機動戦士ガンダムSEED 技術試験隊の受難<一時凍結>   作:アゼル

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まだこの作品を待っていてくれている方がいましたら長らくお待たせして申し訳ありません。今まで簿記一級の試験勉強をしていましたので長らくパソコンに触れられませんでした。

自己採点で一科目10点くらいのがあるので足きりになる可能性が高いです、簿記一級の勉強を継続しますので、更新は遅くなるとおもいますがこれからも読んでいただければ幸いです。




ギガフロート奪還作戦Ⅱ

「戦力に関しては自信を持て!全機出撃せよ!」

「航空部隊は下方からの敵機を撃破せよ。輸送機を援護しろ」

 

 

ダガーLとスカイグラスパーが上陸した周辺は激戦と化していた。如何様にもしがたい性能差はジャンク屋に重くのしかかったが仲間を救うため、ギガフロートを守るため、彼らは動き続けていた。

 

 

 

戦闘ヘリやスピアヘッドから放たれるミサイルが次々と着弾し破片を周囲に撒き散らす。スカイグラスパーなどの銃弾が飛行能力を持たない機体へ向け放たれ、蜂の巣となった機体が爆発四散していく。撃ち返すジャンク屋も戦果を挙げていた。バズーカが、ミサイルが上空から攻撃してくるヘリやスピアヘッドを撃墜し、運よく輸送機に命中させる者まで現れた。

 

 

質で凌駕するダガーL隊はエールストライカーを頼りに高機動性を発揮していく。ビームライフルを持つ機体だけでなく低反動砲や機関砲ポッドを持つ機体もおり、後方からの支援機と突撃する機体とで別れ戦っていく。

 

どの機体もナチュラルとは思えない動きだ。無論、大半がナチュラルだがコーディネーターも少数この線上に参加している。戦線に加わっているコーディネーターの大半はディンで艦艇を攻撃しているか、少数の専用のロングダガーで戦線に加わっている。民間軍事会社として成立する以前から『キメラ隊』に参加していたシュミットはロングダガーを駆りこの戦いに参加している。右腕にビームライフルを装備し左腕にシールドという基本装備で戦場にいる。フォルテストラは重量の関係で許可されずオーブ戦のようにパラシュートを装備させ輸送機から延び降り、ここにいる。彼は接近してくるジャンク屋の機体の手足を狙う。

 

 

彼は不殺という考えでわざと生かしているのではなく、単純に撒き餌として利用しているだけだ。飛び交う銃弾やミサイルなどに恐れをなしたジャンク屋は味方に救援を望む。数が増えれば増えるほどに悲鳴は声高になる。そのことを利用しての行動は今この戦域に展開する多くがとっていた。無論ミサイルやバズーカが直撃して撃墜される機体もいたが故意に進んで殺しにかかる者もいた。

 

 

 

それはここにいる機体の大半がエールストライカーを装備する中でソードストライカーを装備している機体だ。その機体はジャンク屋に隙があることを見つけると瞬時に突撃していく。ジャンク屋側はその行動に戸惑い後退するが、遅い。一斉に纏まって後退する機体は次の瞬間、後退方向とは反対方面から飛んできた物に貫かれた。対艦刀だ。ザフト系MSで占められたその一角に踊り出たその機体が槍投げのように投擲したのだ。

 

(ジャンク屋の串刺し、ザフト和え一丁上がり。ギガフロート限定串焼きになりたい奴はどこだぁ?)

 

 

ソードストライカーのダガーを駆るのはコルテスだ。オープン回線で叫びながら貫いた機体から対艦刀を抜くとそれを担ぎ怯えるジャンク屋へと突撃していった。近寄る敵は擦れ違いざまに斬る。離れる敵はロケットアンカーで引き寄せ串刺しにしていく。南米で切り裂きエドがオイルによる返り血を浴びるように、コルテスの周りは一面オイルで殺人現場のごとく散乱している。切り裂きエドが友軍の勇気を鼓舞するのに対し、敵味方双方に畏怖の感情を持たせるような現場となっていた。

 

 

 

シュミットはオープン回線でのコルテスの叫びをのコクピット内で聞いた。普段よりも残忍さを増したかのような口調に少し引く。さらに苛立ちも感じる。それはジャンク屋も同じなのかコルテス機から距離を置いている。距離を置かれ迎撃の銃弾があろうとも突撃していく様はまるで狂戦士のようだ。本来であればここで派手に動くために作戦の通りに動くべきだ。すかさず通信用のパネルを押そうとしたとき、他のパイロットが通信を開いて話しかけてきた。

 

 

 

(荒れてるな、中尉は。理由は分からなくもないがね…)

「何か知っていますか?こっちは作戦概要しか知らないので中尉の事情は知らないのですが」

 

 

思わず聞いてしまう。ジャンク屋という今までの激戦地よりも難度が下がる相手と言えど戦闘中の私語は本来はいけない。気を緩めれば死ぬ。どんなベテランであれ、これは同じだ。だが戦線を前へとコルテスがあげてしまったがゆえに後退する敵と距離が開き敵の攻撃が届かなくなっきている。元々軍ですらないために武装も戦闘のためのものとはお世辞には言えない、という点もあるが。一方的に攻撃してしまえるのは事実だが、あまりに圧倒してしまうと冷静になり戦力差に気が付くかもしれない。せっかく一部を生餌としていたのに無駄になってしまう。

 

そのためジリジリと後退するジャンク屋に対しシールドを構えて共に前進しながら問う。

 

 

(ヤキン戦での乗機だったソードカラミティが"乱れ桜"レナ・イメリアに持っていかれたらしい。南米戦で反乱を起こした切り裂きエドへの対抗策としてだ。あちらもソードカラミティを持っているから本国にある強力な機体を優先配備した結果だろうが、運がなかったな)

「それはまた、何とも…」

 

 

ヤキンでの攻防戦で同じ宙域で戦っていたから知っているが彼専用にカスタマイズされていた初号機は中破していた。片腕を大出力のビームサーベルで切り落とされ、さらに多数の敵機との戦闘によって消耗した部品を直すためにデトロイトに他のどの機体よりも早く戻されたというのは聞いていた。

 

だがまさかほとんど彼専用に扱われていた機体が他人に渡っていたとは。場合によっては戻ってこないかもしれないとあれば苛立ちもするものだ。

 

 

(それにデトロイトでの修復に際して中尉専用のカスタマイズは取り払われ素の状態になっていたらしい。代替機はダガーLだし踏んだり蹴ったりなんだろうさ)

「それはひどく残念な話ですね。以前私もダガーから変えられたとはいえそこまで差はなかったですが」

 

 

 

そう言い合いながらも敵機に向けて攻撃する。そうしていると不意に敵の動きがおかしくなる。まるで何かに焦っているかのようにしている姿を見ていると遠くから爆炎が上がっているのに気が付いた。状況から察するに特務隊が動いたのであろう。敵管制部か指揮所を破壊したのだろう。降伏も時間の問題だ。

 

こうして状況が予定通り進んでいることを悟ったダガー隊は殺さないまでも敵機の行動を不能にするべくコルテスを先頭にして斬り込んでいくのであった。

 

 

 

 

『ドミニオンよりレイダー隊へ。参謀本部より命令を受領した。降下角度を設定次第、順次出撃せよ』

「レイダー隊了解。これより降下を開始する」

 

 

戦闘が始まる前に地上より上がり、大気圏外へ離脱後、サブアームが保持している大型の副翼を用いての再突入を準備していたレイダー隊に近くに展開しているドミニオンから指示が下った。世界樹跡地基地において最低限の修理を受けたドミニオンは直接参加はしないが重要な役割をこなすレイダーへ指令を飛ばす中継点として活用されていた。

 

プラントとの争いで数多くの被害を受けたがそれでも青い星にレイダーが副翼を用いて次々に降下していく。すでに機体内のスクリーン画面も機体内も降下時の熱で赤くなっている。レイダーはぐんぐんと降下し、ダガーL隊が交戦している地域よりも奥へと降下していく。

 

ここまで簡単に降りれたのはジャンク屋には迎撃を行える余力がなかったからだ。ジャンク屋の注意は展開する艦隊と派手に動く上陸した部隊に向けられている。正規軍であれば上空にも注意を向けるであろうが他に気を向かわせるほどの心の余裕はすでに消滅していたのだ。

 

 

 

 

 

雲を抜け青い海の代わりに現れたギガフロートが画面にでてくる。海寄りの場所からは黒煙が上がっている。恐らく上陸部隊の仕業だろう。マクレガーは降下の衝撃でガタガタと揺れる操縦桿をしっかりと握りしめつつ襲撃予定地点よりも少し離れた地点で機体の降下をやめさせ、ギガフロート上を滑るように飛ばす。

メインカメラが映す前方の光景には通信施設とそれを護衛するMSがいる。幸いというべきか。敵はこちらが降下してきた時点では上空に警戒していなかったらしい。フンッと軽く鼻で嘲笑いつつ敵機に標準を合わせるマクレガーはトリガーを押した。

 

 

グングンと画面に映る機体が大きくなる。放った銃弾がMSを撃ち抜いていく。機体から火花を散らしながら後方へ仰向けに倒れていく。僅か三機といえどレイダーの制圧力は高い。MA形態により表に現れた肩部の兵装や副翼に搭載された多数の兵器。その銃口が一斉に放たれた先では障害が一気に薙ぎ払われていく。

 

 

 

 

あっという間に火花を散らしていく障害が画面から消えた。マクレガーは標的が画面から消えた瞬間、操縦桿のトリガーを離して上昇させる。続いて映るのは青い空と白い雲。戦闘をしていることを忘れさせるようなよい天気だ。だがセンサーが後方から温度の急上昇を知らせ、ついで爆発を感知した。そして再度急降下すると付近の施設を攻撃し吹き飛ばす。

 

 

降下したレイダーは僅か三機であったが自力での飛行能力を持つ機体の開発がザフト・連合共に少ないため十分脅威となっている。なによりMS用の火器の流通が厳重に規制されている中でTP装甲のレイダーを落とせる機体はほぼ皆無だ。

 

 

 

稀に警戒のために配備されていた機体が迎撃するが装甲に弾かれ効かない。マクレガーは一撃離脱に務めているが、僚機には副翼の武装が弾切れを起こすと副翼を離し、MA形態時に展開できるクローによる格闘戦をこなすものもいる。クローにより空中に上げられた敵機は上空へ持ち上げられると設備へと投下され質量兵器として利用されている。

 

 

レイダー隊は移動しながら目につく設備を片っ端から破壊していった。何度目かの急上昇と急降下をこなしなていく中、マクレガーはあることに気が付く。

 

「敵が引いていく…?」

 

 

思わず呟いた。先ほどまで組織的とはいえなかったが必死の抵抗を試みてきたジャンク屋が一斉に逃亡を試みている。次々と海の方角へとMSが離脱を試みていく。自動車やザウートのような機動力に難のある機体などに乗っている者たちは機体を降り、両手を挙げて次々と降伏していく。

 

 

(隊長、どうやら味方が敵の司令部を抑えたようです。我々の勝ち、かと)

「そうだな。では二番機は周囲を警戒しつつ最寄りの部隊に増援を要請せよ。三番機は降伏したものを一箇所に誘導しろ。俺は一度上空に上り付近を見る。このままであれば友軍がいれば増援を頼まねばならないからな」

そう言い機体を上昇させる。ギガフロートは味方が侵攻を始めた方面を中心に煙が上がっている。だが新たに煙は上がってこない。本当に戦闘が終了したのだろうか。事実かわからないが通信が繋がる部隊へ応援を頼みつつ、そう思いギガフロートの中心部があるであろう先を見る。そこにはザフト製の珍しい機体が友軍機に守られつつ管制室とでもいうべき施設に銃を向けている。次々と施設からジャンク屋が降伏し、降りてきていることなどからこれが指揮所だろうか。

 

 

 

次第に付近に戦闘機よりも制圧を完了させるための兵や戦闘車両を運送する輸送機が増えている。100%敵を降伏させたわけでもないだろうに、と思いつつマクレガーは不審な動きをする者がいないか上空から警戒に当たった。

 

 

 

ジャンク屋ギルドの司令部のすぐ下では司令部要員が意気消沈していた。まるでお通夜のような暗さ。それはジャンク屋が敗れた姿。敗者の末路とでもいうべきだろうか。そんな彼らの頭上には指揮所に銃を向け、戦闘を終わらせた機体がいる。

 

 

人をはるかに上回る大きさ。銃を構えているのは黒色のディンだ。AMF-103A ディンレイヴン。偵察においても用いられたこの機体が戦闘に終止符を打ったのだ。自分達の負けという形で。初めて見る珍しい機体だという思いよりも悔しさがこみ上げてくる。きっと意思を持つ箱を持っているあるジャンク屋なら喜びはしゃぐと思うのは現実逃避だろうか。

 

 

あの時、上空からの強襲に対して狼狽えながらも迎撃のために付近の機体を粗方向かわせたときこの機体は現れた。虚空から出現し銃口を窓越しに向けられ驚き完全に行動の止まったこちらに対し、いつの間に侵入したのか陸戦隊に侵入され全てが終わった。

 

 

元より決まっていたことではある。サーペントテールや主要なジャンク屋のメンバーを欠いたことは致命的だ。最低限意地を見せつけるためにも降伏は最後までしなかったとはいえ、敗者の末路というものはつらいとしか言いようがない。あえて絶望感に包まれないように心を保つのであれば、敗戦濃厚になった時に海上のボズゴロフ級と共に脱出した者たちのことを願うことであろうか。続々と増える連合兵を見て、深いため息をつきつつ司令要員の一人であった彼は思った。

 

 

 

 

その日、ジャンク屋ギルドが占拠していたギガフロートは民間軍事会社『クルス』により連合軍の下に戻った。抵抗したジャンク屋は大半が投降し、少数が残存海上戦力とともに離脱したという…。

 

 

 

 

 

 

 

 

オーブ連合首長国に近海には群島がある。そのうちの一つの浜辺に一人の少年がいる。その少年は浜辺に散乱するイージスの残骸を足裏で何度も蹴っている。

 

 

 

少年、ロイはマルキオ導師に引き取られた孤児の一人だ。オーブが連合に襲われる前後にやってきたザフトの赤服を蹴り飛ばして導師に怒られたように、今も小屋で怒られ不貞腐れた彼は怒りの矛先をザフトのパイロットが乗っていたという機体に向けた。

 

 

いつか大きくなったら絶対ザフトなんか倒すんだ!

 

 

その思いを胸に一通り蹴り続けた残骸のある浜辺を後にする。まっすぐ帰りはしない。もしかしたら小屋の仲間たちに今の自分を見られるかもしれないのだ。探してくれた仲間には嬉しさがこみ上げるだろうが気まずさが嫌だ。

 

 

だから、木々の間を縫うように進んでいく。凹凸を避けながら進むと見えてくるのは伝道所でもある小屋だ。早く言って謝ろうという思いから足を速く動かし進む。ハッ、ハッと息を切らしながらも進むと小屋が木々の先に見えてきた。

 

 

一瞬汗が目に入り目を瞑った次の瞬間、ロイは宙を舞った。正確には吹き飛んだ。小屋側から生じた爆風により吹き飛んだロイは何が起きたかわからなかった。木々を縫うように進み小屋を見た次の瞬間、目の前は真っ暗だ。何とか力み手で上体を起こそうとしてあることに気が付く。

 

 

腕が曲がっている。肘付近で折れ曲がった腕を見て愕然とし次いでやけに熱い背後を見る。

 

 

 

「えっ…?皆……?」

 

 

 

そこには小屋だったものが燃えている。パチパチと木製の小屋は燃え上がり原形をとどめていない。さらにこの場にあるはずのないMSが仰向けに寝ている。テレビなどで見る機体と違い、黄と黒のストライプの機体だ。さらにその隣に立つ機体がある。丸い胴体と長い手足を持つ単眼の機体。オイルだろうかまるで返り血を浴びたように腕からぽたぽたと液体を垂らしている。何機か他にも鋼鉄の巨人が立っている。だが何か抗議するかのように他の巨人に近寄ってはやられ、爆発していく。

 

 

すぐ近くに小屋から衝撃で飛び出たと思われる燃え盛る物体がある。人形のようだ。だが大きい。自分くらいある。左腕で折れた右腕を抱えながら少しずつ進む。痛みを感じない右腕を抱えながら近づきそれが何かわかった。

 

 

 

小屋の仲間。いつも一緒にいる仲間が燃えている。ピクリとも動かないその燃え盛る仲間を見て立つ力を失ったロイは煙の上る上空を、虚空を眺め絶叫した。付近では何らかの爆音が生じ単眼の巨人、ゾノが近づいてきていたが彼は離れることはできなかった…。

 

 

 

後日、オーブ駐留部隊から大西洋連邦軍総司令部に届いた記録にはこう記載されていた。

 

 

 

マルキオ導師の住む島において大規模な火災が発生。近隣の島の住民より所属不明の艦艇とMSの目撃情報によりMS部隊を同行させ、島内の武装勢力を撃滅。マルキオ導師所有の小屋は全焼。小屋は何発ものミサイルを食らったうえに銃撃を加えられた模様で生存者は確認されていない。

 

 

 

この事件はユニウス条約成立時前後に発生したために関係者以外には伏せられ、条約に関する話題で持ちきりの時期に表に流れたが条約関連の話題により大きな話題とはならなかった…。




感想・批評お願いします。


評価で『タメ口禁止はイラッとする』類のコメントがきましたが今は別に禁止していません。ネットマナーやネチケットとしてどうなの?と思い載せましたが不快に感じられましたら申し訳ありません。

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