美柑と黒猫と金色の闇   作:もちもちもっちもち

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セフィ

 月の綺麗な夜だった。

 宝石のように色とりどりの光が夜の街を照らし、人々の雑多な声が行き交う。

 しかし、それは表通りに限っての話。

 一度でも裏路地に入ってしまえば、人の波は途絶え、静寂だけが支配する。

 そんな時、ふと見上げた月は、腐敗したこの世のものとは無縁だと言わんばかりに、周りのことなど素知らぬ顔で、悠然と夜空に浮かび続けていた。

 

 

「ハートネット」

 

 

 凛とした声だった。

 気品に溢れ、気高く、纏う雰囲気は静謐。

 高潔を絵にかいたような、その立ち姿は傾国の美姫であり、その前に彼女は剣士だった。

 その身は、心は、己の全てを、彼女は自身が所属する組織に捧げ続けてきた。

 それが当たり前だと思ってきたから、物心がつく頃からそうだったから。

 それ以外の生き方を、彼女は知らなかったから。

 

 

「どうしてですか」

 

 

 空に浮かぶ月のように、彼の瞳は暗闇が支配する裏路地でもはっきりと浮かんでいた。

 暗色の髪、金の瞳、鈴付きの真っ赤なチョーカー、左鎖骨に刻まれた≪XIII≫のローマ数字。

 獲物を狩る捕食者のように、鋭く細められた眼光に、竦みそうになる体を意思の力で抑える。

 

 

「何故、クロノスを抜けたのですか」

 

 

 その力は、まさに一騎当千。

 秘密結社≪クロノス≫に存在する、本来12人で構成された最高戦力≪時の番人(クロノ・ナンバーズ)≫に例外として迎え入れられた、不吉の名を冠する13番目の抹殺人(イレイザー)

 彼は強かった、最強の名を欲しいままにしていた。

 入所した時点で12人のナンバーズの誰よりも強く、今となっては自分を含む全てのナンバーズが束になって掛かっても、彼には敵わないだろう。

 

 

「何故、私の前から姿を消したのですか」

 

 

 だからだろうか、≪クロノス≫は彼の存在を恐れている。

 死を持って世界の安寧を保つ≪クロノス≫と、不殺を誓う彼。

 ≪時の番人(クロノ・ナンバーズ)≫の抹殺人(イレイザー)として籍を置きながら、与えられた任務の全てにおいて、彼はただの一度も人の命を奪ったことはなかった。

 不殺の抹殺人(イレイザー)という矛盾を咎める者は誰もいない

 ≪死≫以外の方法で彼は抹殺対象の生き方を変え、それは世界の安寧を守る結果となったから。

 大義の為に、人を殺すことの矛盾。

 世界の安寧のため、剣を振るい引き金を引く、それが≪クロノス≫の、己の在り方。

 故に、不殺で同じ結果を成す彼の在り方は、自分の全てを否定することを意味する。

 

 

「何故、この手を取ってくれないのですか」

 

 

 最初は嫌悪を、何時しかそれは憧憬へと。

 彼のようになりたいと思い、強さを磨き続けた。

 彼の隣に立ち、不殺という生き方を、彼の瞳に映る景色を、自分は見てみたい。 

 その強さ故に、孤独を強いられた彼に寄り添い、支えとなりたい。

 

 

「……やはり、答えてはくれないのですね」

 

 

 だが、隣に並び立つ前に、彼は組織を抜けてしまった。

 目指した背中を失った後に残ったのは、虚しさだけだった。

 

 

「≪ハーディス≫を抜きなさい、ハートネット」

 

 

 やり直したい。

 進んだ針が元に戻ることはないけれど、せめてもう一度、機会をくれないだろうか。

 彼を目指し、強くなった己の剣を見てはくれないだろうか。

 ≪クロノス≫を変えるために、その力を貸してはくれないだろうか。

 

 

「何度でも言います。私が勝てば、あなたは≪クロノス≫に戻る。私が負ければ、あなたはこのまま自由に生きる。逃げることは許さない。雌雄を決するまで、私は何度でもあなたに挑み続けます」

 

 

 人は変わることが出来る。

 彼と出会い、変わることのできた自分のように。

 生まれた時から≪クロノス≫のために戦うことを宿命付けられた自分に、こうして自分の意思で未来を決めることを教えてくれたように。

 野良猫のように、自由に生きることの尊さを、彼は自分に教えてくれたのだから。

 

 

「例え≪クライスト≫が折れようと、私の心が折れぬ限り、何度でも」

 

 

 もし仮に、この戦いに勝利し、共に≪クロノス≫を変えることが出来たのなら。

 死よりも生を以て罪を贖わせる彼の在り方を、自分の理想を叶えることが出来たのなら。

 

 

「私は、絶対に負けません。必ず、あなたを超えて見せます」

 

 

 セフィリア=アークスという一人の女として、伝えたいことがあった。

 胸に秘めたこの気持ち、あなたに伝えたかった。

 

 

 大好きです、トレイン。――愛しています。

 

 

 

 

 

 ◆  ◇  ◆  ◇

 

 

 

 

 

 以下、女剣士が話し掛けている時のとある男の思考。

 

 

 ――≪滅界≫怖い≪滅界≫怖い≪滅界≫怖い≪滅界≫怖い≪滅界≫怖過ぎるいつ来る≪滅界≫はいつだ今かいつだよ一瞬後か1秒後かはたまた一体いつから≪滅界≫を放っていないと錯覚していたとか言うんじゃねぇだろうな≪滅界≫怖い怖すぎる≪滅界≫≪滅界≫気付いたら技終わってるってなんだよ≪滅界≫それが≪滅界≫どうする≪滅界≫ヤバすぎる≪滅界≫なんて大嫌いだ≪滅界≫≪滅界≫≪滅界≫――

 

 

 以上、女剣士が話し掛けている時のとある男の思考。

 

 

 

 

 

 ◆  ◇  ◆  ◇

 

 

 

 

 

「セフィ様は少数民族≪チャーム人≫最後の末裔です」

 

 

 ベンチに腰を下ろした美柑は、ペケの言葉に耳を傾ける。

 

 

「種族を問わず、あらゆる生物を虜にする。それはもはや≪魅了≫という能力であり、セフィ様の顔を見た男はどんな紳士であろうと心奪われ、ケダモノと化してしまう……はずなのですが」

 

 

 隣に座るリトとヤミ、周囲にいるデビルーク三姉妹、そしてセフィは一か所に視線を集めた。

 

 

「他人の空似なんてレベルの問題じゃねぇだろ。声も容姿も体格もセフィリアと同じじゃねぇか。アレまんまセフィリアだ、セフィリアの2Pカラーだ。でもザスティンって前例もあるし本当に他人の空似だけ? でもあの女剣士結構な頻度で髪型変えてたし実は金髪碧眼って髪色変えたカラコン説も。つか何考えてたんだあの女剣士。頻繁に髪型変えてその度に≪ど、どうでしょうか?≫じゃねぇよ俺に感想を求めんな。聞くならジェノスあたりが無難だろうが。≪時の番人(クロノ・ナンバーズ)≫の男連中の大半がお前にホの字なの気付いてねぇのか。毎回殺気全開で睨まれてんだぞ。バルドリアスとか≪悪い、手が滑った≫とか言って≪ヘイムダル≫ぶん投げてくんだぞ。ベルーガとかも≪すまん、誤射だ≫とか言って俺にバズーカぶっ放してくんだぞ。ジェノスもジェノスだ、なんで可哀想なものを見る目で俺を見てんだよ助けろよリンスにフラれろフラれてしまえフラれやがれ馬鹿野郎が」

 

 

 なにかに憑りつかれたみたいに、何事かを呟くトレインは不気味の一言に尽きる。

 そんなトレインに、セフィはおもむろに近付き彼の正面で屈み込むと、周りには見えぬよう、顔を覆い隠すヴェールを持ち上げた。

 

 

「ぎゃああああああああああああああ!?」

 

 

 悲鳴、そして全力後退。

 

 

「本当にお母様の≪魅了≫が効いてない……」

 

「トレイン、すごーい!」

 

「顔を見ただけで≪魅了≫されるなんて、そんな大げさな――」

 

「ケダモノは母上見んな!」

 

「ちょっとー!?」

 

 

 周囲の喧騒など見向きもせず、しゃがみ込んでいたセフィは再び立ち上がる。

 その視線は公園に聳え立つ大木の根元で背を向け震えるトレインをロックオン。

 トコトコと歩み寄り、再びヴェールを持ち上げ、絶叫――その繰り返し。

 

 

「あの――」

 

「来んじゃねぇええええええええええ!!」

 

「話を聞いて――」

 

「ぎにゃあああああああああああああ!?」

 

「トレイン君――」

 

「≪滅界≫怖い≪滅界≫怖い≪滅界≫怖い≪滅界≫怖い≪滅界≫怖い――!!」

 

 

 初めて出会った時、その凛とした佇まいに、ララ達を生んだ母親としての貫禄を感じた。

 少々天然ボケしたところはあるが、それすら魅力に感じられるほどで。

 でも、逃げるトレインを追い掛けるセフィの横顔には、それは影も形もない。

 ヴェール越しに伝わる必死さは、まるで自分と同じ子供のようだった。

 

 

「捕まえたっ」

 

 

 ドレスが汚れるのも構わず、飛び込み捕獲したトレインをギュッと抱き締める。

 服越しでも分かる起伏に富んだ体が、必死に抵抗するトレインによってムニュムニュと形を変え、その姿に美柑は自分の体を思わず見下ろしてしまうのだった。

 

 

「誰と間違えているのかは知りませんが、私の名前はセフィ・ミカエラ・デビルーク。あなたとはこれが初対面です。それなのに、なぜそれほどまでに私を畏怖するのですか」

 

 

 ヴェールを外したセフィの顔は、後ろ姿ゆえに確認はできない。

 代わりに、ダラダラと冷や汗を流す蒼白なトレインの顔はハッキリと認識できた。

 

 

「私達に必要なのは話し合いです」

 

「すみません、勘弁してください、後生ですから、だからお願い、お願いだから離して」

 

「ザスティンの時は他人の空似だったというではないですか。最後には互いに手を取り合うことができた。なら、私とも手を取り合うことが出来る筈です」

 

 

 セフィに決意を感じ取ったのか、トレインは彼女と目を合わせた。

 ものすっごい貧乏揺すりしていて脂汗もダラダラなのは変わらないが。

 

 

「まずはセフィリアという女性との相違点から述べましょうか。なんでもいいから質問をしてみてください」

 

「……壁に仏像を彫るのが趣味とか」

 

「随分と変わった趣味をお持ちですのね、そのセフィリアという方は」

 

「……和食って好き?」

 

「まぁ、和食! 地球の食文化については事前に調べましたが、和食は特に興味深かったの。ぜひ食べてみたいと思っているのよ」

 

「やっぱりこいつ過去のセフィリアだー!?」

 

「ちょっ、暴れないでください!」

 

「うるせぇー女剣士! テメェがそのうち≪滅界≫無双すんのは分かってんだ! なんつー化物剣術編み出してんだ! 返せ! 俺の平穏な毎日を返せ馬鹿女!」

 

「馬鹿とはなんですか馬鹿とは! 私は政治外交を務める才女なのですよ!」

 

「自分で才女とか言ってる時点でマヌケ丸出しなんだよボケェ! なにが≪美しい私の素顔が!≫だ! 自画自賛とか完璧ナルシストじゃねぇか! アレか、趣味は毎日鏡を見ることですってか! ヤンホモと同じ趣味とか救えねぇんだよ馬鹿女!」

 

「一度ならず二度までも! 背の低い男というのはどうしてこう馬鹿なのかしらね!」

 

「誰がチビだ、このデカ女!」

 

「デカくありません! あなたがチビなだけでしょう!」

 

 

 何故か勃発した罵り合い。

 深窓の令嬢のように物静かな印象だったため驚きしか湧かず、実際にデビルーク三姉妹はセフィの様子に言葉が出来ないようだ。

 

 

「……懐かしい。昔のギド様とセフィ様を見ているようだ」

 

 

 ザスティンの目は、何故か穏やかで。

 

 

「…………」

 

 

 対し、ヤミの目は剣呑な光が宿っていた。

 

 

「……ヤミさん?」

 

「トレイン、楽しそうです」

 

「楽しそうっていうか、暴言吐いてるけど」

 

「鼻の下など伸び切っていました。抱き締められている時は特に」

 

「冷や汗全開だったと思うんだけど」

 

「どうせ私は子供です。お子様ですから。ええ、御門涼子のような女性的な身体ではない、未成熟な身体でしょうよ。ですが、私はティアを元に生まれた存在。故に将来的には彼女達に匹敵するほどの成長を遂げる筈です。そのはずなんです」

 

 

 先程の自分のように、己の体を見下ろしながらブツブツと呟くヤミに、今は触れてはいけないと思った、空気を読める女こと美柑。

 現実逃避も含めてか、視線を明後日の方向へ向けた時だった。

 

 

「…………へ?」

 

 

 しんじられないものをみた。

 

 

「ふぅ、ゴミ拾いとはかくも素晴らしいものだったとは。ゴミを拾う度に、若かった己の過ちを一つまた一つと捨てているような気分になれますよ」

 

 

 昼間の日差しから流れる汗を拭い、せっせと美化活動を務める中年男性。

 

 

「こ、校長がゴミ拾いをしてる!?」

 

 

 天変地異の前触れだろうか。

 美柑の声に顔を上げた校長は、まるで好々爺のような気軽さで手を上げ挨拶。

 何度目を擦っても、頬を抓ろうとも、目の前の光景が白昼夢ということはなかった。

 

 

「おや、ごきげんようご婦人。また会えるとは奇遇ですな」

 

「あら、あなたはあの時の……」

 

 

 そう言って振り返ったセフィの顔には、ヴェールが掛かっていなかった。

 女性の美柑ですら、そのあまりにも美しい素顔に顔が熱くなるのが分かる。

 同性でこれなら、ペケの言うことも決して誇張ではなく、セフィの素顔を直視してもなんとも思わないトレインの精神構造はどうなっているのだろうかと思う美柑だったが、

 

 

「…………あ」

 

 

 セフィと校長が、ヴェールを挟まず直接目を合わせた。

 

 

「むひょ――――――――――!!」

 

 

 次の瞬間、そこにいたのはいつも通りの校長だった。

 

 

「母上、顔! 顔隠して!」

 

「そ、そうだったわ! トレイン君に≪魅了≫が効かないからとついうっかり……!」

 

「はい言い訳ぇ! お前のミスだろうがうっかり女!」

 

「あなたは黙っていなさい!」

 

 

 ピューと何故か吹く風。

 

 

「ああ!? 私のヴェールが! ま、待ってー!」

 

「セフィ様! ここは私にお任せを――」

 

「ぜひわしとお茶を!!」

 

「ぐっはぁ!?」 

 

「ザスティンよっわ!?」

 

「デビルーク最強の剣士を瞬殺って! リトさんといいトレインといい、本当に地球人って出鱈目すぎるわ!」

 

「護衛の奴らは何やってんだよ! ザスティン以外にもいる筈だろうが!」

 

「こ、公園周囲の警戒を! ザスティン殿がいるので、必要ないと判断したと思われます!」

 

「そのザスティンがあのザマじゃねーか!」

 

「ララ! お前の発明で何とかなんないのか!」

 

「ごめんリト! ≪デダイヤル≫も含めて全部修繕中なの!」

 

「そんなー!?」

 

 

 ぬっと、校長の前にヤミは立ちはだかる。

 

 

「えっちぃのは嫌いです」

 

 

 ドゴバコズドドンカッキーン。

 

 

「ヤミちゃ――――――――――ん!!」

 

 

 そして、校長は星となった。

 

 

「ミッションコンプリート」

 

「グッジョブ、ヤミさん」

 

 

 再び公園は静けさを取り戻す。

 

 

「……あれ、ママは?」

 

「トレインの奴もいないぞ」

 

 

 二人の存在を欠いて、だが。

 

 

 

 

 

 ◆  ◇  ◆  ◇

 

 

 

 

 

「……ま、迷子になってしまいました」

 

 

 置かれた現状は、まさに言葉の通りだった。

 風に飛ばされるヴェールを追い、気付けば見知らぬ裏路地へ。

 

 

「そ、そうよ。こういう時こそ、ララからプレゼントされた発明品の出番――」

 

 

 懐を探るセフィだが、その動きはすぐに止まってしまう。

 久しぶりの愛娘達との再会、メンテナンスにと道具を収納する発明品≪デダイヤル≫をララに預けたのは自分だったではないか。

 ≪デダイヤル≫は通信機能も備わっているため、今の自分の装備は身に纏う服だけ。

 完全な孤立無援に、セフィは途方に暮れてしまった。

 

 

「ま、まずは何か顔を隠すものを探さないと。このままでは道を尋ねることもままならない……はぁ、美しさって本当に罪」

 

 

 表通りとは反対、薄暗い裏路地の更に奥を目指し、歩みを始めようとした時だった。

 

 

 

 

「初めましてだな、セフィ王妃」

 

 

 

 

 何の前触れもなく、彼女は現れた。

 腰まで伸びた黒髪に褐色な肌を丈の短いワンピースが彩る、童女のような出で立ち。

 暗がりの中で妖しく光る、トレインと同じ金色の瞳。

 だが、トレインが自由気ままな野良猫なら、彼女は獲物をいたぶる無邪気な狩人のようで。

 

 

「……あなたは?」

 

 

 声を固くするセフィに、少女は静かな笑みを浮かべる。

 

 

「ネメシス。≪エデン≫が推進してた≪プロジェクト・イヴ≫と並行して進められていた変身兵器開発計画、≪プロジェクト・ネメシス≫によって生み出された疑似生命兵器だよ」

 

「……随分と親切丁寧に教えてくださるのね」

 

「なに、何も知らずにというのはあまりにも哀れなのでな。手向けとして受け取ってくれ」

 

 

 無造作に突き出された腕が、次の瞬間には鋭利な刃へ。

 突然の変貌に目を見開くセフィに、少女――ネメシスは一瞬で距離を詰める。

 

 

「新たなる銀河大戦の始まりを告げる狼煙。お前の死は、そのための火種となるのだよ」

 

 

 突き立てようと迫る剣尖。

 訪れる痛み、そして≪死≫に、セフィは目を閉じる。

 ララ、ナナ、モモ――大切な愛娘が浮かんでは消え、だからこそ願う。

 死にたくない、生きたいと、此処にはいないう最愛の夫を想って涙を流す。

 それでも、ネメシスの刃は止まることなく、セフィの心の臓を目掛けて進んでいく。

 

 

 轟砲。

 

 

 直後、澄んだ音を立て、ネメシスの腕先で刃が消失する。

 瞠目し、距離を取り、ネメシスは表通りへ続く道を見遣る。

 訪れない≪死≫に、ゆっくりと目を開け、セフィは銃声の発生源へ顔を向けた。

 

 

「ったく、ようやく見つけたと思ったらどういう状況だよこれ」

 

 

 硝煙を立ち上らせる装飾銃を肩に置き、彼はゆっくりと歩み寄ってくる。

 

 

「迎えに来たぜ、セフィ」

 

 

 真っすぐな瞳。

 ≪魅了≫の能力に惑わされることなく、真っすぐ自分を見詰めてくれる金の瞳が。

 出会ったばかりの、幼き頃の夫の瞳と重なり合う。

 

 

「――――」

 

 

 トクン――。

 高鳴った胸の鼓動が、熱く胸を刻んだ。

 

 

 

 

 




Q.どうして主人公はセフィリアの話を聞こうとしなかったの?
A.≪滅界≫が原作以上のバグ技であり、それを警戒するあまり、会話どころではなかったから。

結論:全部≪滅界≫が悪い。

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