召喚を見た事があったが、専用機持ち達と共に驚く。

 

 

 

 

 

「えっ、P・V・F? どうしてサヤカが人になったままで展開を…」

「…ご主人様、ご主人様!」

「………んぐぅ」

 

 

 

 

 

サヤカが新華の顔の横で呼ぶ。新華はうるさいと言わんばかりに顔を顰める。そして一夏達も新華の名前を呼んでいく。

 

 

 

 

 

「新華! 新華!」

「新華君!」

「ご主人様!」

「…ん、ふぁあああああ。何だよ、静かに寝かせろよ…」

「新華、君…!」

「ぅあああああああ…いててててててて、左腕に何か刺さって…あ?」

「目が覚めたのね! よかった…!」

 

 

 

 

 

新華が起き上がりP・V・Fを展開したまま頭を掻こうと左手を頭まで上げるが、栄養注入用のチューブが刺さっており声を上げた。そして、一夏達を見てキョトンとした顔になる。

 

 

 

 

 

「新華、どこか痛む所はあるか!?」

「え? あ、ああ。取り敢えずナースコールしてもらえると助かるんだが…」

「あ、ちょっと待ってなさい! 今保険の先生呼んで来るから!」

「保険の、先生? ここ、病院じゃないのか? ってか…」

「………新華君?」

 

 

 

 

 

楯無は新華のおかしさに気付いた。以前のような険しい雰囲気が無くなり、変わりに戸惑いの色が目に宿っていた。

 

 

 

 

 

「あー…君たち(・・・)、ちょっといいか?」

「ご主人様…? まさか…『---聞こえますか!?』」

「…そっちの彩香先生似の女の子は、取り敢えずそのご主人様ってのをやめてくれ。むず痒い」

「!?」

「し、新華君…!?」

「な、何を言ってるんだ、新華!?」

 

 

 

 

 

サヤカは自分の脳量子波が届いていない事と新華が自分を愛機と認識出来ていない事にショックを受ける。一夏達も戸惑うしか無かった。

しかし楯無の頭の中には1つの予想が立つ。

 

 

 

 

 

「新華君、まさか、記憶を…」

「? 俺の記憶はちゃんとしっかりしてるぞ。(…『エリシュオン』登録パラベラムNo.0000008 元城戸高校1年、フライト『映画部』のメンバーで現在(・・)『城戸孤児院』院長補佐を務める、青木 新華19歳…)うん。ちゃんと覚えているな」

「「「「「「………、え?」」」」」」

「だけど俺は確かにあの時心臓を貫かれた筈だけどなぁ…。なのに傷は跡形も無い。それどころか見たことの無い制服を着た奴らがこんなに…」

「見たことが、無い…?」

「ってか、さっきから話してるけど、君ら誰?」

「「「「「「っ!?」」」」」」

「それにここ何処の病院? あ、P・V・Fいつまで展開してんだ俺」

 

 

 

 

 

病室の空気が氷り、新華がその空気を気にせずP・V・Fを解除する。一夏達は新華がどうなってしまったかをじわじわと理解する。

 

 

 

 

 

「記憶、喪失…」

「だーかーらー、俺は記憶失ってないっての。訳分からん事を言うなよ」

「…うぇ、ひぅっ」

「うぇい!? ナンデ? ナンデナクノ!?」

 

 

 

 

 

簪が思わず泣き出してしまう。新華はあたふたと慌て、簪の頭に手を置いて撫でる。

 

 

 

 

 

「ふぇっ」ポン、ナデナデ…

「ほらほら、泣くんじゃないよ。スマイルスマイル。女の子は笑顔の方が可愛いんだから。な?」ニコッ

「あう、あうぅ…」///

「どうなって、いるんだ…」

 

 

 

 

 

一夏は呆然としたように呟く。他の専用機持ち達も同じだった。しかしサヤカだけは違ったようで

 

 

 

 

 

「そう、ですか…。まだ、お休みになられるのですね…」

「ん?」

「わかりました。私が、ご主人様が帰ってくるまでお守りします。だから、だからぁ…」

「おいおい…こっちも泣…かないのか? というかイマイチ状況が掴めないんだが…そこのイケメン君」

「い、イケメン君…?」

「ちっとばかし質問に答えてくんね? 状況の整理がしたい」

「あ、ああ…」

「すまんな。ヨロ」

 

 

 

 

 

以前とはうって変わって爽やかな感じの新華に戸惑う一夏。正直一夏達も新華の状況が知りたいので質問に答える事にした。

 

 

 

 

 

---side out

 

 

 

 

 

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「そいじゃ、まずは自己紹介から。俺は青木 新華。『選択戦争』を終わらせた救世主『佐々木 一兎』の友人にして1人のパラベラムだ。記憶がどうのは知らんが、P・V・Fも展開出来る事だしこれは変えられない事実だ。よろしく」

「選択戦争? 佐々木 一兎? 誰だ、それ?」

「…本気で知らないのか。こりゃ、もしかすると…」

「…ご主人様。その予想は正しいですよ」

「だからご主人様はやめてくれ…。で、どっちが正しいんだ? 憑依か? それとも…」

「後者です」

「やっぱりか…」

 

 

 

 

 

新華はサヤカとの会話で自分がどういう状況か理解した。不思議と新華はサヤカに嫌悪も疑惑の念を抱く事も無く、言っている事が本当だと思った。

 

 

 

 

 

「えっと、サヤカちゃんと新華君は一体何の話をしているのかしら」

「いや、こっちの話。でも君はサヤカって言うのか? これもパラレルワールドって奴なのかねぇ…」

「ぱ、パラレルワールドって」

「気にするな、俺は気にしない。んで、もしそうなら俺は記憶喪失で合ってるのか。面倒なこって…」

「…自分の状況を、理解したの?」

「かなりカオスって事はな。取り敢えず記憶喪失と分かったら君らも自己紹介してくれねぇか? 何も覚えてないから君らの事も分からん」

「え、えっと…?」

「今度はわたくし達の方が、訳分かりませんわ…」

「あ、俺とサヤカちゃん、そこの水色の娘だけ状況が分かってるのか今。すまんな。ちょっと俺は情報知りたいからそっちはそっちで整理していてくれ」

「あ、ああ」

「さ、て…」

 

 

 

 

 

新華は言いたい事を言ってサヤカに顔を向ける。右手は簪の頭を撫で続けている。

 

 

 

 

 

「サヤカちゃんと言ったな。すまんがこの世界(・・・・)の情報をくれ。ついでに俺の今までの行動を、簡潔にでいいから教えてくれると助かる」

「…わかりました。ただ今は人の耳が多いので伏せる所もありますが…」

「ん? そうなのか。もしかして、記憶失う俺が隠そうとしてた事とかある?」

「はい」

「そっか。んじゃそれは教えてくれなくていいや。今の俺じゃうっかり口に出しちゃうかもしれんから、その方向で」

「わかりました」

 

 

 

 

 

起きて直ぐの人間とは思えない冷静さと穏やかさで新華はサヤカの話を聞く体制になる。同時に手を簪の頭から退かして腹の上にて両手を組む。簪が残念そうな声を上げるが、どうしてそんな声を出すのか分からなかった。

 

 

 

 

 

「あ…」

「? なんだ、この邪気…。水色の娘と、あの金髪の娘からか?」

「むー…」

「簪ちゃん、羨ましいわね。私だってああしてもらった事は無いのに…」

「…? なんであんなに睨むんだ? まぁ、いいか。さて、話を頼む」

「…はい(記憶を失ったせいで鈍感に戻ってしまわれている…)」

 

 

 

 

 

サヤカはかなり深刻な問題を発見するが、新華は首を傾げてキョトンとするだけだった。急激にため息を吐きたい衝動に駆られるが、我慢して新華に今までの事を話すのだった。

 

 

 

 

 

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サヤカから『白騎士・蒼天使事件』、IS、IS学園、サヤカ自身の事、今世の新華自身の事、今どうして病室にいるかを聞いた新華は、1つ言いたくなった。

 

 

 

 

 

「何だこの3流エロゲみたいな環境は…。設定も頭悪過ぎだし…なんだよ女尊男卑とか。IS無いと何も出来ない奴らが何威張ってんだか。それにこの世界の政府も馬鹿ばっかだな。小娘1人に出し抜かれて女尊男卑になるのを止められないとか…しかも現代兵器を捨ててスポーツ(笑)の筈のISに頼るとか…。これじゃ狂った事してた分やる事はやってた『灰色領域』の方がまだマシだ」

「…記憶を失う前と同じ事言ってますね」

「当たり前だろ? あっちは狂ってたけど敵に対する対抗手段は確立出来ていた訳だし、そこから暴走していただけだ。それにあまり話した事無かったけど、生き残りのトップは罪の自覚をしてたしマッドサイエンティスト共は皆死んでた。あっちは結果オーライなんだよ。それと比べこっちは敵の居ない優しい世界で醜く自身の欲望だけを撒き散らしてばかりで…恥ずかしいとは思わんのかね」

「思っていたらこんな世界にはなってませんよ」

「デスヨネー。ただ、一番の問題は『ガンダム』作品が無い事だよ…。俺の趣味の8割が存在しないってどういう事だコラ」

「その代わり私というガンダムに乗れるのですから…」

「だとしてもなぁ…。ガンダムは一種の憧れでロマンだし、2次元だから楽しめたっていう部分があったからなぁ…。実際に乗るとなると、複雑だよなぁ…。しかもISサイズって事はパワードスーツ扱いなんだろ?」

「はい」

「操縦桿を握って叫ぶのが醍醐味なんだけどなぁ…。仕方無いって言えば仕方無いんだろうけど、なんかこう、物足りないよなぁ」

「それを私に言われても…」

「ま、今までの経験からむしろ操縦桿とかで動かすより楽だろうけどな。聞けばP・V・Fに対応してるって言うし、これ以上の贅沢は言うまい」

 

 

 

 

 

体をベットに沈め小さくため息を吐く。そして一夏達の方に顔を向ける。

 

 

 

 

 

「そっちは整理付いたかー?」

「あ、ああ。一応な」

「そうか。んで、そっちはもう分かってるみたいだけど、俺記憶喪失らしいから自己紹介してくんね? 世界情勢は理解したし立ち位置も理解したけど細かい個人の事までは分からんから」

「…本当に覚えてないのか?」

「無い。君らを庇った結果、今の俺が居るらしいけど本当にそんな実感無いんだよなぁ。だから、今更だとしても自己紹介してくれ。頼む」

「………わかったわ。サヤカちゃんから説明受けている時の様子は、本当に初めて聞く人のものだった。記憶喪失も本当みたいだし、取り敢えず自己紹介しましょうか」

「うん…」

 

 

 

 

 

新華が体を起こして話をする体制に戻る。

 

 

 

 

 

「じゃあまず俺から。俺は織斑 一夏。新華とは幼馴染でIS男性操縦者の1人やってる。…新華に昔から守られてばっかりだから、強くなりたいってずっと思ってる」

「ほうほう…。その思いを持ち続けている時点で、十分強いさ」

「え?」

「はい、次は誰?」

「…私がいこう。私は篠ノ之 箒。同じく新華と幼馴染で、姉さんである篠ノ之 束が世話になっていたらしい」

「みたいだな。今回もその巫山戯た子供博士の仕業らしいし…お灸を据えてやらないとな」

「お、お灸だと…?」

「んで、次は?」

「では、わたくしが。わたくしはセシリア・オルコット。イギリスの代表候補生にして専用機『ブルー・ティアーズ』の操縦者ですの。改めてよろしくお願いしますわ」

「あいよ。よろしく。はい次ー」

「んじゃあたしね。あたしは凰 鈴音。一夏と同じく幼馴染で、中国の代表候補生やってるわ。ってやっぱりこうして新華に自己紹介するのって何か恥ずかしいわね」

「我慢してくれ、な? んじゃ次ー」

 

 

 

 

 

どんどん順番に自己紹介をしていく。しかし記憶を失ったとはいえ新華に自己紹介をするのは違和感があり恥ずかしさがあった。

 

 

 

 

 

「では次は私がやろう。私はドイツ軍特殊部隊所属ラウラ・ボーデヴィッヒだ。新華の御陰で随分と助けられた事もある」

「………軍人? その年で?」

「ああ。私はデザインベビー、試験官から生まれた存在だからな。だが、今は1人の女として生きている。お前の…いや、記憶を失う前のお前にな」

「………そうか。今ちゃんと生きて未来を見れるならいいか。…サヤカちゃん、その施設は?」

「既に閉鎖されて現在は廃墟です」

「そっか。後はドイツの問題だし、俺の気にする事じゃないか。よし、次」

「あ、それじゃあ僕が。僕はシャルロット・デュノア。フランスの代表候補生をしてるんだ。新華には沢山助けてもらってね…」

「らしいな。サヤカちゃんから聞いたよ。結構波瀾万丈な人生送ってるな。おし次ー」

 

 

 

 

 

シャルロットの自己紹介すら簡単に流して更識姉妹の自己紹介を待つ新華。孤児院を運営する際に必要なスキルの中に、保護した子供の顔と名前を早く覚える事があった故にスルースキルは取得していた。

 

 

 

 

 

「それじゃあ先に簪ちゃん、言っちゃって」

「う、うん…。私は、更識 簪。えっと、日本の代表候補生で、新華君に機体を作る手伝いと、お姉ちゃんと仲直りする切っ掛けをくれたから…うう」///

「? 何顔を赤くしてるの?」

「う、ううん! な、何でもな…い? あ、あれ?」

「? そっか。じゃあ次ね」

「あ…うう…」

「…これは、もしかして…。いや、でもまさか…」

「おーい、どうしたー? 最後、君だけだぞー」

「あ、ごめんなさいね。私は更識 楯無。簪ちゃんの姉でここIS学園の生徒会長とロシアの国家代表をやってるわ。(ちょっと試してみようかしら)」

 

 

 

 

 

楯無は簪の自己紹介の時に感じた新華への違和感を確認するために、ある事を言ってみる事にした。

 

 

 

 

 

「へぇ、生徒会長さんか。しかし改めて見ると、殆ど全属性揃ってんな…」

「…加えて」

「ん?」

「あなたの、新華君の彼女よ♪」

「「「「「!?」」」」」

「せ、生徒会長!?」

「お、お姉ちゃん!? まさか…」

「は? 彼女ぉ? …本当か、それ?」

「ち、違うよ! 生徒会長じゃなくて、ぼ、僕と付き合ってるんだよ!」

「「「「「!?!?」」」」」

「デュ、デュノアさん…!?」

「…で、どういうことだってばよ。実際は?」

「じ、実際には…わ、私と、つ、付き合ってるんだよ…!」

「…で、サヤカちゃん。真偽はいかに」

「「っ!」」

 

 

 

 

 

まさかの展開に一夏達は息を呑む。楯無にとっては確認ついでに新華の心を引き寄せようと、簪とシャルロットにとっては突然の楯無の発現で焦って思わず言ってしまった事だが、こうでもしないと新華の心に近付けないと思ってそのまま押し切ろうとしていた。

新華の問いにサヤカは首を振る。

 

 

 

 

 

「私からは何も言えません。黙秘します」

「えー…。そこは教えろよ」

「嫌です。誰が本当の彼女か、ご自身で見極めてください」

「…あのな、4人して俺をからかうなよ。何、そう言って俺をからかって楽しいか?」

「「「「「えっ…」」」」」

「…なんだよ、その反応は」

「「「「「ちょ、ちょっとタイム!」」」」」

「お、おう?」

 

 

 

 

 

一夏達はスクラムを組むように新華から背を向けてヒソヒソ話す。

 

 

 

 

 

「おい、あれは本当に新華か? いつもなら分かった上で返すが、あれでは…」

「ええ。まるで一夏さんのようですわ」

「いや、俺は…」

「あんたはちょっと黙ってなさい。でも確かにいつもだったら別のハッキリした返しをするわね。特に最近の新華だったら突き放すようなキツイ一言を言うのに」

「それに、私達が驚きの声を上げた時の新華の顔は、本気で分かっていない顔だった。これは、本格的に記憶喪失、マズイかもしれないぞ…」

「…シャルに生徒会長、更識さん、大丈夫だろうか…」

「…大丈夫でしょ。むしろ…」

 

 

 

 

 

一夏達がスクラムを組む後ろでは、新華に楯無、簪、シャルロットの3人が詰め寄っていた。

 

 

 

 

 

「お、覚えてない!? 僕とデートとかしたじゃん!」

「私とイチャイチャした仲じゃない♪」

「い、一緒に物作りの話で、盛り上がったよね…!」

「いや、覚えてねぇから。…なにそんなに焦ってんだよ。ほら、サヤカちゃんからも何か言って」

「いい加減ご主人様も誰かに絞れば…」

「意味深発現やめーや。って近いから。嫁入り前の女の子がそんなハレンチな事をするんじゃありません。ほら、どいたどいた」

「「「「「………」」」」」

「…記憶の改竄をしにかかってるな。心配は…ある意味、無いと言えるだろう」

「だな。これで以前の新華に戻ってくれればいいけど…」

「今度は、違う意味で大変になりそうですわ…」

「そうね…。はぁ、ようやく起きたと思ったらコレだもんね…」

「まぁ、ここ最近のように拒絶されるよりはいいと思うが…」

 

 

 

 

 

そんな事を言って呆然と新華達を見る一夏達。後に保険の先生を呼ばなかった事で千冬に説教されるのだが、今はそんな考えは浮かばなかった。

 

 

 

 

 

「いいから離れろー。ってかいい加減さ、医者呼んでくんね?」

「「「「「「…あ」」」」」」

「…私はソレスタルビーイングに連絡入れておきますねー」

「ん? ソレスタ?」

 

 

 

 

 

 




さあさあ来ました! 記憶喪失! ゲームなんて無かった!
でも新華の方は記憶失った事を受け入れますた。だって転生2回目もしたら諦めも入りますよ…。
ソレスタルビーイング、安心出来たと思ったらそうでも無かった件。

大学、すっげぇ早く終わったので、すっげぇ早く投稿できました! 
あ、でもコレこのまま展開を進める予定なんですが…BADにならない気が…

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