IS~疾走する思春期の転生者~   作:大2病ガノタ

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98話目。
今回は短めです。
激しく眠いです…。布団から中々出られません。
ついでに寒いです。大学はあったかいですので有難いですね。
むしろ夜の電車の座席は暑い…。


悪夢

 

 

 

 

 

---side 簪

 

 

 

 

 

簪は目の前の光景に戸惑っていた。今自分が居るのは、自身の足元以外の地面全てが赤黒く、空は黒く濁った雲が広がる闇が広がってる何もない世界。だが不思議と自分の立っている所を中心に直径3mだけは白く光り、赤黒さが弾かれていた。

 

 

 

 

 

「…ここは…?」

 

 

 

 

 

簪は一人、自身のIS『打鉄弐式』すら持たずにその気味の悪い世界に立っている事に気付いた。

 

 

 

 

 

「っ!? お姉ちゃん…! 本音…! 虚さん…!」

 

 

 

 

 

姉と従者姉妹の名を叫ぶ。しかし返事どころか声の反響すら返って来なかった。簪は、一人という事が怖くて知り合いの名を次々と呼ぶ。

 

 

 

 

 

「お父さん、お母さん…! 織斑先生、山田先生…! 織斑君、篠ノ之さん、オルコットさん、凰さん、デュノアさん、ボーデヴィッヒさん…!」

 

 

 

 

 

しかし誰からの声も聞こえない。そして、最後の希望として簪は思い切り叫ぶ。

 

 

 

 

 

「新華君…!」

 

 

 

 

 

新華の名を呼んだ時、変化が起きた。腰に付けていた新華に貰ったキーホルダーが光り闇に1筋の線を作る。闇の中を貫く光は簪をどこかに導こうとしているかのようだった。

 

 

 

 

 

「…こっち…?」

 

 

 

 

 

簪は光に従って歩く。しばらく歩くと声が聞こえてきた。その声は焦りを孕み簪を急かすように言葉を発していた。

 

 

 

 

 

『------ぁい!』

「…?」

『---急いでください! 早くしないと、ご主人様が!』

「ご主人様…? サヤカ、ちゃん…?」

『---早く! でないと居なくなってしまう…!』

「!? 新華君、が…?」

 

 

 

 

 

簪はサヤカのものと思われる声を聞いて走る。光の先に新華が居る気がした。

そして、走った先に新華の後ろ姿を確認して安堵する。そのまま新華へと手を伸ばし------

------新華がガラスのように砕けた。

 

 

 

 

 

「え…」

『---間に合わなかった…』

「新華、君…? うそ…」

 

 

 

 

 

目の前で起きた事に理解が追い付かない簪。しかし直ぐに背後に気配を感じて振り向く。そこには鎧のような灰色の装甲を纏った新華らしき人物が浮いていた。

 

 

 

 

 

「新華君…!」

「………」

「その姿は、どうしたの…? それに今のは一体…」

「………」

「…新華君…?」

「………」

 

 

 

 

 

新華の現在の姿は、顔以外が全て装甲に包まれ両腕、両足に1本ずつトンファーのように細い円柱を持っていた。それだけではなく腰と背中に計14本の同じ細い円柱が装備されるように浮いていた。まるで全身装甲型ISのようだったが、簪はISではないと漠然と何故か分かった。

よく見た事で簪は気付く。それらの円柱と装甲は新華が使うP・V・F『ストーリーズ・イレギュラー』の一部である事を。そして、新華の瞳に光が無い事を。

 

 

 

 

 

「…返事をして。新華君、一体ここで何が…?」

「………さよなら」

「!? 新華君…!」

 

 

 

 

 

新華は唐突に別れを告げると、簪が瞬きをした間に忽然と消え去る。ISの展開で一瞬の変化に慣れている簪だったが、新華の消える瞬間は認識出来なかった。そしてその世界はヒビ割れ崩壊し、簪は落ちる感覚を----

 

 

 

 

 

----

----------

-----------------

 

 

 

 

 

「新華君…!」

 

 

 

 

 

簪は自身のベットの上で飛び起きた。パジャマの内側は汗で濡れており気持ちが悪かった。

 

 

 

 

 

「あ、夢…? …うわ。着替えよ…」

 

 

 

 

 

時計を見ると朝の6時。ルームメイトの女子は未だ寝ていた。下着を変え眠ろうとするが、先程の夢が気になって眠れない。悪夢と言える内容だったが頭から離れなかった。

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 

新華の最後に放った『さよなら』。そして消えた時に簪は大きな喪失感を味わった。まるで新華が新華でなくなる感覚。そしてあの気味の悪い世界。

ベットの中から出て窓の前に出る。朝日が水平線から出て空高く上がろうとしていた。

と、簪はIS学園の敷地ギリギリを走る人影があるのに気付いた。その人影の後ろには丸い球体が2つ飛び跳ねながら着いてきていた。

 

 

 

 

 

「あれは…新華君? こんな朝早くから…」

 

 

 

 

 

新華がこの時間から走っているのに驚くと同時に、先程の夢の事もあり無性に会いたくなった。

簪はパジャマから制服に着替え部屋を出て寮の出入口に行く。と、同じく外に出ようとする金色の髪が見えた。

 

 

 

 

 

「あ、デュノアさん…」

「あ、更識さん。どうしたの? こんな朝早く」

「…新華君が見えたから。…デュノアさんは…?」

「僕も。ちょっと変な夢を見て眠れなくってね。外を見たら新華が走ってたから」

「夢…? それって、新華君の…?」

「へ? じゃあ更識さんも見たの?」

「うん…新華君が、黒い世界で…」

「それだったら、私も見たわよ」

「あ、生徒会長。おはようございます」

「お姉ちゃん…。おはよう」

「おはよう簪ちゃん、デュノアちゃん」

 

 

 

 

 

簪とシャルロットの所に楯無も来る。楯無もシャルロットも簪と同じ夢を見ていた。シャルロットは自身のISの待機状態が光を放った以外の相違点は無い。

 

 

 

 

 

「見たって、あの赤黒い世界と新華ですよね。…何で3人とも同じ夢を見たんでしょうか」

「何でかしらねぇ。夢って意外と不思議な事が起こる事は聞いたことあるけど、まさか4人(・・)が同時に見るとはね」

「…? 4人…?」

「ええ。そうでしょう? 織斑君?」

「………うっ」

「女子の会話を盗み聞きなんて頂けないわよ? 篠ノ之ちゃんや凰ちゃんに言ってオシオキしてもらいましょうかしら」

「す、すみませんでした…」

『トリィ!』

 

 

 

 

 

置物の植物の影から一夏が出、トリィが飛ぶ。シャルロットはそれを見て苦笑いだった。

 

 

 

 

 

「一夏、話したかったら堂々と来なきゃ」

「いや、でもさ」

「まぁ、今回は特別に見逃してあげましょう。同じ夢を見たから織斑君も起きてきたんでしょう?」

「は、はい」

『トリィ?』

 

 

 

 

 

一夏の場合、闇の中を導いたのは光を放ったトリィだった。

 

 

 

 

 

「じゃあ、皆で行きましょうか。新華君の早朝トレーニングが終わる前に行かないと逃げられちゃうからね」

「そ、そうですね! 早く行きましょう! トリィ、また新華の場所まで案内してくれ」

『トリィ!』

 

 

 

 

 

一夏がトリィに指示を出して後を追う。簪達も後を追った。

 

 

 

 

 

---side out

 

 

 

 

 

----

----------------

-------------------------------

 

 

 

 

 

新華はジャージ姿で日課のランニングを終えてゴール地点に設定した訓練場の中で息を整えていた。

 

 

 

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ふぅ…。さて、次は射撃訓練。ハロO、測定モード」

「リョウカイ、リョウカイ」

「ハロαとFはサヤカと一緒に今日出来る分の仕事を整理しておいてくれ。と言っても、昨日の内に全部終わらせたから殆ど無いと思うけど」

「「リョウカイ、リョウカイ」」

『------』

「終わったら今日テストするフルセイバーの関節パーツと、取り付けた事によるバグの処理、新規生産して入れた追加のフルセイバーの調整をしてくれ」

 

 

 

 

 

新華は棚から拳銃を取り射撃レーンに入ろうとする。しかし入る直前で訓練場の扉が開かれる。

 

 

 

 

 

「ん?」

「新華! 大丈夫か!?」

『トリィ!』

「…………」

 

 

 

 

 

一夏がアホな事を言ったので思わず半目になる新華。そのまま一夏の発言をスルーして射撃レーンに入る。

 

 

 

 

 

「一夏…その言い方はどうかと思うよ」

「…よかった…。新華君、ちゃんと居る…」

「姿を見れただけでも安心したわ。あ、皆耳を塞いで。新華君が打ち始めるわよ」

「あ、はい」

『トリィ?』

 

 

 

 

 

一夏達が耳を塞ぐのも確認せずに、いつも通り射撃の訓練を始める新華。人の形を持つターゲットの額、心臓の辺りを正確に撃ち抜いていく。

 

 

 

 

 

「………」ダンッダンッダンッ

 

 

 

 

 

一夏達の関心する声がするが集中している新華は意識しなかった。敵をイメージし頭を、心臓を交互に撃つ。いつも通り1マガジン使い切り銃を手元の台に置く。

 

 

 

 

 

「…ハロ」

「98.62% 98.62%」

「…コレを維持だな」

『------』

 

 

 

 

 

サヤカを頭に乗せて射撃レーンから出る。待機スペースには一夏、楯無、簪、シャルロットが居たが新華は一瞥もせずテーブルに座り拳銃の解体を始める。

 

 

 

 

 

「…………」ガチャカチャ

「お、おはよう新華」

「…………」カチャカチャ

「…新華君。返事しなさい」

「…………」カチャカチャ

「…ここ最近のいつも通りだね」

 

 

 

 

 

返事をせずに銃を解体作業を続ける。しかし今日は一夏達はそれ以上言う気も無かった。あの夢とは違い今新華が目の前に存在している事に安心出来ただけでも十分だった。

銃の解体と組み立てを終わらせると新華は銃をケースに戻す。訓練所を出ようとドアに向かう為に一夏達の横を通り過ぎる。その時に楯無は新華に1言聞く。

 

 

 

 

 

「新華君。P・V・Fって何?」

「………、…」

「…以前から気にはなっていたの。でも、今日は聞きたい理由があるからね」

 

 

 

 

 

新華は行き成りの質問に一瞬動きを止める。何故この質問が来たか訳が分からなかった。まさか夢で自分の可能性の1つを見られたなど思いも知らずに黙秘を貫く。

 

 

 

 

 

「…いつか答えてくれればいいけど、…どこかに消えたりしないわよね? 私達の目の前から消えたりしないわよね?」

 

 

 

 

 

楯無は新華が通り過ぎる時に酷く不安になった。そして確認の意味でも言葉を思ったままに紡ぐ。

 

 

 

 

 

「同じ、人間でいてくれるわよね?」

「か、会長!? どんな質問ですか!?」

「………どうかな」

「え…?」

「………」

 

 

 

 

 

一言だけ返して新華は呆然とする一夏達を置いて訓練場を出る。直ぐに訓練場の裏に回り深呼吸をしてエゴ・アームズ『ストーリーズ・イレギュラー』を展開する。相変わらず傷だらけだった。

 

 

 

 

 

「…まさかあんな問いが来るとはな…。いきなりどうしたんだ、あいつらは…」

『------』

「…こんな時間に起きて来たのもおかしいが、今になってP・V・Fの事を聞くのも変だ。まぁ、一寸先は闇だし、俺が人間として生きていられるのもあとどれくらいか分からんしな…」

「ソンショウシンコウチュウ、ソンショウシンコウチュウ」

「…守れりゃどうでもいい。取り敢えず、行ける所まで行くさ」

 

 

 

 

 

『ストーリーズ・イレギュラー』を解除し今度はイド・アームズ『no name』を展開する。転生してから全く変化の無かったその形は、サーシェスを殺してから赤く刺々しくなったまま変わっていない。

 

 

 

 

 

「…姿が変わらないなんて聞いた事無いぞ…。我ながら、おかしいな。っていうか俺は何がしたいんだろうな…」

「ハロ?」

「あいつらを突き放そうとしておきながら登校して、トリィも一夏に渡して、結局中途半端になっちまってる…」

「チュウトハンパ、チュウトハンパ」

「まぁ、だからって登校しないと出席日数が足りなくなるし、加えて政府の方から何か言われて面倒だし。最悪ソレスタルビーイング接収とか言い出しかねんからな。この世界の政府は表でそういう事を平気で言うからな…」

「ウラナライイノカ? ウラナライイノカ?」

「良くないけど、まだマトモだと言えるかな。やりようもあるし。表でやるとお互い為にならないってのに、馬鹿な世界だよ」

 

 

 

 

 

『no name』を解除して訓練場から一夏達が去るのを確認してもう1度入る。今度はCQC訓練室に入り日課を再開し汗を流す。終わったら部屋に戻りゆっくり汗を流すのがこの後の予定だが、戻っても楯無の質問攻めが待っていると予想出来たので部屋に居る時間を減らそうと予定を組み替える。授業を1限目以外サボっている身としては、突然の予定変更も問題無く出来るので楽だと思う新華だった。

 

 

 

 

 

 




次回からタッグマッチの予定です。
今回出した新華の特殊な夢はBAD ENDルートの予知夢です。新華は打撃系の攻撃を多様する(設定)のでトンファータイプの近接武器にしました。後に設定をまた書いておきます。クアンタにも変更点がありますが、使うかなぁ…?
今話、原作を全く使いませんでした!

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