「お先に失礼します」
「お疲れ様すずか君。家族とゆっくりしてくるといい」
「ありがとうございます室長」
今日は結婚記念日だから早めに仕事を上がらせてもらえちゃった。忙しい時には要さんに夕食の準備なんかをお願いしちゃっているし、今日は私が頑張っていいもの作るよ。
「大きくなったわねすずかちゃん。やっぱり人間の成長は早いものね」
「えっ、ゆ、紫さん! お久しぶりです!」
「ええ、お久しぶり」
私の後ろに突如として現れたのは金髪でゴスロリっぽい服を着た女性。幻想郷という世界の妖怪である八雲紫さんだ。以前はちょっと顔を合わせた程度だったのに覚えていてもらえたんだ。
「今日はどうしてこちらに?」
「少しおめでたい事があったから、貴女達にも幻想郷へ来て祝ってもらいたいのよね」
「達って、要さんも一緒ですか」
「貴女達の子供もよ。先に行っているから残っているのは貴女だけよ」
「そうなんですか。せめて私に一言言ってもらいたかったですね」
私と要さんの子だからいつかはこういう経験もするっていうのは覚悟していたけれど、なるべく知っておきたかったな。今回は要さんが一緒だから五月蝿く言うつもりはないけどね。
「ごめんなさい。仕事中だったから気を使っちゃったのよ」
「それなら構いません。じゃあ幻想郷までお願いしますね」
「お任せあれ」
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八雲め。面倒な事をしてくれる。しかも今回は比較的善意による行動だから怒るに怒れない。
「だぅ」
「ムスッとしてるから光ちゃんも不機嫌だよリュウおじさん。はいニッコリ」
「顔を引っ張らないでくれ」
何故俺が要の子供の世話をしなくちゃいけないんだ。何故要は霊夢と台所に立っているんだ。何故すずかちゃんだけこんなに遅いんだ。
「こんにちはー」
「マミィだ!」
「やっと来てくれたのか…………入ってきてくれ。そして助けてくれ」
「助けてって、とにかくお邪魔します。あれ、リュウさん、要さんは?」
「台所だ。それよりこの子達を」
「遅かったじゃねぇか。リュウが子守してくれるみたいだから一緒に料理完成させちまおうぜ」
「本当ですか。リュウさんありがとうございます」
「あ、いや…………」
行ってしまった…………俺はこのまま子守をしていないといけないのか。
「リュウおじさん、あそぼー」
「何をするんだ?」
「こっくりさん!」
「それはいけない」
「えーっ」
詳しくは知らないが、あれも立派な降霊術らしい。そんな事をやりたがるなんて、要は子供にどんな教育を施しているんだ。文句の1つでも言う必要がありそうだ。
「じゃあじゃあ、お絵かき!」
「まあそれなら。紙と筆を用意するから静かに待っている事」
「はーい」
「あい」
返事だけは元気がいいな。さてと、絵を描くだけなら適当な紙でいいはず。問題は筆だよな。この神社に色鉛筆やクレヨンとかいう外の道具はない。ただの鉛筆ならあるが、子供がそれで満足するのか。ここは本人に聞くのが早い。
「こんなのしかなかったけれど…………」
消えている、だと!? 落ち着け。気配を探ればすぐに見つかる。静かに待っていろと言ったのに。やはり要の子か…………んん? おかしい、気配がない。幼い少女と赤子が俺から完璧に気配を隠すなど不可能だ。
「ドーンッ!」
「だーっ!」
「おっと」
背後から飛び込んできたか。受け止めるのは容易い。しかし何故背後から
「ハァイ、驚いたかしら?」
「…………八雲ぉ!! またお前か!!」
「きゃーこわーい」
チッ、スキマで逃げたか。今はこの子達が居るから追わずにおいてやる。
「静かに待っていろと言わなかったか?」
「スキマにいたから静かだったでしょ?」
「そういうのは屁理屈というんだ」
「ご飯出来たわよ」
「わーい!」
「……………………」
文句は親に言うとしようか…………はぁ…………
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「そうかそうか! まあ子守は大変って事だ!」
「親の教育がなっていないんだろう。全く」
「叶、光、リュウさんにごめんなさいは?」
「ごめんなさい」
「あぅ」
「すずかもすっかりママねぇ。いつの間にか私より年上だし」
食卓には神社では普段は並ぶ事のない洋食がところ狭しと並べてある。大半が要とすずかによって作られたものだ。
「しかしリュウが結婚とは。いやまあ、いつかはすると思っていたんだがな」
「問題は霊夢さんと衣玖さん、どちらを選ぶかでしたけど」
「告白はリュウからしてくれたのよ」
「…………そりゃ意外だ」
「それはどういう意味だ?」
「そのままの意味だ。それより祝い酒だ。店から高級品を大量に持ってきたんだ」
話を逸らすかのように要は強引にリュウのコップへと酒を注ぐ。要が高級品と言うだけあり、味はリュウも満足いくほどのものであった。
「洋食も色々とあるのね。咲夜が作るのもいいけど、こういう雑なのもたまにはいいわね」
「おい、俺のローストビーフが雑とはどういう事だ」
「焼いて冷ましただけじゃない。あ、ソースとすずかの料理は作り込んであるのは認めるわ」
「むむむ」
「ダディはざつ~♪」
娘にまで雑と言われて凹む要を慰めるすずか。それを見て笑う霊夢とリュウ。なんとも微笑ましい光景である。
「もう雑でも何でもいい! 飲んで忘れてやる!」
「あなたは飲んでも酔いにくい体質でしょう。ほどほどにして下さいね」
「めでたいんだから気にするな。おっと、祝いの品は酒だけじゃねぇぞ。ほれYES/NO枕」
「枕?」
「ただの枕だな」
「あなた。少し話があります」
「あ、まっ、待てすずか。これはちょっとしたお茶目という奴で…………」
YES/NO枕の意味が分からず首をかしげる霊夢とリュウを余所に、すずかは要を連れて外へと歩いていった。その後2人は食事が終わるまで帰ってこなかった。
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食事から時間も経ち、子供が眠る時間という事ですずかと子供達は先に外へと帰っていった。残っているのは俺だけだ。
「よっ、隣座るぜ」
「ああ」
縁側で空を眺めていたリュウの隣に座って酒を開ける。月見酒もいいもんだ。満月だったら最高なんだがなぁ。
「まだ飲むのか」
「飲むのが一番ストレス解消になるからな」
「ほう、お前にもストレスがあるんだな」
「あるさ。もうお前と全力で殺し合えない。これがストレスだよ」
互いに一生守るべきものが出来ちまった。幸せな事なんだが、あいつらを置いて死ぬなんて事が出来ない。リュウだって同じはずだ。
「あーあ、決着つかずか。いや負けてるのは俺だったな。ビーストモードだって完璧に扱えるようになったのに」
「何かは知らないが残念だったな」
「子供に任せるか…………」
「物騒な事を考えるな。俺は子供にそんな事はさせないからな」
「冗談だっての」
流石に子供にまで勝負を持ち込むつもりはない。俺にだってそれくらいの常識はあるさ。むっ、もう酒が切れちまったか。いい時間だし帰ろう。
「俺はもう帰るぞ。神社の裏手に酒樽置いておいたから萃香にでもくれてやってくれ」
「分かった」
「八雲紫、頼む」
「畏まりましたわ」
このスキマというのはいつ見ても気味が悪い。元々こういうものなのか八雲紫がデザインしたのか。後者だとしたら趣味悪いよな。
「じゃあなリュウ。また機会があれば会おうや」
「そうだな。また会おう」
アリサ「実質今回で最終回みたいな感じらしいですよ」
シャマル「えっ、じゃあ次回は?」
アリサ「次回作の前振りというか、次回作への繋ぎみたいなもののようです」
シャマル「じゃあ私達の出番もこれで終わりね」
アリサ「まあ深く考えなくてもいいですよ。では今日は何の日お願いします」
シャマル「本日4月4日は『沖縄県誕生の日』。沖縄の誕生日ね」
アリサ「沖縄はいいですよね。修学旅行でも定番ですしね」
シャマル「作者が行った時には10月で30℃近い異常気象だったみたいよ。でも作者が沖縄から離れると20℃前後に収まったとか」
アリサ「松岡○造が居たんじゃないですか。ではまた次回」