「作戦開始!」
年が明けると同時にゼロが叫ぶと、眼前を白い閃光が焼き尽くす。
圧倒的なエネルギー量を持つ重量子反応砲・マクロスキャノン。予めオリジナルハイヴ構造物の真横数百キロに展開していたバトル・フロンティアから放たれたその一撃はハイヴの根本を焼き払い、月の重力を振り切って宇宙の彼方へ消えていった。これにより月面から突き出ていた構造物は消滅した。余波でだいぶ月面が抉れたが、月自体が粉微塵になるよりは遥かにマシなのでよしとする。
沸騰し、瞬時に冷却された地面には大きな穴が1つ空いている。ハイヴの地下層が剥き出しになっている。そしてその穴の中央に開いた主縦坑がロックオンされる。
ワラワラと迎撃に出てくるBETA。しかし残念ながら第2の矢はすでに放たれている。
人型をした強襲形態に変形したクォーターが左腕に収束したピンポイントバリアを纏い、突撃する。戦車級や要撃級といった見知ったものがほとんどだが、ちらほら見覚えのないBETAも出て来る。
「関係ない。
ぶち抜けぇぇぇぇぇ!!」
左腕が突き出され、クォーターがさらに加速する。左腕がBETAを押しつぶしながら主縦坑に突き立てられる。ブースターを最大まで展開。押し込めるところまで押し込むとピンポイントバリアを解除。ハイヴ内に侵入した左腕のハッチがすべて開かれ、リフトを使ってデストロイドたちが姿を現す。火力支援に特化した移動砲台シャイアンⅡ68機がその火器すべてを展開。友軍機に当たらないようにだけ気を配り、一斉に火を吹く。
両腕のガトリング砲と荷電粒子ビーム砲、両肩のミサイルポッド。搭乗するレアリエン達は今この場で撃ち尽くす気でトリガーは引きっぱなしだ。千にも達するミサイルが狭い坑道に入り込んで爆発していく。爆炎が坑道を駆け抜け、潜んでいたBETAを焼いていく。何度も何度も繰り返し焼かれたBETAは耐え切れずに斃れていくが、シャイアンⅡの手は止まらない。撃ち続け、最後にはガトリング、ミサイルは撃ち尽くし、荷電粒子ビーム砲はオーバーヒートするまで続いた攻撃が止まるとクォーターを後退させ、左腕を引き抜く。
左腕が抜かれた後の主縦坑にはBETAの死骸が1つも見当たらない。すべて吹き飛んだようだ。後退して距離をとるクォーターが通常の航行形態へと戻り、カタパルトにバルキリー部隊が姿を現す。三角形に近い形状をしたブルーグリーンの機体。大小2種類のビーム砲を2門ずつとガンポッドを1丁、さらにミサイルポッドと火力に優れたステルスバルキリーVF-171 ナイトメアプラスだ。クォーターに艦載されていた24機が順次発進していく。
このVF-171が現在のフロンティア船団の主力バルキリーとなっている。3年かけて数を揃え、VF-11を経て軍部で使用しており、以前開発していたVF-11は訓練機や土木作業機として運用が続けられている。
「本艦前方にデフォールド反応検知。バトル・フロンティア艦載部隊が合流します」
クォーターの正面に薄い桃色の渦のようなものが多数現れ、そこから新たなナイトメア部隊が姿を現す。そしてその中に4機、異様な機体が混じっていた。バルキリーの数倍を誇る焦げ茶色の巨体に鮫の目と口がマーキングされた怪物――可変爆撃機VB-6 ケーニッヒ・モンスターだ。
4門の320mmレールガンを筆頭に重ミサイルランチャーが左右3門ずつの計6門。対空対地機銃や小型ミサイルランチャーが2門と、バルキリーと比べて遥かに高い火力を誇っている。その怪物4機が通常の爆撃機の姿であるシャトル形態から人型のデストロイド形態へ移行し、背中の4門のレールガンをクォーターのマクロス・アタックで抉じ開けた主縦坑に照準を合わせる。装填された弾頭は炸裂徹甲榴弾。もっとも、内蔵した火薬の量は半端なく、4発撃ち込めば戦術核1発にも匹敵する威力を誇っている。
マクロス・キャノンとマクロス・アタックの2連撃によって既に全壊していると言っても過言ではない状態に陥った月面オリジナルハイヴだが、生憎とここで手を緩めるほどゼロは甘くない。ケーニッヒ・モンスター4機が一斉に吠えた。轟音を轟かせて射出された計16発の弾頭が主縦坑に吸い込まれていき、内壁に当たって大爆発を起こす。
その爆発の残光が消えないうちにナイトメア部隊が主縦坑に侵入し、ケーニッヒ・モンスターとクォーターがミサイルで援護する。ナイトメア部隊がフォールド通信を使ってハイヴ内の映像をリアルタイムで送ってくれるが、BETAが一切いない。残骸すらない。すべて消し飛んでいる。
やがて横坑や縦坑にも侵入した部隊からはちょくちょくBETAと交戦したとの報告が入るが、いずれも残党といった感じで最大でも中隊規模のBETA群としか遭遇しない。
そのような状態が暫く続き、作戦開始から90分後、ナイトメアの1個中隊が巨大な広間のような空間で地面から生えた立派な男●器のような物を発見。地面に倒れ伏していたが、あまりに巨大なため警戒して距離をとっての映像だったが、ゼロが見た限りミディアム状態だった。念のためミサイル全弾とビーム機銃を数十発と撃ち込ませた後に、ピンポイントバリアを手腕に纏わせて殴らせ、フルボッコで砕かせた。これが、月面に存在した重頭脳級の最期であった。
その後、さらに1時間かけてハイヴ周辺の残存BETAを駆逐したところでゼロは作戦終了を宣言。月面オリジナルハイヴ攻略作戦は残存BETA掃討の際に混戦になった者が数名墜とされたが死亡者は20人に満たずゼロ達フロンティア船団の完勝に終わった。
完勝です。間違いなく完勝です。
というよりも「やりすぎたかな…」と言った感じがします……。
しかし、マクロス・キャノンとマクロス・アタックをぶち込んだのだし、こんなもんかなと。
今回も閲覧いただき、ありがとうございました。