機動戦士ガンダムSEED 技術試験隊の受難<一時凍結>   作:アゼル

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ヤキン・ドゥーエ攻防戦です。SEEDの主人公などとは戦っている場所が違うので今回は出ません。出るとしたら次回以降です。それから、奇妙なシグーが出てきますが私のオリジナルではありません。「SEED Re」という作品に出てくる名称不明の機体です。改訂に伴い火器運用試験型ゲイツ改の状態に関して変更が出ました。


第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦 Ⅰ

C.E.71年9月26日

 

プラントの最終防衛ライン、ヤキン・ドゥーエ。今ここに地球連合軍とザフトとの間で互いの憎しみがぶつかり合う壮絶な戦いが巻き起ころうとしていた。地球内のザフト基地をほぼ落とし、潤沢な資源により大量に生産された武器弾薬を月基地などの主要基地に送った地球軍は入手したニュートロンジャマーキャンセラーによる核の解禁で殲滅を図っている。

 

それに対しザフト側もユニウスセブン並びにボアズの二の舞を避けるべくボアズからの敗残兵と本国防衛艦隊を展開し、徹底抗戦の構えをとっている。互いの憎しみの連鎖の幕はついに終わりを迎えようとしていた。

 

 

地球軍は総旗艦をボアズで核攻撃を敢行したワシントンに移し、アークエンジェル級二番艦ドミニオンとアガメムノン級母艦ドゥーリットルを中心とした核攻撃隊ピースメーカー隊による殲滅戦が始まろうとしていた。

 

 

そしてキメラ隊は連合軍艦隊の中でもヤキン・ドゥーエ側に配備されワシントンからの命令を今か今かと待っていた。キメラ隊の艦隊はアガメムノン級3隻を中心にネルソン級戦艦、ドレイク級駆逐艦十数隻とコーネリアス改級MS母艦並びにローエングリンを搭載したコーネリアス改級砲撃艦を集結させていた。この艦隊がキメラ隊の第一陣。

 

ローエングリンなどの陽電子砲やビーム砲により敵部隊に穴をあけ、ブリッツ重装型などの打撃部隊による突撃と混乱、しかる後に高機動性を誇る105ダガーやダガーLを中心としたMS隊によりヤキン・ドゥーエの対空砲を破壊しに行くのだ。

 

 

(全艦、出撃!)

 

 

号令が全艦に響き、同時に全艦がメインスラスターを点火し出撃する。対するザフト艦隊も軍事拠点から戦艦やMSを出し応戦の構えをとる。

 

 

(全艦、砲撃開始!)

 

 

轟く号令。そして互いのビーム砲が牙をむく。砲撃戦の前にMSを攻撃部隊として発進させていたザフトMS部隊に無数のビームとミサイルが降り注ぎ爆散する。無論その砲撃戦の後に戦地に飛び込んでいった連合軍の哀れなMAとMSもビームやミサイルの餌食となり爆散する。そんな激戦の中でキメラ隊は連合軍の中でも核ミサイルを除けばトップクラスの攻撃力を持って敵艦隊に肉薄する。コーネリアス改級砲撃艦のローエングリンは5隻以上が同時発射することで凄まじい火力を見せつける。

 

 

ローエングリンから放たれる陽電子砲の威力はその他の攻撃とは異なり、ただの一撃でザフト主力戦闘艦のナスカ級を爆散させる。そしてそれに続くビーム砲とミサイルの一斉発射とタイミングを少しずつずらして発射されるローエングリンによりあたかも連射を可能にさせていくように続いていく。さらに艦上部に固定された狙撃レーザー部隊の砲撃も加わり圧倒的な火力がザフト艦隊の一角に押し込まれた。

 

 

その結果生じた穴をキメラ隊は見逃さない。第一陣としてデュエルダガーとロングダガーを中心とした突撃隊が突き進み、第二陣として後から突き進むブリッツ重装型3機による攪乱部隊のための道を切り開く。デュエルダガーらはフォルテストラを装備した機体もいればしていない機体もいるが持ち前の火力を解放し、穴を塞ごうと動くザフト製MSに襲い掛かった。そして穴を広げようと動けば必然的に穴の外周部で連合軍製MSとザフト製MSは対峙することになり中心部分に突破口になりうる空間を作る。

 

 

その確保した空間に遅れてミラージュコロイドを展開して進んで来たブリッツ重装型はボアズ追撃戦とは比べ物にならないほどの威力を誇る牙を隠し持ち、友軍が作った空間を突破しザフト艦隊や直援のMSなどがひしめく宙域に機体を滑り込ませる。

 

 

ブリッツ重装型初号機パイロットのエイト・ソキウスは僚機に乗る他のソキウスたちとともに敵部隊しかいない空間に躍り出る。そして彼らは持ち前の火力を解き放った。3機のブリッツ重装型はスラスター横に装備された多目的ミサイルランチャーを周囲に向けて発射する。

 

 

ミラージュコロイドの効果により、突如として何もない空間から現れたように見える長方形の箱を見た周囲のザフト兵たちは驚きよりもまず戸惑った。これは一体なんなのだ、と。しかし次の瞬間その思いは一変する。箱からせり出したミサイルが全方位に向けて発射されていく。しかもブリッツから発射されたために進みながらだ。

 

 

PS装甲を核搭載機のようなワンオフ機か試作機、あるいはヘリオポリスで鹵獲した機体程度にしか採用していないザフト製MSにはまさしく災厄となって降り注ぐ。新型のゲイツも開戦初期から運用されているジンも例外なく被弾していく。そしてそんな中エイト・ソキウスは歓喜に振るえていた。

 

 

(ナチュラル達のために戦えている。ナチュラルの役に立っている!)

 

 

左腕に装備された対艦用大型ミサイルランチャーをミラージュコロイドで隠れたまま仲間が必死に作ってくれた空間から敵部隊の穴近くで戦線を回復させようと艦の位置を変更したナスカ級とローラシア級に放つ。同様に三方に散ったファイブ・ソキウスもテン・ソキウスも同様に穴周辺の艦に攻撃し、戦闘用コーディネーターの優秀な操縦テクニックをいかんなく発揮して穴の拡大と維持に努めていく。低軌道会戦において鹵獲されたブリッツがミラージュコロイドを展開して戦艦に近づき攻撃して撃沈していったように、ソキウスの放った対艦用大型ミサイルはナスカ級などの戦闘艦の各所に傷をつけていく。

 

 

そしてさらにその空間をすり抜けるように進む部隊が存在した。それはエール装備の105ダガーやダガーL十数機による打撃部隊とその部隊を護衛するソードカラミティを中心とした部隊だ。

 

 

エイト・ソキウスは多目的ミサイルランチャーや対艦用大型ミサイルを放ったことで身軽になった機体を操作し、第一陣として侵攻した友軍機や第二陣である自分たちの成果を無駄にしないためにも第三陣の突撃部隊を掩護する。僅か三機の部隊だが、ビームを放てるゲイツを除いたMSには鉄壁の防御力を持つPS装甲でもって敵の攻撃を耐えつつ、ウェポンラックのバズーカを左手に装備させると、直ぐさま敵に向かい放ちミラージュコロイド展開により減ったエネルギーの消耗をできる限り避けるように戦っていく。

 

 

そして一機、また一機と敵機を撃墜していき、目の前のジンをビームサーベルを用いて胴を切り裂く。切り裂いた瞬間、嫌な予感がエイト・ソキウスによぎる。本能的にスラスターを全開にして切り裂いた敵機から距離をとると、突如ビームがエイト・ソキウスが直前までいた場所を貫く。発射した方角を見ると青く肩に大型のビーム砲を装備したシグーに酷似した機体と追加武装が施されたシグー2機の合計3機がいる。搭載された戦術AIが青いシグーを従来のシグーの改造機ではないかという推測をたてる。さらに残る2機もアサルトシュラウドを施した未だに確認数の少ないシグーアサルトだと示している。

 

エイト・ソキウスの戦う背後では未だにエール装備の高機動部隊は進撃を完了させていない。ナチュラルのためにも作戦のためにも通させるわけにはいかない、そう決意したエイト・ソキウスは足のミサイルを放ちながらザフト兵にしては珍しく息の合った連携をとるエースが駆っているであろうシグーの部隊に余裕ができたのか攪乱部隊であるソキウスの近くにまで来たロングダガーなどと共に向かった。

 

 

 

 

一方で残る二人、ファイブとテンの二人も強敵に阻まれていた。彼らが対峙するのは黒く染められた3機のゲイツ。一機が接近戦を行い真ん中の二機目が実弾を交えながら中距離戦を、そして最後の一機がビーム砲を放ちながら牽制をしてくる。巧みな連係プレー。爆撃仕様であり接近戦をあまり得意としていないブリッツには荷が重い相手であった。

 

だが彼らは決してひかない。足のミサイルやランサーダートを射出し何とか食い止める。さすがに最終防衛ラインのヤキン・ドゥーエを護衛する部隊だけあって多くのエースが要塞周辺宙域に存在していたが戦闘用コーディネータの力はさすがのものでギリギリのところで食い止めることに成功した。

 

 

 

 

 

 

黒い三機のゲイツのパイロットは巧みに新型量産機ゲイツを操縦してブリッツに戦いを挑んでいた。三機のゲイツのリーダー格であるパイロット、ヒルダ・ハーケンは残る二人、ヘルベルト・フォン・ラインハルトとマーズ・シメオンに檄を飛ばす。

 

 

「行くよ、野郎ども!!好き勝手やってくれたあいつらに目に物見せてやろうじゃないか!」

 

 

言って、オーブ沖で撃破されたブリッツの同型機に迫る。二機のブリッツはナチュラルのパイロットが操縦しているとは思えない腕前であり、足に装着されたミサイルなどを放ちながらこちらの接近を許させない。

 

 

ヘルベルトやマーズの駆る機体はビームライフルのほかに重突撃銃や無反動砲を構え、攻撃を加えているが一向に当たらず、接近すらままならない。

 

 

ヒルダは察知した。敵はただのパイロットではないことを。おそらくはエース。彼女は戦闘用コーディネーターというものを知らなかったがその判断はあながち間違ってはいない。コロニー・メンデルで研究されていた地球連合軍の戦闘用コーディネイターであり、彼女らが戦っているソキウスたちのモデルとなった人物、ザフトの英雄グゥド・ヴェイア。戦時中に脱走し、ヴェイア同様連合の戦闘用コーディネーターの一人であった叢雲劾に倒されたザフトが誇った異常なほどの戦闘力を持ったエースパイロットと同程度の力を持つソキウスが乗る機体なのだから。

 

 

だが、一撃を与えれば勝機はあるのだ。PS装甲はいくら実弾に強くともビームの前には無力なのだから。そして数の上でもこちら側が上。彼女は二人に指示を出しつつ三機による連携を続け、撃破を目指したのである。

 

 

 

 

一方で第三陣である高機動性を誇る105ダガーなどの高級機を中心とした部隊は友軍機の必死の戦闘によってヤキン・ドゥーエへの道が開かれ、順調に突き進んでいた。換装システムを搭載した機体のみで構成された部隊に群がる敵機は後続の乱戦区域からバスターダガーなどの狙撃部隊の援護により近づけない。一部の機体は何とか接近することに成功したがそれらに対しては第三次ビクトリア攻防戦で猛威を振るったソードカラミティを中心とした護衛部隊により阻まれる。

 

 

接近戦を重視した設計でありながら原型機が砲撃戦に特化した機体であるがゆえに相当の火力を誇るソードカラミティ。そしてその機体とともに行動する連合軍に参加するコーディネーターパイロットで構成されたロングダガー隊。彼らが防波堤となることで高機動部隊は突き進むことに成功した。

 

ソードカラミティ初号機のパイロット、コルテスはシュベルトゲベールを両手にかまえて迫りくる敵機を切り裂きながら突き進む。突出した行動は敵軍の的となりさらなる敵を招くことになるが彼は一向にかまうことなく突き進む。

 

 

「はっ、これが新人類様の力かぁ?もっと俺を苦しめてみろ!」

 

 

そう叫びつつ、胸部のスキュラなどを一斉発射して遠距離からの撃破を試みる機体を複数同時撃破していく。そんな時僚機から通信が入る。

 

 

(コルテス殿、前に出すぎです。我々は防空網破壊部隊の援護が任務なのですぞっ)

 

そう言ったのはフォルテストラを装備したロングダガーのパイロット。ソードカラミティは突出してしまっているが何とかロングダガー隊の援護を受けていられる状態だ。このまま突き進めばロングダガー隊も前衛を務める切り裂き魔がいなくなり、帰還することすら難しくなると考えての通信だった。

 

「はっ、仕方ねえな。戻ってやるがよ。お前の後ろもがら空きだぜ、そらよぉ!」

 

 

言ってスキュラを放つ。ロングダガーに迫っていた高機動型ジンはソードカラミティからの一撃を受け、背後の機体もろとも爆散する。そして戻ったコルテス機は自分の分隊を確認する。援護・突撃仕様のストライクダガー2機と通常のロングダガー3機、フォルテストラ装備機が2機。コルテスを含め合計8機。それぞれ各戦線で活躍した連合軍側のコーディネーターだ。ジャン・キャリーのように不殺などという無駄な考えを持たないれっきとした軍人達だ。

 

彼等は少し艦隊側にいるブリッツの援護に回る者もいたためコルテスの空けた穴を利用して敵に損害を与える。

 

「一ついいか?この機体のマイダスメッサーとかいうビームブーメランて試作武装は戦時消耗品として扱ってもいいんだよな」

(試作機の、それも初号機の武器ですからな。アクシデントが起こるのは仕方がないことです。後に困るのは開発陣ですが)

 

 

ロングダガーのパイロットの否定も肯定もしない返事を聞き即座に敵機に接近しながらマイダスメッサーを放つ。攻撃された敵機はそれをかわすが次の瞬間、コルテスにより両断される。そして投げたビームブーメランは敵部隊の密集地帯に飛んでいく。

 

 

敵の密集地域にビーム刃を展開したまま飛んで行ったブーメランは密集地帯へ行ったためいい具合に敵をばらけさせ、後続の友軍部隊が敵部隊に作った穴を広げようと参加するのを助けた。しかし、次の瞬間コルテスに突如として同時に攻撃が襲った。

 

一つはコルテスの右斜め2時側の前方方面から。もう一つは6時側後方方面からの射撃だ。どちらも実弾兵器であったが突如の奇襲により8機の護衛部隊は勢いがそがれる。そして射撃してきた敵機を探していた友軍機からまさしく驚愕した、という声が漏れ出てきた。

 

 

(あれはガンバレルか!?)

 

 

その友軍機がその子機を破壊せんと射撃を繰り返すが件の子機は、巧みに動き撃墜せんと射撃を行っていた友軍機、援護・突撃仕様のストライクダガーの両足を破壊する。続く射撃はコクピット付近の追加装甲のおかげで何とか撃墜は免れたが衝撃により気を失ったのかストライクダガーは動かない。

 

 

仕方なく友軍機がその機体を援護しながら後退を開始する。そしてストライクダガーへの射撃による発射光により敵機を見つけることに成功した。そこにいたのは通常のシグー2機と見覚えのない改良型と思われるシグーが1機。その機体は背部に巨大な円盤状のバックパックを装備し、そこから有線でガンバレルのような子機を装着している。左腕にはゲイツが装備するシールドに酷似した兵装が装備され、右腕にはゲイツのビームライフルを装備いる。シグーの改良機だろうか。

 

 

搭載された戦術AIが『ZGMF-515 Type Serirs Z.A.F.T ACE PILOT Raww Le Klueze ?』という判断を示してくる。アークエンジェルがヘリオポリスからの撤退途中に追撃され、戦闘したシグーの改良機であり、それにザフトのエースパイロットのラウ・ル・クルーゼが乗っていたと思われるが故の判断だろう。だが、エースであるならばビームが主流となった今の状態でこのような機体に乗っているわけもなく同様に空間認識能力を持つほかのパイロットであろう。

 

 

面白くなってきた。そう思ったコルテスはペロリと唇をなめ、僚機に指示を出す。

 

 

「おい、あいつを倒すぞ。援護しろ!」

(了解。TP装甲と言えどエネルギーは無限ではないので気を付けてください。私は子機を破壊しつつ援護します)

 

 

その返事を待たず、突撃している最中に返答を聞きながらコルテスはザフト版ガンバレルダガーといえるシグーの改良機に突撃した。

 

 

 

一方、シグーの改良機に乗るコートニー・ヒエロニムスは突撃してくる青と橙色の格闘戦重視と思われる新型機を友軍機との連携とドラグーンを用いて接近させないようとしていた。敵のうち一機は中破に追い込み、さらにその機体の撤退のためにもう一機撤退に追い込んだ。彼は本来義勇軍であるザフトのパイロットではなくザフト兵器設計局ヴェルヌ局所属のテストパイロットだ。だがボアズ戦で撤退艦隊が追撃戦により大多数を喪失し、追撃を食らわなかった撤退艦隊も突如のミサイル攻撃により警戒して撤退したために本国への帰還が遅れたため、兵員補充を兼ねて徴兵の憂き目にあったのだ。

 

 

彼自身はより良き機体を作り出すことにしか関心はない。だが彼の傑出した空間認識能力を活かすことができる機体としてラクス嬢救出時に使用されたシグーが選ばれ、今現在戦場にいる。目の前の接近する敵機にドラグーンで牽制をしつつ実弾を防ぐ装甲であろうとも破壊が可能なビームの標準を向けた。

 

 

「すまないが、仲間のためにも死んでくれ」

 

 

そういって僚機とともにこれ以上の侵攻を防ぐべくビームを撃った。

 

 

 

 

一方でソードカラミティなどの高性能機による護衛部隊によりエール装備の打撃部隊はヤキン・ドゥーエに取りつくことに成功した。ボアズにおいて後期GATシリーズの三機が対空砲を破壊したように次々と対空砲や要塞に取り付いている機体を破壊して回る。

 

 

そんな中、突撃部隊の隊長であるマクレガーは力なく漂う見慣れない機体を発見した。全身が黄色く要塞と機体をつなぐケーブルにより何とか要塞に引っ付いている状態のゲイツの改良機と思われる機体だ。マクレガーは知らないがその機体の名は火器運用試験型ゲイツ改。

 

 

 

ものの見事に奪取されてしまった核動力機のうちの二機、ジャスティスとフリーダム用の各種火器の評価試験を目的に製造された実験機であった。ザフト製MS初のPS装甲機でありながら従来のバッテリーパックを搭載し、搭載武装の火力により活動期間は長くとも10分という欠陥機である。その問題のためにヤキン・ドゥーエ上に留まって、要塞とバッテリーケーブルで直結していたが、マクレガー達が来る前にヤキン・ドゥーエに侵入したジャン・キャリーのM1アストレイとバリー・ホーのM1Aアストレイにより電子回路をズタズタにされ機能を停止していたのだ。とはいえ完全に機能を停止したわけではなく、背部にファトゥム-00の原型となったリフターは健在であったために、電子回路をズタズタにしたことで安心し、油断した青いアストレイに対して一矢報いようとリフターを放ったが、もう一機の白いアストレイに破壊され、今はただレールガンとビームライフルだけ装備が違うゲイツといった有り様である。

 

 

さっそくマクレガーは僚機に周辺への警戒を行わせ鹵獲しようとする。ボアズ要塞に進攻した際に本格的に稼働した新型機の改良型と思われる機体が無防備な状態で目の前に浮いているのだ。鹵獲せずにはいられない。そして彼は周辺の対空兵器を破壊していた他の部隊も集め撤退行動に移ることを決意した。

 

 

何故ならばこれ以上留まれば全員の命が危ないからだ。もともと危なかったがここは要塞周辺。偶然鹵獲にむいた機体がいたため確保に成功したがこれ以上留まれば増援がやってくるのは確実だ。そのためにも母艦に帰還する必要がある。

 

 

メインカメラで周囲をうかがう。映る機影などはその多くがザフト製MSであったが中にはキメラ隊以外のMSもある。遠距離で要塞にまでは到達していないが対空砲を潰したおかげで近寄ることに成功したドレイク級やストライクダガーなどが映る。

 

さらにはオーブ解放作戦でマクレガーが対峙したアストレイと呼ばれるオーブ製MSが2機ほどいる。一方は白く染められ、もう一機は所々が青く塗装されている。さほど遠くない位置にいることから戦いたくば戦えない距離でもないが最小限の被害で生還することが一番大切だと考えた彼は戦利品を抱える友軍機を援護しながら要塞を後にする。

 

 

要塞に取り付く直前にプラント群方面でボアズを破壊しつくした核爆発を見た。おそらくはザフトのMSにより迎撃されたか、オーブ製MSの存在からしてコロニー・メンデルにいた三隻による仕業か。彼自身はそのあたりは全く知るところではないが、たかがコロニー一基が核攻撃されて中の人が死んだごときで怒り狂い、核で報復しなかったことを感謝しろと言って深刻なエネルギー問題を地球に存在する各国に撒き散らした不法労働者だ。おそらくは先ほどの爆発で再び怒り狂っているだろう。

 

 

そのような思いとともに彼は殿を務めつつ、要塞を後にする。鹵獲機を抱える機体を中心に高機動部隊は群がる敵機と対空砲を気にしつつ連合軍艦隊へと戻ろうとした。

 

 

マクレガーがそれに気付いたのはちょうど撤退を開始してある程度たった時であった。ヤキン・ドゥーエから離れ、艦隊が敵艦隊を猛攻撃して作った穴広げ、あるいはとどめようとして激戦を繰り広げる宙域に突撃部隊の機体が差し掛かった時、ヤキン・ドゥーエ側から迫る機体に牽制も込めた攻撃をしているとき、それは現れた。

 

 

ヘリオポリスで奪われた前期GATシリーズの内の一機、ブリッツが搭載していた特殊武装ミラージュコロイドによって姿を隠していた巨大兵器が姿を現す。マクレガーだけでなく連合軍人は等しくその存在を知らなかったその兵器、ジェネシスは連合軍主力艦隊へその砲身を向けその凶悪な兵器としての力を発揮した。空飛ぶ電子レンジともいえるだろうか。ガンマ線レーザーを浴びた艦は、MSは、MAは例外なく焼き払われていく。

 

 

破滅の光線は死を運び、旗艦ワシントンを含む連合軍艦隊の実に4割を焼き払ったのだ。

 

 

「な、何なんだ、あれは!?」

 

 

ヤキン・ドゥーエ側にいたため被害はなかったが、その光線が通った宙域はそこにいたであろう友軍艦隊を焼き払い、巨大な閃光を起こさせたのがモニター越しにでもわかった。ユニウスセブンに続きボアズ要塞も核ミサイルで破壊した連合軍に対し、野蛮なナチュラルの核がっ!と侮蔑と憎しみを交えた言葉で非難してきたザフトが作ったこの惨状を見て、マクレガーは恐ろしかった。

 

 

恐怖したというべきだろうか。あの光線が通った場所にはその直前まで対空砲やビームを放っていた友軍艦隊はもういない。そこだけ何もないかのように空間となり、例外なく消滅したのだ。跡形もなく。あまりの光景に、惨状に今までにない恐怖を感じたが何とか心を静め、打撃部隊だけでなく、ソードカラミティを中心とした護衛部隊、三機のブリッツを中心とした攪乱部隊などの友軍機と共に艦隊に猛スピードで撤退をする。

 

 

オープン回線で聞こえる敵の首魁、パトリック・ザラの声。そしてそれに奮起され追撃をかける敵部隊。聞こえてくる声からは核攻撃を虐殺だと言っている。はたしてこの攻撃が虐殺でないと言えるのか?そのような思いを抱きながら攪乱部隊と打撃部隊、そしてキメラ隊所属艦隊による猛烈な艦砲射撃により著しく数を減らしていた現宙域の敵部隊からの追撃を逃れ、要塞攻撃部隊は帰還に成功した。

 

 

 

 

あの攻撃により士気を低下させた連合軍。キメラ隊自体は要塞の対空砲を短い時間であったがかなりの数沈黙させることに成功したため、作戦には成功したがあのトンデモ兵器の出現は彼らに恐怖心を与え、キメラ隊にある決断を決意させることにも繋がった。

 

マティス率いる特殊情報部が贈った核兵器の解禁。ブルーコスモスと違い連合軍内での発言権などが全くないが独自に判断し、独自に行動するキメラ隊は補給艦艇に詰め込んでいた核ミサイルによる核攻撃を決意したのであった。

 

 

核ミサイルが贈られたときに考えられ念のため用意されていた特殊作戦機、ブリッツ核ミサイル装備型と鈍重なメビウスの替わりにコスモグラスパーの機動力を活かす仕様の核ミサイル装備型のコスモグラスパー核装備型。それらの牙がついにプラントに向けて放たれようとしていることをザフトも友軍の連合軍も知らない。キメラ隊がほかの部隊と異なる最大の特徴は独自行動に関する裁量権を保有している点。

 

 

 

そして今回の戦闘において連合軍は何も頑なにプラント一基一基を破壊しようと集中的に攻撃していたわけではない。ただ、核ミサイルを用いることができる部隊二つのうち、片方のブルーコスモス側が積極的にプラント自体を狙っていたにすぎないのだ。そしてもう一方である独自裁量権を持ったキメラ隊が戦場で未だに核ミサイルを出していなかっただけであり、そのことが知られるのは日付が変わるまでキメラ隊と連合軍派遣部隊の上層部を除き知られることはなかったのであった。

 

 

無論、核攻撃を野蛮な行為として連合軍の軍事行動を妨げる三隻同盟やザフトも知るわけもなかった。

 

アラスカの地球連合軍最高司令部の破壊を目指したオペレーション・スピットブレイクにおいてそれまで散々煮え湯を飲ましてきたアークエンジェルがメインゲートを守っていたことでその奥の宝、最高司令部への期待が高まり戦力の大半をそこに向かわした結果、サイクロプスにより投入戦力の大半を失ったザフトに再び似た作戦が襲いかかろうとしていたのだった。

 

アークエンジェル級二番艦ドミニオンと後期GATシリーズによる護衛部隊という強固な守り手に守られた宝、核ミサイル部隊ことピースメーカー隊。そしてその宝へのザフト、脱走艦隊による攻撃を囮として扱おうとするキメラ隊の作戦が今始まる。




ドラグーン装備のシグー知ってる人はいたでしょうか?今年の6,7月号のガンダムエース買ってる人は知ってるかと思います。ともかく感想・批評よろしくお願いします。改訂しました。

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