Muv-Luv 〜赤き翼を持つ者は悲劇を回避せんがため〜   作:すのうぃ

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6話 とある魔女の部屋/対AH戦

「ソ連の奴ら…………。まだこんなの隠してやがったのね……。」

 

とある場所の、とある部屋。

 

「私は"可能な限り全部寄越せ"って言ったのに、何が『もう生き残りはコレだけだ』よ。こちとら人類の運命背負ってんのに何出し惜しみなんかしてんだか。それに、あたし相手に何時迄も隠し通せるとか思ってんのかしら?」

 

書類が乱雑にばら撒かれた部屋にある、これまた書類が山積みになったデスクでは、1人の女性が面白そうに自分の手元にある資料を眺めていた。

その資料には、銀の髪を持つ2人の少女達の写真とそのプロフィールが書かれている。そこに載っているのは………

 

「人工ESP発現体。第三計画の遺物………いえ、物扱いはあの子達に失礼ね。」

 

人工ESP発現体。

鉄の子宮より産み落とされた、人ならざる力を宿す、悲運の子供達。

 

「ま、人材は多いに越した事はないからね。後はどうやって奪うかね………。何か切っ掛けがあれば、そっからはゴリ押しで何とか出来るんだけど。世の中そう簡単にはいかないわよねぇ………。はぁ、めんどくさいわぁ………」

 

気だるそうに溜め息をつく彼女は、ふと入り口にあるスライド式のドアが開く音を聞いた。

音のした方向に視線を向けるとそこに、まだあどけなさの残る1人の少女が立っていた。

 

「あら、もう"お話"は終わったの?」

 

「………………」

 

少女は言葉を発しなかったが、その代わりに頭についているウサギの耳のような形をしたヘッドセットがヒョコッと動いた。恐らく肯定の意思を示しているのだろう。

 

「ふーん……。あ、そうそう。あんたのお仲間がソ連で見つかったわよ。良かったでしょ。」

 

女性の言葉に、ほんの僅かにーーそれこそ彼女の事を深く知る人物しか気付かない程ーー目を見開いた。

 

「もっとも、彼女達をこちら側に来させるのはかなり難しいけど。

いかにあたしと言えども、弱みも握ってないのに直接向こうの計画に干渉なんて出来ないわ。…………でも、間接的な干渉なら出来ない事もない。」

 

背もたれに深く寄りかかる。

 

「99式電磁投射砲のコアモジュール……一応帝国に恩を売っとくってだけの考えだったけど、まさかこんな所で役立つなんて。あたしったら天才ね。まぁその為には色々クリアしなきゃいけない事も多いんだけど、そこは何とかなるだろうし。」

 

そう言って、女性は別の調査書を見る。

 

 

「この斯衛の黒田とかいう大尉……。中々の変わり者らしいじゃない。フフッ、期待してるわよ?」

 

ニヤリと、心底面白そうに笑う彼女の顔は。

 

まさに女狐のそれであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

アルゴス隊・作戦司令室。

 

 

「いっくし!!」

 

「? 大丈夫ですか、黒田大尉。」

 

「あぁ、平気平気…………」

 

突然くしゃみをした冬夜を心配きたのか、唯依が声を掛ける。

 

「本当ですか?なんなら室内の温度を上げますが。」

 

「いや、それには及ぼない。室温は丁度良いからな。しかし、何でくしゃみが出たんだろうか……」

 

横浜の女狐と呼ばれる人物が冬夜に目をつけているだなんて事実を、彼は知る由もない。

 

「確か日本では、噂をされるとくしゃみがでるという都市伝説的なものがありましたな。」

 

「ぬぉ!?」

 

もしや風邪でも引いたのでは………と冬夜が考えていると、突然彼の隣から声が聞こえた。

そちらに視線を向けるといつの間にやら、初老の男性が司令室に入って来ていた。

 

「あぁ、そちらはボーニング社から来ていらっしゃる、フランク・ハイネマン氏です。」

 

イブラヒムがその男性ーーハイネマンを冬夜に紹介する。

 

「以後、お見知り置きを。」

 

「私は帝国斯衛軍所属の黒田 冬夜大尉です。こちらこそよろしくお願いします。して、あなたはその噂とやらに心当たりがお有りで?」

 

差し出された彼の少し乾燥した手を握りながら、冬夜は先程ハイネマンの言った事に対して質問をする。

 

「はい。あなたはこの辺りでは、もう有名人ですよ。」

 

「私が?ここへ来てまだ2日と経って居ないのですが……」

 

嫌な予感を感じる取る冬夜。それは間違いなどではなかった。BETA戦で培った経験は、彼の第六感を鍛えていたのかもしれない。

 

「えぇ。昨日新しく来た大尉は、夜中に笑いながらまだ幼さの残る子供を追いかける、生粋のロリコンだと」

 

「おい誰だそんな失礼な事言いふらしやがったのは。もしやテメェかタリサ!!」

 

『ちげぇよ!!大体あたしはアンタに追いかけ回された所為で言いふらす暇なんてなかったよ!!』

 

アクティブに乗っているであろうタリサに対して通信用のマイクを引っ掴みながら叫ぶ冬夜。

というか、2人とも今は模擬戦開始前だと言うのに完全に口調が砕けていた。

 

「確か、さっきもPXの方で誰かが他の隊の方に言っていましたなぁ」

 

「大尉、大尉!!どこへ行くおつもりですか!?」

 

ハイネマンの呟きを聞いて即座に部屋を出よう歩き出した冬夜を唯依が慌てて引き止めに入った。

 

「篁中尉。たった今PXに大事な用事ができた。少々席を外すが、10分程度で戻ってくるから安心しろ。」

 

「だ、ダメです!!今の大尉を行かせてしまったら確実に死人が出ます!!」

 

「大丈夫だ。ただ少し交渉してくるだけだからな。」

 

「ならせめてその手に持っている刀を置いて行って下さい!!」

 

「何!?それは我が黒田家の家督を継ぐ者だけが持つ事を許される【紅姫】をここに置いていけという事か!?」

 

「私が言った事そのままですね………」

 

「だが、私はこれが無いと情緒不安定になってしまうんだ!!」

 

「この前帝国の食堂で食事してた時普通に家に置いて来てたじゃありませんか!!」

 

「それはアレだよ……………こう………さ、察しろよ!?」

 

「逆ギレ!?言い訳が思いつかなかったからといって、まさかの逆ギレですか!?」

 

「あ、あの〜。もうすぐ演習区域なんですが……」

 

止む様子の無い言い合いをする2人に、恐る恐ると言った感じで声を出すオペレーターのリナ・カナレス。

しかし、肝心の2人はそんな話聞いちゃいない。大丈夫であろうか、この計画代理人と補佐役は。

 

「はぁ………構わん。大尉と中尉の事は放っておいても問題なかろう。」

 

「は、はぁ………」

 

溜め息をつきながらサラッと上官に対して雑な対応を決定したイブラヒム。

それで良いのかと言わんばかりの表情をするリナ。

だが未だにギャーギャー言ってる2人を見る限り、その判断は正しいと思わざるを得ない。

 

「アルゴス小隊、作戦区域に到達しました。」

 

「よし、では状況開始。」

 

アルゴス小隊が模擬戦を開始しても、とうとう2人の言い争いは終わる事はなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「…………大丈夫なのか?XFJ計画…………」

 

通信機越しに聞こえてくる2人の上官のくだらない罵り合いに、底はかとない不安を覚えるユウヤ・ブリッジス。

明らかに人選ミスをしたとしか感じられないのは何故なのだろうか。

 

『そんな事言わないのアルゴス01。2人とも経歴は確かなんだからね。』

 

「まぁ、そうなんだけどな。腕は確かなんだよな。……多分。」

 

もしかして経歴は別の人物の物なんじゃないかと本気で疑い始めるユウヤ。しかし、今は演習中だ、と即座に思考を切り替える。伊達にエリートと呼ばれているだけの事はある。

 

「レーダーに反応はないな………。04、そっちは?」

 

『コッチも反応なしよ01。』

 

「そうか。索敵を継続してくれ。」

 

『アルゴス04了解。』

 

取り敢えず指示を出して敵が現れるのを待つ。

互いに喋る事も無いので、自然と管制ブロックの中は静寂に包まれる。聞こえるのは、センサー類の小さな音だけ。

そんな中、ユウヤの脳裏にはある一人の男の顔が思い浮かぶ。

何故今お前の顔が出るんだと思いながらも、その男を手本にするのも良いかと感じ、ユウヤは口を開く。

 

「……ブレーメル少尉。ちょっと良いか?」

 

『何かしら?』

 

コールサインではなく名前で自分を呼ぶユウヤを、不審と迄はいかないものの不思議そうな面持ちで返事をするステラ。

 

「…………俺は、負けるつもりなんざコレっぽっちも無い。だから、お前も力を貸してくれないか?」

 

『…………フフッ。何を仰るやら。当たり前でしょ?私だって衛士なんだから、トコトン勝ちに拘るわ。』

 

「フッ。愚問だったな。悪ぃな、当然な事聞いてよ。」

 

『あら、意思疎通は重要な事よ?どんな事でもハッキリ自分の気持ちを伝えないと。人間、言葉なくして解り合う事なんて出来ないものだからね?』

 

「だな。まぁ、うちの大尉殿に関しては逆に自分を曝け出し過ぎてる気もするがな。」

 

『それがあの人の良いところなんじゃないかしら?あんなタイプの上官、滅多に会える事なんか無いわよ。』

 

「確かに。ああいうのを理想の………」

 

ーー警告。高速で接近する敵影確認ーー

 

「『!?』」

 

管制ブロック内に鳴り響くロックオン警告。

 

「よし、手筈通りに頼むぞ、ステラ!!」

 

『背中は任せなさい、ユウヤ。』

 

お互い名前を呼び合って確認をとる。

先程の会話でかなり結束は固まった様だ。

 

ユウヤは、イーグルの体を飛び上がらせる。

すると、後方から演習用のペイント弾が飛来した。それを前方に跳躍ユニットを噴かせる事によって回避すると、撃ってきた敵機から通信が入る。

 

『お相手するぜ、トップガン!!』

 

「お前が出てくるとはな。意外だったぜ。てっきりチビッコいのがくると思ってたんだがなッ!!」

 

36mmを背部兵装担架に固定したままばら撒く。牽制が目的な為、分かってはいたが擦りもしない。

 

『おやおや、トップガンはタリサがお好みかい?なら仕方ねぇな』

 

ビルの隙間を使ってユウヤを撒こうとするかの様に低空を飛行するVG。

 

「逃がすかよ!!」

 

その背中を追い掛けるユウヤだったが、それが彼らの罠だとは気付けなかった。

 

『ご指名頂きましたぁ!!タリサちゃん、1番テーブルのブリッジスさんの所までお願いしま〜す!!』

 

『待ってましたぁ!!』

 

丁度4つのビルが四隅にある道、つまり交差点をユウヤが通過した瞬間、後ろから出てきたタリサの駆るアクティブが彼に襲いかかる。

 

『お客様?当店では従業員による36mm弾の雨がサービスとなっております。どうぞご堪能あれッ!!』

 

「サービスの押し売りは一流のする事じゃねぇな!!」

 

軽口を返しながらも、確実に弾を避けるユウヤ。対AH戦においてなら、米軍の中でも彼は上位に食い込んでいるのだ。これ位なら楽勝とは行かずとも出来ないことはない。

 

『へっ!!逃げる事に関してはトップエリートだな!!VG、あっちから回り込め!!逃げ道を塞ぐぞ!!』

 

『りょうかーーーーおっと!?』

 

方向を転換しようとしたVGのイーグルに、遠距離から狙撃が飛んでくる。

 

『あら、外した?』

 

『あいっ変わらず、えげつねぇ所に飛ばしやがるねぇ、ステラさんよぉ』

 

撃ったのはステラであった。

彼女は、自分が狙撃に失敗したのを確認すると即座に今いる場所から離れる。

その場に留まれば、弾の飛来した方向から居場所を割り出されてしまうからだ。

 

VGとタリサは一度、互いの背中を合わせるようにして一つの場所に集合する。

 

『VG、お前はステラを仕留めろ!アイツはあたしがやる!!』

 

『ハイハイ。分かってますよ、俺も野郎の尻を追っかける趣味はないんでね。』

 

獲物が決まった途端、動き出す。

 

「今度はコッチから行くぞ!!」

 

ユウヤも跳躍ユニットを逆噴射。180度方向を変更すると、タリサのアクティブに突っ込みながら突撃砲を撃つ。

 

『のわ、あっぶねぇな!!』

 

タリサは上に反転全力噴射するも、回避が少し遅かった為一発が突撃砲の銃口に命中。破損判定が出てしまった。

 

『中々やるじゃねぇかよ、トップガン!!』

 

使い物にならない突撃砲を破棄。

代わりに人間の太腿にあたる部位に装着されているナイフシーケースより近接戦用ナイフを装備。

跳躍ユニットを全開にする。

 

『あたしに近接戦で勝てると思うなよ!!ククリナイフの力を見せてやる!!』

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

一方その頃、作戦指令室内では。

 

 

「だから、落ち着けと言っている!!」

 

「これが落ち着いていられるか!!このままでは、斯衛と黒田家の名に泥を塗る事になるんだぞ!?」

 

「殺人を犯す方がよっぽど駄目に決まってるだろう!!」

 

「だぁ!!頼むから離せッ!!と言うか、お前の方こそユウヤの腕前を見なくて良いのかよ!?あいつが不知火弐型に乗るんだぞ!!」

 

「さっきチラリと見たが大した実力でもない故、見るに値しない!!」

 

「ひでぇなお前!?それが人の言う事かよぉ!!大体、そんなんだから彼氏の1人も出来ないんだよ!!」

 

「は、はぁ!?そ、それとこれとは関係ないだろう!?そういうお前こそ、いつもいつも月詠中尉やら大尉やらとイチャイチャしおって!!この、う、浮気者!!」

 

「何で浮気者!?俺とお前は付き合ってないだろ!!つかイチャイチャなんかしてねぇ!!確かに、仲良くお話とかさせて貰ってるけどさぁ!!あーあ、唯依も月詠さん達みたいに少しは柔軟性を持ってたらなぁ!!」

 

「ッ!! ば、バーカ!!バーカ!!」

 

「子供かお前は!? あぁもう、涙目になるなよ良心が抉れる!! てかそんなキャラじゃないだろお前は!?」

 

「………………いつまで続くんですかね、アレ。しかも途中から痴話喧嘩になってますし。と言うかキャラじゃないってどういう意味なんでしょうか。」

 

「分からんしどうでも良いから放っておけ。」

 

「了解。」

 

遂に部下にまで呆れられる始末だった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

その声を聞いている者がいた。

ステラとVGである。

 

『あらあら、タカムラ中尉はクロダ大尉に気があるようね。』

 

『他人の恋愛事に耳を傾けてる場合かぁ?』

 

『とか言いつつ自分もちゃっかり聞いてる癖に。』

 

『へっ、まぁな。』

 

口調の割には複雑な機動をとりながら2人のイーグルは狭いビルの合間を高速で飛んで行く。

時折反転全力噴射を行い、右の道や左の道に入り逃げるステラだが、VGもそれに負けじと追いかける。

 

『ステラさん、いい加減俺に捕まってくれねぇかなぁ?』

 

『しつこい男は嫌われるわよ?』

 

『それがイタリア人の性なんだよ。仕方がない。』

 

再び右の道路へ進入するステラ機。だが、そこは行き止まりの筈だ。

 

『お、やっと観念したのかい?なら俺と一緒に良い事でも………』

 

しかし、ステラの行った道の先に彼女のイーグルの姿はなく、代わりに設置型爆弾がプレゼントだと言わんばかりに置いてあった。

 

思わず絶句するVG。

逃げようにも、もう既に逃走ルートにはステラが待ち構えている事だろう。もう何も自分に出来る事は無い。なら、後は………。

 

「ゴメン、タリサ。しくじっちまった………。」

 

ーーーアルゴス03、致命的損傷、大破と認定ーーー

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

『残念だったな。だけど、あたしをここまで追い詰めたんだ。大したもんだよ。』

 

「ちぃッ!!」

 

あの後、タリサのアクティブを砲撃戦で仕留めようとしたユウヤだったが、途中で突撃砲を破壊されてしまいそのまま近接戦に突入。

しかし、近接戦に於いて高い技術力を誇る彼女にそのまま地面へと押し倒されてしまったのだ。

現在は、彼女のアクティブの右腕に握られているナイフが管制ブロックへと振り下ろされようとしている。

 

『悪りぃがこの勝負、あたしの………』

 

『私たちの勝利ね。』

 

『へ?』

 

タリサが勝負宣言をしている途中、セリフを横取りされると同時に頭部と胸部に二発のペイント弾が命中した。

CPより通信が入る。

 

『アルゴス02、頭部及び胸部コックピットブロック被弾。致命的損傷により大破と認定。』

 

『んな!?』

 

突然の出来事に、その小さな口をあんぐりと開くタリサ。目は驚愕に見開かれている。

 

『よし、状況終了。全機帰投せよ。』

 

イブラヒムより作戦終了が告げられる。模擬戦の結果、ユウヤとステラのBチームの勝利で幕を閉じたのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「あーあ負けちまったよチクショウ!!一対一なら勝ってたのにぃ!!」

 

模擬戦終了後。

 

「大体、VGもちゃんと付いてこいよ!!」

 

「無茶言うなよなー。イーグルがアクティブに追いつけるわけないだろ?」

 

アルゴス小隊に割り振られた格納庫に、模擬戦に参加したメンバー+俺が集まっていた。

 

「ユウヤがタリサを狙撃しやすいポイントに誘導してくれて助かったわ。」

 

「おろ?お前らいつの間にそんな仲良くなったんだ?」

 

ブリーフィングルームの中じゃ、まだ名前で呼びあってなかったのに。

 

「あぁ。模擬戦開始前にちょっとな。」

 

「えぇ。中々有意義な時間を過ごせたわ。」

 

な、何だと!?もしかしてステラさん、もうユウヤに落とされたのか!?

 

「おいユウヤ!! どうやった、どうやってステラを口説いたんだ教えろテメェ!!」

 

「おいやめろ!! 肩を揺さぶるなこのロリコン!!」

 

「ロリッ!?………貴様ぁ!! 今1番言ってはならない事を!!

 

「おい!! どっから出したそのカタナ!?」

 

コイツ……人が真剣にどうしようか悩んでる事を軽々しく口にしやがって!!

ユウヤに対して刀を構えているとVGやタリサが宥めてくる。

というかタリサ、テメェも原因の一つだ。

 

「まぁまぁ落ち着けよトウヤ。大丈夫だ。皆アンタが幼女趣味じゃなくて

どちらかというと美人派だって知ってるからさ。」

 

「それなら良いが………」

 

「良いのかよ!?あと幼女言うなし!!」

 

いや、外見は完全に幼女体系だぞお前は。

 

「まぁ俺のロリコン疑惑は一旦放置しよう。というかさせてくれ頼むから。」

 

「現実から目を背けても意味ねぇぞ?」

 

「黙れタリサ。今から今日の模擬戦の反省するんだからお前は静かにしてろ。」

 

「それあたしも参加してたから!!模擬戦あたしも出てたから!!」

 

タリサがピョンピョン跳ねながら叫んでる。

あ、ヤベ。これクセになるわ。ユウヤ弄りと何か通ずるモノがあるな。

まぁ弄るのは後回しにしてだ。

 

「タリサ。今日のお前の敗因はズバリ、チームワークだ。ユウヤとステラは互いを信用

していたから、あんな最適なタイミングで狙撃が出来たり誘ったり出来たんだ。

それをお前は自分の事ばっかり考えてた所為で負けたと言っても過言ではないんだぞ?」

 

「グッ」

 

BETA戦に於いての基本は二機編成だ。オルタの武ちゃんみたいな独特の三次元機動

でない限り、二機じゃないとカバーしきれない場面が多くある。

ちなみに俺もたまに1人でシュミレーターやってる時に武ちゃんみたいな三次元機動

に挑戦してみたけど、やっぱ今のOSじゃツライね。動きが硬いし硬直がキャンセル出来ない

のが痛い。早くXM3でないかなぁ。

 

「ま、今回はトップガンに教えられたって事で。」

 

俺が考え事してたらVGに綺麗に?纏められた。

おい、まだ言いたい事あったんだぞ。別に良いけど。

 

「トップガンって言うなよ、マカロニ。」

 

「ま、マカロニ!?もしかしなくても俺の事か!?」

 

ユウヤが変な渾名をVGに付けていた。

どこらへんを指してマカロニ?もしかしてあのウェーブのかかった髪?

 

「あっはっはっは!! ま、マカロニだってさ!!チョーピッタリじゃねぇか!!」

 

俺はしっくりこなかったんだけど、タリサのツボにはどハマりした様だ。

腹を抱えて爆笑している。

 

「なに笑ってんだよ、チョビ。」

 

「そうだぞチョビ。」

 

「女の子がそんな笑い方しちゃダメよチョビ?」

 

「そうだぞ、はしたないぞチョビ。」

 

見事な連携技が決まった。

ちなみに上から順番にユウヤ、マカロニもといVG、ステラ、俺の順番。

それを涙目で否定するチョビ。中々嗜虐心をそそるね。

多分同じ事を考えいるのだろう。ステラもVGもニヤニヤしていた。

 

「お、もうユウヤの奴渾名付けたのか。」

 

「渾名?」

 

いつの間にか現れたヴィンセントが俺の疑問に答える。

 

「あぁ。コイツの特技なんだよ。気に入った相手に対しては必ず渾名をつけんのさ。」

 

「へぇ。んじゃあトウヤのは何なんだ?」

 

「あ、ユウヤは日本人に渾名つけないと」

 

VGがユウヤに俺の渾名を聞くが、それをヴィンセントが止めようとする。

 

 

「あ?んなもんロリコンに決まって」

 

「それ以上口を開いてみろ。頭と胴体が永遠にお別れする事になるぞ。」

 

まったく学習しないユウヤの首に刀を添える。

分かってくれたんだろう。何回も小さく首を縦に振っている。

うん。やっぱり意思表示って大丈夫だよな。

嫌なら嫌って示す事はなにも恥ずかしくなんかないんだよ。

 

ふとヴィンセントの方を見ると、何か超ビックリしていた。

何がそんなにおかしいんだ。

 

「ユウヤが、日本人に渾名を付けるなんて……。

輸送機の中であった事は一時的なモンだとばかり思ってたんだが………。」

 

あ、何だそういう事ね。

確かに最初の嫌われっぷりは酷かったからな。

 

「あぁ。まぁ日本人は未だに嫌いなんだけどさ。

何て言うかコイツの場合、日本人というカテゴリーに当てはめる事自体が間違えてる様な気がしてさ。何となくテンションとかがアメリカ人とかに近しいモノを感じんだよな。」

 

何だろう。仲良く出来るのは良い事なんだけど、イマイチ素直に喜んで

いい評価じゃないような気がする。

 

「そ、そうか。良かったなトウヤ。お前は特別なんだとよ。」

 

「別に野郎の特別になれても嬉しくねぇよ……」

 

「ねぇ。私のは何なのかしら?」

 

俺をスルーしてステラが自分の渾名をユウヤに聞く。

だが、俺は見た。

VGの『俺今最高に良いの思いついた』みたいな顔を。

 

「やっぱりジャイアントおっぱ「黙りなさい」はい。」

 

首を掴まれて一瞬で鎮圧された。

そりゃ怒るわ。流石の俺でも言わないわ。

言わないだけで心の中で思うけどな!!ドヤぁ

 

「何考えてるのかしらトウヤ……?」

 

「いいえ何も?」

 

手を肩に置かれただけなのに超怖かった。

てか何で俺の考えてる事が分かったんだ?

 

「ヴ、ヴィーナスかな?」

 

「あら嬉しい。」

 

ナイスフォローだ、ユウヤ。

気遣いの出来る奴はモテるぞ。

 

そこへ、復活したVGがパンパンと手を叩く。

 

「まぁ気を取り直しまして。

 

ようこそ、アルゴス小隊へ。

歓迎するぜ、トップガン?」

 

「あぁ。こちらこそよろしく頼む。」

 

改めて握手をしていくユウヤとアルゴス小隊の面々。

これで完全に部隊へは馴染めただろう。

 

さて後の問題は、コイツの『日本嫌い』だな。

ここを何とかしない限り【XFJ計画】は失敗する。

それに、多分というか絶対に唯依とユウヤは衝突するだろう。

だけど、これに関しちゃ俺は介入しちゃいけない。

本人達で乗り越えないと意味が無いからな。

 

さてさて、どうなる事やら………………。

 

 




約9000文字です。長かったよ今回は。

あ、言い忘れてましたが、現時点で通算UAが5000、お気に入り登録数が100を越えました。
このSSを見てくださっている方々に、改めて感謝の思いを伝えたいと思います。
本当にありがとうございます!!

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