Muv-Luv Frontier   作:フォッカー

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……0時に間に合わなかった。
ケツバットの番組見てたら間に合わなかった……(T_T)


第20話 嵐山守備中隊、結成

 訓練の修了、臨時任官。7月21日の朝、突如として告げられた通知と兵庫県南西部が出現した正体不明の超巨大BETAによって壊滅したと聞かされた時、斯衛軍衛士訓練学校に通っていた篁唯依達は言葉を失った。確かに、BETAはこの国に侵攻を開始していたし、いずれはこうなるだろうとの覚悟もしていた。しかし、フロンティア船団という勢力の協力を得て九州地方での封じ込めが成功していた中突然の事態に教官の言葉が理解出来なかったのだ。

 唯依達が茫然とする中でも、教官による状況の説明は続く。開示出来る情報としては、出現した超巨大BETAは光線級や要塞級をも含む大量のBETAを吐き出した後に地中へと姿を消したという。この超大型はフロンティア船団側が母艦級と呼称しており、大容量のBETA運搬能力を持つまさにBETAの母艦・空母だという事から正式に母艦級と呼ぶことが決まった。母艦級は非常に硬い外殻を持っており、戦艦の主砲にすら耐えるため撃破するにはそれ以上の火力・貫通力を誇る攻撃を加えるか、開いた口内に戦術核レベルの爆弾を放り込み、尚且つ口を閉じた状態で起爆するしかないとのこと。フロンティア船団では交戦経験があり、母艦として運用しているマクロス・クォーターという戦艦の最大火力や、複数機必要になるがVB-6という砲撃機

による波状攻撃なら有効打を出せるという。そのため、主力中隊を帰還させたクォーターが全速力で母艦級の迎撃に向かったが、惜しくも間に合わなかった。

 惜しくも、というところで海上艦しか知らない唯依達は九州沖から瀬戸内海の兵庫沖までそれ程短時間で移動したのかと驚くが、実際は浮上したクォーターが地上で出せる最大速度で移動したのであり、その速度は海上艦の比ではない。そして兵庫県に到着したクォーターは母艦級から出現したBETA群に対し満足な反撃も出来ず壊滅した姫路基地に代わり、倉敷基地と合同で四国・中国が挟み撃ちを受けないように食い止めている。フロンティア船団の参戦という事実やその船団の使用している技術に関して各国の諜報機関がやっきになって探っているが、表には出て来ていない。

 

 

「貴様らは嵐山補給基地に配属され、異星起源種どもが万が一防衛線を突破し、帝都の直衛部隊と戦闘に入った際の補給支援に当たる。また状況次第では対BETA戦も充分に可能性がある。……嵐山補給基地への移動は一八○○。それまでは自由時間だ。家族に挨拶に行って来い。疎開は始まっているから急げよ」

 

 

 唯依達の配属先が告げられ、教官が教室から出て行く。暫らく沈黙が続いたが、やがて誰からともなく席を立つ。仲の良いグループで集まり教室を出て行く少女らの表情には何も浮かんではいなかった。訓練が終わり任官したという喜びも、間もなく戦争になるという現実も、何もかもが信じがたいのだろう。

 

 

「……こうしていても仕方ありません。私達も行きましょう」

 

 

 唯依の隣で沈黙を続けていた上総が立ち上がった。その上総を見上げていた唯依もまた立った。そして続くように志摩子、和泉、安芸と立ち上がる。覚悟が出来た兵士の表情からはほど遠いが、恐怖はない。6人目、訓練期間の途中から入学してきた美与だけは座ったままだったが、彼女は誰よりも早く行動に移しているのを唯依は知っていた。

 

 

「美与?何見てんの?」

 

 

 座っていた座席の関係上美与の机が見えなかった安芸がもくもくと資料に目を通している美与に訊ねる。

 

 

「嵐山周辺の地図よ。訓練兵上がりの私達が活動するとしたら、基地からはあまり離れないでしょうし。地形を理解しておけば立ち回りとかも効率良く出来るしね」

 

 

「でも、その辺りなら飛行訓練で通ったわよね?今更?」

 

 

「あの時は地形の把握には力入れてなかったしね。本当は実際に下見したいところだけど、今は地図で我慢ね」

 

 

 和泉の質問にも答えつつ、美与は地図を畳んで鞄にしまう。他に出していた筆記具もしまうと美与も立った。

 

 

「お待たせ」

 

 

「ううん。それでは、寮の私物を片付けに行きましょうか」

 

 

 唯依を先頭に訓練校の寮へ戻る。美与のような例外を除いて基本的に武家出身者ばかりが集まる斯衛軍の訓練校だけあって寮には個室が与えられている。衣服や教材以外にも私物を持ち込んでいる者も多く、唯依達もまた私物を持ち込んでいた。それらを必要な物のみを箱に詰め、持ち出して貰い、残りは放置する。通常の卒業であれば回収されて来年度の新入生が再利用したり貧困層に配られたりするために業者に回収されるのだが、今回はそんな余裕はないためBETAを撃退して業者が京都に戻ってくるまではそのままだ。時間もないため下着や貴重品と言った他人に見られたくない物だけを鞄に詰め、最後に父の形見である古びた懐中時計を手に慣れ親しんだ部屋を後にする。廊下には上総と美与の姿しかなく、志摩子達は恐らく寮や訓練校での思い出を思い返しているのだろう。それも2,3分もすれば全員廊下に姿を現し、無言のまま歩き出す。入寮する前、毎日訓練校に通学するために通っていた道も無言のままそれぞれの屋敷へと向かい、分かれていく間も静かなものだった。市民の避難も始まっているため街自体には喧噪が溢れているが、武家屋敷の集中している地帯に入るとそうでもなくなる。武家としての誇りから、パニックに陥る事なくそれぞれの為すべき事を為す為に動いている。家族への別れを手短に済ませ、車で軍部に向かう当主を見送った女達が家中達を纏め上げて指示を出し、家宝すら捨てて避難を開始している姿があちこちで見られた。

 

 

「それじゃあ唯依、また後で」

 

 

「うん、また後で」

 

 

 最後まで一緒に歩いていた志摩子とも別れる場所に着いた事で軽く挨拶を交わして別れる。譜代武家である篁家の屋敷は奥地に位置し、一般武家の志摩子や上総達の屋敷よりも遠くまだ少し距離があった。

 

 

「あれ…?そう言えば美与さんは…?」

 

 

 1人になってふと感じた疑問。大陸で家族を失って天涯孤独となった美与は親戚が居るという話も聞かず、早々に別れた今どうしているのだろうか。自分たちが考え事をしていたためにその時は気付かなかったが、どこに行ったのだろう。暫らく想像してみていたが屋敷と出迎えに出て来ていた母の栴納の姿を見て考えを切り上げ、背筋を伸ばし、栴納の顔をしっかりと見つめながら近づいて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――同刻、間もなく発射する最後の新幹線に大量の市民が押し込まれている様を近くの10階建て程のビルの屋上から見下ろす少女が1人居た。藍色の長髪を朱い髪留めで一房に結った少女は、唯依が思い浮かべていた早乙女美与だ。美与は以前と同じ、小型の通信機を片手に交信を続けていた。

 

 

「はい。今晩から嵐山補給基地に配属されます。BETAの侵攻状況から考えて明日の夜実戦投入かと」

 

 

『――。―――――』

 

 

「本当ですか!?…分かりました。時間になり次第、ビーコンを起動します。受領後はどのようにすればよろしいですか?」

 

 

『――――――』

 

 

「了解。時間合わせ、お願いします。カウント35時間22分00……4、3、2、1、スタート」

 

 

 通信機とは異なる小型の端末を足元に置いていた鞄から取り出した美与は、それについているボタンを操作して時間を打ち込み、カウントと共に起動する。すると一秒ごとにカウントダウンが始まった。

 

 

「カウントの正常稼働を確認。続いて、ビーコンのテストを行います。よろしいですか?」

 

 

『――』

 

 

 答えを聞いた美与は通信機のボタンの1つを押す。すると赤いランプが一定間隔で点滅を始める。5秒ほど点滅させた後にもう一度同じボタンを押して点滅を止める。

 

 

『――。―――』

 

 

「はい、分かりました。では、また」

 

 

『――』

 

 

 確認すべきことを確認しきった美与は交信を切った。出していた機材を鞄に仕舞い込み、ふと西の空を見やる。青い空と白い雲の広がる一見平和な空だが、時折光の柱が空を貫いている。常人であれば見えないであろうが、生憎と美与は普通とは異なっている。故に、戦場で挙げられた破壊の光が見えていた。

 

 

「……嫌な感じね」

 

 

 空を睨み、小さく呟いた美与はそのまま路地裏へと飛び降りて誰にも見られずに姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

――そして夜。嵐山補給基地に正式に配備された唯依達は簡略化された着任式を経た後、受領された戦術機の格納庫に籠っていた。任官した事によって使用する機体は82式瑞鶴へとなる。訓練校で使用していた77式撃震の国産改修機で、唯依の父と父替わりである巌谷榮二少佐によって生み出された斯衛のための刃。唯依にとって感慨深い機体だが、出撃までに撃震との違いを実際に把握しておかなければならず、整備班とともに機体の調整に専念していた。

 

 

「火を入れてみます。離れてください」

 

 

外部で作業をしている整備班に向かって警告してから機体を起動させる。主機に火が灯り、唯依の網膜上に直接外の景色が映される。と言っても映る景色は格納庫の中だけ。中隊長を務める斯衛軍大尉の紅い瑞鶴と唯依の山吹色の瑞鶴。他は全て白の瑞鶴で、斯衛軍の仕来りに従って出身武家の格式ごとに機体のカラーリングが異なっている。そんな中、一台の戦術機輸送車が格納庫に侵入してきた。荷台には剥き出しのままの瑞鶴が積まれており、その色合いは黒。武家以外の斯衛衛士の乗機を表す色で、美与の機体だと即座に判断出来た。その瑞鶴に美与が駆け寄っているのが見えるので、その推測は正解だったようだ。

 

 

「あれ…?」

 

 

「どうしました?少尉」

 

 

 スムーズに起動して立ち上がった美与の瑞鶴の、教本のような綺麗な動きを見ていた唯依はふと違和感を感じて声を出していた。それを聞き付けた開きっ放しの管制ユニットの近くで計器の調整を行っていた整備士の少女が訊ねる。

 

 

「美与さん……早乙女少尉の機体なのだけど、アレは…」

 

 

「…あぁ、黒は基本最前線に送られてますからね。機体に余裕がないので前線から整備に戻って来た機体を突貫修理で持ち込んだらしいですよ」

 

 

 武家でない斯衛は帝都の直接守備に就く事なく最前線でBETAの進撃を食い止めるための先鋒に組み込まれている。そうでない者も居るがそう言った者は基本的に五摂家直属の部隊として配備されており、個人を守るために戦う事になっている。もともと数が少ない中、既に多数の黒は配備先が決まっており、予備機が足りていない。寧ろ、任官したばかりの唯依達に新品の機体が回される事自体他の軍では異例なのだ。美与に与えられた機体は前線で酷使されて送り返された物を修理した機体。満足な整備も出来ていないのではないかと不安を感じる唯依だったが、当の美与は一切気にしてはいなかった。

 そしてその美与は機体をハンガーに固定した後、協力している整備士達が唖然とする速度で機体に接続したコンピュータを使って調整を行っていた。センサー系統のチェックを行い、OSに介入して姿勢制御や自動操縦のプログラムを自身の扱いやすいように改変していく。本来であれば許されない行為なのだが、その速度が速すぎる事と、モニターを覗き込める距離に居た整備士達がプログラム関係にそれ程強くなかった事が幸いして気付かれることはなかった。

 

 

「ゼロ達の言っていた通り、本当に無駄の多いOSね。…出来れば唯依達のOSも書き換えて挙げたいけど、させては貰えないでしょうね」

 

 

 誰にも聞こえないように、ポツリと呟いた美与は機体の起動スイッチを押して停止させる。整備士達はこれから前線に送り出す補給物資や一端帰投した機体の整備に忙しくなるため、最後の整備になると言って美与の瑞鶴の装甲を少しだけ開いて配線に異常がないかなどの簡単なチェックを行っていく。その忙しさから通常であればそう簡単に変わらないOSを再確認することはないだろうと思うが、念のためにダミーの通常プログラムを流してから機体から降りた。

 

 

「瑞鶴、短い間だけど、力を貸して頂戴ね」

 

 

 コツンと、足先の装甲を軽く打ち、瑞鶴に話しかけた美与はそのまま格納庫を後にして待機室へと向かった。強化装備の上から羽織ってから行くとそこには着座調整を終えていた唯依達が既に集まっており、テーブルを囲ってお茶を飲んでいた。

 

 

「美与さん、どうぞ」

 

 

「ありがとう」

 

 

 美与が一席だけ空けられていた席に腰を下ろすと、上総がコップに急須からお茶を酌んで差し出した。それを受け取って一口含むとふぅ、と一息吐いた。

 

 

「い、いよいよ……なんだよね」

 

 

 仲の良いメンバーの中でも最も小柄な少女である安芸がお茶の入ったコップを両手で挟み込みながら呟いた。その手は目に見えて震えており、その目には恐怖が浮かんでいる。それを見た唯依達の表情が曇るが、美与だけは平然としていた。

 

 

「……ねぇ、何が怖いの?」

 

 

 不意に切り出した美与に唯依達の視線が注目した。しっかりと自身が注目を集めたのを確認した美与は言葉を続ける。

 

 

「BETA一体一体は大したこと無い。厄介なのは数だけ。その数も、私達が落ち着いてちゃんと連携すれば大したことないわ。怖いと思うのは人間なんだし当然でしょうけど」

 

 

「美与は…BETAが怖くないのかよ」

 

 

「そんなの怖くないわ。でも、貴女たちの誰かが居なくなるのは嫌」

 

 

「私達…?」

 

 

「えぇ。と言うより、親しい人たち…かな。私がここで戦う理由は、貴女たちを死なせないため。貴女たちは、何のために戦うの?」

 

 

 安芸と和泉が弱々しく問いかけるのに対して美与は即答で返す。そして何のために戦うか。その問いに即答したのは唯依だった。

 

 

「帝国のため、将軍のため、市民のため。それが私達武家に生まれた者の務め。だから――」

 

 

「――それが唯依…貴女の戦う理由?」

 

 

「え、えぇ…」

 

 

 唯依に向けられる美与の視線が鋭くなる。別れ際、母に背を押されて固めた意志が僅かに揺らいだ。

 

 

「……まぁ、それでも良いけど。その理由はあまり長続きしないわ。顔も知らない、不特定多数のために戦うのは途中で苦しくなるわよ?」

 

 

「そんな事ないわ。いつまでも、私のこの思いは分からない」

 

 

 暫し睨み合いが続くが、美与の方が不意に視線を和らげた。あまりに突然の事だったので唯依は勿論、こんなタイミングで喧嘩かと焦り始めていた上総達も呆けてしまった。

 

 

「固いわねぇ。でも…ま、そこが唯依のいいところなんでしょうけど。

 ねぇ、和泉…貴女はどう?」

 

 

「えっ!?私!?」

 

 

行き成り話しを振られた和泉は大いに慌てた。

 

 

「わ、私もええっと…唯依と同じ、かな?」

 

 

 視線を上下左右に振りながら、最終的に唯依に合わせながら和泉は答えた。その答えに美与はニヤリと小悪魔めいた笑みを浮かべた。

 

 

「へぇ…彼氏君は違うの?どんな人かは話にしか聞いた事ないけど、和泉のためって言うんじゃない?」

 

 

「え、えぇっ!?い、いや…そそその…」

 

 

 BETAとの戦闘が未だ続いている九州戦線に配属されている和泉の彼氏。その彼氏の事を言われて純粋に慌ている和泉を見て場が少し和む。そして和泉は和泉で頭の中の彼に真剣な表情で「僕は君のために――」と言われて茹っている。

 

 

「私はそんな理由での方が人は強く成れると思うわ。というか、そっちの方が人間らしくない?」

 

 

「まぁ、確かにそうですわね」

 

 

「でも私達ってそう言うの無いのよねぇ」

 

 

 美与に賛同する上総と頬に手を添えて溜息を吐く志摩子。訓練校は女子校で男は精々教官しか身近に居なかった唯依達には色恋沙汰というのは縁が薄い。唯一彼氏持ちの和泉も恥ずかしがって普段はこう言った話を滅多に持ち出さない。

 

 

「そうだ!ねぇ、和泉!その彼氏君は大丈夫なの!?」

 

 

 和泉の彼氏が九州に居る事を思い出した志摩子が身を乗り出して和泉に訊ねる。それを受けて唯依達も気になって和泉に注目が集まった。

 

 

「あ、うん。彼も、彼の配属されてる部隊も全員無事だって」

 

 

「本当!?」

 

 

「もう2週間戦闘が続いているのでしょう?それで、誰も…?」

 

 

「うん…。基地に来る前に電話した時に、詳しくは軍機だって教えてくれなかったけど……」

 

 

「へぇ…。じゃ、じゃあさ!BETAって教官が言ってた程強くないのかもね!」

 

 

 急に強気に成り出した安芸。もともと明るくムードメーカーの素質のあった安芸のその雰囲気は唯依達にも伝播する。少なくとも初めの頃のような恐怖や不安からくる緊張した雰囲気ではなくなった。BETAなんか大したことない、私達が倒してやる。そんなやる気が出てきている。

 

 

「嵐山守備中隊!起立!」

 

 

「っ!中隊長に敬礼!」

 

 

 少しだけ雰囲気の明るくなった待機室に踏み込んで声を張り上げた紅の強化装備を着た女性を見て唯依が号令を掛け、室内に居た全員が直立して敬礼する。今回の部隊の中隊長を務めることとなった斯衛大尉は返礼をした後、サッと室内を見渡して指示を出した。

 

 

「第1小隊は夜間警戒のため厳戒態勢で待機!第2、第3小隊は交代に備えて仮眠室で休息を摂れ!」

 

 

「「「「「「「「了解!」」」」」」」」

 

 

 室内に居た全員の声が重なり、命令に従ってそれぞれ動き出す。唯依と志摩子、和泉、安芸は第2小隊。上総と美与は第3小隊のためまずは休息が命じられたため仮眠室に向かう。簡素なベッドで、布団も薄く寝辛いが眠れる時に寝ておかなければならない為唯依達は無理にでも寝ようと布団に包まれる。

 

 

「皆……絶対、生き残ろうね」

 

 

「「「えぇ」」」

「「うん」」

 

 

 眠りにつく直前、唯依が掛けた言葉に5人全員が力強い返事を返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――そして翌日の日の沈んだ時。BETAの一集団が防衛戦を突破し、嵐山補給基地の目の前にまで迫って来た。当然、緊急発進の指示が出され、唯依達はそれぞれの機体に乗り込んでいく。そして美与もまた、補給基地唯一の黒の瑞鶴に乗り込み、長刀と突撃砲、多目的追加装甲を1つずつ手にした迎撃後衛装備で射出台に機体を固定する。

 

 

「……さぁ、瑞鶴。無茶するけど、お願いね」

 

 

 愛機となった機体の操縦桿を優しく撫で、視線を腰にアタッチメントで取り付けた端末にやる。カウントダウンは継続されており、残りは3時間弱。それまで機体をもたせつつ、全員を助ける。不可能かも知れないが、初めから諦める訳にはいかない。

 

 

『ブラスト・オフ!』

 

 

 先に出ていた中隊長を追うように唯依の山吹の瑞鶴が飛び立つ。追って志摩子達の瑞鶴も発進し、第3小隊の小隊長である上総が発進した。次は美与の番だ。

 

 

「早乙女美与、出ます!」

 

 

 ペダルを強く踏み込み、2基の跳躍ユニットが火を吹いて機体を押し出す。

1998年7月22日。嵐山の夜空に12羽の鶴が飛び立った。

 

 

 

 




今回はアニメ・TEの第1話に相当する話ですね。
本当はもう少し、BETAと接触するところで切ろうと思っていたんですけど、テレビ以外にも携帯会社の変更によるアドレスとかの再設定で断念……。


ps:前書きの顔文字。初めて使うんですけど『しょんぼり』で意味あってますかね?

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