「はい、コーラだよ」
「ありがとう」
ユミナからさも当然のようにコーラを渡されるレイジー。買収され、簡単にユミナとアインハルトと共に行動することになった。
と言っても、レイジーの用事に二人が付き合うという形であるが。
「ストラトスは天瞳流の道場に行ったことがあるんだよね?」
「はい。そこの師範代を務めておられるミカヤさんとは何度も模擬戦を行っています」
そう口にしたアインハルトの表情は暗かった。彼女の手足には痛々しく包帯が巻かれており、それがミカヤとの練習で付いたものであることは容易に想像できる。
自分の実力がまだまだであることを実感しているようで、いつもの彼女とは少し違っていた。
まあ、だからと言ってレイジーが何かをする訳ではないのだが……。
「レイジー君はそこに行くの?」
「うん」
「もしかして模擬戦とかしたりするの?」
「うん」
レイジーは短く答えるばかりであるが、格闘技ファンであるユミナにとってみれば高レベルの選手の対戦だ。目をキラキラと輝かせて、見学させてほしいと訴えている。
「相手の許可をとれば良いと思う」
自分は構わないとレイジーは言った。
ユミナの隣を歩くアインハルトも「お供します」とやや興奮気味だった。
「それにしても意外でした。ディリジェントさんは、模擬戦のようなことはあまりしないと思っていましたから」
「うん。でも、試合が近い時はやるようにしてる。ノーヴェさんに頼んだら今日の人を紹介してもらった。抜刀居合を使う人らしいからちょっと楽しみ」
あまり戦うことに積極的でないレイジーが楽しみと口にした。それはアインハルトにとって驚きに他ならない。
そして自分では楽しんでもらえることすらできないのだと強く痛感した。
それからしばらく歩いて、道場にたどり着く。
静かな感じを想像していたレイジーだったが、想像とは違った。
「はっ!」
「雑に振るなっ!」
門下生たちが師範代の下で、素振りに勤しんでいる。
自分の動きを確かめるように、ゆっくりと、それでいて力強く振っている。
型が乱れるような者がいれば、師範代が直接行って指導する。
集団が一つの個となるような、凄まじいほどの練度だった。
なんどかこの場を訪れたことのあるアインハルトにとって、もう驚くようなことではないのだが、この光景を初めて見たユミナは言葉がでないようで、ただただその光景に魅入ってしまっている。
「レイジー・ディリジェントです。ノーヴェ・ナカジマさんの紹介でやってきました」
ぺこりと頭を下げる。
(ディリジェントさんがおじぎを……)
その行動に驚いたのはアインハルトだった。ユミナとは別の意味で言葉を失っている。
「君がレイジー君か、ノーヴェちゃんの言った通りだね。おや、アインハルトちゃんも来たのか。それと後ろの――」
「ユミナ・アンクレイブです。レイジー君とアインハルトさんのクラスメイトです。不躾だと思うのですが、今回の練習を見学させてもらいに来ました。私は格闘技ファンなんです」
レイジーの下にやって来たのは、この道場で師範代を務めるミカヤ・シェベル。艶やかな長髪と凛とした雰囲気を持つ、気品ある女性だ。
同タイプのアインハルトとは違い、しゃべり方に親しみやすさを感じる。
実際、性格的にも大らかなのか、ユミナのお願いを快く受け入れた。
「私はミカヤ・シェベルだ。よろしく頼むよ」
「はい」
「早速で悪いけど、レイジー君とは一手ご指南いただこうか。ノーヴェちゃんの言うことを疑う訳じゃないけど、やはり自分の目でみないとどうもね」
それはレイジーの体型を指摘したものであった。
明らかに武道をやる人間の身体つきをしていないので、ミカヤがそう思うのも無理はない。
門下生たちも、「あれは何だ?」と怪訝そうな顔でレイジーを見ている。
「分かりました。ご指導をお願いします」
周りの視線を気にせずレイジーは再度頭を下げた。
基本的に我が道を行くレイジーであるが、それなり節度はもっている。それを普段使ってないだけで、状況が状況ならちゃんとした対応をとるのだ。
この場で普段のような行動を取れば、門下生、ひいては目の前のミカヤから叱責を受けるのは容易に想像がつく。
だからこそ、レイジーはその後を考えて常識ある人間の行動を取った。
この光景をシャッハがみたら、泣いて喜んだかもしれない。
運動着に着替えると、軽く身体を動かす。
前屈をしてもお腹が邪魔で全く伸ばせていないが、「へっほ、へっほ」と変な声を上げながらレイジーは準備を整えて行った。
「準備が整いました」
道場の隅で見学するアインハルトとユミナは普段とは違うレイジーに違和感があった。
ただ、純粋にどんな勝負になるのかの方が気になるので集中して道場中央を見ている。アインハルトは特にだ。
「試合形式で、相手に有効打を入れるか、リング外まで吹き飛ばすかで決着とします。双方宜しいか?」
「ああ」
「はい」
審判の言葉に二人が頷いた。
そしてお互い距離をとろうとしたところで、レイジーが思わぬ行動に出た。
「これはどう言うことかな?」
「ちょっとした確認です。純粋な速さ勝負です」
対峙する位置が、普段よりかなり近い。
居合を扱うミカヤの間合いにレイジーはためらいなく入った。
出だしの速攻が持ち味である二人。斬撃を飛ばす能力を持たないミカヤのために、レイジーがわざわざ切れる範囲まで足を進めた。
「ふふ、面白い」
ミカヤが笑う。
レイジーの意図を理解したようだ。
お互いが攻撃の間合い。開始の合図と同時に決着がつく。
どっちがより速いのか? この勝負は単純にそれを競うことになる。
「さすがにこの距離だと手加減はできない。治療係はいるので心配はないが、怪我をさせない保証はできないよ」
「構いません」
勝つのは自分だからと言っているようだった。
そんなレイジーを見て、ミカヤは笑みをより深めた。
審判はただならぬ空気に額に汗する。
自分の開始の合図と同時に決着という本来ならありえない勝負だ。
「そ、それでは」
声がどもってしまう。
ゆっくりと旗を持つ手を振り上げ、そして――
「始めっ!」
力強く振り下ろした。
そして。
決着は一瞬だった。
■
「いやー参った、参った」
あははと笑うミカヤは治療を受けていた。腹部には青あざが色濃く残っており、治療を行っている門下生が「師範代、静かにしていてくださいっ!」と怒っている。
つまり、勝者はレイジーであった。
「ぶぃ」
見学していたアインハルトとユミナに向かってVサイン。驚きと歓喜でもうおかしくなりそうなユミナはぴょんぴょんと飛び跳ね、その後自分の行動を顧みて顔を真っ赤にして静まった。
アインハルトは素直に称賛した。初めて自分がミカヤと戦った時は実戦だったら一体何度切り殺されただろうと思えるほど圧倒的な力を見せつけられたものだが、レイジーはそんな相手に勝利した。
上手く喜べないのは、やはりレイジーという存在をライバルとして認識しているからだろう。
「いやーノーヴェちゃんの言うことは正しかった。最速こそ最強を謳う天瞳流がこうも容易く負けるとはね。しかも速さ勝負で」
治療を終えたミカヤがレイジーたちの下にやってくる。笑ってはいるが、その表情に悔しさがにじみ出ているとアインハルトは感じ取っていた。
「あれで君は全力じゃないのだろう?」
「はい」
「はっきりと言ってくれる。泣いちゃうじゃないか」
そう、そうなのだ。
レイジーは全力を出していない。
彼の全力は肉の鎧を脱ぎ捨ててこそであって、今の状態では力を十全に発揮しきれないのだ。
その証拠に。
「でも、少し切られてしまいました」
レイジーの右わき腹に切り傷が見えた。魔力でコーティングされているとは言え、レイジーの肉体に初めて刃が届いていた。
まさかとアインハルトは思うが、レイジーの右側に回って確認を取ると、しっかりと痕が残っているのが見えた。
(これが、都市本戦のレベル……)
自分と二人との距離をまた実感した。
「さて検討を行おうか。君から見て私の何が悪いと思う? ノーヴェちゃんから聞いているよ。君は優れた観察眼を持っているって」
「レイジー君の観察眼?」
あまり信じられないのか、ユミナは首を傾げる。
だが、そんなユミナにアインハルトが補足をする。
「人の見方が独特で、指導者の道を歩んでもおかしくないと言っていたよ」
「指導者なんて無理、無理」
レイジーは即座に否定した。
そしてアインハルトもそれには同意する。
「確かにそうですね。ディリジェントさんは指導者というよりアドバイザーの方が似合っていると思います」
自ら技術指導を行えないレイジーには、そちらの方が合っていると指摘する。
「まあ、この際レイジー君の指導者としての適性は置いておいてくれないか? 私は彼の意見が聞きたい」
「そ、そうですね、すみません」
アインハルトがペコペコ謝る。
「えーっと大変失礼な事を言ってしまうので、遠慮させてください」
レイジーの話す番になって、ようやくかと言うところで、そんな発言が飛び出した。あまり他人の気持ちと言うものを考えないレイジーが遠慮するのだから相当まずいということだろう。
しかもここは相手方の道場だ。いらぬことを言って、門下生から袋叩きに遭うなど笑い話にもならない。
「批判的な意見はむしろ歓迎だよ。そこをどうとらえるかはこちら側の問題だ。誓って言うが、私は、私たちは君の言葉に怒りを向けたりはしない。だからお願いする」
ミカヤは天瞳流の師範代としてそう答えた。彼女の意見はこの場では皆の総意であるということだ。少しいやそうにしたものの、ミカヤが頭を下げたままだったので、レイジーは小さな声で語り出した。
「疑問と言う形でいいますね。一つは刀を使う意味が分からないこと、もう一つは抜刀をする必要があるのかと言うこと」
「一つ目の答えは二つ目を答えることに繋がるね。抜刀をする上で刀が最も都合が良いからだ。そして、抜刀は最速を目指す我が流派に最も向いているものだと思う」
ミカヤの答えにレイジーは小さく首を傾げた。
「抜刀が最速に向いている? 確かに状況を考えればそうなるかと思いますが、普通に両手で振った方が速くありませんか? ストラトス、ちょっとその猫さんを貸してくれ」
アインハルトの相棒ともいえるデバイス、アスティオン。通称、ティオは外装が猫――実際は豹――のぬいぐるみであるため、レイジーからは猫扱いを受けている。アインハルトが合宿で連絡を取った八神家から最近譲り受けたものである。
見た目は子猫だが、当然デバイスであるためそれなりの機能を持っている。レイジーはティオに撮影をお願いしたいのだ。
「ティオ、お願いできますか?」
「にゃあ♪」
準備ができると、レイジーがミカヤに抜刀と上段切りをお願いした。言われたミカヤは、始めに居合切り、次に上段切りを実演して見せる。
ふむふむとレイジーがその映像を見て納得したような表情を浮かべた。
「やっぱり、剣速自体は上段切りの方が速いですよ。両手で振ってるから当然でしょうけど」
「何も剣のスピードだけが最速ではないさ。納刀された状態から放つ一撃と、上段に構えてから振り下ろす一撃では前者の方が動作が少ない分、相手に届くまでの時間が早い」
「でも、最初から上段に構えた状態で剣を振ったら、上段切りの方が速いですよね? 納刀している方が間合いを誤魔化しやすいから、相手に気づかせないという点までの時間を含めれば、抜刀の方が速いのかもしれません。でも、今回の対戦みたいに用意ドンでの速さ勝負だと、居合切りの方が遅いです。さっきの勝負が上段からの攻撃だったら、もう少し切られていたかもしれません」
まあ、肉体には届かないんですけどと言おうとしたが、説明が面倒になりそうなので止めたレイジーであった。
「あと実戦で使わない以上、切れ味に重きを置いている刀って特性が死んでいませんか? スパッと切れれば確かに凄いですが、実際は刃引きの魔法がかけられるから、性能は十全じゃない。そんな中で一撃で決められないとカウンターを食らって負ける可能性が高くなるから利点があまりないと思います」
魔法戦はあくまでもスポーツ格闘技だ。安全面と言うものは当然考慮されている。不慮の事故がないというわけではないが、人体を真っ二つにするようなことは起こることはない。
刀は切ることに特化している。故にそこに制限を掛けられては刀を使う意味があるのかと言うレイジーの主張である。
「となると、居合切りのために刀を使う意味があるのか、それが僕には疑問です。この流派を否定するわけじゃないですけど、掲げている目標とやっていることがちぐはぐな感じがします」
「天瞳流の最速の定義か。それによる武器選択。これはちょっと考えさせられるね。相手に届くスピードを優先するか、相手を切るまで時間、つまり相手に気づかせないことまで含めて最速とするかか。なんか自動車の停止距離の考え方に似ているな」
ミカヤは怒った様子もなく、自分の流派を別の面から見ようとしている。そういう考えもあるのかと。
「あくまで、今思ったことなのでそこまで気にしないでください。連綿と受け継がれてきた武術の考えと言うのもあると思いますから」
「うん、確かにそうだね。でも、過去に縋ってばかりいても進歩ない。最速で最強を目指すなら思考は柔軟にしておかなきゃね。まあ、それで天瞳流から全く別の物ができてしまったら、それもまた武術の奥深ささ。新天瞳流とでも名付けるよ」
天瞳流を名乗る意味はあるのかと、レイジーはツッコみたかったが疲れるので止めた。
「他に意見はあるかな?」
「しいて言えば、太刀筋ですかね。分かりづらいのはそうですけど、来る方向は片側からだけなので、腕の動きを見ていれば回避はできると思います。刀の長さは見ればわかりますしね。まあフェイントとかあるとちょっと困りますが」
だが、鞘の位置と、刀の間合いを把握していれば決して回避は不可能ではないと、レイジーは指摘する。
間合いに踏み込むふりをして、ミカヤの動作に合わせ一歩後退すれば回避は可能。その後、ミカヤが二撃目を放つ前に踏み込んでしまえば決着は簡単についてしまうという。
「まあ、回避された後の対処法もあるのでしょうが、近接格闘を主体としている相手に間合いに入られたら勝ち目はないと思います」
「むむ、なかなか痛いところを突いてくるね。確かにその通りだ。以前、それで右手を砕かれたことがあるからね」
ミカヤの発言にユミナが顔をしかめた。その状況を想像してしまったのだろう。
そんな彼女に今は大丈夫だと手をぷらぷらさせてみせるミカヤ。
そして核心的なことをレイジーに尋ねた。
「でも今の私は自分の居合が最速になることを信じている。だから居合の速度を最速まで上げたいと思っている。もし、レイジー君なら居合の速度をどう上げるかな?」
「武器に関してはよく分かりません」
「ならちょっとレイジー君の攻撃法を見せてもらっていいかな? 実をいうと先程はほとんど見えなかったんだ。情けないことだが」
「……コーラを飲んでいいですか」
会話の流れをぶった切って、ここに来る前にユミナにもらったコーラを取りに行った。
「彼はいつもああなのかい?」
「マイペースというか、おバカさんなんです」
「レイジー君がおバカでごめんなさい」
アインハルトとユミナがぺこりと頭を下げる。
コーラを美味しそうに飲むレイジーはとても幸せそうだ。
ほっと息を吐いてから、レイジーが戻ってくると端的に言葉を述べた。
「面倒です」
「こちらは頼んでいる身だからね、そう言われたらそれまでなのだが、そこを曲げてお願いしたい。どうか」
年上が頭を下げる。
普通なら良いですよというところだが、当然レイジーは普通ではない。断ろうとすると、
「実はこの後、門下生たちとバーベキューをしようってことになっているんだ。お礼と言ってはなんだが――」
「わかりました。ミカヤさんに言われたら断れません」
あまりにもレイジーすぎる心変わりだった。
レイジーの性格をノーヴェから聞いていたのだろう、彼を釣る方法を心得ているようだ。
「レイジーさん、私も見学させていただきます」
アインハルトが真剣な表情でレイジーを見つめる。
「お肉はあげない」
「……見学させてもらえれば大丈夫です」
微妙に会話がかみ合わない二人だった。
アインハルトが肉を狙っているのではないと分かったレイジーは一安心し、飲み終えたコーラのペットボトルを道場中央に置いた。
そして幾分距離を取ると、いつもと同じようにだらりとした構えを取った。
パンッ!
まさに一瞬。ペットボトルが高速で回転し、上方に飛んで行く。
集中していたミカヤは目を見開き、アインハルトは少しばかり悔しそうにした。
何が起こったのか分からないユミナは、ただただ驚いていただけだった。
最高地点まで上がったペットボトルは、重力に従って落下してくる。
だが、その落下は自然なものではなく、今度は右側に逸れて行った。
高速の二撃目である。
パンッ、パンッ、パンッ、パンッ
まるでダンスをするかのように、ペットボトルが空中で何度も何度も弾かれる。
中身を失ったペットボトルは軽い、レイジーの攻撃がまともにヒットしていれば、吹き飛んで行ってしまいそうなものだが、ペットボトルはいまだに原型を留め、くるくると回っている。
右に弾かれた次の瞬間には左に弾かれ、さらに瞬きするころには上方に弾かれている。
恐ろしく速く正確な攻撃を、何十回と続けているのだが、レイジーの蹴りのスピードが落ちることはなかった。
それはアインハルトの表情が変わらぬままで、ユミナの目にもレイジーがただ立っているだけにしか見えないことからも明らかだ。
同じ速さを主体にするミカヤでさえ、攻撃を放った数瞬後のレイジーしか捉えることはできない。
「ひゃくー」
そう言って最後に上方に吹き飛ばしたペットボトルを取りに行くレイジー。
そのあまりに鈍重な動きはさきほどの攻撃を行っていた人間と同じには見えない。
「いて」
落ちてきたペットボトルをキャッチし損ね、顔面に直撃させる。
なんとも締まらない格好だった。
「脱帽だね」
ミカヤの心からもれた言葉。
彼女が十数年生きて来て、これ以上に驚かされたことはなかった――世界チャンピオン、ジークリンデ・エレミアと戦った時でさえ、これ以上の衝撃は受けなかったのだ。
「合宿からそう日数が経ってないはずなのに、ディリジェントさんの攻撃速度が上がっているような気がします」
オフトレツアー二日目の朝。
盗み見たレイジーのトレーニング。
あの時は、全力で集中すれば、なんとか見えるくらいであったはずだった。だが、それが今では、区民センターで対戦した時の様に全くと言っていいほど見えなくなっている。
アインハルトはその事実に悔しさを感じていた。
(蹴りだけにすべてを捧げる練習スタイル。他の格闘家が防御や回避に当てるはずの時間をディリジェントさんはすべて蹴りに費やしている。これが彼の本気。極めるとはこう言うことなんだと教えられた気がします)
「私にはペットボトルがぽんぽん弾かれているようにしか見えなかったけど、あれってレイジー君がやったんだよね?」
「はい。恐ろしく速い攻撃です。ディリジェントさんもやはり成長しているということですね」
実戦的な練習を繰り返すことで、自分が成長しているという実感を持っていたアインハルトだが、同じようにレイジーも成長していることに称賛とちょっとした安堵を感じていた。
「お肉を食べましょう」
だらしない顔をしながら戻って来たレイジーにその場に居た皆が笑う。
先程までとは全く違うその様が彼女たちにはおかしく感じられたのだった。