チートじゃ済まない   作:雨期

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今回はバカまる様の『転生?まあ、適当に生きるよ。
Ⅱ 』とのコラボになります。


コラボ第12話

 社長たる者、支店の現状をその目で確認しなくてはならない。そんな言葉をどっかの記事で読んだので早速実践してみる事にした。背中には息子の光、隣には叶を連れている。どう見てもただのお父さんだ。警戒されるはずがない。

 

「いらっしゃいませ!」

 

 元気はいいな。この店舗は食事も出来るからこの雰囲気でいいだろう。基本的に各店舗の店長に育成方針は任せている。ここは上手くいっているようだ。

 

「! 要、こっち来いよ」

 

「…………なんでお前が居るんだよ、輪弥」

 

「お前に会いに来たんだけど、娘がお腹減ったって言ったからさ。それにしてもお前はいつの間にベビーシッターなんて始めたんだ?」

 

「俺の子だ。こっちは娘の叶。背中のは息子の光だ」

 

「一条叶です!」

 

「元気な子だな。俺は佐藤輪弥だ。ほら、このはもご挨拶」

 

「うりゅ、さとうこのはです!」

 

「よろしく、一条要だ」

 

 いい娘じゃないか。歳も叶と近そうだし、良き友になってくれるといいな。

 

「あの、ご注文をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

 

「ん? ああそうだな。叶はどうする?」

 

「どれでもいいの?」

 

「叶の好きにしなさい」

 

「じゃあ子牛のリゾット! それとね、グレープジュース!」

 

「なら俺はTボーンステーキ4ポンドと燻製盛り合わせ、ライスは大盛、シーザーサラダに一番高い赤ワインを1本。以上で」

 

「か、畏まりました」

 

「お前食い過ぎだろ」

 

「そうか? 筋肉を維持するなら食わないといけないからな」

 

「そんな腕してまだ筋肉を気にするのか」

 

「なんだ分かったのか」

 

 ある程度の実力の持ち主には簡単に見破られるな、この義手。まあ日常生活に不自由しなけりゃ問題ない。しかし聞き捨てならない事を言いやがったなこいつ。

 

「お前は筋肉を分かっていないな。ここで1つ講義してやろう」

 

「嫌だよそんな汗臭そうな講義は」

 

「黙れ能力主義者め。いいか、筋肉はてめぇみたいなチートと違って誰もが持っている。技術のように才能もいらない。鍛えたら鍛えただけ応えてくれるのが筋肉だ。鍛え上げた筋肉は鎧にもなり、ゆるものを屈服させる矛にもなる。物理法則だって筋肉でねじ曲げられる」

 

「いやそれはおかしい」

 

 全く、チートのくせに常識に囚われてるんじゃねぇよ。第一てめぇのよく分からん能力も筋肉で突破した事があるだろう。覚えてないのか。

 

「お待たせ致しました、って社長!?」

 

「んあ? なんで店長であるお前さんが配膳してんだ」

 

「指導の一環ですよ。私自身が働く姿を見せないと言葉に説得力がないでしょう」

 

「いいんじゃないの。ちなみに俺は抜き打ち視察だ」

 

「社長の考えは突発的で困ります。まあそれはいいとして、ご注文の品物になります。ごゆっくりどうぞ」

 

 見た目は素晴らしい。まずはワインから…………いい。自画自賛だが、俺が選んだだけあって美味い。問題は料理だ。こっちは俺は関わっていないしな。むて…………

 

「美味しいねダディ」

 

「ああ、合格点だ」

 

 酒が進むいい味だし、飲まない人でも十分に満足出来るだろう。これだけやっているなら臨時ボーナスなんかも考えていいかもな。

 

「要ってこの店の社長だったんだな」

 

「おじさんすごいんだね!」

 

「こんなの趣味さ。後で俺が店長やってる本店に来るか? ここよりいい酒があるぞ。ソフトドリンクだってある。まあ主にワインを作る過程で出来たグレープジュースだけどな」

 

「だから叶ちゃんもグレープジュースを頼んだのか。美味いのは知っているって事だ。せっかくだし、本店も寄らせてもらおう」

 

「ねぇダディ、私このはちゃんと遊びたい」

 

「勿論いいぞ」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 食後は要と輪弥は本店に向かい、叶とこのはは本店からも見える公園で遊ぶ事にしたようだ。

 

「なにしよう?」

 

「うみゅ~、おままごと!!」

 

「いいよ! じゃあ私がダディでこのはちゃんがマミィね!」

 

「わかったの!」

 

 実に女の子らしい遊びを選択したようだが、何やらいきなり問題が発生したようだ。

 

「パパ~、ごはんできましたよ」

 

「スクワット100、バーベル300したら食べるよ」

 

「うにゅ!? だめだよすぐにたべないと! そんなこというパパは、ディバインバスター!!」

 

「わわっ!? なにするの!?」

 

「すぐにたべないとだめーー!!」

 

「トレーニングしてからだよ!!」

 

 どうやら各家庭の違いが如実に出てしまったらしい。ディバインバスターと叫びながら砂かけをするこのはと逃げる叶。周りから見れば喧嘩のように思えてしまうが、彼女達はこの状況をそれなりに楽しんでいるようだ。一通り追いかけっこが終わると、今度は食事シーンへと移った。

 

「「いただきまーす」」

 

「きょうはカレーとハンバーグとサラダですよ~」

 

「お酒は?」

 

「? ないよ」

 

「ダメ! ダディはお酒を飲むの!! ウィスキーでもビールでもワインでもワンカップでもいいからおーさーけー!!!」

 

「うにゃ~……」

 

 なんだか噛み合わない2人のおままごとを本店から眺めていた父達は頭を抱えていた。距離があっても会話が聞こえるのはチート故致し方なし。

 

「子供ってのは大人をよく見ているな…………」

 

「恥ずかしいくらいに…………」

 

「お前のとこは奥さんが旦那に魔法をぶっぱなすのが日常なのか? 教育に悪いぞ」

 

「そっちだってトレーニングと酒漬けの毎日かよ。最悪だな」

 

「俺のは趣味を兼ねた仕事だ。トレーニングだって管理局の民間協力者として必要な事だ。そういえばここにディバインバスターを連射可能にするガトリングシステムというのがあってな」

 

「ガチでやめて下さいお願いします」

 

「どんだけ怖いんだよ。しかしあの子達もほどほどにしてもらいたいもんだ。これ以上やられたら胃が痛くなりそうだ」

 

 父達の心配を余所におままごとと言う名の家庭事情暴露は更にエスカレートしていく。

 

「パパはおにんぎょうをあつめないとだめなの!!」

 

「マミィはもっとあやしいお薬を作るんだよ!! それにダディはお人形なんて集めないよ!!」

 

「うりゅー! ママだってへんなおくすりはつくらないもん!!」

 

「じゃあ何するの!」

 

「パパとベッドでいっしょにあそんでるよ」

 

「あ、同じだ! なんだかはだかになって、チューして」

 

「「ストーップ!!!!」」

 

 流石にいけない話にまで発展したところで父達のストップが入った。そんな話を公園でされては親の教育が疑われてしまう。並行世界から来た輪弥はともかく、要は深刻だ。

 

「さあこのは、そろそろ帰ろうか」

 

「ふみぃ、もうかえっちゃうの」

 

「叶もお勉強の時間だぞ。やらないとマミィに怒られるぞ」

 

「あう、はぁい」

 

「なあ要、これから夜は気を付けようぜ」

 

「はは、同感だ…………」




アリサ「恥ずかしい事を見られていたのに気が付かないなんてそれでもチートか!!」

シャマル「ギャグだからよ!!」

アリサ「なるほど!!」

シャマル「ちなみにアリサちゃんに聞きたいんだけど、アリサちゃんは叶ちゃんになんて呼ばれているの?」

アリサ「アリサちゃんですよ。いい歳ですがちゃん付けされると嬉しいものです」

シャマル「私もちゃん付けよ。叶ちゃんってあんまりおばさん呼ばわりしないのよね。凄いいい子よ」

アリサ「でも噂だと未婚の女性はちゃん付けだとか…………」

シャマル「…………本日3月25日は『電気記念日』よ」

アリサ「現実から目を反らさないで下さい」

シャマル「私だって、私だって相手がいればねぇ!! アリサちゃんだってそうでしょう!!」

アリサ「今は仕事が恋人ですから」

シャマル「それ、婚期逃すわよ」

アリサ「ふっ…………では次回もお楽しみに」

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