ふふふ、今日はどんな実験をしようかなぁ。相手には植物を操る子が居るみたいだから除草剤を作ってもいいかも。
「月村さん! 何やってるんですか! お腹に子供が居るんだから休んでいて下さい!!」
「えっ」
「月村先輩、この仕事は私がやっておきますね」
「え、ええっ」
「すずか君。君が妊娠したというからみんな心配なのだよ。大人しく安定期まで休んでくれ」
「ええー!!」
私の趣味でもある仕事が奪われるなんてぇ。うぅ、でも室長さんに言われちゃったら続けるわけにもいかないんだよね。室長さんには色々と恩もあるし。
だからって何もしないで過ごすのは嫌。要さんを誘ってどこかに行こうかな。赤ちゃんができてから要さんがこれまで以上に優しくなったからお願いをきいてくれるよね。
「そういえば機動六課が今度任務で地球に行くと高町君に聞いたよ。良い機会だから一緒に里帰りしてはどうかな?」
「へぇ、初耳ですね。ではそうします」
室長さんってなのはちゃんとそんな事を話すほど仲が良かったんだ。私の事で話が合うんだろうな。私が居ないところでどんな事が話されているんだろう。むむ、気になる。後でなのはちゃんに訊いてみようっと。
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「到着。みんな、ここが地球だよ」
「簡単な任務だけど油断したらあかんで。今日は休みやけどね」
「拠点として私の家を貸すよ。もうすぐお迎えが来るはずだから待ってね」
「ありがとうね、すずかちゃん」
お姉ちゃんに連絡してお迎えの車を頼んだから、時間的にはそろそろのはず。あ、来た来た。マイクロバスなんて普通なものを選んだね。
「お待たせ致しました」
「ありがとうノエル。みんな乗って」
バスでうちに向かうまでの間、話題は全部私の妊娠について。女の子ばっかりだし、そういうのが気になるのは仕方がないよね。要さんはエリオと遊んでいるけど、チラチラとこっちを見て、意識がこっちに向いているのよく分かる。
今回の妊娠は実はかなり狙ったところがある。いつもピルを飲んで、ゴムも付けて避妊を完璧にやっていたんだけど、もういいかなって。だから妊娠した時はピルの代わりに排卵薬を、ゴムには穴を開けておいたの。正直要さんは怒るかとドキドキしたけど、喜んでいてくれて良かった。
まあそんな私事は置いておいて、うちに着いたみたい。このままバスで行くか聞かれたけど、どうせだしみんなで話ながら歩いてうちに入る事にした。門からそんなに距離もないし。
「うわぁ、おっきなお家ですね」
「すずかの家は金持ちだからな。門が開くぞ」
ギギギッと重そうな音を上げながら巨大な門が開く。そこに広がっていたのは私の知る普段の庭ではなかった。
『お帰りなさいませ。すずかお嬢様、旦那様』
「いや確かに婚姻届は出したが、旦那様はどちらかというと当主と結婚した恭也さんだろ」
「要さん、ツッコミ所が違います」
門から玄関までズラリと並んだメイド達。みんなとってもイイ笑顔。絶対にお姉ちゃんの仕業だ。要さんも頭を抱えてる。恭也お義兄さんは止めなかったのかな。止められなかったんだろうな。
「ごめんね、みんな。普段はこんなんじゃないんだよ」
「うちらは知っとるけど、この子達は完全にビビっとるで」
「すずかー!! 要君ー!! おっかえりー!! へぶしっ!?」
お姉ちゃんが走ってきたけど、ノエルにハリセンで叩かれていた。遊びすぎだからね。お姉ちゃんもそこは自覚しているのか大人しくノエルの説教を聞いているみたい。
「お帰りなのは、みんな。そこの子達はいらっしゃいかな」
「お兄ちゃん! 元気だった?」
「ああ。なのはも要君とすずかちゃんと仲良くやっているか? 2人はもう親戚なんだからな」
「…………あっ、そっか。忘れてたけど親戚になったんだね」
「そうだぜ。義兄と呼んでもいいんだぞ」
「なら要君も俺を義兄と呼んでくれるかな?」
「遠慮します」
どうも要さんは慣れないのかお姉ちゃんも恭也お義兄さんも、ただのさん付けで済ませてしまう。どうせそのうち言うんだから今のうちに言ってしまえばいいのに。
「今日はみんなが来るというからアリサちゃんも来ているぞ。昔話でもしながらゆっくり過ごすといい。ただ要君はこっちに来てくれ。ちょっと飲みたいんだ」
「分かりました、恭也さん」
「いい加減義兄と呼んでくれ」
「前向きに検討しますよ」
「それ検討するつもりないよな」
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深夜の管理局技術部。もうみんな帰るような時間に、室長だけが残ってノートパソコンに向かっていた。
「む、以前より強固になったな。だがこの程度なら……………………繋がった」
『また君か。連絡するのにいちいちハッキングをしないでくれ』
「お前の防犯に協力してやっているんじゃないか。ジェイル」
ハッキングしていたのはスカリエッティのコンピュータのようだった。実はこの2人、かなり昔からの知り合いで、今では立場上敵同士でも友人として交流しているのだ。当然管理局にバレていない。管理局のあらゆるシステムは室長お手製なので隠そうとすればいくらでも隠し通せる。
『いつもいつも、君は常識というものをもう少しだな』
「お前の口から常識という言葉が出るのか…………ウーノちゃんに治療してもらえ」
『私は至って正常だ。それで用件は?』
「暇潰しに決まってるじゃないか。何か面白い話はないか?」
『……………………アンノウンを覚えているかな?』
「あの羽根か」
ある時スカリエッティは謎の生き物の羽根を発見した。凄まじいエネルギーを持っている事は分かるが、いくら調べようにも全てエラー。室長も協力したが、それでも正体は分からなかった。そこで名付けられたのが『アンノウン』。今はスカリエッティが厳重に保管している。
『私の協力者があれの正体を見抜いてくれたのだよ』
「鏡君、だったかな。もしくは久遠ちゃんかな? 双子も居たね」
『鏡君の方さ』
「となるとロストロギアだったのか」
『それより素晴らしく恐ろしいものだよ』
「…………まさか、ORT」
『そう。あれと同質のものらしい』
様々な可能性を考えていた室長でもそこまで想像は出来なかったらしい。心のどこかであんなものがこの世に何体も居るはずがないと思い、可能性から外していたのだろう。
「それで、分かったところでどうするつもりだ」
『あれを利用して新しい戦闘機人を造り出す。一条要を超えるクリーチャーをだ』
「是非協力させてくれ」
『おいおい、君は仮にも管理局員だろう。それに完成はいつになるか』
「知った事か!! 僕は楽しい事が好きなんだ!! 3日でやるぞ!!」
『3日ぁ!? おい、流石にそれは』
ーーバンッ
室長は荒々しくノートパソコンを閉じるとメモに『3日休む』と書き残し、技術部の部屋を飛び出していった。
アリサ「最後がなんだか不穏な雰囲気なんだけど」
シャマル「室長さんの裏切り、ではないわねぇ。あの人は楽しければいいって人だから」
アリサ「それはそれで厄介ですよ。それより戦闘機人って3日で出来るんですか?」
シャマル「あのスカリエッティの反応を見れば分かるでしょう。人を造るのよ」
アリサ「どうするのかしら」
シャマル「次回の六課はまだ地球みたいよ」
アリサ「私も出るよ」
シャマル「じゃあ今度は今日は何の日ね。本日1月22日は『カレーの日』よ」
アリサ「何でカレー?」
シャマル「学校給食で全国でカレーが統一して出されたのが今日みたいよ」
アリサ「カレーって毎月ありますよね。特別な記念日の給食と合わせて楽しみな日でした」
シャマル「作者の知っている先生にカレー好きな人が居て、ある生徒が今月はカレーが2回あるってその先生に伝えたのよ
アリサ「えっ、そんな事ってあるんですか?」
シャマル「それがね、2回目のカレーの時に出たのがカレイの煮付けだったのよ。その時の先生の落胆っぷりが凄かったらしいわ」
アリサ「それは酷い。でもちゃんとメニュー見ない先生も悪いですよね」
シャマル「それだけウキウキだったのよ。それではまた次回」