「ヒャッホー!! 転生だー!! ハーレムだー!!」
「そこは主の努力次第ぞ」
ここは神々の住まう天界。そこで1人の人間の魂の転生が行われようとしていた。本来閻魔を通して行われるものだが、一部例外もある。その例外が神々の干渉による転生だ。だがこの権利を持つ神は少ない。実はこの神、その権利を持つ前であった。
「ちゃんと条件叶えてくれるんだよな?」
「世界はリリカルなのは。高町なのはの親類。そしてイメージを現実化する力であったな。問題ない。では飛ばすぞ人の子よ」
「サンキュー!!」
人間の魂は光に包まれて消えていった。すると先程まで威厳のありそうな顔をしていた神は楽しそうに口角をつり上げた。
「転生っておもしれぇな! 全く上位神様達はこんなおもしれぇ事をこそこそとやっていたのかよ。さぁて、次はどんな奴を殺して転生させてやろうかな」
「ふぅん、さっきの子は君が殺したのかい?」
「へっ…………ゼウス様!?」
「答えなさい。僕の前で嘘はつけないよ」
「うぐっ、は、はい。私が殺しました。しかしですね、責任を持って転生させたので」
「転生は遊びじゃないんだよ。転生させたならばその結末を最後まで見届けなくてはいけない。君はそれが分かっているのかい? まあそこは転生初心者は理解出来なくてもいい。問題は君が命を奪ったという事だよ」
「で、ですが、他の神々も人間を殺す事はよくある事で」
「その理由は君だって知っているはずだよ。神が人の命に干渉するのは何かしら世界のバランスを保つためだ。貴様のように自己の欲求を満たすためではない!! その生、一度微生物からやり直せ!!」
「ひっ!?」
ゼウスが腕を振るとそこには先程まで居た神の姿は消失していた。溜め息を吐くゼウスの後ろから秘書の天使がゆったりと歩み寄ってきた。
「先程の神はミドリムシに転生を果たしたようです」
「ありがとう。全く、最近神になったばかりのはああいう馬鹿が多くて困る。それであの神が転生をさせた子は?」
「未だ器に向かい移動中です。引き戻す事は不可能ですが、干渉は可能です」
「うん、分かった。どれどれ…………こりゃ酷い。転生先はstsから25年後、高町なのはの孫じゃないか。確かに親類ではあるけど。これは今からじゃ変更出来ないな。せめて能力だけでも強化しないと。どうせあの馬鹿の事だから…………やっぱり。イメージを現実化するって、材料集めたらイメージした物が作れますよレベルじゃないか。彼が想像した通りに強化しておこう。これで良し」
「お疲れ様でした」
「お疲れ。そういえばこの子の両親となる者については見ていなかったな。肉体については親を頼りにするしか……………………うそ~」
「どうなさい…………これはこれは…………」
転生先の両親を確認したゼウスと天使は文字通り開いた口が塞がらなかった。転生先の母親は一条叶。あの要の娘だ。いくら適当な転生だったとはいえ、どれほどの確率ならばこのような結果に至るのか。ゼウスは頭を抱えながらも要へと連絡をした。
「要君、聞こえる? 大事な話があるんだけど…………」
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とある大きな病院の一室にて叶は大きくなったお腹を擦りながらベッドに座っていた。近くには夫であるユウトがいる。とても静かな夫婦だけの空間。そんな部屋の扉が静かに開かれる。
「ようド腐れ姉上、ユウト兄上に迷惑かけてねぇか?」
「光ちゃん! 来てくれたの。お仕事が忙しいから無理だと思ったわ」
「昨晩までに全部終わらせてやったさ。漫画家なんてのは締め切り守りゃ楽な仕事よ」
「週刊誌3つと月刊誌4つを掛け持ちしている男は言う事が違うわね。よっ、次元世界一!」
「陣痛で大変かと思いきや、存外に元気ですねお姉様」
「すみれちゃんまで! 今日は遠くに行っている予定だったんじゃ」
「大切な甥か姪が産まれるんですもの。仕事なんて休みますわ。それに私の代わりはいくらでも居ますもの」
「勝利の女神がよく言うぜ。すみれがいねぇあのチームが勝てんのかよ」
「いつまでも私に頼っていてはいけませんわ。たまには突き放さないと」
やってきたのは叶の弟妹である光とすみれ。光は先程会話に出たように漫画家を、すみれはあるチーム専属のレースクイーンをしている。ちなみに叶とユウトは管理局員である。
「しっかし脳筋父上の姿がねぇとは意外だな。初孫なんだし一番にここに来ると思っていたんだがな」
「なんでも神様に呼ばれたんですって。流石転生者ね」
「今でもお父様が転生者というのは信じがたいですわね」
「あの脳筋父上だ。不思議でもなんでもねぇっての。漫画よりひでぇ設定だがな」
「そうよね。あいたっ! 陣痛きたわ。破水もしそうな感じ」
「じゃあコール押すね」
ずっと本を読んでいて口を開かなかったユウトがのんびりとナースコールを押す。慌てないのはこれ以上に大変な事に常に巻き込まれているからなのだ。実に可哀想である。
「お待たせしました。どうしましたか?」
「かなり陣痛がきまして。あっ、破水した」
「落ち着きすぎだろ」
「痛いのとかは慣れてるの」
「あはは…………分娩室に行きましょうか。破水しているならベッドのまま行きましょうね」
「はーい」
「頑張ってね叶」
「元気な子を産んで下さいね」
「ガキのために安産である事は願ってやる」
「光ちゃんツンデレ~、ったた。陣痛が激しくなってきたわ」
「急ぎましょうね」
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神様も人が悪い。俺の初孫誕生って時に呼び出すなんてな。どうでもいい事だったら暴れちまおうかな。
「変な考えを起こさないでおくれよ」
「冗談ですよ。神様に迷惑はなるべく掛けませんから。それで何か用ですか? 調子に乗った転生者や神を狩る仕事ですかね」
「それは僕の管轄だ。本当に忙しい時にしか頼まないさ。ただ君の孫についてだ
「何でしょう?」
「これから産まれる子は転生者だ」
「そうですか」
「思ったより驚かないんだね」
「まあ、驚く事でもないですね」
俺みたいなイレギュラーの子孫にゃいつか変なのが産まれるのくらい覚悟はしていた。まあ叶や光、すみれも十分に変な子だよ。なんであの子達はORTの力を簡単に扱えてしまうのか。光に至っては武装・ORTを使って高速で漫画を描くしな。
「それに転生者になるのが確定するなら死産はないんでしょう」
「そんな可能性があったのかい」
「ええ。叶の担当医をやっているナズナちゃん、なのはとユーノの長女で命を理解する事に長けた子なんですが、その子が死産の可能性が高いと俺にだけ教えてくれましてね。いやはや、これで家族が悲しむ姿を見なくて済みます」
「ならこの間違いだらけの転生も悪くはなかったというところかな。そうだ、産まれてきた子がある程度成長したら謝罪に行かせてもらうよ」
「? よく分かりませんが、待っています。ではそろそろ行きます。早く孫の顔を見たいので」
「なら病院まで飛ばすよ。こんなところまで悪かったね」
っと、いつ体験しても神様の転移は流石の一言だな。ただ転移させるだけじゃなく周りの生き物に一切の違和感を与えない。元々そこに居たものとして周囲に認識させている。
「うおっ!? 脳筋父上いつの間に!?」
まあ一部の奴には通じないようだけどな。
「ただいま。叶はどうなっている?」
「あ、ああ。ついさっき出産が終わったところだ。もう会えるぞ」
「よしよし、無事ならそれでいい。んじゃ可愛い可愛い孫の顔を見ようか」
部屋に入るとユウト君にナズナちゃん、なのはにユーノにすずかが居た。おい、光は分かるがすみれはどこだ? あの子お姉ちゃん子なのに。あっ、なんでかなのはが苦手だったな。
「遅いですよ、あなた」
「悪かったよ。おお、可愛いな。早く大きくなって俺より強くなれよ」
「要は気が早いなぁ」
「ユーノさん、気が早いとかの問題じゃないと思うの」
どんな形であれお前は俺の孫だ。立派に育ってくれ。
次回作もよろしくお願いします。