Muv-Luv Frontier   作:フォッカー

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1週間ぶりの更新になります。
今回はライブではなく、ゼロのお仕事と船団の動きになります。


第13話 戦闘準備

 

 

1998年6月某日。BETAの日本侵攻まで正史通りならばあと1ヵ月と言ったところでフロンティア船団では急ピッチで戦闘準備が進められていた。

リゾートエリアであるアイランド3や穀倉エリアのアイランド5、工場施設の集中したアイランド11、医療施設と生物学の研究施設が並立するアイランド26という4つの環境艦を船団から切り離し、大気圏突入用の特殊コーティングを施させる。今回の戦闘後、船団は表舞台に立つことを決めた。そのための地球上での拠点として降下させることも決定した。環境艦単体では大気圏離脱は不可能であるためもう船団に合流させることは不可能になる。そのため、綿密な点検を行い、必要・不必要な物資の移動等で多くのレアリエンが作業に没頭している。

 

 

そして現在昼過ぎ、ゼロはナターリアを伴ってアイランド1内のレアリエン製造施設に来ていた。新しい仲間の誕生を迎えるためだ。

 

 

 

「ではゼロ、起こしますね?」

 

 

 

「あぁ、頼むよ」

 

 

 

ゼロは既に22歳。既に成人を迎えており、背丈も高い男性へと成長している。そしてナターリアも眼帯が痛々しいものの綺麗な美少女へと成長し、はっきりとした年齢は分からないものの、今はおよそ15歳程度。の、割にしてはやたらと発育がいい。この世界はデカいチイさいの差がやたらとはっきりしている気がするゼロ。と、そんなことを考えている内にナターリアがスイッチを押し、レアリエンを製造していたカプセルが開放される。2つのカプセルが開き、1人ずつ男女が現れた。

青い長髪の男性と深緑のショートカットの女性だ。2人とも素っ裸なのでゼロは男性に、ナターリアは女性へと駆け寄って毛布で包む。そのまままだ目覚めていない2人を検査室に運び込み、異常がないかを検査する。

診断結果は2人とも異常無し。目覚めて1日休ませたら仕事を教えられるだけの体力が回復するだろう。

 

 

 

「ゼロ、確かあの2人に留守を任せるのですよね?大丈夫なのですか?」

 

 

 

「大丈夫さ。あの2人のオリジナルは天才でね。実際に別の船団の艦長と市長をやっていたんだ。それに、2人ともエースだ。専用カラーのVF-22も用意したし、何の問題もないさ」

 

 

 

検査の結果に目を通しながら廊下を歩くゼロにゼロの今日使う資料を胸の前で抱えたナターリアが続く。ここ3年で仕事を完璧に覚え、秘書官としてどこに出しても恥ずかしくないぐらいに成長したナターリアを伴って視察するのがゼロのいつもの姿となっていた。かと言って甘い雰囲気の類は一切流れず仕事一筋の2人は、一部感情の豊かなレアリエン達が2人の関係の進展についてのトトカルチョを楽しんでいることを知らない。そしてその一部という感情豊かなレアリエンが一番初めの超技術で造られた200人が中心だということも、だ。

 

そして次に2人がやって来たのはアイランド1内の飛行場。ここには退役させたVF-11Cが格納されていた。もう少しすればこの中から状態のいい物を一個大隊ほどアイランド11に移動させて自警用にする予定ではある。その状態のいい物の内2機を引っ張り出し、EXギアを装備した新デザインのパイロットスーツを着た2人が乗り込む。

これから行うのはナターリアの戦闘訓練とゼロの教導の訓練だ。適正が低いとは言え、ナターリアも最低限の戦闘機動は出来る。ならば非常時にバルキリーを動かせるように訓練しておくべきだとゼロが考えたためだ。そしてゼロ自身、誰かに教えることは自分の技術向上の一環になると思い教導官をかってでた。初めの内はカナンが見張っていたのだが、最近ではすでに問題ないと自分の仕事に戻っている。2人でアイランド1内を飛び回り、ロックオンすることを目指す。火器類は流石に艦内で使用出来ないのでどちらかがロックオンすれば終わりだ。その後は軽く空中散歩を楽しんでから帰投。

その頃にはだいぶ夜も近づいているので街の商業区画では活気が溢れて来る。総人口は未だに少ないが、既に専用のお金は流通しており、食材は購入することが必要となっている。これは地球に合わせる必要があったためで、別に支給制にしても問題は無かった。しかし、こうやって売る者と買う者が居れば街が一気に明るくなる。街の大型スクリーンの中で歌うランカやシェリルの歌を聞きながら、仕事場から割り振られた自宅へ帰宅する際中に食材を買って帰るレアリエン達に混じってゼロ達も晩御飯の食材を買って帰る。自宅として使っている政庁に戻り、キッチンで料理して食べ、それが終わるとそれぞれの部屋に戻る。そこからは2人は別々に簡単なデスクワークが待っている。

ゼロはその日1日の船団内でのトラブルや生産消費された物資の確認と生産の指示。ナターリアは次の日のスケジュールの組み立て。それが終われば入浴、そして就寝だ。

 

表舞台に立つまで、もう残り僅か。しかし、焦らず着実に準備を重ねて行った。

降下させる各アイランドには滑走路を敷き、可変戦闘機や可変爆撃機、可変攻撃機、人型戦車(デストロイド)の配備が進められている。地球での旗艦となるクォーターの操舵手としてボビー・マルゴが、艦長兼表の代表としてジェフリー・ワイルダーがそれぞれ準備を進めており、人間を専門とした衛生兵も何人か用意させてある。

地球に予め潜入済みのレアリエン達とも連携をとって、降下後に一部合流の手筈となっている。また、技術提供を要求されたときのための出しても問題ない程度の技術を纏めた資料も作成済みで、G弾対策にMDE(マイクロ・ディメンジョン・イーター)弾も何発か準備した。実弾系の補給物資や食料、難民受け入れの施設の整備がまだ不安が残るが、数日中には完了するだろう。

 

BETAの九州上陸は1998年の7月。台風の上陸に合わせてとしか記憶にないゼロは太平洋付近の天候に注意させている。今のところ台風発生の兆候は見られないが、どの台風の上陸時にBETAが上陸するのか分からない以上早急な準備が必要だった。先遣隊の部隊編成や宇宙に残って月の残存ハイヴ攻略や月面資源の回収、火星からの着陸ユニットの迎撃部隊などの留守番組の編成は順調に進んでいる。準備が完了次第先鋒は出立し降下するが、どのように接触を図るかは決めかねている。あまり強行な手段を取れば関係は悪化するし、かといって下手に出過ぎれば舐められる。戦力や生産力では此方が上回っているが、経験が圧倒的に不足している。そこを突かれないよう、突く暇を与えないように迅速に且つ可能な限り穏便に対等になる交渉を行う必要がある。

 

どのような手段を用いて交渉を行うべきか。それを考えながらゼロは微睡みの中に落ちていく……。

 

 

 

 

 

 

もう間もなく、フロンティア船団は大きく動き出す。

 




以上、閲覧ありがとうございました。
…MDE弾ですが、空間ごと強制フォールドさせるのでG弾も宇宙の何処かにフォールド出来るんじゃない?と思って対G弾兵器としました。

来週は更新出来るか不明です。何かネタが思い浮かべば挙げますが、無ければ京都防衛戦を4月に挙げることになります。

追伸)申し訳ありません、くたばっておりました。お久しぶりです。
感想で色々と意見を戴き、ノックアウトされとりました。そこで今後の展開の再構築を行った上、少し内容の変更を行いました。変更内容はナターリアのゼロの呼び方と、この話のゼロの今後の予定(?)です。
最新話は週末には上げる予定ですので、今後とも気長にお願いします。

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