IS~疾走する思春期の転生者~   作:大2病ガノタ

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ようやっと99話。
多分また内容が暴走してます。
亡国機業からの襲撃って
鈴 VS 一夏 最中に始まって
キャノンボール・ファスト1年の部開始すぐ
タッグトーナメント開始前 って感じで間隔、縮んでますよね。一夏が出てから。


縮む襲撃までの時間

 

 

 

 

---タッグトーナメント当日。

新華は生徒会の1人として、以前学園祭でも使った体育ホールの壇上に立っていた。以前と違う所は副会長になった一夏が居るのと、新華の纏う雰囲気がピリピリしている事だった。

 

 

 

 

 

「それでは、開会の挨拶を更識生徒会長からしていただきます」

 

 

 

 

 

虚が司会用のマイクスタンドから離れる。新華はその後ろに整列する生徒会のメンバーの端に立っていた。

並び順は左から楯無、本音、一夏、簪、新華の順だった。

楯無は虚が下がるのを確認しマイクの前に出る。本音が睡魔に襲われ一夏に起こされているのが目立っていたが、新華は直立不動で気に留めていなかった。簪は隣に立つ新華が何に対して殺気立っているのか理解出来ていて、何も言えなかった。

新華が殺気立たせているのは、予測される襲撃に対処する為だった。学園祭が終わって以降、IS学園にもソレスタルビーイングにも襲撃や何らかのアクションも無かった。故に今日のタッグトーナメントに何かが起きると確信していた。それはIS学園だけでなくソレスタルビーイングにもありえる事なのでいつも以上に殺気立たせて警戒していた。

 

 

 

 

 

「どうも、皆さん。今日は専用機持ちのタッグマッチトーナメントですが、試合内容は生徒の皆さんにとってもとても勉強になると思います。しっかり見ていてください」

 

 

 

 

 

楯無も新華の事を気にかけつつ、手に持った扇子を口に添え存在感を活かし生徒達の視線を釘付けにする。セリフが終わると扇子を勢い良く開き声を出す。扇子には『博徒』の文字が書かれている。

 

 

 

 

 

「まぁ、それはそれとして! 今日は生徒全員に楽しんでもらう為に、生徒会である企画を考えました。名付けて『優勝ペア予想応援・食券争奪戦』!」

「「「「「「おおおおおお!」」」」」」

「え? それ賭け事じゃ…」

「織斑副会長、安心しなさい」

「へ?」

『トリィ?』

「根回しは既に終わっているから」

「え、えぇー…」

「それに賭けじゃありません。あくまで応援です。自分の食券を使ってそのレベルを示すだけです。そして見事優勝ペアを当てたら配当されるだけです」

「それアウトじゃないですかヤダー」

『トリィ!』

 

 

 

 

 

一夏と楯無の会話を聞き流し、新華は自身の予定を頭の中で組み上げる。今回のイベントも新華は最後のエクストラ戦としてタッグトーナメントから外されている。故に自身の番まで自由の身であり、その間は個人で襲撃に対する警備をするため移動する事を検討する。

 

 

 

 

 

「では、対戦表を発表します!」

「………(そういえばどういうタッグになったんだ? 会長は簪さんとだろうから一夏は…)」

 

 

 

 

 

楯無の言葉で空中に大型ディスプレイが映る。そこに書かれていた対戦表は

 

第1試合:織斑 一夏&セシリア・オルコット VS 篠ノ之 箒&シャルロット・デュノア

第2試合:更識 楯無&更識 簪 VS …

第3試合:凰 鈴音&ラウラ・ボーデヴィッヒ VS …

エクストラ:VS 青木 新華

 

 

 

 

 

「(へぇ、そうなったか。しかし一夏はセシリア、箒がシャルロットと組むか…どういう状況になってんだ、これは?)」

「お、最初から箒と当たるのか。箒の言っていた通りって訳じゃないけど、本気で行かないとヤバイな」

「(………成程、箒も自分のした事を自覚して動いたか。やっと、俺の介入出来る余地が出来てきたな)」

 

 

 

 

 

新華は一夏が呟いた言葉で大体の予測を立てた。箒はキャノンボール・ファストで土壇場の3位になった事で他の一般生徒から認められ虐めが軽減された。今回は敢えて一夏と組まない事で自身の実力を見せると同時に、一夏を好いてる女子からの摩擦を減らすのだと考えた。

実際は箒が一夏にこれ以上守られると新華を超えるどころか一夏の横に立つ資格すら無くなるうえ、今の環境を変えられないと思った故の選択だった。更に言えばシャルロットは新華sideで同じ戦闘スタイルの一夏とのコンビネーションが良かった事もあり、やるからには優勝をと考えた箒がコンビ相手として誘った。

シャルロットとしても以前共に戦った一夏と同じスタイルで第4世代機の『紅椿』と共に戦うのはやりやすく、新華が提案し作られた簡易零落白夜のエネルギーも『絢爛舞踏』にて回復出来る見込みが出来て自重しなくてもいい相手ということで、箒とのタッグを組む事にした。…そこまでしなければ更識姉妹のチームに勝てる気がしないというのもあるが。

 

 

 

 

 

「(さて、開会式が終わったら…見渡しが効く所で待機してるか。他の警備は先生方や虚さんがやってくれるし大丈夫だろ。なんとしても、守らなきゃな。俺の希望を)」

「…あの、新華君…?」

『---サヤカ、朝にも言ったが今日は何があってもいいように待機状態で居てくれ。ハロ達は収納、ソレスタルビーイングには同時に襲撃してくる事も考えられるから警戒体制を。まだ『アルミューレ・リュミエール』の防御システムは完成してないからな』

『------』

「…まだ話ししてくれない…」

 

 

 

 

 

簪が無視されてシュンとなってしまうが、新華の頭の中はその簪を含めた一夏達を守る事で一杯だった。

 

 

 

 

 

「(…無機質な悪意がここを狙っているな…行動は早めにした方が良さそうだ)」

 

 

 

 

 

新華は盛り上がる体育ホールに何も感じず、直ぐに行動する事を決める。以前のゴーレム襲撃の時は束との契約により侵入を許したが、今回は一夏達の所へたどり着く前に迎撃するつもりだった。

 

 

 

 

 

「それでは、今日のタッグトーナメントを楽しみましょう!」

「「「「「「おおーーー!」」」」」」

「(さて、開会式も終わった事だし…降りかかる火の粉を払いに行くぞ)」

『------』

 

 

 

 

 

新華は開会式が終了と同時に列から下がり舞台袖から外へと急ぐ。一夏達が新華の行動を見て声を掛けようとするも、新華はステルスを張り姿を消して外に向かった。

 

 

 

 

 

「さて…どこから来る(う詐欺は恐らくゴーレムの新型を出してくるだろう。以前ロウさんがガロードを連れてきたのと一緒に持ち帰った無人機。あれはゴーレムⅡと名が付いていた。ガーベラストレートを持ちビームライフルを持っていたが…)」

『------』

「ん…(そうだな。念の為ハロを一夏達の所に送っておくか…何かあれば報告させよう)」

 

 

 

 

 

新華は廊下でハロO、α、Fを出して起動させる。

 

 

 

 

 

「いいか、ハロOは会長と簪さんの所に、ハロαは箒とシャルロット、ハロFは鈴とラウラの元に行け。何か異常や問題が有れば逐一報告すること。そしていざと言う時にはそれぞれユニットを渡して盾にすること。一応専用機持ち達にのみ使用許可を発行しておく。同時にハロOはフルセイバー2振り持って行け」

「「「リョウカイ、リョウカイ」」」

『------』

「一夏とセシリアの所はトリィがある。一夏が下手に弄ってなければ問題は無い。それにああいったややこしい事に一夏は昔からあまり触らないからな。いざとなれば製作者権限を使って守りに入らせる」

『------』

「あと打てる手は無いか。3年にも専用機持ちは居るが、一夏達と違って実力は折り紙つきだ。一応そっちにも行けるよう警戒しておくか…。じゃ、行け」

「「「ハロッ!」」」

 

 

 

 

 

ハロ3機はそれぞれ新華の指示通り散らばっていく。それを見送った新華はアリーナの外に出てエゴ・アームズ『no name』を展開し感覚を鋭利なものにさせる。

 

 

 

 

 

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-----------------

 

 

 

 

 

10分程経った時、新華はステルスを解除、クアンタを展開し空へと跳ぶ。そして空に向けて

 

 

 

 

 

「行かせん…!」

 

 

 

 

 

空から落下するように6機のゴテゴテした黒いISが降ってくる。それらに向けて新華は胞子ビットを射出し破壊、ないしは落下地点の変更を図る。

しかし敵ISは胴体部に付けていた装甲をパージして、その反動でビットを回避する。

 

 

 

 

 

「っ!? (チョバムアーマー…!? いや、あの質量は…だがっ!)」

 

 

 

 

 

新華は大型ハンドユニットを展開し指先から計10本のビームを発射する。それら全てを偏向させ6機のISを狙い打つ。しかし、先程のISが分離したアーマーだったものが変形しビームを防いだ。

 

 

 

 

 

「しまっ、総員、伏せろ!!!」

 

 

 

 

 

クアンタの通信機能とスピーカーの音量をMAXに上げアリーナに居る全人間に警告した。直後、アリーナの天井とバリアをあっさり突破し5機が侵入した。新華も直ぐに上空から援護射撃を行おうとするが、残った1機が新華の前に立ち塞がり、アーマーだった無人機も変形して人の形を取り地面に着地する。

 

 

 

 

 

『『『テッキシンニュウ、テッキシンニュウ』』』

「………退け。貴様らに構ってる暇は…っ!?」

 

 

 

 

 

ハロからの通信が入り敵が専用機持ち達の所へと突入出来てしまった事を知る。新華は目の前の無人機達を急いで破壊しようと睨む。

しかし新華はアーマーだった無人機を見て、激しい既視感に襲われ絶句する。この世界で(・・・・・)見たくなかった姿だった。新華は歯をギリリと噛み締め怒りを隠そうとはしなかった。

 

 

 

 

 

「銃人…!」

 

 

 

 

 

亡国機業で、今アリーナに侵入し新華の目の前に居る機体の名前は『ゴーレムⅢ』と呼ばれていた。こちらは対IS用ISであるのに対して、外見が『銃人』である無人機は『ファミリア』と呼ばれた完全対人機体だった。『ゴーレムⅢ』は『ゴーレムⅠ』をベースに、『ファミリア』は新華のP・V・Fの外見を参考にしている。『ゴーレムⅢ』とは違い『ファミリア』はISコアを搭載しておらず、IS反応が出ないと同時に両腕から機関銃を掃射する事が出来た。しかしISコアを搭載していない為にプログラムが複雑で動きにムラがあり、起動歩兵としての戦果は見込めないものだった---IS同士の戦場では。

今のIS学園で緊急展開が可能なのは各専用機持ち達のみ。他の一般生徒や教師に機関銃を防ぐ手立ては無い。新華は一夏達の所へ向かう前にゴーレムⅢと銃人の計7体を相手にすることを強いられる事になった。

ゴーレムⅢの左手から、地上の銃人から新華に向けて射撃の弾幕が張られる。それを新華は回避しハンドユニットとプリスティスを射出し応戦していく。

 

 

 

 

 

「糞っ! …千冬さん、聞こえますか」

『青木か!? 今どこに居る!』

「外で敵と交戦してます。一夏達の所には5機のISが、こっちには1機のISとその付属が計7機。一般生徒を近付けないようにしてください…!」

『7機だと…! くっ、戦闘教員の一部を回す。だから…』

「いえ、それは後でいいです! 嫌な予感がするので出来るだけ早く教員の人達を突入させてください。俺もコイツらを排除したら行きます」

『やれるのか!?』

「これくらい出来なければ俺は死んでますよ。いいから早く、ぐっ」

 

 

 

 

 

ゴーレムⅢからの射撃が新華を掠める。熱量が凄まじく高かったが、全身装甲に身を包んでいる新華には装甲を通しての少々の熱さしか感じなかった。しかし『ファミリア(銃人)』を見て冷静さを失った新華はある重大な事に気付かなかった。

普段なら絶対防御が発動し装甲越しにすら熱は感じない。しかし現在『ゴーレムⅢ』の特殊機能によって絶対防御の機能が失われていた。これは新華以外の生身が剥き出しになっている一夏達には致命的だった。

だが思い出してほしい。新華はIS学園に入る前は絶対防御なぞ使った事は無く、敵からの攻撃による衝撃やダメージは新華本人に向かっていた。加えてクアンタ自体を展開せずにいくつかの紛争地帯や裏社会を渡り歩いてきた。当然、熱や傷を負う事への耐性が付いている。

更に『白騎士・蒼天使事件』からIS学園まで4年近くそういう状況で過ごした。比べてIS学園で過ごした時間は半年に満たない。そして今の怒りによって冷静さを失った新華。

当たり前の状況になったところで一夏達にそれを伝える発想が出てこなかった。

 

 

 

 

 

「(一夏達の位置はハロ達が居る御陰で大体分かる。後は間に合わせるだけだ! 行くぞサヤカ!)」

『------』

 

 

 

 

 

サヤカと共に目の前に集中する。一刻も早く敵を殲滅し守りに行く気持ちが先走っていた。更に嫌な予感も大きくなり、新華らしくない焦りも生じていた。

 

 

 

 

 

「(壊れろォ!)」

 

 

 

 

 

新華は飛ばしたハンドユニットで銃人(ファミリア)の1機を握り潰し、ゴーレムⅢからの斬撃を受け流して次々と銃人を撃破していく。GNソードⅤで切り裂き、ハンドユニットで叩き潰し、エゴ・アームズ『ストーリーズ・イレギュラー』で蜂の巣にし、ファングでバラバラにし、打撃で装甲ごと破壊を繰り返し、フルセイバーで真っ2つにし…

時節、ゴーレムⅢにも攻撃を行うものの、可変シールドによって全て防がれる。しかし牽制になりGNドライブの恩恵でエネルギーの消費を考えなくていい新華としては問題無く後回しにした。

そうして銃人を全て撃破した後は、ゴーレムⅢをターゲットに据える。

 

 

 

 

 

「………次はお前だ」

 

 

 

 

 

聞いていて凍えるような声が新華の口から出る。銃人を全滅させられ援護射撃が期待出来なくなったゴーレムⅢは、可変シールドをフル稼働させ新華の攻撃を防ごうとする。が、シールドの隙間を縫ってハンドユニットが襲いかかりシールドを掴み握り潰す。

それに慌てるようにシールドをパージ、そのまま瞬間加速を使い新華に大型ブレードでの突撃を敢行する。だが

 

 

 

 

 

「………おい、亡国機業、う詐欺、いや篠ノ之 束」

 

 

 

 

 

新華はそれにしっかり反応して、まるで闘牛をするようにギリギリで躱す。

攻撃が躱されたゴーレムⅢは反転し、超高密度圧縮熱線を左腕から発射しながら無人機だからこそ出来る複雑奇怪な変態機動で攪乱、新華の左方向から大型ブレードを斬り付けて来る。新華はゴーレムⅢの変態機動に目もくれず、自身のGNソードⅤを両手に持ってゴーレムⅢのブレードを受け止め至近距離でラインアイを見据える。

 

 

 

 

 

「次俺の前に現れた時は殺す」

 

 

 

 

 

殺意が篭った声でそう言い放ち、鍔迫り合いしている腕から力を抜いてゴーレムⅢを前に倒し更に引き寄せる。頭突きをゴーレムⅢの頭部カメラに叩き付け、仰け反った所を一閃。腹部から真っ2つに切り裂きそのまま両肩関節を斬り飛ばし地上に蹴り落とす。

 

 

 

 

 

「一夏、皆…!」

 

 

 

 

 

時間が無い為コアを破壊せずに戦闘能力のみを奪っておく新華。見たところ武装は両腕にしか無く、その両腕を破壊した事で何も出来ないと判断した為だった。

新華はAICを使って空中で跳ぼうと足に力を入れアリーナ上空へと飛びファングを全て射出する。

そこにハロ達の通信が入った。

 

 

 

 

 

『ユニットFキノウテイシ、キノウテイシ』

『フルセイバータイハ、フルセイバータイハ』

『αユニットゲンカイ、ゲンカイ』

『『『ピンチ! ピンチ!』』』

「皆の命が、消えていく…!」

 

 

 

 

 

新華の目はこれ以上無いくらいに開き光る。感じるのはNTだからこそ聞こえる、専用機持ち達の声だった。

 

 

 

 

 

『デュノア!』

『新華の装備も、僕のシールドももう…!』

『ラウラ! 下がりなさい! アンタのPICでもマズイわ!』

『だが、ここで下がっても被害が増えるだけだ!』

『駄目だトリィ! それ以上はお前が壊れてしまう!』

『ぐっ、どうしたら…!?』

『このまま、奥の手を使うわ! それしか…』

『奥の手…!? 駄目! それじゃあ、お姉ちゃんが…!』

「そんな事…!」

 

 

 

 

 

ファングに加えて胞子ビットも射出する。そして、吼える。

 

 

 

 

 

「させるかあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

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---side 千冬

 

 

 

 

 

千冬は教員達と共に廊下で新華の通信をしていた。しかし新華の苦悶の声と共に通信が切れ、それを見た山田先生に問われる。

 

 

 

 

 

「織斑先生、今のは…」

「青木だ。現在外で計7機のISと交戦中らしい」

「な、7機ですって!? 直ぐに援護を」

「いや、下手に手を出せば青木の足でまといになって被害が拡大する。まずは状況の改善に務める」

「わ、わかりました!」

「お、織斑先生! 私達はどうしたら!?」

 

 

 

 

 

新華の状況を聞いて山田先生を含めた教員は千冬に指示を求める。IS学園において『予測外事態の対処における実質的な指示』は全て千冬に任されていた。

「…各セクションの状況は?」

「前回の襲撃時と同じで最高レベルでロックされています」

「分かった。教師は生徒の避難を最優先。ただし外は青木が戦闘しているため戦闘音と衝撃のあるエリアには近付かないように。同時にシステムにアクセスしてロックを解除、戦闘教員はアリーナ内部に突入準備。装備はレベルⅢでツーマンセルを基本に拠点防衛布陣を敷け!」

「「「「「「了解!」」」」」」

 

 

 

 

 

山田先生を筆頭に教員全員が返事を返す。そして慌ただしく駆け出しそれぞれの役割を果たしに行く。

 

 

 

 

 

「…やってくれるな。だが、甘く見るなよ」

 

 

 

 

 

その目に怒りを宿し小さく、それでいてハッキリとした声で言う。しかし今新華が抱いている怒りが倍以上である事を千冬は知る由も無かった。

そして、少し後に聞こえてきた新華の叫びを聞き不安を募らせるのであった。

 

 

 

 

 

---side out

 

 

 

 

 

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---side 更識姉妹

 

 

 

 

 

楯無と簪はピット内で苦戦を強いられていた。ゴーレムⅢは2人が思った以上に堅く、また狭いピット内では簪の『打鉄弐式』の火力が活かせずにいた。

しかしかつての新華との特訓で近接戦闘もそれなりに出来るようになっていた簪は、姉の楯無と共にヒット&アウェイを繰り返す事で攻撃を凌いでいた。

 

 

 

 

 

「今…!」

「貰ったわ!」

 

 

 

 

 

簪が薙刀を振り楯無が隙を縫ってランス『蒼流旋(そうりゅうせん)』を突き出す。ゴーレムⅢは薙刀を可変シールドで受け止めランスを大型ブレードで薙ぐ。しかしそこで大人しく弾き飛ばされる楯無ではない。冷静に大型ブレードの剣筋の下をくぐりランスを叩きつけようとする。

しかし潜った楯無の目の前に4門の砲を持った左手の平が見えた。

 

 

 

 

 

「っ! ハロちゃん!」

「ハロッ!」

 

 

 

 

 

楯無の呼び掛けで新華の送ったハロOがフルセイバーユニットを飛ばしゴーレムⅢの左腕の射線を大きく逸らす。

本来フルセイバーの鋭さがあれば外で戦闘している新華のように切り裂けるのだが、ハロからの射出では押す力が足りずに弾く事しか出来ない。しかし楯無にはそれで十分だった。

強烈な超高密度圧縮熱線が楯無の横を通り過ぎる。熱さに顔を少し顰めるが攻撃の手は緩めない。

 

 

 

 

 

「喰らいなさい!」

「はああ!」

 

 

 

 

 

ランスがゴーレムⅢの装甲に刺さるが貫通しない。そこに簪が弾かれたフルセイバーを取り後ろからゴーレムⅢに切り掛る。だがそれすらも可変シールドが防いだ。

ゴーレムⅢは左腕で楯無の頭を掴み握力を上げていく。

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん…!」

「くっ、簪ちゃん! 今の内に!」

「! うん、てえええええい!」

 

 

 

 

 

フルセイバーを可変シールドに叩き付け手を離す。即座に薙刀に切り替え左腕の肘部分を切り上げる。楯無もナノマシンによる回転を逆にしガトリングを放ちながら後ろに下がる。

切り上げとガトリングの衝撃でゴーレムⅢの左腕は楯無の頭から離れ、直後熱線が放たれた。

 

 

 

 

 

「っ!」

「お姉ちゃん、髪が…!」

「このくらい大丈夫よ。しかし、厄介ね。絶対防御が発動出来ないだけでここまでプレッシャーがあるなんて」

 

 

 

 

 

透き通った水色の髪を、掠ってもいないのに焦がした熱線に冷や汗を流す。ゴーレムⅢは天井を突き破って侵入したが、楯無の冷静な行動とハロによるフルセイバー射出によって簪はIS展開を間に合わせることが出来た。

そのまま戦闘に入りゴーレムⅢからの射撃による熱を感じて絶対防御が発動していない事に気付き、狭い室内故に簪の『山嵐』が使えない事から近接武器でのヒット&アウェイのコンビネーションを取って今に至る。

今の所攻撃は通せても、致命的なダメージを与える事が出来ずにいた。

 

 

 

 

 

「これじゃあ埒が開かないわね…。何とかアリーナのシールドを貫ければいいのだけれど」

「でも、今の私達にはそんな火力は…。新華君の装備は、新華君とサヤカちゃんが居ないと本領発揮出来ないし…」

「シンカセントウチュウ、シンカセントウチュウ」

「新華君も新華君で戦ってるし、無いものねだりは良くないわね。他の専用機持ちの子達とも合流しなきゃいけないんだけど…っ!」

 

 

 

 

 

会話をしていた姉妹は放たれた熱線を回避し動く。簪は薙刀で、楯無はランスでそれぞれ攻撃を仕掛けるがゴーレムⅢは大型ブレードを地面と水平に伸ばし回転する。

 

 

 

 

 

「!? 簪ちゃん、避けて!」

「え?」

 

 

 

 

 

回転は急速に速度を上げ簪の持つ薙刀をあっさり弾く。しかし速度は止まらず簪に刃の回転が迫った。

 

 

 

 

 

「あ…」

「簪ちゃん!」

「ハロッ!」

 

 

 

 

 

楯無が叫ぶと同時にハロがフルセイバーユニットを飛ばす。しかし

 

 

 

 

 

「っ! 熱い…!」

「ハ、ハロッ!?」

「ハロちゃん! 新華君の装備が…!」

 

 

 

 

 

ハロは拡散して放たれた熱線の直撃を受け、飛んだフルセイバーは、回転軸を90度傾けた大型ブレードに基部を砕かれ床に落ちた。

楯無はガトリングを斉射するがゴーレムⅢは銃弾を無視して回転速度を遅くし、回転をやめ薙刀を失った簪に向き合う。

 

 

 

 

 

「ひっ」

「簪ちゃん!」

 

 

 

 

 

撃てないミサイルしか無く丸腰と言える状態になってしまった簪。彼女を守るように楯無が簪の前に出て盾になる。

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん…!」

「もう、簪ちゃんを傷付けさせたりしない! このまま、奥の手を使うわ! それしか…」

「奥の手…!? 駄目! それじゃあ、お姉ちゃんが…!」

 

 

 

 

 

姉妹は丁度ゴーレムと挟んでアリーナのシールドを前にするように位置していた。それは、奇跡的にゴーレムⅢが侵入してきた時と同じ構図だった。ゴーレムⅢは既に左腕に超高密度圧縮熱線を溜めており何時でも発射出来る状態だった。

楯無は簪を守るようにして立っている為、ランスを構えて動かない。簪は何も出来ない自分に情けなくなって泣きそうになった。

そして、縋るように息を飲み、自身のヒーローの名前を呼ぶ。

 

 

 

 

 

「し、んか…君…!」

『させるかあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!』

「「!!」」ズドォン!

 

 

 

 

 

大声と共にゴーレムⅢの真上から蒼が降ってくる。その蒼は姉妹に背を向け緑色の刃を持つ剣でゴーレムⅢの腕を切り裂いた。

轟音と爆発。熱線を溜めていた腕が爆発し熱が放射線上に広がる---筈だった。しかし姉妹が感じたのは爆発による風圧と爆煙。

 

 

 

 

 

「…え!? まさか…」

「新華、君…?」

「………」

 

 

 

 

 

爆煙が緑の粒子と共に吹き飛ばされ、姉妹の瞳に映った光景は

 

 

 

 

 

「…もう、失ってなるものか」

「新華君!? 外の敵は…倒したのね」

「あ…」

 

 

 

 

 

ファングを全て射出したのか滑らかな流線型になったシールドを3つ背負い右腕を大きな3連回転式ガトリング砲『ストーリーズ・イレギュラー』にした新華と、左腕を失い左半身を黒く焦げさせたゴーレムⅢが尻餅を付いている姿だった。

 

 

 

 

 

「ここから…」

「新華君…」

 

 

 

 

 

姉妹は揃って新華の後ろ姿に胸を高鳴らせた。自分達が危機に陥った所を颯爽と助けてくれたヒーロー。そんな風に見えた。

 

 

 

 

 

「ここから、出て行けええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

新華は姉妹の目の前でゴーレムⅢの頭部を鷲掴みにし引き摺ってアリーナのシールドへと突き進む。刹那、右腕の『ストーリーズ・イレギュラー』をゴーレムⅢの装甲の隙間からアリーナのシールドに向けて連射し穴を開け飛び出していく。

 

 

 

 

 

「新華君、来てくれた…!」

「…大きな借りが出来ちゃったわね。簪ちゃん、ハロちゃんと武器を回収して私達も行くわよ!」

「うん…!」

 

 

 

 

 

姉妹の中から悲壮感が消え希望の光が見えた。先程までの苦々しい顔から一転し、先程までの戦闘のダメージがあるものの希望に満ちた明るい顔になっていた。

2人は新華が開けて修復されないでいる穴から外に出る。

外、アリーナ内部では姉妹と同じように各専用機持ち達が外に出ていた。そして全専用機持ち達が囲むように立つ中心地点に新華が立ち、その回りに計5体のゴーレムⅢが居た。

 

 

 

 

 

「皆、無事だったようね」

「よかった…」

 

 

 

 

 

姉妹は安堵するが状況はまだ悪いままだった。そして新華の声が再び聞こえる。

 

 

 

 

 

『纏めて掛かってこい。お前らなんぞにくれてやる程俺の命は安くねぇぞ…!』

 

 

 

 

 

その言葉と共に新華の周囲にファングと胞子ビットが集まる。その姿は粒子の色と相まって正に『蒼天使』に相応しく、姉妹にとってのヒーローが再臨した瞬間だった。

 

 

 

 

 

---side out

 

 

 

 

 




皆原作より強くね…? 特に簪。それに新華、それお前のセリフじゃねぇから!
銃人登場! 銃人の後継兵器が『銃騎士』ですからねぇ…。織斑家騎士一家とどう絡ませようか…。
そういえば織斑家に祖父母って居ないんですよね。多分。居たらそっちに引越ししてる筈なのに。
あ、寧ろ祖父母って屑?
ちなみに新華にも祖父母は居ます。多分従姉弟とかも居るかもです。ガノタの頭ン中で外伝的な妄想が膨らんでますが、多分表に出ない。

さて、次回で新華は…

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