Muv-Luv Frontier   作:フォッカー

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今回はゼロたちではなく、ゼロたちを見た人類サイドです。


第3話 混乱と思惑

ゼロ達がハイヴの入口で合流し、突入した頃、スワラージ作戦の総司令部では蜂の巣を突いたかのような惨状が広がっていた。

 

 

 

「所属不明機(アンノウン)の追加情報入りました!確認された12機はハイヴ内に侵攻したもよう!」

 

 

 

「アンノウンの画像来ました!」

 

 

 

「該当する機種無し!作戦参加各国もアンノウンに関する情報は無いとのことです!」

 

 

 

つい先ほど行われた軌道降下師団による降下作戦に紛れて戦場に現れた12機の戦闘機の情報が多数集められ、その対応に追われていた。

 

戦闘機が降ってきた。

戦闘機が変形した。

光線級の攻撃を弾いた。

 

等々、到底信じられないような情報が最初に前線から届いた時指令本部に居た者達は何を世迷言を…、と取り合わず前線衛士達の疲労からの幻覚だと切り捨てた。それほどまでに現実味が無かったのだ。

 

戦闘機などと言う既に廃れた兵器が今更現れる訳が無かった。しかもそれが変形し、さらにはレーザーを弾いたなどと。

 

 

しかし、同じような報告が4件5件と続くと指令本部の面々から緊張感が漂い始めた。1、2件程度なら単なる幻覚と処理出来た。だ

が、全く同じような報告がどんどん入ってくる。終いには戦術機のカメラが捉えた手足の生えた戦闘機もどきが地上スレスレと滑るように飛んでいる静止画まで送られてくる始末だ。戦場でそんな映像を作る暇があるわけがない。強いて言うなら映像を送ってきた戦術機は重金属雲の濃度の低い位置で戦闘行動を継続中だった。

 

作戦参謀は大急ぎでオペレーターに命じ、作戦参加各国に新兵器投入の予定があったのかの確認を行わせた。返って来た答えは「No」。

ならばと今度は可能な限りのデータを集め始めた。前線には戦闘機の数や進行方向などの情報や静止画で構わないから映像を可能な限り送るように命じ、本部のほうでは各国と協同で解析に努めた。

広いブリーフィングルームに集まり、スワラージ作戦を国連に提示したソ連や、この地にあった国であるインドを始めとしてかなりの人種が押し入ったこの部屋はだいぶ窮屈になっている。今なお前線から送信されてくるアンノウンの画像が現像された物がデスクに並べられ、正面モニターに大きく拡大されて映し出される。

 

 

 

「こ、これは…!」

 

 

 

「事実なのか…?レーザーを弾いている……。」

 

 

 

「跳躍ユニットが無い?いや、足に集約しているのか……。だがこれでは強度不足で歩行出来ないのでは…?」

 

 

 

3つの姿を持ったアンノウンの写真を隅々まで見る学者・技術者が唸る。中にはルーペまで使っている者まで居る程だ。作戦における兵器のデータを収集するために来ていた彼らだったが、既に興味は自国の兵器ではなくこちらに向いていた。

 

特徴的な前進翼を持った青い戦闘機が突撃級の頭上を音速の数倍の速度で駆け抜ける写真。

手足のある奇妙な戦闘機が手にした突撃銃で進路を塞ぐ要塞級の下を潜り抜けながら一斉射を繰り出す写真。

跳躍ユニットも兵装担架もない人型が左前腕部にライトグリーンの光を纏わせて光線級の放ったレーザーをぶん殴っている写真。これによってレーザーは僅かにではあるが曲がり、人型の身体から放れて後方を走っていた突撃級のケツを焼いていた。

 

どれもこれもが信じられないものばかりだった。しかし、実際に静止画という形で前線から送られてきていた。

この場に居た彼らは思った。

 

「どこの実験機か知らないが、何としても手に入れる。」

 

この機体に使われている技術をモノにすることが出来れば祖国に評価される。自分の立場がより一層豪華に、強固な物になる。

BETAに勝てるなどと言う考えはなく、ただ己の利権にしか目が行っていないようだった。如何にして他を出し抜くか。彼らの思考はそれだけで埋め尽くされて行き、1人のソ連軍将校が黙って退出したことに気付かなかった。

そして将校はやや小さな、無人の第二発令所に踏み込んだ。そして慣れた手つきで秘匿回線を開く。

 

 

 

「…私だ。………喜べ、貴様らのターゲットが増えた。

 

…そうだ。例の戦闘機モドキだ。確保は期待していない。が、何としても『リーディング』させろ。『リーディング』さえ出来ればそこから出所を探れる。BETAよりも此方を優先させろ。どうせあのような下等生物共に思考なんぞある訳がない。……よし、では結果を残せ。

すべては、偉大なる祖国のために。」

 

 

 

ハイヴ突入直前だった機密部隊の中隊長の男にそう命じた将校は口元に小さな笑みを浮かべ、この交信のログを消去した。

 

 




はい、今回もありがとうございました。

そしてごめんなさい。キリのいいところで切ったんですが短い。大変短い。

基本私が書くと1節が1500程度にしかならないんです。今回短い分、明日は少し頑張ります。

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