機動戦士ガンダムSEED 技術試験隊の受難<一時凍結>   作:アゼル

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アニメだとボアズでの戦いは要塞に核ミサイル撃って終わりでしたが残存艦隊は追撃されたと思います。自作の追撃戦ですが追撃戦の光景の一部をご覧ください。キャラの一部にMSV戦記のパイロットが含まれていますので原作(?)キャラ出現2回目です。


ボアズ追跡戦

宇宙要塞ボアズは地球軍の核攻撃により陥落した。残ったのはひしゃげた岩塊と破壊されたMSや戦艦の残骸、そして宇宙空間に投げ出された兵の死体のみ。ボアズの陥落は一瞬だった。かつてユニウスセブンに打ち込まれた核は重厚な岩を砕き、輝かしい光が包み込み残骸へと変えたのだ。

 

 

何とか核攻撃と連合の攻撃を逃れた残存艦はプラント本国に逃げ込むだけで精いっぱいであった。だが、彼らにさらなる試練が待ち受けていることをまだ彼らは知らない。核攻撃を行うことなど百も承知である連合軍がみすみす彼らを本国に戻すなんてことはないのだ。

 

 

 

アークエンジェル級の速度に匹敵する高速艦ナスカ級や開戦初期より運用されているローラシア級、そしてそのほかの輸送艦などの残存艦隊はゲイツなどの生き残ったMSを収容し本国に急ぎ撤退していた。収容が間に合わないMSは機体を自爆させ、あるいはそのまま放置してパイロットのみを収容しての必死の撤退戦。彼らを追う連合軍からの無数のビームは傷ついた艦艇を貫き、撃沈していく艦もある。もはや彼らには撤退する以外に道はなかったが少しでも多くの人員を本国へ届けるため、損傷の多い艦艇が何隻か反転し連合軍と対峙する。傷ついたナスカ級やローラシア級は自ら生贄になってでも仲間を守るべく、残り戦った。彼らは思う。死んでも仲間を守って戦ったと、仲間を守って死んだんだと胸を張ってあの世にいる仲間たちにいえるのだと。

 

 

だがそんな思いはキメラ隊にとってあまり関係のない話だ。彼らにとっては情報収集と試作機の運用を第一にしているので、ミラージュコロイド搭載艦であるピネラペなどの試験艦を差し向けるのも手ではあるのだが、仮にこの追撃戦で1隻でも取りこぼしが出てしまえば情報漏洩となる。ゆえに今回は追撃部隊に狙撃戦が可能な機体を多めに配備して攻撃した。無論、追撃部隊として参加したMSはザフトの艦隊を撃墜せんと動いたが、艦艇は特にミラージュコロイド搭載艦は敵の動きを友軍に伝えることに終始している。

 

 

あらかじめピネラペから発進していたブリッツは今回の戦闘のために多少の改良が施されていた。左腕のグレイプニールはレイダー制式仕様機に回されているため、今回は装備していないがストライクが紅海で使用したバズーカを背部のアタッチメントに装備し、対艦用大型ミサイルを搭載可能なミサイルランチャーを左腕に固定している。残弾も考え鹵獲したジンなどの重斬刀も装備し、今回の戦闘には敵に新型機がいる可能性を考慮し3連装超高速運動体貫徹弾「ランサーダート」を改良した。本来であれば炸裂するランサーダートに毒ガスを満載し敵艦橋に突き刺さった瞬間、中に充満するように仕掛け、鹵獲しようという算段である。

 

 

そのような改良を受けたブリッツ重装型は友軍の犠牲を無駄にしないよう突き進む先頭のナスカ級の前に躍り出てミラージュコロイドを解除した瞬間、ランサーダートを艦橋に向け射出した。本来正史では強化人間の生きる的として死ぬはずだったパイロット、エイト・ソキウスは突如現れたブリッツに驚き腰を上げた敵指揮官をランサーダートが貫き、衝撃で火を噴きだすナスカ級を眺め、ナスカ級の隣を並走していたローラシア級に対艦大型ミサイルを放った。

 

 

奇襲により即座の迎撃ができなかったローラシア級は損傷していた部分に直撃したのか、数瞬後に火球と化す。そして背部のアタッチメントからバズーカをとると残る目の前のナスカ級のMSハッチに念のため攻撃した後、残る敵艦に向かった。

 

 

 

 

奇襲を受けたザフト艦隊はまさしく阿鼻叫喚といった模様であった。臨時的に撤退艦隊の指揮官となった旗艦マノスでは突如の奇襲により艦内が慌ただしくなった。

 

 

「敵の数は何機だ!?」

「敵機数1。ブリッツです。先頭のミスティからの通信途絶。並びにユラ撃沈。敵機はミスティの左を並走しているリペスに向かった模様!」

「MSを出せ。索敵を急がせろ!ブリッツ1機の訳がないぞ、必ずほかにもいるはずだ!」

 

 

指揮官の素早い対応により奇襲で陣形が崩れかけていた艦隊は持ち直し始める。だが、それを嘲笑う様にさらなる被害が生じる。

 

 

「警告。上空からミサイル接近。数100以上!」

「回避、迎撃!」

「間に合いません!」

 

 

直上方面から放たれた無数のミサイルがナスカ級戦艦マノスを中心とした艦隊に降り注ぐ。幾つかは艦に当たらなかったものの、多くが多かれ少なかれ損傷を抱えた艦艇に直撃し被害を出す。運の悪い艦は撃沈するか、大破漂流する。そして彼らにさらなる凶報が届く。

 

 

「直上方面より敵艦多数接近。ネルソン級、ドレイク級5、アガメムノン級3、ローラシア級1、ナスカ級2、その他輸送艦など多数接近しています。MSも多数接近!敵艦、さらにビームを放ちつつ接近しています。艦長!」

 

 

マノスも含め損傷艦で占められた撤退艦隊に無慈悲な鉄槌が降りようとしていた。

 

 

 

 

 

突如の奇襲により軽くパニックを起こしつつも発進したシグーのパイロットは発進直後に起きた惨劇に目を見張った。多くの艦が直上からのミサイル攻撃により被害を受けた。今しがた僚機4機とともに発進したナスカ級戦艦も運悪く発進直後の僚機にミサイルが直撃し被害が生じている。MSハッチと格納庫を焼いた一撃によりナスカ級は中破し、艦橋にも被害が及んだのか艦が傾き漂流しつつある。

 

 

様子を見ようと艦に近づいたシグーは何とか仲間を守ろうとしようとしたが次の瞬間、一変する。直上からのビームが飛来したのだ。即座によけようとしたが運悪くローエングリンを搭載したコーネリアス改級砲撃艦の陽電子砲がナスカ級を貫き、爆沈により生じた爆風に飲み込まれ彼と僚機は散っていった。

 

 

 

 

「敵艦隊にミサイル命中を確認、主砲発射します」

「主砲5斉射後、MS隊発進させろ。ロングダガー、デュエルダガーは発進後足の止まった敵艦を撃つように命じておけ。バスターダガーには抵抗する敵艦に狙撃力を奴らに見せてやれと言っておけ。105ダガーはエール装備機とランチャー装備機でバスターやデュエルあたりの部隊に各自編入しておくんだ」

「了解」

 

 

キメラ隊分艦隊、ハンター部隊の旗艦であるアガメムノン級でヴィルマンは矢継ぎ早に指示を飛ばす。ブリッツの奇襲により混乱した艦隊に向けて放ったのはドレイク級のミサイル。5隻のドレイク級から一斉に放たれたそれにザフト艦隊は対処できず、運の悪い艦は撃沈し中には大破し漂流する艦まである。

 

彼らの任務は撤退する艦を1隻でも多く沈めること。故に世界樹跡地基地だけでなく周辺にある基地で改修を受け、片側に二門のゴットフリートを装備し陽電子砲ローエングリンも二門装備したコーネリアス改級砲撃艦などと共に無数のビームを食らわせ、MSを発進させる。いくら奇襲に成功したとはいえ1機ではブリッツもつらいだろう。

 

 

 

 

 

「全機行くぞっ、ザフトの連中に俺たちの力を見せつけてやれ!」

「了解!」

 

エールストライカーを装備した105ダガーを駆る隊長機は僚機のデュエルダガーなどに指示を出す。ボアズへの核攻撃とそれによる精神的ショックを受けている間に受けた攻撃により傷ついたザフトの艦隊にビーム兵器を主武装とした機体が襲い掛かる。敵艦隊はブリッツの奇襲と直上からのミサイル攻撃、そしてそれに続くビームの一斉発射により被害は甚大な模様で組織的な迎撃が行えていない。そこで隊長は部隊を二つに分け一方を奇襲攻撃を行ったブリッツの援護に、もう一方をかろうじて生き残ってしまった艦へと向かわせる。生き残ってしまった艦は必死に抵抗するがいかんせん損傷により対空機器が損傷したのか穴がある。そこを重点的に狙ったMS隊は次々と敵艦を落としていく。

 

 

ブリッツの支援に行ったA分隊は混乱しつつも緊急発進した敵機に次々攻撃を食らわす。中には修理途中であったの一部のマニピュレーターが損傷した機体もあったが容赦する理由はない。必死に抵抗する敵からの攻撃をシールドで防ぎつつ隊長がビームを放つ。

 

 

「っ!」

 

 

運悪くシールドより前に突き出していたビームライフルに敵の銃弾が命中した。そのため隊長はビームサーベルを抜き、敵に接近する。イーゲルシュテルンを牽制に使いつつ、僚機の援護のもと敵の胴を泣き別れにし、近くの対空火器をほとんど失ったローラシア級に密着した。ローラシア級は主砲を失いながらもバルカン砲で迎撃を試みる。が、そんな程度で落ちるほど増加装甲のフォルテストラは甘くない。ところどころ、シールドで防げなかった部分を被弾するが敵艦の背後に回りスラスターに一閃。そしてイーゲルシュテルンで行き足を止める。艦体後部で爆発を起こすローラシア級は艦上層部と後部に主武装を集結させていたのが災いし、弾薬に誘爆したのか火が艦体全所に回りつつある。

 

 

さらに周辺の敵機に右肩部のリニアキャノンと左肩部のミサイルを放ちながら敵を牽制し友軍とともにブリッツの闘う戦域を急いだ。行く途中損傷した敵艦の武装を破壊し、可能であれば艦橋を潰していく。合流後に艦体の先頭にいるために敵からの一斉攻撃を避けるための処置だ。

 

 

 

 

 

一方 A分隊とは反対方面の輸送艦などを護衛していた艦隊を襲撃したB分隊は高機動性にもの言わせて敵に一撃離脱を敢行していた。B分隊の指揮官はコスモグラスパーに乗るヴォルスキィ・ニノミヤ大尉。副官としてコスモグラスパーにフィゲス・カジモト中尉が乗っている。彼らはそれぞれの母艦であるマイネンフェルトとメートランドより出撃しミサイルとビームの一斉攻撃で難を逃れてしまった敵艦隊後続の不運な生き残りたちへの介錯をしようとしているのだ。向かう途中何機かは対空砲にからめ捕られ撃墜される機体もあるがそれは致し方がないことだ。

 

 

無論二人とも仲間が死んでほしいとは思っていない。だが、この部隊に配属された以上は他の一般的な部隊以上に死の覚悟を持っていなければならないのだ。そして仲間の犠牲を無にしないように突き進む彼らの目の前に念願の獲物の姿が現れる。輸送艦だ。さらに傷つき行き足の遅くなった艦艇もいる。彼らが目指したのはこの集団であった。

 

 

キメラ隊から分かれて行動していた"ハンター部隊"。彼らの真の目的は輸送艦艇などの撃破だ。無論その中にはMSも含まれているが地球から切り離されプラント内での武器弾薬を製造せねばならない状態のザフトをより弱れせるためにここでさらに消耗される必要がある。

 

 

ブルーコスモスの連中は要塞をきれいに輝かせて満足していたが彼らはより効率的に次の戦いを行えるように活動している。彼らが部隊として存在するうえでバックに立つ技術開発部と特殊情報部の二つの願いをかなえる作戦でもあるのだ。技術開発部は新型機の可能な限りの獲得を。特殊情報部は人類の存続のための礎を。それらが両立するように動いた結果が今の状態だ。

 

 

B分隊の指揮官ニノミヤ大尉は僚機に指示を出す。

 

「全機、敵輸送艦を守ってる艦を狙え!輸送艦はターンをした後に機関部を狙って足を止めろ!」

「了解!」

 

 

B分隊の先頭を突っ切るニノミヤは敵輸送艦を護衛するローラシア級に狙いをさだめた。操縦のためのスティックを握る力が強くなる。狙うは敵艦の艦首付近。ロックオンした瞬間彼は胴体左右の多目的ハードポインドに装備したレールガンを放つ。狙いは少しそれたがバルカン砲を破壊する。さらに後続の僚機が次々とミサイルやバルカン砲を放っていき、ローラシア級は艦の各所より煙をたてている。さらに同じような光景は他の艦でも生じていた。ナスカ級などに対艦ミサイルを装備したコスモグラスパーがミサイルを放ち大きな穴を穿つ。途中迎撃され現在は合計11機になったコスモグラスパー隊は敵艦隊に一撃を与えると一度離脱し、再び返す刀で撃滅を狙った。

 

 

 

 

 

一方で護衛艦群を攻撃された輸送艦隊は残存の護衛艦と今の戦闘で損傷した艦を中心部に収まるよう編成を変えようとしていた。航空機の形をしたMAは一撃を加えると離脱していったがまた戻ってくるのは必定。戻ってくるまでに艦隊を整え何とか離脱する必要があるのだ。輸送艦護衛部隊の旗艦であるナスカ級マンハイムでは指揮官が被害報告を聞きつつ急ぎ宙域の撤退を決意した。

 

 

前方の艦隊は艦橋から見ていても陽電子砲などを食らって被害は甚大だ。この護衛艦群は後方と場所的な不利は否めないが被害は先ほどの通り魔だけだ。そのため被害が軽微なうちに撤退艦隊から外れ、独自に本国を目指したほうがここで輸送物資を失うよりは得策だと判断したのだ。

 

 

「僚艦に打電。我に続け。護衛艦隊はこれより前方の友軍艦隊より離脱し独自に本国を目指す。損傷の多い艦を艦体中央に配置し全速力を持って現宙域を離脱する!」

 

 

非情な決断だが今は少しでも本国に物資を届けることが自分たちの使命。そう心に言い聞かせ艦隊を急ぎ編成し、離脱を図る。だが、女神は彼にどうしてなかなか微笑んではくれないようだった。

 

 

「直上方面よりナスカ級2、ローラシア級1、急速に接近中。IFF反応なし。3隻に熱源が収束中。砲撃きます!」

「なっ!?」

 

 

艦隊と別れ離脱を図った護衛艦群にビームとレールガンが降ってくる。被弾した艦は少しいたが大事には至らなかった。

 

 

「スクリーンに出せ!」

「了解、スクリーンでます!」

 

 

映った3隻はどれも黒に染められ、まるで海賊のどくろ模様のように連合軍のマークが施されている。そうしているうちも攻撃は続く。

 

 

「至近弾です!敵艦は輸送艦よりも護衛艦を狙っていると思われます!」

「くっ!全艦にかまうな、全速力を持って離脱せよと命じろ!ミサイルなど直上方面に放てるものは惜しみなく打ちつづけろ!敵MAはどうした!?」

 

 

艦隊からの離脱と艦隊の編成で多少の時間を食い、さらに貴重な時間がいまあの3隻により失われようとしている。ここでMAまで来たら終わりだ。

 

「敵MA反転しこちらに向かっています。ですがこの距離であれば全速力を出せば引き離せます」

「よし、全艦全速力を持って現宙域を離脱するぞ。急げ!」

 

 

独自行動をとった護衛部隊は途中ミサイルやレールガンにより損傷艦などを多数出し、一部は降伏することで時間稼ぎをしたために3割程度の被害で収まったのである。途中攻撃目標が輸送艦に向けられたために輸送艦の被害もなかなかのものであったが咄嗟の行動により全滅は免れたのであった。

 

 

 

 

そしてC分隊。彼らは艦隊直衛部隊とともに遠距離狙撃攻撃を行っていた。主な構成機はバスターダガーやランチャーストライカーを装備した105ダガー、そして艦隊直衛部隊のデュエルダガーやストライクダガーもこの作戦のために連結機能をオミットして作られた超高インパルス長射程狙撃ライフルを構えて攻撃している。そしてC分隊から少し離れた位置でコーネリアス改級砲撃艦が巻き込まないよう友軍部隊のいない箇所に向け次々と陽電子砲をうっている。

 

 

そんな中、敵艦に変化が生じた。大破漂流した艦以外が一斉に蜘蛛の子散らすように離脱を始めたのだ。それはB分隊が攻撃していた艦隊が離脱直後の出来事であった。しかもすべての艦がプラント本国への針路を向けているが微妙に針路が違っている。可能性として挙がるのは補給基地を目指しているということ。ひし形をたてに切ったような補給基地がプラントに行く過程であるのだろうか。ボアズよりもプラント側に向かったことがないキメラ隊にとって非常に厄介な存在だ。

 

 

そのため生き残りの艦、つまり逃げ出した敵艦に放火が集中する。

 

 

(全機、離脱艦に攻撃しろ!残弾数が少ない機は足の遅い艦を仕留めるんだ!)

 

 

バスターダガーのパイロットフーバーに旗艦から通信が入る。だが、敵艦はそれぞれが方角は似ていても針路は別だ。しかもブリッツ重装型が攻撃した前方の艦隊まで動いているために同士討ちを避けるためにもローエングリンなどが一部の地域で使用ができない。そのため1隻に複数の機体が集中して攻撃することができず半数以上をとり逃してしまった。

 

 

(状況、終了…)

 

 

旗艦より指示が出る。残るは敵残存艦の後始末だ。大破漂流した艦は通信が途絶しているが念のために救助に向かい、降伏した輸送艦や戦艦には砲を向けたままとどまらせている。この戦闘で第6、第7機動艦隊と直接なぐり合っていた正面部隊はともかくとして側面などに展開し離脱を可能にしていた艦隊の一方への攻撃は成功した。見た限り奇襲で敵艦隊は総数の7割から8割を失うという大損害だ。コスモグラスパーが向かった輸送艦隊は指揮官の思い切りの良さにより即座に離脱したために撃ち漏らしが激しかったが、中央から先頭にかけてはずたずたである。離脱に成功した艦のほとんどは輸送艦隊と言っていいだろう。秘した本命であったがほんの数日でプラント本国に攻め寄せることを考えると魔法でも使わない限り問題はなかったのかもしれない。あとは司令官であるマイネンフェルトの指揮官が何とかしれくれるだろう、そう思い彼は銃口を降伏した敵艦に向けつつ友軍が到着するのを待った。

 

 

 

 

"ハンター部隊"臨時旗艦ピネラペでは戦闘に関して徹頭徹尾監視をしていた。一応戦闘のための旗艦はマイネンフェルトが務めたが大破した戦艦や降伏艦により忙殺されお鉢が回ってきたのだ。彼らの本来の役目は敵撤退艦隊の妨害だ。特にピネラペはボアズに展開した艦隊とは反対方面から本国へ離脱した艦隊への妨害策として小惑星帯などにミサイルを隠し、熱源を感知したらその熱源にスレッジハマーが向かうようにセットしてからきたためもあり参戦しなかったのだが、あまりの忙しさに旗艦機能を移され指示を送っている。

 

 

ちなみにセットしたスレッジハマーはある一定時間がたつと自爆するよう施され友軍のIFFには向かわないよう施されている。もしも友軍が引っ掛かったら特殊情報部と技術開発部以外には肩身が狭い身がよけい狭くなるのを恐れていたのだ。

 

 

旗艦機能を移され指示に没頭しているとボアズ方面から友軍が接近してくる。殿をかってでたザフト艦隊と戦闘していた部隊と本隊である。ところどころ損傷しているがみな航行も戦闘も可能な艦で占められている。すると接近する艦隊より通信が入る。

 

 

(グラマン艦長、敵部隊の損耗はどれくらいであったかな?)

 

 

通信を入れたのは本体の司令官であるヴィルマン提督だ。あいかわらず渋いイケメンといった風貌だ。

 

 

「かなりの痛手を与えたのは確実です。敵艦隊先頭から中央にかけては8割がた降伏か大破漂流し撤退しきった艦は後方の輸送艦とその護衛艦群です。申し訳ない、本命を落とせず……」

(いや、それほど叩いたのだ。問題はあまりないだろう。それに数日以内にヤキンに攻撃を仕掛けるという話が出ているそうだ。とすれば撤退艦がいても敵は運んだ物資を武器弾薬にする暇もないわけだ。それに撤退した艦は損傷艦がほとんどなのだろう?なら、固定砲台程度にしかならんだろう。少しは安心したまえ)

 

 

そういうと本隊と友軍艦隊は降伏艦などをロープなどで結び月基地などに移送する準備を進めた。そしてそんな作業の中再び通信が入る。通信の相手は輸送艦隊に攻撃を仕掛けたB分隊の母艦であるマイネンフェルトとメートランドだ。

 

 

(グラマン艦長、臨時に旗艦を引き受けてくれて感謝する)

 

 

そう言ったのはマイネンフェルトの艦長だ。そして感謝の言葉が済むとすぐさま本題に入ってきた。

 

 

(こちらの分隊があまり被害を与えきれなかったことなのだが、コスモグラスパーの武装に実弾兵器が多い点が原因の一つだろうと整備班から出ている。もしかしたらこれから注文がまたそちらに入るかもしれないから先に言っておくが苦労を掛けることになりそうだ)

「いや、構いませんよ。こちらはそういう部隊なのですから。それにマイネンフェルトとメートランドはもともと基地周辺の護衛部隊からの合流部隊なのですからそうかしこまらなくても平気ですよ」

 

 

B分隊のマイネンフェルトとメートランド。彼らは本来基地周辺で基地を守るために設置された他の基地所属の部隊なのだ。今回はコスモグレスパー隊が突出して後方部隊を攻撃し、現地指揮は現場部隊長に任されることになっていたために変則的だが旗艦としてあつかわれていたにすぎない。

 

 

(そうなのだが、そうともいえないことがありそうでな…)

 

 

マイネンフェルトの艦長は言いづらそうに答える。その言葉に疑問を抱いているとメートランドの艦長がその疑問を解決するように言ってくる。

 

 

 

(今はMSが主流となったがそれが面白くないものたちも中にはいるらしいんじゃよ。いってみればMA懐古主義とでもいおうかの。今はまだ埋もれているが戦後をにらんで活動が行われようとしているそうじゃ。おそらく今回の戦闘データを要求するだろうという点を心配しているんじゃよ)

 

 

MAはもともと連合軍が主力として扱ってきた兵器だ。それに対しMSはザフトの連中の兵器。連合軍もMSを扱えるようになったのは技術が追いついたことでもあるのだが元来ナチュラルが扱えるMAで戦いたいという思いが一部の間で燻っているということだろう。戦後を睨むとは何ともよい身分なことだ。

 

 

「つまりまた我々のもとにしわ寄せが来る、ということですな。了解です。慣れていますのでおそらく開発の際には我々も出ることになるでしょう。情報だけでもありがたいことです」

(なに、我々は大した働きができなかったからな)

(一番撃ち漏らしの激しい部隊は我らじゃからの。恐らくこれが終わればしばらくは休息に入れるじゃろうがヤキンでまた会おうの)

 

 

そう言い、通信は切れる。MA懐古主義。今もコスモグラスパーよりもメビウスが主に使われている理由の一端でもありそうな気がする名前だ。恐らく開発に参加するのだろうからアクタイオン班にダガータンクを改良するよう指示するべきだろうか。そう思いつつピネラペと彼はミラージュコロイドで姿を隠したまま戦後処理に勤しむのであった。




感想・批評よろしくお願いします。感想がありますとすごくやる気につながります!ナスカ級の名前をマンハイムに変更しました。

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