チートじゃ済まない   作:雨期

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次回作の舞台となるFate/Extraのアンケート、活動報告にて行っていまーす。


第80話

「んじゃはやて、警報の準備、出来てるよな?」

 

「勿論です。アインス、ちょっと早いけど時間やで」

 

 はやてがアインスに連絡するとすぐにけたたましい警報音が管理局のみならず世界中に鳴り響いた。スカリエッティ襲撃の時とは比べ物にならない。そう考えると最大の警報を利用されなかったスカリエッティが哀れだな。

 

「これ、どういう事!?」

 

「この警報の意味くらい知っているだろ。いいか、全員絶対にシェルターから出るなよ。出たら死ぬと思え」

 

「説明は私がしてあげるから逃げるで」

 

 坊主達も避難させてやろう、と思ったらもう居ない。まあ逃げてくれたならそれでいい。そろそろだ。まだ目視は出来ないが迫ってくるのは肌で感じるようになった。

 おっ、無数の点が高速で飛んでくる。間違いなく捕食端末だ。人間が逃げるのを感知したのか地に根を下ろす前にと飛ばしてきやがったな。

 

「大量殲滅はお前の分野だ。頼むぞ、ORT解放!!!」

 

 久しぶりに暴れまわってもらおう。本来の人類絶滅って仕事じゃないが、人型のものを壊し放題なんだ。ストレス解消くらいにはなるはず。

 

「Guooooooooooooo!!!」

 

 地上付近に来た捕食端末を悉く粉砕する。たまに逃げ遅れた人間も居るが、これは本人が悪い。ORTの攻撃に巻き込まれても、ORTが破壊しそこねた捕食端末に食われても俺は知らん。俺もORTもアリストテレスとの戦いで被害をゼロにするつもりなんて毛頭ない。

 

「Giiiiii」

 

 ん? どうしたORT。ふむふむ、おお、確かにタイプ・ヴィーナスの影が見えたな。地上に人間は居るか? 十数人か。知り合いは無しと。まあ第一波は粉砕した。放置してもいいだろう。本体を殴りに行くぞ。あそこまで届くか?

 

「Gyuaaaaaaaaaaaa!!!!」

 

 ああ、愚問だったな。お前は飛べるもんな。んじゃ行くぞ!! ORT、UFOモード!!

 

「Gaaa!」

 

 ORTの姿がモードの名前通り円盤へと変化する。ORTの飛行形態であるUFOモード。これでORTは水星から地球まで飛んできた。タイプ・ヴィーナスが居る上空までひとっ飛びだ。

 タイプ・ヴィーナス。やっぱり近くで見るとでけぇな。知識通り巨大な魚のようだ。背中には翼にも見える2本の大樹。そこからはまるで杉花粉のように捕食端末が生み出されている。

 

「Gii」

 

 ヴィーナスの背中に着陸したらORTの全身を捕食端末が覆った。これはキモい。ORT、何とかしてくれ。

 

「Guooooooooo!!」

 

 俺の注文に答えてくれたのかORTはとわりついてくるほ捕食端末を脚の一振りで消し飛ばし、大樹へと殴りかかった。しかし硬い。流石はアリストテレスの一角。本体に戦闘能力は皆無でも強度は一級品だ。当然のように超回復能力もある。このままORTが攻撃を続けてもじり貧だ。ここはあいつに締めてもらおう。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 ここは地下シェルターの1つ。厳重なロックが掛けられた扉がいくつもあり、捕食端末も簡単には入ってこられない。そもそも地上に捕食端末はほぼ居ないのだが。

 

「お兄ちゃん、何が起こっているの?」

 

「ラグナは気にしなくていい。待っていれば全部終わるんだ」

 

 シェルターにはヴァイスとその妹のラグナも避難していた。ラグナはある事故により左目が見えない。それを知ってか要はヴァイスに今回は戦場に出なくていいと命じたのだ。だがその命令は要本人によってあっさり覆される事となる。

 

『ヴァイス、応答しろ』

 

『要さん! 今はどうなっています?』

 

『面倒この上ない。援軍に来てくれ』

 

『俺っすか!?』

 

『お前だよ。渡した銃は持っているな? 上司からの命令だ。すぐに来て一発ぶちかませ』

 

『要さん!? 要さーん!!!』

 

 一方的に念話を切られ呆然としたのち、ヴァイスは軽く笑みを浮かべた。

 

「お兄ちゃん?」

 

「悪いラグナ。兄ちゃん上司に呼ばれたから行ってくる」

 

「なんで! 外は危ないんでしょ!?」

 

「したっぱってのはそういうもんなんだ。大丈夫、絶対に帰ってくるからさ」

 

 ヴァイスは走ってシェルターを飛び出した。彼は嬉しかったのかもしれない。あのエリート軍団の中で地味な役割を演じてきた。しかし遂に派手な仕事が回ってきた。これでやる気が出ないわけがない。

 外に出たヴァイスが見たものはあまりに静かなミッドチルダであった。そして静かでなくとも際立つ異様な力。上空に浮かぶ異常。見ただけで逃げ出したくなる。

 

「はは、あれを撃てって言うのか。こんな、ちっぽけな銃で……………………やってやらぁ!!!」

 

 銃を構えて狙いを定める。だが遠い。当たる気が全くしない。これでは撃っても外れてしまう。弾は1つ。失敗は許されない。

 

《マスター、私をお忘れですか?》

 

「! ストームレイダー!! なんでポケットに居るんだよ」

 

《妹様がこっそりと。さあ、照準は私に任せて下さい》

 

「ラグナめ。ストームレイダー、頼んだ」

 

 ヴァイスは自身のデバイス、ストームレイダーの力を借り、数㎞先の標的へと再び狙いを定める。今度は当たる。

 

『要さん、撃ちます』

 

『おう!』

 

 タイプ・ヴィーナスに張り付いていたORTは逃げるように飛び退いた。それが見えたかどうか分からないが、ヴァイスはほぼ同時に引き金を引いた。

 拳銃サイズとは思えない衝撃がヴァイスの腕に襲い掛かる。だがこの程度で照準がぶれる事はない。黒い銃から撃ち出された銃弾い一瞬にしてタイプ・ヴィーナスを貫いた。

 

「…………やったのか?」

 

「お見事。墜ちてくるぞ」

 

「うわっ!? 要さんいつのまに!?」

 

「速攻で帰ってきたからな。さあ次はまた俺の仕事だ。帰っていいぞ英雄さん」

 

「英雄って、そんな柄じゃないっすよ」

 

「英雄じゃろう。あのような化け物を撃ち落としたのじゃ」

 

「へっ、あ、あんたは!!」

 

 いつから居たのか分からないが、2人の後ろには鏡の姿があった。普段とは違う黒い九尾が生えたそれは久遠と合体した姿だ。

 

「全く。こっちはヴィーナスとの戦いで疲れているんだ。一撃だけ付き合ってやる」

 

「奇遇じゃな。儂も一撃で済ませるつもりだったのじゃよ」

 

「ふん。ヴァイス、帰ってろ。巻き込まれるぞ」

 

「ここに居っても構わんぞ。どこに逃げようと関係ないからのぉ」

 

 自分は明らかに場違いと感じたのかヴァイスはすたこらと帰っていった。要もこれでその気になれると背を伸ばした。

 

「そういえば坊主達は居ないのか? 狐は合体しているのは分かるが」

 

「マイトとマイカも合体しておる。元は儂が力を分け与えたのじゃから合体も余裕じゃよ」

 

「つまり今のお前はマックスなわけだ。おもしれぇ」

 

「では、参る!!」

 

 鏡は両手を合わせ、力を籠める。そして開かれた手の間にはドス黒い魔力の塊が浮いていた。徐々に大きくなっていくそれが危険なのは一目瞭然だ。

 

「これぞ我が必滅の魔法『ダーク』。触れば一瞬にして全てを無とする。この世界のみならず周辺世界ごとな」

 

「随分と規模がでかいな」

 

「お主の言うようにマックスじゃからな。避けても受けても無駄。さあどうする!!」

 

 放たれたダークはそこまで速いわけでないが、鏡の言う通りの性能ならばどうしようもないものだ。だがそれでも要は笑っていた。

 

「どうするって、潰すだけだよ」

 

 右腕を掲げ、左手で支える要。右腕が徐々に武装・ORTにより変化していく。しかし要が行ったのは右腕の武装化のみ。

 

「そのようなもので止められると思うたか!!!」

 

「焦んなよ。これが俺の必殺だ。武装・ORT・ビーストモード!!!」

 

 その変化に鏡の思考は停止した。武装・ORTはあくまで腕にORTの外殻を纏うもの。だが今の要の腕はまるで獣ように爪が伸び、一回り大きくなっている。鏡の知るORTの情報にこんなものはなかった。

 

ーービュッ

 

 要の爪は鏡が認識出来ないほどの速さで振り下ろされた。その一撃はダークに触れるような事はせず、空間に大きすぎる裂け目を生み出した。そして裂け目は修復する際に周辺のもの吸い込み始めた。落下してきたタイプ・ヴィーナスの残骸や鏡、要ですら例外ではない。

 

「ぐ、ぬおぉぉおおおお!!!!」

 

 鏡はあの一撃で力を使い果たしたのか、なんとか踏ん張っている。一方要は右腕を抑えながらも吸い込みには余裕で耐えていた。

 

「しぶてぇな。シールドスライサー」

 

「ぬぅっ!?」

 

 要のシールドスライサーは鏡の手足を切り裂いた。そうなっては鏡も耐えられるはずがない。

 

「覚えておれ!!! 次こそは……………………」

 

 最後に鏡を飲み込んで裂け目は消失した。それと見届けた要は大きく息を吐いた。

 

「めんどくせぇ奴だったな。あー腕いてぇ。やっぱりまだビーストモードは早かったな」

 

 長い付き合いだった鏡との戦いも要にとっては面倒極まりないものでそこに感慨も何もない。今の要に重要なのは右腕だ。まだ使いこなせていないビーストモードを無理をして使用した代償か、要の右腕は崩壊していた。崩壊は肩で止まったが、もう右腕が元に戻る事はないのを要は直感した。

 

「…………すずかに義手作ってもらうか。何はともあれ、終わったな」

 

《終わりましたね》

 

「あ、居たのかアリストテレス」

 

《酷い…………》

 

「冗談だっての。そうそう、忘れる前にスカリエッティを拾ってこないとな」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「ここまでやるとは要君も成長したね」

 

「ゼウス様、何をご覧になってらっしゃるのです?」

 

「要君の様子だよ。僕の転生させた彼さ」

 

「はぁ、それで彼がどうなさったのです? 私としてはゼウス様に早く仕事に戻って頂きたいのですが」

 

「まあまあ、それは置いておいて。彼ね、リリカルなのはという世界に穴を開けたんだよ。それも力だけで」

 

「嘘…………そんな事が出来るのは神々でも一握り。いえ単純な力でそれが可能なのは」

 

「居ないね。ORTだけでどんな風になるか分からなかったけど、想像以上だったね。チートじゃ済まないってところかな。さあ仕事だ仕事。今日から頑張るぞ」

 

「いつも頑張って下さい」




アリサ「色々と終わったわね。私達の出番は終わらないのだけれど」

シャマル「次回はエピローグ。つまり最終回ね」

アリサ「最終回後も色々とやるわよ。後日談ってやつね」

シャマル「そんなに長くはやらないけど、楽しんでもらえたら嬉しいわ」

アリサ「では今日は何の日、はもうやっているからこれでお仕舞い」

シャマル「Extraアンケートもよろしくね」

アリサ「ではまた次回」

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