Muv-Luv 〜赤き翼を持つ者は悲劇を回避せんがため〜   作:すのうぃ

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タイトル通りです。投稿が遅れて本当にすいません………


10話 赤い衣纏いて

任務の概要を説明します。

今回のクライアントは篁 唯依中尉です。

内容は、仮想敵アクティブ・イーグル並びにストライク・イーグル二体との【JIVES】を用いての模擬戦。

ユウヤ・ブリッジス少尉へ吹雪の限界機動を見せつける事が目的となります。

ただでさえレベルの高い衛士が揃っているのです。損傷は免れないでしょうが、機体は明日も使いますのでクライアントからはなるべく壊さぬように指示が届いています。

 

ブリーフィングは以上です。

模擬戦の結果には篁中尉も期待しています。良い演習結果をお待ちしていますよ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「いやー!! ひっさしぶりにこの管制ブロックに座るわー!!」

 

翌日。

 

その身に赤い衛士強化装備を纏った冬夜は、現在吹雪の管制ブロック内にて機体の最終チェックの真っ最中だった。

 

「なぁ、あんた本当に大丈夫か?いくらインペリアルとはいえ、戦術機3機が相手じゃ分が悪いんじゃねぇの?」

 

冬夜がタブレット型の端末を操作していると、ヴィンセントが管制ブロックに身を乗り出しながら話し掛けてくる。彼には、いつも吹雪の整備をしているからという事で頼んでいたのだった。

 

ヴィンセントの問いかけに手元にある端末を見ながら冬夜は答える。

 

「んー。大分マズイな。」

 

「え?」

 

意外そうな表情を浮かべるヴィンセント。

 

「いや、何を期待してたのかは分からんけどさ。よく考えてみろ。接近戦のタリサに中距離のVG、遠距離のステラだぞ?見事にバランスとれてんじゃん。かなりむずかしいぞ、これは。」

 

言いながらヴィンセントに端末を押し付ける。

 

「まぁ俺が吹雪に乗る本来の目的はユウヤに『吹雪はこんな挙動も出来るんだぞ』って事を見せつける為だからな。別に勝つ必要は無い。ーーーーーーーと言うとでも思っていたのか?」

 

「いや、別に思ってねぇけど………」

 

「やるからには勝つ。勝って斯衛の実力を見せる。んでもってあのダブル中尉の鼻を明かす。いや、明かすどころじゃないな。もう『けしかけてすいませんでしたー!!』って言うレベルまでやる。絶対にこんな難題吹っかけた奴等を俺は許さない…………!!」

 

「完全に私怨じゃねぇか……」

 

何を当たり前な事を言ってるんだ、と言わんばかりの顔をする冬夜。彼は売られた喧嘩は充分吟味した上で買うタイプなのだ。今回はそれに値すると思ったから、こんなに燃えているらしい。

 

「てかお前の整備スキルやばいな。俺の強化装備からデータ引っ張ってきたのさっきの話だろ?なのに機体反応の誤差がほぼ相殺されてるとか、もしかしてお前秀才?」

 

「おう!! こんな事できんのは、俺くらいだろうよ!!」

 

へへん、と胸を張るヴィンセント。

確かに、彼の整備士としての技術力と、他国の戦術機のノウハウを吸収しようとする意欲は素晴らしいの一言に限る。

 

「………よし、いけるな。じゃあ行ってくるわ。」

 

「おう!! 頑張って来いよ!!」

 

ヴィンセントに見送られながら冬夜は管制ブロックを閉鎖、吹雪を起動させる。それとほぼ同じタイミングでCP将校から通信が入った。

 

『こちらCP。アルゴス小隊各機並びにイーグル01は、カタパルトに移動して下さい。』

 

『アルゴス02了解』

 

『アルゴス03了解』

 

『アルゴス04了解』

 

「イーグル01了解」

 

跳躍ユニットを用いずに主脚で移動、カタパルトに脚を固定する。

 

発進許可が出るまで待機していると、通信が入った。

 

『へっへーん、今日はあんたにククリナイフの実力を見せてやるぜ!!』

 

と、無い胸を張って宣言するタリサ。

 

するとヴァレリオが、

 

『おいおい、んな事言いながら今度は勝手に突っ込むんじゃねぇぞ?』

 

『そうよタリサ。あなた、ただでさえ皆から敵に突っ込む様子をイノシ…………いえ、何でもないわ。』

 

『おい!! 何であたしが突っ込む事が前提で話してんだ!! つかステラ、今何を言いかけた!? あたしは皆に何て裏で呼ばれてんだ!?』

 

ステラが口を噤んだワードに物凄く反応するタリサ。

 

ちなみに彼女の言った事は冗談じゃなかったりする。

 

「まぁそう怒るなよタリサ。陰口の一つや二つ、言わせておけばいい。」

 

うがー、と唸る彼女を苦笑を浮かべながら宥める冬夜。

 

だが彼にも禁句というものはある。それこそ、目の前で言われれば即座にそっ首貰い受ける状態になる事間違いなしの。

 

『あ、そういやぁこの前どっかの格納庫で整備兵がトウヤの事をロリコンって』

 

「VGそいつの事を詳しく教えろ、後でぬっころしてくる。」

 

ヴァレリオの言葉を、あくまで笑顔を浮かべているつもりで聞いている冬夜。

だがその眼には光が灯っていなかった。この数日で彼は自分の事を『ロリコン』と言われると無条件に殺意を憶えるようになってしまったのだ。

というか、先程まで陰口なんぞ言わせておけ、と言っていた人物とは思えない台詞である。

 

『い、いやー。俺もあんま詳しい事はわかんねぇかな?』

 

今の奴なら本気で殺りかねん、という自分の直感にしたがって口を開くヴァレリオ。実際、衛士強化装備には体温調節機能があるから寒さは感じない筈だというのに彼は若干震えていた。

 

『こちらCP。発進シークエンス、オールグリーン。』

 

冬夜から物凄い視線を向けられていたヴァレリオは、この時聞こえたCPの通信はさながら天の助けの様に思えたと後に語っている。

 

「チッ」

 

対して冬夜は舌打ち。

そこまでして噂を消したいのであろうか、彼は。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「いいか、ブリッジス少尉。吹雪の挙動をしっかり見ておけ。」

 

「分かってますって中尉殿。ま、デタラメ練習機がアクティブとイーグル相手にどこまで出来るかなんて火を見るより明らかですけどね。」

 

「…………案外、貴様のいうデタラメ練習機が、その3機に勝つかもしれんぞ?」

 

「これはこれは。まさか中尉殿のお口からジョークが聞けるとは。意外でしたよ。」

 

「…………まぁいいだろう。これ以上貴様と話をしていても無意味だろうからな。」

 

「以心伝心で何よりです。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

「さてと、やりますか。」

 

彼我の戦力差は一対三。

更に相手は凄腕衛士。

 

勝率はかなり低くなるだろう。

 

最も、正攻法で挑むならという話だが。

 

「その為の突撃前衛装備なんだよな。」

 

冬夜の駆る吹雪の装備は、長刀二振りに突撃砲一丁と92式多目的追加装甲の突撃前衛装備。

 

僚機がいる場合は強襲前衛装備なのだが、今回は味方機が一機も存在して居ない為、盾の付いているこのパッケージを選択したのだ。

 

「んじゃま、行動開始っと。」

 

センサーに反応が無い事を確認すると、彼は主脚で移動を開始する。もちろん静音モードにするのも忘れない。

 

ビルの隙間を抜いながら歩くと、やがて索敵センサーに感ありの表示。

右手のビルに身を隠すとほぼ同時に視認可能圏内に二機のアクティブが現れる。ステラのストライクが見えないのは、恐らく狙撃ポイントを探す為だろう。

二機編成のアクティブは突撃砲を構えながらの警戒態勢。奇襲がくる事を警戒している様だ。

 

やっぱ一筋縄じゃいかねぇか、とそんな敵の様子を見た冬夜はため息。まぁ大体そうだろうなとは考えていたようだが。

 

ゆっくりと前進するアクティブに対して冬夜は左腕の92式多目的追加装甲のスパイクモードをセレクト。すると、盾の先端部分が稼働してちょうどLの様な形になる。

そして吹雪の機体を半身の姿勢にさせて、左腕は腰だめに。

 

後は時が来るのをただ待つのみ。

 

「……………………」

 

ふと、冬夜は操縦桿を握る手に力がこもっている事に気付いた。

左胸の奥からも激しいノックが聞こえる。

どうやら軽く興奮している様だ。

 

新兵でもあるまいし、と冬夜は苦笑。

だが同時に、この一ヶ月余りの間ずっと移動準備やらデスクワークやらで中々管制ユニットにはいる機会がなかった事を思い出す。

なら自分が興奮するのも仕方ない、こんなに長い期間戦術機に乗らなかったのも初めてなのだから。

 

ピピッという警告音。

吹雪が敵の接近を知らせてくれる。早く戦わせろ、と言わんばかりに。

 

そんな吹雪の声に冬夜は応えるかの様に静音モードを解除、戦闘モードにシステムを切り替える。

 

さぁ、戦いを始めよう。




何か文章がつまらん。

次回はなるべく早く投稿しますので、よろしくお願いします。

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