チートじゃ済まない   作:雨期

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一先ず本編はこれでおしまい。今まで読んで下さった皆さんありがとうございました。短いエピローグですがどうぞ。


エピローグ

 あの事件から1週間。要は翠屋でクロノと話し合っていた。

 

「後処理は進んでいるか?」

 

「それなりと言ったところか。というか君も局員なら参加しろ

 

「やなこって。俺は俺で忙しいの」

 

「何が忙しいというんだ。翠屋に僕を呼び出したりして、明らかに暇だろう

 

「ところがどっこい。暇じゃないんだなこれが。ほい」

 

 要は懐から1枚の封筒を取り出してクロノに手渡した。手早く封筒を開けたクロノの目に入ってきたものは結婚式の案内状であった。

 

「これの準備か。私事は後回しにしてもらいたいのだが、一先ずおめでとう。そして人生の墓場へようこそ」

 

「ハッ! 何が墓場だ。天国だよ」

 

「どちらにせよ死んでいるな」

 

「言ってくれるじゃねぇの。あ、もう1つ封筒あるの忘れてた。これな」

 

「なんだ、まだ…………僕の視力は低下したのかな? 退職届、という文字が見えるんだが」

 

「そうだよ。辞めるんだよ」

 

 これにはどちらも何を言っているんだ、と言わんばかりの顔をした。何であれこの時点で双方の意見はぶつかり合うのが確定したのだ。

 

「まず理由を聞こう」

 

「右腕無くした。以上」

 

「すずかに義手を作ってもらっただろうが」

 

 今要の右腕にはすずかお手製の義手が装備されている。日常生活は当然の事ながら、戦闘でも十分に使える代物なのだが…………

 

「こんなもんで戦えるかってんだ」

 

「君なら右腕なんてなくても戦えるはずだ」

 

「まあな。でも理由としては十分だろ。もしこの退職届を認めないようなら、任務で腕を無くした局員を酷使する管理局ってテレビに言っちまうぞ」

 

「脅しか?」

 

「俺なりの交渉さ」

 

 ピリピリとした雰囲気を出しながらシュークリームを食べている男2人の姿は周りの客にはどう映っただろう。

 

「なになに、要君リストラ?」

 

「止めて下さい美由紀さん。ただの自主退職ですよ」

 

「だから認めていないと言っている」

 

「いいじゃない。要君が自由にしたいならそれで。でももうすぐパパになるのに仕事がなくて大丈夫なの?」

 

「大丈夫です。もう酒屋を経営する準備は終わってますからね」

 

「聞いていないぞ!!」

 

「言ってねぇからな」

 

「開店したら翠屋にお菓子用のお酒を入荷してもらおうかな」

 

「任せて下さいよ。極上のもんを安く提供します」

 

 自分を無視して勝手に進んでいく話にクロノは頭を抱えた。その様子に流石にやり過ぎたと反省したのか、要は真面目に話し始めた。

 

「俺も考えなしにこんな事を言っているわけじゃねぇ。俺が居ると管理局が成長しねぇと思ったからだ。全員が全員悪くないが、俺に頼りまくっているのが居るのも事実だ。お前だって心の何処かで俺が居ればどんな凶悪犯でも何とかなるって思ってんじゃねぇか?」

 

「君ほどの戦力だ。そんな考えないとは言い切れん」

 

「素直で結構。でもそれなら分かるだろ。いつまでも俺に頼ってばっかじゃ駄目だって。まあなんだ、こっちも妥協してたまには民間協力者として働いてやるよ」

 

「…………それで妥協しよう」

 

「サンキュー」

 

「はい、大事な話も終わったところで美由紀さん特製ショートケーキをプレゼント」

 

「ありがとうございます。そうだクロノ。辞めるからには」

 

「君に関するデータは全て破棄する。約束しよう」

 

 翌日、要の退職届は正式に受理された。ミッド中を騒がせるニュースになったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 あれから時間は飛んで今日は結婚式だ。服はこれでばっちりだ。前世でも経験なかったし、滅茶苦茶緊張するな。クロノや恭也義兄さんの式に参加した事があるから流れは分かっている。業者と事前に打ち合わせもした。問題ない、はず。

 

「かーなーめーさん!」

 

「うおっ!? す、すずかか。驚かせないでくれ」

 

「め、珍しいですね。私に気が付かないなんて。そんなに緊張してました?」

 

「ああ、まあな。にしてもいいドレスじゃないか。綺麗だぞ」

 

「お姉ちゃんに用意してもらったんです。それなりに値は張りますけど、お姉ちゃんの奢りですから気にしないで下さいね」

 

 すずかが値を張ると言う事は相当な…………止めよう。考えたところで意味のない事だ。

 

「ってなんでここに来たんだ? 新婦入場の時まで待っている予定だろ」

 

「要さんに早く見せたかったんですもの」

 

「やれやれ、困った奥様だ」

 

「管理局を辞めて酒屋を始めた貴方も困ったちゃんですよ、旦那様」

 

「違いない。じゃあ行こうか」

 

「はい!」

 

 俺が差し出した手をすずかはしっかり握る。俺みたいな馬鹿を選んでくれた彼女の信頼を裏切らないよう、一生彼女を護る事を誓おう。それが俺が彼女に出来る精一杯の誠意だ。




どんな結婚式になったかは皆さんの想像にお任せします。彼氏の居ないアリサが暴れたかもしれないし、日頃の鬱憤が溜まったクロノが飲み過ぎで倒れたかもしれない。そんな妄想で補完して下さい。

次回からは後日談。要達が自由奔放に遊びます。そしてここでコラボ募集もします。自分のキャラと要を会わせたいという方はメッセージでも感想でもいいのでとにかく連絡して下さい。

それとFate/Extraのアンケートが想像以上に拮抗しています。主に主人公がマスターかサーヴァントかで。アンケートは次回更新まで続けますのでまだ回答していない方は是非。

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