機動戦士ガンダムSEED 技術試験隊の受難<一時凍結>   作:アゼル

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ガンダムSEED最終話目前のストライクのシールドで陽電子砲数秒間耐えるのを許すと色々齟齬が出そうなので私の設定で行かせていただきます。これ許すとこうなります。

アグニ=対艦刀>陽電子砲>ビームライフル>実弾

戦艦がチャージしないと撃てない砲撃がバッテリー駆動で動く機体の一撃でシールドをあっさり溶断されてる一撃よりも弱いことになりそうなので。相応のエネルギーを支払うとはいえ戦艦のチャージした一撃より強いと戦艦の存在意義が消えそうな気がしますので。


ASTRAYでは核動力機でしか放てないローエングリンランチャーとかもあるようなので陽電子砲はアグニ系(赤いビーム)よりも強いという設定で行きます。



当作品はあえて具体的描写を伏せている部分もあります。DESTNYまでの空白期などいくらか先の話その点を示す文章を載せていくようにするつもりですが、本当に描写が足りないのもあるので指摘した際に後々話が進みましたら載りますよ、といった返信の場合は少々お待ちいただけると幸いです。

タメ口感想NGでお願いします。


第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦 Ⅴ

プラント群直前の宙域で連合、ザフト、脱走艦隊の各勢力のMS隊が激闘を繰り広げる中、艦船同士でも戦闘が行われていた。

 

 

といっても、艦船同士の戦闘は僅かでしかない。ザフト側は初めこそ防衛線に侵入してくる艦隊に攻撃を仕掛けていたが、今は核攻撃隊の迎撃とMSの補給のためにMS隊とプラント群の中間点から離れられず、乱戦状態の戦場に向けての攻撃も出来ずにいた。もはや補給のために近寄る機体の援護射撃が精一杯なのである。

 

 

 

 

対する連合軍艦隊、正確にはアズラエル派ブルーコスモス艦隊も殆ど同じ状態だ。こちらも最初はコーネリアス改級砲撃艦とアークエンジェル級二番艦ドミニオンの攻撃力を活かし、敵陣に侵攻した。ある程度敵陣に侵攻した後、旗艦であるドゥーリットルからの連絡で核攻撃隊が出撃。同時にコーネリアス改級やドミニオン、艦隊護衛艦隊の搭載MSや周辺で暴れ回っていた後期GATシリーズが呼び戻されMS戦に突入した。

 

 

同じ連合軍艦隊であるキメラ隊と違う点はザフトと同じでMSにMSでぶつけた点だ。キメラ隊は艦隊の被害を度外視し、陽電子砲の威力を用いて半ば強引に突破したのに対し、アズラエル派艦隊は核ミサイルを満載した艦隊の被害を抑えるためもあってMS隊での突破を図った。

 

 

これには後期GATシリーズの内、水中用の機体を除いてほぼ全て存在したことや、バスターダガー等の高性能な量産機が存在したことが大きかった。結果、両勢力がぶつかった宙域は乱戦に縺れ込むことになったのである。

 

ではどこの艦隊が艦船同士の戦闘を行っているのかというと、この戦争により連合、ザフト、オーブと様々な勢力から離脱した脱走艦隊とそれに遭遇した連合、ザフトの艦船である。これはザフト、連合両軍がそれぞれ足並みそろえて戦っているとしても移動する際に偶然遭遇することもある。さらに言えば脱走艦隊が好き勝手動けるという特徴も合わさった結果であった。

 

 

ローラシア級とアークエンジェルが遭遇した途端、ミサイルによる迎撃が戦場で行われていたように各勢力の艦艇が戦場を移動する際に出合い頭で戦闘しているのだ。四方八方に敵がいるので長く同じ敵にかまっていることは少なく、本当に出会いがしらの戦いが大半であったがついに強力な戦艦同士の戦いが行われた。

 

 

アークエンジェル級一番艦アークエンジェル対アークエンジェル級二番艦ドミニオン。

 

 

 

ローエングリンといった強力な火器群やラミネート装甲をもった強力な戦闘艦が互いの火器を全開放して戦闘を行うさまは他を圧倒して余りある状態であった。だがその戦いは一番艦アークエンジェルが劣勢となっている。なぜならば核攻撃隊を保有していたドゥーリットルを護衛し、敵陣にドミニオンと共に侵攻したコーネリアス改級砲撃艦の姿があるためだ。

 

 

防御力や迎撃用火器、MS搭載量において劣っているものの攻撃力に関しては他の戦艦を凌駕している。なによりアークエンジェル級と同様にローエングリンを搭載していることや、ゴットフリートを四門も装備していることからもその攻撃力の高さをうかがい知ることができるだろう。

 

 

キメラ隊より派遣された二隻のコーネリアス改級砲撃艦のうち一隻がアークエンジェルとの戦闘に参加し、ドミニオンの攻撃力もあるがためにアークエンジェルは損傷が激しくなっていく。ドミニオンもコーネリアス改級も損傷を負っているがそれでもまだマシなほうだ。

 

 

互いにNジャマーによりミサイルを制限されている中では砲門数が多く攻撃力のあるほうが有利である状態で攻撃力の高い船同士の戦いは熾烈を極める。そしてこの戦闘は乗員の質の差が現れる戦闘となろうともしていた。

 

 

 

ドミニオンの艦長、ナタル・バジルールは悩みながらもアークエンジェルとの戦闘に赴いていた。本当にこれでプラントに核ミサイルを撃てば戦争は終わるのか…、コーディネーターを滅ぼせば終わるのか、といった疑念を抱きながらの戦闘のために当面の標的であるかつての乗艦との戦闘に集中しようとしてもしきれない状態であった。

 

 

そのために、疑念を抱き闘う彼女の指揮は拙く、アズラエルの代わりに乗艦した左下の座席に座る男に叱責される。

 

 

「何をやっている、バジルール少佐!敵は技術士官上がりの裏切り者と元民間人共だ。奴らを撃たねば地球に明日はないのだぞ!集中せんか!!!」

 

 

アズラエルの代わりに乗艦した男。階級は中佐。アズラエルほどではないにしろコーディネーターを滅ぼすことを是とする男だ。彼はこちらに対しアズラエルほどではなかったがドゥーリットルに乗っているサザーランド大佐と意見を合わせ、核攻撃隊の援護のためにアークエンジェルとの戦闘を強要させた。

 

 

内心ではこの中佐に、いやこの戦い方にあまり良い感情を持つことはできない。だが、アークエンジェルの持つローエングリンは強力だ。実際にヘリオポリスからアラスカに至るまでにもナスカ級に砲撃をした際、直撃でなくとも敵艦にダメージを負わせられるほどのものだ。もしも核を満載にしている艦にかすりでもすれば誘爆は免れまい。

 

 

そのために同型艦であるこの艦とほぼ同等の攻撃力を持つ艦により共同で戦闘を行わせているのだ。アークエンジェルは既にローエングリンとゴットフリート各一門ずつと、バリアント、艦尾大型ミサイル発射管を喪失しており、艦のいたるところに損傷が見て取れる。それに対してこちらは同様にゴットフリートとローエングリンを一門ずつ喪失しているが他に損傷は艦上部装甲の一部が融解したのみであった。

 

 

攻撃力がほぼ同等の友軍艦の存在が大きかったのだろう。アークエンジェルは自分たちの乗るドミニオンを中心に砲撃していたが、こちらに砲撃を集中すればドミニオンの左側で並走するように航行するコーネリアス改級の砲撃が増え、それに反撃すればこちらからの砲撃が増えるという無限ループに陥っているように思える状態だった。

 

 

ラミアス艦長は軍人にはあまり向いていないのではないかというほどに情を優先させていた。冷徹であるべき嗜好が抜け落ちているのではないかと思うほどに。だが、だからこそ互いにフォローができアラスカにまで到達できたのだとも思う。だが、彼女は所詮技術士官だ。戦闘に関して言えば本職の士官には敵わないのだろう。コーネリアス改級砲撃艦が戦闘に加わっており、アークエンジェル級の性能に助けられてきた今までの戦闘とは違うのだ。

 

 

それでも生きながらえているのはドミニオンの砲撃がコーネリアス改級砲撃艦よりも積極的とは言えないからに過ぎない。

 

 

 

だからこそ同乗する中佐の怒りは増しているのだが。

 

 

 

 

「少佐、何をやっている。コーネリアス改級と合わせろ!」

 

 

だが、バジルール少佐の動きは鈍い。ザフトと戦う際やコロニー・メンデルでの戦いのように、なんら疑問を抱かず軍人としての責務に忠実であった時とはまるで違う様子だ。

 

 

「貴様が引導を渡せ。奴らを軍部に出頭させたところでもはや銃殺は免れまい。そして連合市民に不名誉が伝わり、各地で怨嗟や侮蔑の言葉を吐かれるだろう。そうなる前にせめて元は同じ艦に乗艦した者として、貴様の手で奴らを撃つんだ!ここで引導を渡せっ」

 

 

そう言われ、目を瞑り疑念に支配されていた脳内で再び考える。確かにこれほど軍の行動を妨害して多少の罰で済むとは思えない。むしろ今回の作戦の失敗や今大戦における罪科全てを背負わされ葬られる可能性すらある。そして連合市民からは罵詈雑言を吐かれ、中世の異端者のようににされるだろうだが、ここで自分が撃てば生きたまま苦痛を浴びることもなくなるのではないか。そのような思いが瞬時に彼女の脳内に流れた。そして彼女は決意した。

 

「バリアント照準。正面のアークエンジェルを左のコーネリアス改級側に寄せる。この状況ではローエングリンを使う隙はない。敵艦回避後、スレッジハマー争点と同時に発射。敵艦の動きを封じここで全ての禍根を絶つ!バリアント撃てっ!」

 

 

 

強い決意をした彼女の表情には悩みなどを抱いている様子はもはやなかった。

 

 

 

 

 

 

 

ヤキン・ドゥーエ側面から進撃するキメラ隊などによる混合部隊の先鋒、突撃部隊のエース機パーフェクトダガーとザフトの火器運用試験型ゲイツ改は激闘を繰り広げていた。既に両機共に武装の一部を損壊し、パーフェクトダガーはアグニを喪失。ゲイツ改はラミネート装甲製のシールドと左側のレールガン一門を喪失していた。

 

 

当初、二機はザフト防衛艦隊第二陣から少し離れた宙域で戦闘を行っていたが、互いに機動力を活かして戦闘を繰り広げているうちに防衛艦隊を横切りさらに外縁部にて戦闘している。

 

 

 

 

厄介な、とマクレガーは思わず呟いた。眼前の敵機はPS装甲や武装が豊富なために時折トリッキーな戦法を取ってくるが、問題はそこではない。黄色い敵機は味方にすら容赦がないのだ。敵艦隊を突破する際、互いに防衛艦隊の艦を盾がわりに移動したが眼前の敵機は艦の影から出る自分に対し友軍の被害を考えていないのか砲撃を放ってきた。無論、マクレガーは避わしたが敵艦は味方からの砲撃により被害を被っていた。

 

 

 

敵からの攻撃に対し反撃しないわけにはいかず攻撃し、互いに見えない攻撃を読みあう戦いが続いた。そして二機の間に挟まれた艦は無数のビームやミサイルを受け爆発四散した。

 

 

 

 

目的のためなら味方にすら容赦しない。キメラ隊と同様の行動を眼前の敵機はしてくる。仲間への意識の強いザフトにしては珍しく非常に危険な相手であった。元来、味方ごと撃つことを是とするキメラ隊の常識に囚われない行動がパイロットの腕も相まって敵を葬ることに繋がってきた。

 

 

 

そしてこのような行動は他の部隊でもほんの一部、生体CPUのような良識を備えない者のいる部隊でしかなかった。なにより相手は腕も機体の性能もよい。厄介きわまりない相手である。

 

 

互いに機動力を活かしつつ岩塊などを盾にしての撃ち合いが続く。そんな中、ダガーの右肩より放ったれたミサイルと続いて放たれたビームが巨大な岩塊を粉々に破壊し、砕けた岩塊がシャワーとなりゲイツを襲った。PS装甲は岩塊のシャワーに対しても有効であったが、姿勢が崩れる。

 

 

そしてそれを目撃したマクレガーは一機に距離を詰める。世界樹跡地基地周辺のデブリを躱す訓練を積んできたこともあり次々と躱し、勢いよく対艦刀を抜き振りかぶる。PS装甲を持つ敵機を、付近の障害物ごと一刀両断するために加速力も加わった一撃だ。

 

 

 

 

殺った!

 

 

 

 

だがそれは甘かった。黄色いゲイツは二本のビームサーベルを連結させ、薙刀のような形状にさせたそれで対艦刀を半ばから切り裂いたのだ。予想外の方法によるリーチの差を得た一撃。一瞬の攻防にマクレガーは理解が追いつかなかった。

 

 

上段からの振抜きを下から掬いあげるかのような滑らかな一撃で防がれたことに何が起きた?と呆気に取られているマクレガー機に衝撃が走る。蹴りによる一撃。PS装甲による硬さも合わさり、周辺の岩塊の一つに吹き飛ばされエールストライカーのスラスターの片側を喪失した。

 

 

脳裏に「死」という文字がよぎる。慌てて機体を動かそうとするが衝撃によりなかなか動くことができない。動けない状況が続くが、「死」という現実は訪れなかった。何事かと敵のいる方角を見ると件のゲイツ改はビームサーベルを振りぬいた姿勢で機体を灰色に変え機能を停止している。

 

 

 

疑念はあった。前回の出撃において同色のゲイツを鹵獲し、帰投する際にそのゲイツはエネルギー切れを起こしていた。なにより、友軍のビーム兵器主体の装備の機体がTP装甲にしてエネルギー切れを防いでいるのにこの機体は全身がPS装甲で覆われている。あの艦隊を一掃した兵器による被害で試算できなかったが、エネルギーの寿命は短いと推測されていたのは間違いではなかった。

 

 

この機体は重武装である自機を足止めするために突撃したのだろう。その思いと共に絶好の機会で機能を停止した敵機をみてマクレガーにしては珍しく油断してしまった。

 

 

 

右腕にエールパックのビームサーベルを抜き、左腕に装備されたアンカーをゲイツに向け射出する。ゲイツの右腕に絡め一気に引き寄せ、ビームサーベルを刺突するかのように突き出しコクピットを破壊しての鹵獲をもくろんだのだ。

 

 

 

 

 

だが、それは間違いだった…。

 

 

 

 

引き寄せられビームサーベルが突き刺さろうとする時、ゲイツのリフターが突如外れダガーに突撃する。

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

マクレガーは咄嗟のことでかわすことは叶わなかった。そしてなかなかの勢いでダガーを未だにアンカーで繋がったゲイツもろとも後方へと急速に押しやる。だがリフターがメインカメラと胸の間に直撃したためイーゲルシュテルンの起動にはなんとか成功した。が、破壊には至らない。さらに非常事態ということもあり、普段通りの行動に移れない。

 

 

まずい、という思念が強くよぎっていた。画面いっぱいに映るリフターと先端の銃口。互いに岩塊や残骸を盾にしながらの撃ち合いでこの銃口からのビームの発射は確認済みだ。如何にラミネート装甲と言えども至近距離からの一撃は耐えられないだろう。その思いは焦りを生み、彼から正常な思考能力を失わせていた。

 

 

未だに無事な右肩の武装、120mm対艦バルカン砲。対艦と名はついているが中距離でのMSの迎撃に適した武装が残っていたのだ。だが、画面いっぱいに映るリフターにより距離もつかめず、イーゲルシュテルンによる迎撃しかできない。

 

 

 

そうしているうちに突如コクピットに背後からの危険を知らせるサイレンが鳴り響く。慌ててサブカメラで確認すると急速に大きく迫っていく岩塊が。片側を喪失したスラスターを吹かして離脱を試みるがうまくいかない。画面の岩塊は巨大化し、画面いっぱいが岩塊で覆われた。

 

 

 

 

戦場の片隅で火球がまた一つ…。

 

 

 

 

 

 

 

「っくおおおおぉぉぉ!?」

 

 

 

スラスターを全開にして全力で右側へ機体をずらす。同時に右腕のアンカーを近場にある残骸に向けて射出。機体を残骸の方向へうつさせる。次の瞬間、ソードカラミティが元々いた場所に上段から大出力の巨大なビームサーベルが振り落される。ギリギリの回避であったために間に合わず左腕が蒸発。

 

 

右側への勢いに任せているとさらにガツンガツンと衝撃が続く。銃弾による攻撃だ。メインカメラから映る画面にはジンが一機猛然と今までの恨みを晴らすかのように攻撃してくる。雑魚の分際で、と思ったのも束の間で飛来したビームによりジンは爆散する。

 

 

(コルテス殿、一時撤退しましょう。こちらのMS隊はレイダーと一部のMSを除きほぼ壊滅です。ピースメーカー隊もほとんどが撃ち落されました。このままでは我らも危ない)

 

 

 

機能の戦いでもともにいたロングダガーのパイロットに言われ、周囲を見渡すと戦闘開始時よりも両軍のMSの数は少ない。コルテスも自軍が不利になっていることは薄々気が付いていた。赤いストライクに襲い掛かった際にともにいたストライクダガーはコルテスがストライクを圧倒しているうちに護衛のアストレイを撃墜した。そして自身も薙ぎ払いの一撃はストライクが持っていたシールドを両断し、間一髪でシールドを離し後退したストライクのコクピットを対艦刀先端の実体剣で勢いよく突きとばし、形勢は決まったも当然であった。

 

 

突きの一撃による衝撃で赤いストライクは吹き飛び、とどめの一撃を食らわそうと動いたが大型の強化パーツを付けた赤いほうの機体により妨げられた。自分の代わりに赤いストライクを攻撃したフォビドゥンが先ほどの何故か息の合った連係をするデュエルとバスターに撃墜され、それを皮切りに友軍は被撃墜ラッシュであった。

 

 

新型はレイダーを除き次々に撃破されていき、妨害してきた赤い機体―ジャスティス―がドミニオンの闘う宙域に移動しようとしていたため攻撃を仕掛けようとしてもう一方の追加武装をした敵機に攻撃された。あと少しで自分も撃墜された友軍と同じ末路をたどるところであったため、冷や汗がどっとあふれてくる。

 

 

 

レーダーに映る友軍の数は僅か。共にいたストライクダガーはほぼ同時に攻撃を受け武装やマニピュレーターの一部を喪失して近くにいるが戦闘続行とは言い難い。守るべきピースメーカー隊も壊滅し、ドミニオンのいる方角では被弾したのか本来よりも巨大な熱源反応が出ていることがわかる。そのため彼は決意した。

 

 

 

「よし、いいだろうよ。周囲の友軍に連絡して撤退するぞ。とち狂ってるレイダーを連れて撤退する。俺の機体を先頭にドミニオンの方角に向かうぞ。いいな!?」

(了解)

 

 

 

左腕と左側のビーム発射口を失ったソードカラミティを先頭に連合軍残存MS隊は撤退を開始した。

 

 

 

 

 

 

連合軍MS隊の母艦であるドミニオンやコーネリアス改級はミーティアを装備したジャスティスの攻撃による被害を受けていた。アークエンジェルとの戦闘の最中、突如現れたジャスティスは大口径ビーム砲と多数のミサイルにより二隻はかなりの被害を負っていた。

 

 

偶然か故意なのかはわからないが対空力と耐久力がアークエンジェル級に比べ低いコーネリアス改級には多数のミサイルが、ドミニオンには大口径ビームが直撃し両艦共に船体から煙を上げながら船体を傾けている。両艦共にビーム対策などをしていたが如何せん自在に動き回る戦艦のような代物だ。戦略級の代物が突然強敵との戦いの中、攻撃してくれば被害も相応のものなわけであった。

 

 

 

ナタル・バジルールは後ろから頭にぶつかった何かによって艦長席で目覚めた。一瞬、自分は何をしていたのかと自問自答するがぶつかった何かに目を移し、覚醒した。地獄絵図だ。目覚め思う。狭い密閉空間である艦橋はところどころで被害を受け、火花が散り傷を負ったクルーが赤い水滴を宙に漏らしながら浮いている。

 

 

先ほど自分にぶつかってきた人物によく目をやると赤い髪の女性。アルスター曹長であった。慌てて床を蹴り、状態を確認しようと近寄り床に下す。

 

 

「アルスター、無事か!?」

 

 

目を見開いて力なくいる姿は無事とは思えない。宙に浮かないよう床に固定するべく非常用キットを用いて固定する。すると、アルスターの口から言葉が漏れ出る。

 

 

「キラに、キラに……まら…ゃ。私…」

 

 

濁った瞳でうわ言のように呟くさまはかつてヘリオポリスからアラスカまでの道中で見た姿はない。その惨状に嘆いていると、操舵手のいるべき場所から叱責の言葉が届く。

 

 

「バジルール、何をやっている!目覚めたのならただちに席に戻り指揮をするんだ!貴様が寝ている間に艦内に応援をよこすよう通信はした。急げ!」

 

 

 

操舵手の代わりにいる中佐は腹部から出血をしているのか白い軍服が赤く染まっている。彼の足もとには元々の操舵手が力なく座っており、どこかに首を打ち付けたのかいってはならない方角へねじ曲がっている。

 

 

 

「中佐、その傷は!」

「傷など構わん。それよりも敵の奇襲だ。強化パーツを付けた赤い機体からのな。艦橋員に限らず艦内の各所で死傷者が出ているようだ。これでは継戦能力もあるか怪しいだろう。私は撤退すべきだと思うがな。どうするバジルール少佐!?」

 

 

半ば同意を求める言葉にも感じる。ジャスティスからの砲撃はナタルが報告を聞く前に届いたため、このような状況になった様子を彼女が知る由もないが敵の攻撃は直上というわけではなかったが、斜め上方であったがために艦橋にかなりの被害を与えたのだろう。電灯も所どころ消え、非常灯により艦内は保たれている。これでは艦内の一部では破孔すらありえる。そして何より目の前のアークエンジェルのこともある。もはや一刻の猶予もない。

 

 

「これより当艦はアークエンジェルとの戦闘を中断、撤退する。アークエンジェルからの攻撃が予測される地点に向けアンチビーム爆雷発射。離脱する!そして医療班を急がせろ。このままでは大多数が死ぬぞ!」

「サザーランド大佐のおられるドゥーリットルからは総員退艦するとの連絡の後、通信が途絶えている。私はドゥーリットルが最後に確認できていた宙域に向かうことを進めるが、どうするかね?私はこの傷だ。高級士官を増やすのは得策だと思うが?」

 

 

撤退の準備を始める中、中佐からのさらなる進言を耳にする。それが本当であればこちらの核攻撃隊は壊滅的だろう。核攻撃隊の旗艦の通信が途絶したということは艦隊中心部まで攻め込まれた可能性は高い。そして高級士官だけでなく無事な兵を収容すべきだろう。艦内は負傷した兵を多数抱えている。少しでも兵を回収し戦線に戻れるよう一時的にでも後方に下がり、戦線への帰還を果たすべきか。

 

 

何より、自身より階級の高い中佐がかなりの重傷だ。一人でも多く士官を拾い、意見を集めたうえで戦うのが得策だろう。

 

 

「よし、これより当艦はドゥーリットルの反応を最後に確認できた宙域付近まで撤退する。コーネリアス改級にもそう伝えろ。途中航行可能な艦を確認した際はそれらも引き連れ隊列を回復させるぞ。急げ!」

 

 

 

こうしてアークエンジェルと戦闘をしていた連合軍艦艇が混乱し、艦艇が撤退していく最中に脱走艦隊のMSが多数接近したがアークエンジェルと何がしかの通信を終えた後、ほとんどがジェネシスのある主戦場へと行き、少し後にアークエンジェル搭載機が、一拍おいてピースメーカー隊護衛の連合軍機現れた。

 

 

 

 

 

それと時を同じくして通常の白いストライクがアークエンジェルに近づいている。同様に被弾の影響で船体を傾け、ローエングリンを除いた武装の射程ギリギリの位置に移動した二隻にも残存MSが近寄りつつあった。この異なる勢力のMSが少し間をおいているとはいえほぼ同時に、それもアークエンジェル側に護衛機がほとんどいない状態で補給に来たことはアークエンジェルにとっての不運だった。

 

 

連合軍MS隊の一機、先頭を行くソードカラミティのパイロットのコルテスは苛立っていた。今回の戦闘で彼が倒したのは全て量産機。つまりは雑魚。そしてまともに戦ったワンオフ機は全て離脱したか、戦っても武装の一部を破壊してすぐさまこちらへの興味を失った機体のみ。故に戦いを求める彼は苛立ちを隠せなかった。

 

 

 

そのため、レーダーに映ったストライクを見て歓喜した。まだ、獲物は残っていたことに。さらにストライクはアークエンジェルに近づいてはいるもののなかなかに距離が開いている。これを確認したコルテスは一気に機体を加速させる。

 

 

加速させ、移動する中で残存武装を確認。追加武装からの薙ぎ払いの一撃は左腕を完全に破壊し、ビームブーメランや対艦刀などの武装を一つずつ失っている。だが足に追加装備された武装のビームサーベルは残っている。もはや短期決戦しかない。決意を胸にソードカラミティの速度は上昇していく。

 

 

 

狙われているストライクも気が付いたか格納庫への進入を止め振り向き、残った武装で牽制してくる。だがソードカラミティも被弾しているものの被害の度合いが違いすぎた。ストライクは固定武装としてイーゲルシュテルンやアーマーシュナイダーぐらいしかないのだ。そのうえ左腕こそ健在だがシールドで守ることしかできず、片足も喪失しバランスが悪くコクピットからも黒煙を流している。

 

 

コルテスはストライクのイーゲルシュテルンとアークエンジェルからのミサイルを回避し、右腕のアンカーを射出する。この攻撃はシールドで防がれるがこれこそコルテスの狙ったことだった。シールドで身を防いだことにより一時的に牽制の射撃が中断された。そして、それを狙い一気に近づいたソードカラミティは右手に持った対艦刀を勢いよく振るう。

 

 

かつてオーブ解放作戦においてストライクが連合軍量産機に対してしたようにシールドが見事に半ばから、残った左腕ごと切断される。だがPS装甲のおかげか、はたまたこちらがわの損傷が勢いを減らしていたのかわからないがストライクの胴半ばに対艦刀が入ったところで勢いは止まる。

 

 

ストライクは必死に逃げようと後方へ離脱を試みたがもはや無駄だった。対艦刀が駄目だと知るや脛に追加装備されたビームサーベルが抜かれる。咄嗟に対艦刀を離し、左脛に装備されたビームサーベルが抜かれ、そのままの勢いで振るわれた一撃はストライクの胴から左肩にかけて逆袈裟斬りに入り、二つに割断。一瞬の間をおいてストライクはアークエンジェルの艦橋からもなんとか視認できる距離で盛大に爆発した。

 

 

 

コルテスはストライクのパイロットが誰か知らない。だがストライクの撃墜はアークエンジェルに負の感情を抱かせたのは理解できた。アークエンジェルが僚艦との戦闘そっちのけで主砲やミサイルを向けてくる。そんな負の感情剥き出しの攻撃を受け、後退するドミニオンなどの僚艦や友軍機の援護を受けつつ回避しながら、戦場で感情のままに自らへ報復行為をするアークエンジェルに馬鹿な奴め、とコクピットの中で大声で盛大に笑いつつ母艦へと急ぐのだった。




感想・批評よろしくお願いします。利き腕を怪我してますのでしばらく書きだめした奴を確認中です。DESTINY行った時に閑話として入る話を書いてたのであまりストック増えてないです。


一応原作との違いというか各機の状況を載せときます。

カラミティ⇒撃墜
フォビドゥン⇒撃墜
レイダー⇒生存・帰艦中
ストライク⇒陽電子砲ではなくビームサーベルの一撃で撃墜
ストライクルージュ⇒シールド喪失・戦闘続行
ソードカラミティ⇒左側の武装を喪失・帰艦中
パーフェクトダガー⇒岩塊に衝突後、現在は不明
ドミニオン⇒大破・撤退
ドゥーリットル⇒総員退艦後音信途絶

フレイ・アルスター⇒重体
ナタル・バジルール⇒軽傷
アズラエル⇒軽傷・気絶
ムウ・ラ・フラガ⇒不明



あまり深い指摘には根幹にかかわりますといったまえがきに書いてあるような文章をそえます。タメ口感想はネットマナーとしてやめてください。

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