IS~疾走する思春期の転生者~   作:大2病ガノタ

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書いた当初はここまで来るとは思わなかった! 100話です!
次回から1、2話程ストーリーの都合上新華sideが無くなります。
今回で新華も亡くなり掛けます。

一昨日の成人式+中学の同窓会楽しかったなぁ…皆変わってる奴変わらない奴ハッキリしすぎて笑ったwww
ただ、知り合いがイケメンになりすぎてて衝撃が…。中学の時と比べて人間としての価値が、置いてかれた…。


エゴ

新華の介入により専用機持ち達(一部を除く)は難を逃れた。しかし騒動が終わった訳では無かった。

新華を中心にしてゴーレムⅢが囲み、その外側を更に専用機持ち達が囲んでいる。新華が怒鳴った直後、ゴーレムⅢ達は一斉に脹脛の後ろから筒のようなものを出しその場で破裂させる。周囲に緑色の煙幕のような粒子が撒かれた。

 

 

 

 

 

「!? まさか…」

 

 

 

 

 

新華は急速に広がる粒子を見て、すぐさまGNソードⅤをライフルモードに変更、ビームを撃つ。しかしビームは粒子に当たると拡散し消え去ってしまった。

 

 

 

 

 

「「「「「「!?」」」」」」

「GN攪乱幕…! (しまった! 擬似GNドライブが作れるのだから、GN攪乱幕(コレ)が使える事も想定するべきだった!)」

 

 

 

 

 

ゴーレムⅢが破裂させたのは、対クアンタ用兵装『GN攪乱幕』。普段は太腿に隠されクアンタの姿を認識し戦闘に入る時は使用するようプログラムされていた。

 

 

 

 

 

「…ビームを防いだ程度で俺を倒せると? …甘いな」

 

 

 

 

 

新華は2振りのGNソードⅤの柄を連結し1セット分のファングを半分ずつ、左右反対になるよう連結させる。

 

 

 

 

 

「(こういう使い方も出来るんだよ!)」

 

 

 

 

 

思い切り後ろに下げ体を捻って連結したGNソードⅤ+ファングを投げ飛ばす。回転運動を付けられたそれは、ファングによるGN粒子の噴射で回転速度を増し凶悪なブーメランとなってゴーレムⅢを襲う。

しかしゴーレムⅢも大人しく攻撃を受ける訳ではない。地を蹴りフルセイバーの上を通り過ぎる。しかしそこに対構造物徹甲弾の嵐が襲いかかる。それを可変シールドで防ぎ熱線を発射する。

 

 

 

 

 

「(舐めるな!)」

 

 

 

 

 

対構造物徹甲弾は人体に影響を及ぼさない。故に新華はゴーレムⅢが作る円の外側に居た一夏達専用機持ち達を気にせず撃てた。ISに当たろうと操縦者が無事ならいくらでも修理は出来ると、以前新華が五反田食堂で言った『人はISの消耗品』の真逆を行く考えだった。

残りの4機も動く。特に更識姉妹と新華によって中破している個体は大型ブレードしか無く、無人機としての特製を活かした近接戦闘しか出来なかった。しかし残った個体は新華に熱線を浴びさせようと左腕を突き出し撃つ。

撃たれた熱線は吸い込まれるように新華へと向かう。そしてそれらを新華はゴーレムⅢに劣るものの変態機動でギリギリ躱して、眼前に迫る大型ブレードの側面を大型ハンドユニットで殴った。

 

 

 

 

 

「(遅い!)」

 

 

 

 

 

殴った勢いをそのままに、がら空きになったゴーレムⅢの胴体に回し蹴りを決め吹き飛ばす。その先に居たのは一夏とセシリア。

 

 

 

 

 

「セシリア! 一夏!」

「はいっ!」

「でああ!」

 

 

 

 

 

中破していたゴーレムⅢはセシリアの狙撃で楯無に開けられた穴を抉られ、一夏の零落白夜で切り伏せられた。

残りのゴーレムⅢは4機。

 

 

 

 

 

「まず1つ(装甲越しに熱が伝わってくる…。こりゃ、何度も喰らえないな。サヤカもオーバーヒートするし俺も耐えられなくなる)」

『------』

「(装甲自体のダメージは微々たるもの…。だが密閉された内部の温度は操縦者()を殺す。それに…)」

 

 

 

 

 

飛んでくる熱線とブレードの乱舞を躱していなす。横目で流れ弾に当たらないようにしながら射撃で牽制する専用機持ち達を見る。

 

 

 

 

 

「(牽制は有難いものの、絶対防御を持っていない会長達は正直邪魔だ。流れ弾に気にして戦わなければならない。なるべく、射線を通さないようにしなければ…)」

 

 

 

 

 

ブレードで切りかかってくるゴーレムⅢの背後から新華が最初に飛ばしたGNソードⅤ+ファングが戻ってくる。ゴーレムⅢはそれを回避し新華に刃が迫るが

 

 

 

 

 

「(甘い!)」

 

 

 

 

 

新華はクアンタのつま先で連結部を引っ掛け、回転の勢いを殺さない様に強引に方向転換をさせ、避けたゴーレムⅢに向けて再び飛ばす。

 

 

 

 

 

「(当たれぇ!)」

 

 

 

 

 

背後から熱線が撃たれるがシールドユニットを並べて防ぐ。3重にしたISのシールドを破壊した熱線は、GN粒子の恩恵を受けたEカーボン装甲で出来たシールドを貫く事が出来ず表面装甲の温度を急激に上昇させて終わる。

GNソードⅤ+ファングはゴーレムⅢに迫るが別の個体が熱線で機動を逸らしてブレードと可変シールドを切り裂いて終わる。

 

 

 

 

 

「チッ(だがこれであの個体は射撃しか出来なくなった。後は適当に弾いて一夏達に破壊させれば)………っ!」

 

 

 

 

 

舌打ちした新華に、先程まで熱線を放っていたゴーレムⅢが全機、ブレードによる突撃を開始した。全機絶妙な時間差のタイミングで新華に突きを繰り出す。突然変わった連携に新華は、カウンターをする暇も無く回避した。

何機もの個体が突き、切り裂こうと新華の回りを飛び回る。同時に熱線も飛び、当たらずともクアンタの温度は上がっていく。

 

 

 

 

 

「くっ、調子に、乗るなっ! (高速の乱舞でクアンタの装甲を削る気か! 今は温度の上昇で表面がっ!)」

 

 

 

 

 

ブレードの1つが背中のシールドにかすり小さな傷を入れる。新華はGNソードⅤ+ファングを回収してゴーレムⅢ達の乱撃を強引に中断させると、ファングを回収しチャージが終わったファング2セットを射出しフルセイバーユニットをカタールモードで両手に持つ。

 

 

 

 

 

「(このままだといつか…………GNドライブをやらせる訳にはいかない!)行け、ファングゥ!」

 

 

 

 

 

ファングの斬撃がゴーレムⅢ達を襲おうと放たれる。しかしファングが放たれた瞬間、ゴーレムⅢ達は攻撃対象を新華から専用機持ち達に変更して熱線を放つ。

 

 

 

 

 

「(何っ!? 間に合え!)」

 

 

 

 

 

ファングがゴーレムⅢへの攻撃を止め専用機持ち達の前でシールドを張る。4機がそれぞれ熱線を発射したが、3つはファングのGNフィールドで、残りの1つは新華が大型ハンドユニットのクリアパーツ部分をせり上げフィールドを展開、最も近くに居た箒とシャルロットの前に出る。

 

 

 

 

 

「「新華!?」」

「(これでも精一杯か…!)」

 

 

 

 

 

GNフィールドで熱エネルギーの塊は防げても、熱自体は減衰されて通る。超圧縮された熱は、減衰されても相当な熱さで生身の専用機持ち達に襲いかかる。

 

 

 

 

 

「くっ、今すぐ離れろ! 邪魔だ!」

「なっ!?」

「守りながらは苦手なんだ! いいから離れろ!」

「ぐっ、デュノア、ここは悔しいが新華の言う通りだ…。絶対防御の無い私達では足で纏いになってしまう」

「で、でも…」

「早く、しろ!」

 

 

 

 

 

しかしシャルロットと箒が動く前にゴーレムⅢが動いた。ブレードを破壊された個体を含めた2機が瞬間加速で熱線を防いでいる新華の左右に陣取り、残った1機が箒とシャルロットを突き飛ばす。

 

 

 

 

 

「ぐあっ!」

「あぐぅっ!?」

「なっ!? 一夏、会長!」

「分かってる!」

「殺らせないわ!」

 

 

 

 

 

一夏は箒の、楯無はシャルロットの前に立ちゴーレムⅢを狙いそれぞれ荷電粒子とガトリングを撃つ。更に簪がマルチロックオンでゴーレム4機に向け同時にミサイルを放ち、鈴の衝撃砲とラウラのレールカノンが火を吹く。

その砲撃でゴーレムⅢ達は離れるが、そこに新華が追撃を加えた。

 

 

 

 

 

「(逃がすか!)」

 

 

 

 

 

ファングを回収、大型ハンドユニットを2つ共飛ばしカタールを呼び出す。ハンドユニットは可変シールドに阻まれ明後日の方向に飛ばされるが新華は無視した。カタールでゴーレムⅢの1機を斬ろうとする。

だが、狙ったのとは反対側の機体が頭部の角のような部分から隠しワイヤーを射出、新華の右腕を絡め取る。

 

 

 

 

 

「!? (何だ、何を!?)」

 

 

 

 

 

目の前の機体が離れ、箒とシャルロットを突き飛ばした個体がワイヤーを射出、新華の左腕を絡め取り大の字にさせる。

 

 

 

 

 

「(この程、度!?)かっ、がああああああああああああああああああああああああ!??!?!?!?」

「「「「「「新華(君)!?」」」」」」

 

 

 

 

 

バチバチバチ…と、一夏達の影が出来る位に高出力の電撃が新華に流れる。新華の意識と肉体が一瞬で限界になろうとしていた。

多くの戦場をくぐり抜け、2度も死んだとしてもこの電撃は経験した事の無いもので、更にこの攻撃でサヤカの意識も途切れ途切れになった。

 

 

 

 

 

『----…--、------』

「ぎぃっ、ぐが、ああああああああああああああああああ!!!!!」

「くそぉ! 白式ィ!」

「打鉄弐式…!」

 

 

 

 

 

一夏と簪が新華を拘束しているゴーレムⅢを射撃で攻撃する。しかしそれらは残ったゴーレムⅢの1機の可変シールドと熱線に防がれる。

 

 

 

 

 

「邪魔だ! 退けよ!」

「ぎっ、があっ…!」

 

 

 

 

 

新華は許容範囲以上の電撃によって意識を刈り取られる直前だった。新華は白目をむき走馬灯を見る。

 

 

 

 

 

「(虐められて、希望を見て、死んで、生まれて、虐待されて、殺して、得て、失って、また得て、また死んで…)」

 

 

 

 

 

1度目の人生とパラベラム世界での人生。そして今いるこの世界。

 

 

 

 

 

「(希望を、憧れの未来を持っている奴らが居た。後ろで生きている奴らは俺の、出来なかった憧れの生き方が出来る。ああ、そうだ。俺は、一夏達に、俺が出来なかった生き方を見ていた。一夏達に希望を見出すと同時に、憧れていたんだ。簡単な事を、最近忘れて、俺は…)」

 

 

 

 

 

急速に回る記憶。そして再び味わう喪失への落ちる感覚。一瞬だけ見えた視界には、残った1機のゴーレムⅢがブレードを構え真っ直ぐに新華へと突き進む姿だった。

 

 

 

 

 

「(また、終わる? 俺が今終われば、後ろの奴らはどうなる? 今まで俺が与えてもらった人生を自分で潰してまで守ったモノはどうなる? 終わる? 終わるは、死。死ぬ? 俺の希望が、また、死ぬ?)」

 

 

 

 

 

新華はスローになる視界で思考を巡らせる。死。新華が恐る死は自身の死ではない。新華が勝手に決めた新華自身の希望の死。新華の憧れた、人としての青春を自由に送れる一夏達の死、喪失。たとえそれが自分の死後だとしても、新華には耐えられなかった。

途切れかけていた意識を強引につなぎ止める。同時に思考を妨げる電撃の痛みも戻ってきた。が、

 

 

 

 

 

「ぐっ(歯ぁ食いしばれ、青木 新華…まだ、死ねねぇだろう!)」

「新華! 今助けるから待ってろ!」

「この機体は私と鈴、篠ノ之で抑える! 早く行け!」

「動いて、新華君! でないと、死ぬわよ!」

「新華! 早く逃げて!」

「新華君…!」

「新華! 一夏が行くから、踏ん張りなさい!」

 

 

 

 

 

専用機持ち達の声が自分の存在を伝える。それだけで、新華は意識を引き戻す事が出来た。それだけで、力を振り絞れた。

 

 

 

 

 

「お、俺は…、俺は!!!!」

 

 

 

 

 

ワイヤーで絡まれた腕の装甲どころか、クアンタ自体を解除し拘束を逃れる。ワイヤーを出していたゴーレムⅢは引いていた力そのままに後ろに後ずさる。それが、新華の行為に驚愕し引いているように見えた。

IS同士の戦闘でISを解除するのは自殺行為である。だが新華はそもそもISを必要とした理由はP・V・Fのカモフラージュである。

 

 

 

 

 

「死ねるか…!」

 

 

 

 

 

---P・V・Fは正式名称『サイコバリスティック・ファイアアームズ』。殺意や闘志を銃の形にして物質化することが可能な特殊能力。そして、その能力の使い手を『パラベラム』と言う。

新華の展開するのはエゴ・アームズ『ストーリーズ・イレギュラー』。新華のエゴを物質化し形作られた、徹底的な破壊を求めた銃器。新華の心の象徴。

そして今の新華のエゴは

 

 

 

 

 

「まだ希望の先を、見届けたい未来(明日)があるから!」

 

 

 

 

 

迫るブレードを狙って『ストーリーズ・イレギュラー』を突き出す。新華の狙い通りブレードの先端と砲口の集まった先端はぶつかり合い、新華だけが吹き飛ばされた。しかし新華は一瞬の反射で1つだけドラム型マガジンをセットし撃つ。ゴーレムⅢの胴体を正確に狙撃しコアを打ち抜いた。

瞬間加速によって大きな運動エネルギーをそのまま叩きつけられた新華は、アリーナの壁まで飛ばされめり込んだ。呼吸が一瞬出来なくなる。

 

 

 

 

 

「かはっ…」

「新、華、君…?」

「………」

 

 

 

 

 

めり込まれたまま動かない新華。新華の頭と口から血が出てくる。パラベラムの持つ内観還元力場でも衝撃は軽減出来ても無には出来ない。

 

 

 

 

 

「(ザマァねェな…。啖呵切っておきながらこの体たらくかよ…)」

「新華君…!」

「新華! くっそおおおおおおおおおおおおお!!!」

「………ゆる、さ、ない…、許さない…!」

「織斑君! 簪ちゃん!」

 

 

 

 

 

壁から剥がれ落ち、新華は再び薄れる意識の中、一夏と簪の怒りの声を聞いた。それはまるで、早苗を失った時の睦美のようだった。

 

 

 

 

 

「あ…の、馬鹿…ども…」

「新華君!? 駄目! 今は喋っては駄目よ!」

「ぐっ(駄目だ、アレでは…)」

「一夏、更識! あたしたちも…!」

「ああ! 行くぞ!」

「もう黙って居られないよ!」

「一夏、今行く!」

 

 

 

 

 

他の専用機持ち達が一夏達を追って飛び出す。しかし新華は楯無に壁に背を預けるように置かれる。

 

 

 

 

 

「(駄目だ。今のあいつ等じゃ死んでしまう…。P・V・Fは、まだ行ける)ぐっ…」

「動かないで! ………待ってて。直ぐに終わらせてくるから」

「会、長…(駄目だ、行くな…)」

「…今行くわ、簪ちゃん!」

 

 

 

 

 

楯無も飛び出してしまう。新華は声を出そうとするが、衝撃で内蔵にダメージが入っていた事で上手く喋れなかった。

 

 

 

 

 

「(これじゃあ、どっちが邪魔だよ…。まだ、動くだろ。俺は、ここでまた、また…)」

 

 

 

 

 

新華は今の状況にデジャヴを感じる。それは、前世で戦争初日の事。早苗が目の前で死んだ時。新華はその時、死んだ人間達の声を1度に聞いて動けなくなっていた。

今と同じように壁にもたれ掛かり、少し回復していても足で纏いになる故、早苗を守るようにじっとしていた。睦美の危機に早苗が飛び出そうとしたが、新華は腕を掴んで止めた。しかし、早苗は新華の腕を振り払い睦美を庇って----

 

 

 

 

 

「っ! ぁああ!(また、また! またあんな事にしたくない!)」

 

 

 

 

 

襲撃してきた『センパイ』『ツバメ』が去った後、新華は睦美に思い切り殴られた。避けなかった、避けれなかった。お互いに泣いていた。守れなかった事、目の前で死なせてしまった事。自分達はともかく、何の罪も持っていなかった早苗が死んでしまった理不尽への怒り。睦美は新華に罵声を浴びせ、言葉が新華の胸に突き刺さった。

後に再び合流した時、睦美は新華に感情をそのままぶつけた事を謝ったが、新華は睦美に土下座した。何度も謝った。

その時から新華は、『人殺し』という杭を胸に突き刺したまま生きてきた。戦後は生き残った宮田 彩香先生の下で、未来の希望である子供達を育てる道を選んだ。死んでしまった睦美への、せめてもの償いとして、命のバトンを未来に繋げようと思った。

 

 

 

 

 

「ま、だ、行ける、だろっ。ま、だ…!」

「ハロッ! ウゴクナ、ウゴクナ」

「セイメイリョクテイカ、セイメイリョクテイカ」

「う、るさい…。お前、ら、も、ゴフッ、手伝、え…」

 

 

 

 

 

サヤカを回収し『ストーリーズ・イレギュラー』を支えにして気合で立ち上がる新華。一夏達の上空に、新華が破壊した筈の、四肢が破壊されたゴーレムⅢが見えて、何も考えず跳んだ。

 

 

 

 

 

----

----------------

----------------------------

 

 

 

 

 

---side 簪

 

 

 

 

 

「壊してやる…!」

 

 

 

 

簪は憎悪に支配されていた。否、殺意衝動に突き動かされていた。憧れの、ヒーローである新華を殺そうとした事。新華のボロボロの姿を見て堪忍袋の緒が切れていた。

 

 

 

 

 

「ああああああああああああああああ!!!」

 

 

 

 

 

ミサイルを乱射し荷電粒子砲2門を撃ちまくる。可変シールドの防御が追い付かないくらいに。結果、ゴーレムⅢの装甲が破壊されコアが見えた。

 

 

 

 

 

「これでっ!」

 

 

 

 

 

荷電粒子砲のトリガーを引く。しかしトリガーが引かれても荷電粒子は発射されない。エネルギーが底を突いてしまった。

 

 

 

 

 

「まだっ!」

「簪ちゃん! 援護するわ!」

「お姉ちゃん…! うん…!」

 

 

 

 

 

薙刀を取り出し斬撃を放つ。ゴーレムⅢはコアをやらせまいと中破している可変シールドを展開しブレードで弾く。しかし今度は薙刀を手放さず弾かれた衝撃をそのままに回転。その間に楯無のガトリングが火を吹きゴーレムⅢのコアを狙う。

回転している間、簪は自分と同じく怒りに身を任せゴーレムⅢを破壊寸前まで追い込んだ一夏達が見えた。

 

 

 

 

 

「(行ける! 新華君をあんな風にした奴らに、勝てる…! こいつらを、壊せる…!)」

「今よ!」

「いっけえええええええええええええええ!」

 

 

 

 

 

簪は回転の勢いをそのまま、薙刀の刃をコアにぶつけた。ゴーレムⅢがくの字に曲がり薙刀を掴む。だが後ろから楯無がランスでコア上部を貫こうと吶喊し突き刺した。

 

 

 

 

 

「最後よ!」

「うん…!」

 

 

 

 

 

2人の同時の瞬間加速。それによりゴーレムⅢは完全に2つに割断され破壊される…筈だった。

上空から新たにビームが発射された。そのビームは確実に簪達を狙って降ってくる。

 

 

 

 

 

「あ…」

 

 

 

 

 

今の簪達は絶対防御が無い。故にその謎のビームを防ぐ手立てが無かった。新華の敵討ち。それが出来ると思った時にこの展開。だが簪は

 

 

 

 

 

「(新華君…。死なないで…)」

 

 

 

 

 

新華への願い。生を諦めて目を瞑る。しかし死への痛みは来なかった。

 

 

 

 

 

「………、?」

「全く…怒りに飲まれるなよ、ガキ共」

「え…」

 

 

 

 

 

新華が目の前に立っていた。それも、生身で、右腕を銃器にして。

 

 

 

 

 

「だけど、1つ謝る事がある」

「?」

 

 

 

 

 

見れば一夏達は壊れ掛けの新華の装備達に守られ、装備は完全に大破していた。一夏に至っては黒こげになったトリィが翼を畳んでビームを弾いていた。

 

 

 

 

 

「これは、俺のミスだ」

「何、をっ!?」

 

 

 

 

 

新華が簪を蹴り飛ばす。そして新華の背後に空から異形の何かが降ってきた。その異形は四肢を銀色の武装を再生したゴーレムⅢだった。

 

 

 

 

 

「出来れば、これでお前らが生きて未来を作れる事を願う」

「! 新華君、逃げて…!」

「新華ぁ! 逃げろ!」

 

 

 

 

 

 

新華は、微笑むだけで何も言わず動かなかった。

銀色のブレードが彼に迫り、貫く。新華の腹からブレードが突き出され血が吹き出た。

 

 

 

 

 

「新華君!!!!」

 

 

 

 

 

悲痛な声を上げる。新華の顔は、笑っていた。

 

 

 

 

 

---side out

 

 

 

 

 

----

--------------

------------------------------

 

 

 

 

 

新華は自身の腹から突き出るブレードと血を見る。しかし何の感情も湧かなかった。何故なら、既に何度も見ていたから。

 

 

 

 

 

「がっ、ゴフッ」

 

 

 

 

 

吐血する。新華が顔を巡らせると、楯無や一夏達専用機持ち達が絶句して悲痛な顔を見せていた。

 

 

 

 

 

「あ…………かっ(おいおい…何て顔してんだ。折角生きられてんだ。もっと喜べよ)」

 

 

 

 

 

一夏達が何かを言っていたが、新華には聞こえていなかった。ただ、左手に持った待機形態になって返事の無いサヤカを握り、手を動かす。

『no name』をそのままに、左腕に持ったサヤカを、貫通しているブレードの背中の方に叩き付ける。

 

 

 

 

 

「(サヤカ…聞こえるか…? 返事をしなくてもいい)」

『』

「(多分、これはお前の以前の姿だ。だが、あの時とは違って目的がある。自我が既にISコアという形で存在している。だから…)」

『』

「(---喰らえ)」

『      ------』

 

 

 

 

 

新華がサヤカを突き刺した所から、銀色の水晶が生える。その水晶は一瞬で広がりゴーレムⅢを覆う。しかし新華を避けるようにブレードだけが水晶に包まれた。

 

 

 

 

 

「(俺は、もう人並み以上の人生なんて要らない。だから…俺と同化するな。そのゴーレムだけ同化しろ)」

『------』

 

 

 

 

 

ゴーレムⅢはサヤカの同化から逃れようと身動ぎする。しかしサヤカの同化はその身動ぎすら無駄に終わらせ、ゴーレムⅢの全身を飲み込んだ。

ブレードに貫かれていた新華は、サヤカの同化に伴いブレードから解放され地面に落ちる。

新華自身の血でグチャという音がする。『no name』が展開されたままだったものの、新華は受身すら取れなかった。

 

 

 

 

 

「(指1本動かねぇ…。もしかして、ここで俺終了のお知らせ? まぁ、でも皆を守れたから、いいかな?)」

「新華、新華! どうしてこんな…!」

「新華君…! 血が、血が止まらない…!」

「白式! 俺にしたように新華の傷も直してくれ! でないと新華が!」

 

 

 

 

 

一夏達が新華の元へ駆け寄り、それぞれの色で彩られた装甲を赤黒く染める。一夏達の必死の呼び掛けも、新華には聞こえていなかった。ただ、無事な一夏達を見て、ただただ安堵するのみだった。

 

 

 

 

 

『---新華! 生きているか!?』

『---…らう、ら? ああ、聞こえて、いる』

「ラウラ! 新華は!?」

「大丈夫だ! まだ生きている!」

「「「「「「!!」」」」」」

『---でも、もうそろそろ限界だ…。ラウラ、皆は無事か?』

『---そんな事を言っている場合か!? 今すぐ何とかする! それまで踏ん張れ!』

『---………無事なのか?』

『---お前の御陰で全員無事だ! それよりも、血を止めねば…!』

「………そう、か。良かっ、たぁ…」

 

 

 

 

 

新華は守れた事を聞けて安心した。自分程度(・・)の犠牲で皆が守れた事が、今度こそ罪無き希望を守れた事が嬉しかった。

 

 

 

 

 

「新華! 諦めるな!」

「新華! まだ寝るな! 寝たら死ぬぞ!」

「ちょっと新華! まだアンタは生きなきゃ駄目でしょうが! こんな所で寝るんじゃないわよ!」

「新華さん! お気を確かに!」

「新華、気を確かに持って! 僕はまだ新華に言いたい事が沢山あるのに!」

「新華君…! 嫌、嫌! 行かないで…!」

「医療班、急いで! 手遅れになる前に!」

『---聞こえるか!? お前が守った者達の声が! お前に死んで欲しくない嫁達の声が!』

 

 

 

 

 

一夏達は必死に新華の命を繋ごうと必死に呼びかける。

 

 

 

 

 

『---聞こえているのか!』

『---俺って…』

「!?」

『---幸せ者だなぁ』

「新華…!?」

「ラウラ、新華は…!?」

「…馬鹿者! 幸せだと!? これがお前の…!」

「な、何を? 何を言ってるんだ!?」

「---かひゅ、ふひゃ」

「! 喋らないで…! 血が…!」

「ひ、ひひひひ」

『------ご主人様!」

 

 

 

 

 

ゴーレムⅢを被っていた銀色のクリスタルが形を取り、サヤカになる。しかしブレードに付着した新華の血も同化した御陰で、脳量子波に頼らず会話が出来る事になっていた。サヤカは新華の名を叫んで駆け寄る。

だが

 

 

 

 

『---彩香先生。俺、頑張りましたよ』

 

 

 

 

 

その言葉を脳量子波に乗せ、新華の意識は完全に闇に落ちた。

 

 

 

 

 




うわああああああああ! 新華ああああああああ!
死んでません。ただ意識はしばらく戻らないです。

最後に出てきたゴーレムⅢなんですが…ヴヴヴ2号機初戦闘を意識して戦闘させようと思ってました。でも出来なかった…。想像が足りないガノタが全面的に悪いです。
でも批判は止めてくれると有難いです…。最近ストレスのせいか髪が…。
ヌヴォオオオオ! ってなって欲しくない!

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