行き着く先~』とのコラボになります。
ふぅむ、最近はミッドの酒の出来が悪いな。気候がかなり不安定になっているから原材料の質が悪くなっているんだろう。こればっかりはしょうがないな。暫くミッドの酒の仕入れは控えるか。他の店舗にもそう伝えておこう。
「……………………はぁ」
今の溜め息は酒によるものじゃない。さっきから店の外を彷徨いている奴が気になって仕方がないからだ。この気配は知っているが、あえて何も言わない。入る入らないはあっちの自由だしな。でもあんまりぶらつかれると営業妨害になるかもしれないから投げ飛ばすぞ。
おや、うちのお姫様が帰宅されたようだ。外の奴と話しているみたいだな。この動きだと店に入ってきそうだな。
「ダディ! お客さま!」
「ありがとう叶。んでてめぇは何突っ立てんだ。早く入れよ」
「本当に要の店なんだ。というか子供なんていつの間に」
「てめぇに報告する義務なんてねぇよ。とりあえず座れ。茶くらいは出してやる」
「ダディ、この人お友だち?」
「敵だよ。叶はお部屋に戻っていなさい」
「ちげぇよ!? えっと叶ちゃん、俺は緋凰紅莉だ。敵じゃなくて友人だから誤解しないでくれよ」
「そうなんだ!」
殺し殺されの戦いをする友人が居てたまるかってんだ。しかしなんで並行世界のこいつがこっちに来てるんだ。なんか狐と猫も一緒に居るし。
「ほれ粗茶。狐と猫もいるか?」
「わざわざ粗茶って言うな。それと久遠とリニスな」
そんな名前だったっけ。ってか狐は鏡と一緒だったのと同じ名前か。あんまり思い出したくないんだけどな。
「今回の目的は? 戦うならやってやるぞ。ただ最近運動不足だから力を上手くコントロール出来ないかもしれないぞ」
「止めてくれ。そりゃちょっとはやろうと思っていたけど、今のお前と俺じゃあ実力差がありすぎる。それにこっちに来た本来の目的は御祝いだからさ」
「祝う?」
「そっちの神に『めでたい事があったから来てくれ』って言われたんだ。それなりの付き合いもあるから断れないじゃん」
神様もお節介だなぁ。でもまああの人、いやあの神も俺を祝福してくれると考えるとかなり幸福者だな。がっつり神の加護を受けているって考えられるからな。
「わざわざすまんな 」
「いいって。ただどんなめでたい事か分からなかったから適当な物になったのは許してくれ」
「はい、久遠とリニスで作ったクッキーだよ」
「お口に合えば良いのですが」
「味はどうだっていいさ。その気持ちに感謝しよう」
「ダディ! 光(ひかる)ちゃんが泣いてる!」
「っと、すぐに行く。悪いなお前ら。子供の相手しねぇと」
「あの子だけじゃなかったのか?」
「1ヶ月前に産まれたうちの長男だ」
この時間だとミルクかな。オムツも確認しないとなぁ。
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御祝いって要がすずかと結婚した事だと思ったんだが、まさかそれを通り越して2児の父になっているなんて。しかも滅茶苦茶強くなっていた。もし戦えば何も出来ずに瞬殺されるだろうな。
「あれ、お客様? 主人は居ませんでしたか?」
あ、すずかだ。大人の女性って雰囲気を出している。やっぱり結婚して出産を経験すると女は変わるんだな。
「今子供の世話をしているみたいだ」
「それはごめんなさい。これ粗茶じゃない。すぐに入れ直してきますね」
「いいよ別に。それより俺に見覚えはないか?」
「どこかで会いましたか?」
「紅莉なんだが」
「あっ!」
前に会ったのが10年以上前だったしな。しかも一度だけ(刃の
行き着く先 コラボ第2弾)。こうやって名前を出すだけで思い出してもらえるのはありがたい。
「私と主人に嫌がらせした人!!」
「うっ、いやまあ…………すまん」
「紅莉は何をしているのですか」
「そうだよ」
「久遠も共犯者だろうが! 知らんぷりするな!」
逃げようとしたってそうはいかないぞ。久遠だってノリノリだったんだから反省しろ。
「そうだ。悪いと思っているなら研究に付き合って下さいよ」
「研究? 構わないけど何をするんだ?」
「色々です。あなた、この人達を連れていきますね!」
「おー、勝手にしろー」
「主人から許可も出ましたし、行きましょう」
一瞬魔力を感知した。それと同時に俺達は椅子ごと違う場所に転移していた。無数のコンピューターが壁に埋め込まれ、常にフル稼働している。目まぐるしく動く数式や図形を眺めていると頭が痛くなりそうだ。唯一リニスだけは目を輝かせていた。
「おやすずか君。今日は非番だったはずじゃないかい?」
「こんにちは室長。この人達に研究の付き合いをしてもらおうと思いまして。主人の知り合いですし、ちょっとくらい乱暴に扱っても大丈夫なはずです」
「止めてくれよ…………」
「ははは、そうか彼の友人か。初めまして。私は技術部室長兼管理局大将の室長だ」
「大将!?」
「シツチョーって名前なの?」
「いやそうではないのだが、みんな室長と呼ぶから本名で呼ばれるとくすぐったくてね。敢えて本名は出さないでいるんだ。公式の場ではそうはいかないけれどね」
この人が大将。かなり若々しいのにいったいどうやって。こういうのを見ると本当にこっちの世界とは違うんだなと思い知らされる。
「君達の名前を教えてもらえるかな?」
「あ、そうだった。緋凰紅莉です」
「久遠は久遠だよ」
「リニスです。この施設は素晴らしいですね。様々な先進技術、豊富な研究材料、少し見ただけでもここが研究者にとって極上の施設なのが見て取れます。はっきり言って羨ましいです」
「それは嬉しいね。では施設を案内しよう。久遠君とリニス君は人型になれるのならばなってもらいたい。動物のままだと抜け毛が気になるからね」
「はーい」
「私とした事が、失礼致しました」
室長さんとやらに案内されて技術部の施設を歩いて回る。最初はそんなに楽しいものでもないと思っていたんだけど、これが意外と面白い。メカメカしいのはいつになっても男心をくすぐられるな。
「主人の義手もここで造ったんです」
「あ、やっぱりあれ義手だったんだ」
なんか違和感を感じると思っていたんだ。異常の塊である要の中に唯一普通っぽい感じがする腕。たぶん要以外が着けていたら気が付かないレベルの自然さだった。
「ねぇ紅莉、リニスが居ないよ」
「…………えっ、うわマジだ」
「大丈夫だよ。この施設内に居る全ての生物の場所は私が理解しているからね」
「いつの間にそんなシステムを…………」
「今日試運転なのさ。リニス君はロボット開発部に居るみたいだ」
「ロボット! そういうのもあるのか」
「興味あるかい? 男の子だねぇ。すぐそこだから行こうか」
移動中は室長さんからロボットの種類なんかを説明された。うん、色々とあるというのだけはよく分かったよ。
「居たな。リニス! 勝手に動くんじゃない!!」
「それは無理です」
「即否定!?」
「ふぅ、紅莉は何も分かっていないのですね。あ、このプログラムは無駄では?」
「この商品の場合、多少の無駄と遊び心があった方がいいと思いましてね」
もう完全に馴染んでる…………ここに就職しちまえ。
「今は何を作っているんだっけ?」
「防犯システムを持ったペット型のロボットですよ。これはドラゴンタイプですね」
「ペットでドラゴン…………キャロか?」
「そうだね、彼女が普段フリードリヒと共に居る姿が……………………君は彼女の知り合いだったのかい?」
「あっ、え、ええ。知っていますね」
こういう時に並行世界ってのは面倒だよな。気軽に知り合いの名前も出せない。
「プログラミング完了。よろしければロボットの相手をしてもらえませんか?」
「久遠やるよ」
「すずか、これでチャラになるか?」
「いいよ」
この時少しでも疑うべきだった。ただペットロボットを相手にするだけで許してもらえるわけがないという事に。
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連れてこられた部屋には50㎝前後のドラゴンタイプのロボットが既に準備されていた。緑色の鱗や翼も精巧に作られていて、息遣いすら聞こえてくる。これがロボットか。この世界の技術は凄いな。
「えいっ!」
「ギャウ」
久遠が抱き上げると気持ち良さそうに目を細めている。撫でられたり引っ張られたりしても抵抗しない。防犯も兼ねているからかなり頑丈みたいだ。どれ、俺も…………
「ガブッ!!」
「イタッ!? 何事!?」
『紅莉、これから貴方には防犯システムの方の相手をしてもらいます』
「おいリニス! それはどういう」
「ギャオー!!」
うおっ! 火吹きやがった!! この野郎、今すぐバラバラに切り裂いて…………いやそんな事をしたらどうなる。弁償だけならいい。だがより面倒なものを相手にするように命じられたらどうする。何故かリニスはあっち側。協力を求める事は無理だ。戦えない久遠は論外。耐えきるしかないか。
『上手く避けるね。流石主人の友人。リニスさん、防犯プログラムを弄って紅莉さんに対抗出来るようにして下さい』
『あのロボットの性能では難しいかもしれませんが、全力でやらせていただきましょう』
「遊ぶのも大概にしろーーー!!!」
「紅莉頑張ってね」
「久遠! お前もか!!」
この後? 逃げ切ったさ。肉体的な疲労はないようなもんだったけど精神的な疲労は凄かった。元の世界へ帰ってすぐにリニスにはお仕置きしたよ。久遠は…………まあ許せる。
「理不尽です依怙贔屓です」
「黙ってろ駄猫」
アリサ「ただいま!!」
シャマル「ちょっぴり休暇に出ていました。みんな、私達が居なくて寂しかったかしら?」
アリサ「そんなわけないじゃないですか」
シャマル「それもそうよね」
アリサ・シャマル「「ハハハハハハハ……………………ハァ」」
アリサ「今日は何の日、やりましょう」
シャマル「そうね。本日3月21日は『春分の日』よ」
アリサ「日付が決まっていない祝日ですね。今年は今日でしたけど」
シャマル「3月20日か21日になりやすいわね」
アリサ「明日からは日が出ている時間が長くなるんですよね。やっぱりお日様が出ている方が好きです」
シャマル「私もよ。ではまた次回」